COBRAの“オイ!パンク”らしい
キャッチーさと
超パンクの精神が垣間見える
『CAPTAIN NIPPON』

キャッチーなルックスと歌

『CAPTAIN NIPPON』を聴き返して、まず膝を叩いたのがCOBRAのビジュアル面、そのルックスのことである。M2「Oi Oi モンキー・ブルース」にズバリ以下のようにある。

《ボタンダウン 愛する母さん/Vネック サスペンダー仕様/フレッド・ペリー サル頭GO GO GO GO/AND FIGHTS! モミアゲもね》《I BORN グレイテスト・ニッポン/タタミ ロックン・ロール GO GO/(ええやんけ 別に)/ナッティー・ボーイ カガミを見よ/JUST FIGHTS スキニッズ! 男さんでね》(M2「Oi Oi モンキー・ブルース」)。

YOSU-KOとPON(Ba)が象徴的であったが、それまでのパンクバンドっぽくない出で立ちにビビッと来た。それは確実にあったと思う。パンクはストリートから生まれたとは言っても、Sex Pistolsのファッションはヴィヴィアン・ウエストウッドのプロデュースではあったわけだし、ボンテージもダメージものもそれはそれでカッコ良いのは間違いないものの、筆者のような田舎の中高生からするとあまりストリートっぽさが感じられるものではなかった。日本のパンクはその本場のパンクのファッショナブルさからはかけ離れてはいたけれど、それにしてもアナーキーの国鉄の作業服(ナッパ服)は誰もが手に入るようなものではなかったし、LAUGHIN' NOSEもTHE BLUE HEARTSもライダースジャケット着用率が高かった。当時、革ジャンは意外と高額で、子供にはなかなか手が届くものではなかった印象がある。

その点、COBRAはまさしく“ON THE STREET”。そりゃあフレッド・ペリーはそこそこの値段だし、下手をするとライダースよりも高かったりするのだが、ポロシャツやボタンダウンシャツのようなカジュアルな格好でパンクをやっている彼らを見た時には“これか!?”と溜飲を下げたような気がする。しかも、YOSU-KOとPONは髪を立てることもできないほどの短髪。《サル頭》である。その辺を歩いているような恰好でロックをやってるバンドというと、米国のWeezer辺りが有名だと思うが、COBRAのメジャーデビューはWeezerよりやや早い。両者に因果関係はなかったと思う。だが、当時のCOBRAは日本独自のスタイルだと思ったし、不思議と誇らしい気持ちになった…薄っすらそんな記憶もある。まぁ、自分の感想はさておき、そうしたCOBRAのカジュアルなファッションがリスナーの裾野を広げたことは想像するに難くないところだ。

これは今回『CAPTAIN NIPPON』を聴き返す以前から確信していたことだが、COBRA楽曲のメロディーは分かりやすい。もともとパンクはキャッチーなメロディーを有したものが多く(ハードコアを除く)、欧米のものもそうだし、そこから直接影響を受けたTHE STAR CLUB辺りもそうだった。THE STALINも歌詞こそ過激ではあったが、それが乗る歌メロは実にキャッチーであったし、それこそが遠藤ミチロウの発明であっただろう。COBRAはキャッチーさに加えて、メロディー、コードにメジャー感もあった。それは彼らがパンクの中でも“オイ!パンク”を標榜していたからであろうが、エレキサウンドやビートに荒々しさはあったものの、アングラさが薄いというか、端的に言えば明るいものであったのだ(本場の“オイ!パンク”自体、その思想性が取り沙汰されることもあったようだが、今もそこに分類される欧米のバンドのサウンドを鑑みると、概ねそんな方向付けで大きく間違ってはないだろう)。

本作ではM8「D.N.F -did not finish-」が唯一ハードコアなくらいで、M10「LIFE WAR」のブラストビートは攻撃的ではあるものの、メロディーに尖った感じはない。分かりやすさを代表的なCOBRAナンバーと言えば、これはもうM6「オレたち」に尽きるのではないかと思う。誤解を恐れずに言えば、この「オレたち」はパンクではあるが、その骨子はほとんどJ-ROCK、J-POPに近いと言っていい。歌の展開がA、B、サビと、とても分かりやすいのだ。Bメロは俗に言う“PPPH”にはなってないが、楽曲に合うか合わないかはともかくとして、“PPPH”ができなくはない作り。今も流行歌としてのフォーマットに収まりそうなところではある。「オレたち」は『CAPTAIN NIPPON』からの先行シングルとしてリリースされ、チャートで25位にランクされたというから、実際、大衆に受け入れられたと言っていい。

OKMusic編集部

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