三浦透子の楽曲に込められた物語、映
像、サウンドを豊かに描き出す新作『
ASTERISK』【SPICE×SONAR TRAX コラ
ム vol.2】

J-WAVEの番組『SONAR TRAX』と連動し、注目のアーティストをピックアップするコラム企画第2弾。今回は女優としてキャリアをスタートし、映画『天気の子』の主題歌で注目を浴びた三浦透子。
やはり彼女は、類まれな“声の表現者”だった。
RADWIMPSが音楽監督をつとめた映画『天気の子』の主題歌「祝祭」「グランドエスケープ」にボーカリストとして参加し、一躍注目を集めた女優・三浦透子が、ミニアルバム「ASTERISK」をリリースした。本作に楽曲を提供したのは、森山直太朗、津野米咲(赤い公園)、澤部渡(スカート)、サンタラ曽我部恵一TENDRE。際立った個性と技術を併せ持ったアーティストとの出会いによって彼女は、その天性のボーカル表現を発揮している。
まずは三浦透子のこれまでのキャリアを簡単に紹介しておきたい。
1996年生まれ、北海道出身の彼女は2002年、5才のときにサントリー「なっちゃん」のCMに出演。その後、女優として活動をスタートさせ、映画『陽だまりの彼女』『私たちのハァハァ』、ドラマ『鈴木先生』『時をかける少女』などに出演し、注目度を高めた(個人的には映画『素敵なダイナマイトスキャンダル』で主人公・末井昭(柄本佑)の愛人役を演じた際の、繊細な狂気を感じる芝居が印象に残っている)。
2017年にはアコースティック・カバー・アルバム『かくしてわたしは、透明からはじめることにした』で歌手デビュー。「君が思い出になる前に」(スピッツ)、「東京」(サニーデイ・サービス)、「いかれたBaby」(フィッシュマンズ)などを収めた本作からは、彼女自身の音楽的ルーツとシンガーとしての優れた資質――楽曲に込められた物語、心情をまるで映画のワンシーンのように描き出すボーカル力――を感じ取ることができる。ちなみに彼女がフェイバリットに挙げているアーティストは、ナンバーガール、ゆらゆら帝国銀杏BOYZはっぴいえんど、フィッシュマンズ、岡村靖幸、サニーデイ・サービス、エイフェックス・ツイン、オウテカなど。90年代以降の日本のロックやポップス、海外の先鋭的なテクノ、エレクトロまでを享受しながら彼女は、その独創的な感性を静かに育んできたのだろう。
映画「天気の子」の主題歌に抜擢されてからの躍進ぶりは、周知の通り。昨年の8月末にはRADWIMPSのツアーファイナル(横浜アリーナ)に参加し、年末には第70回NHK紅白歌合戦に出演するなど、初めての大舞台を経験した。ミニアルバム『ASTERISK』のリリースに伴うオフィシャルインタビューで彼女は、去年の出来事を振り返り、「ある意味、“飛び級”で特別に学ばせてもらって、ここから自分の名義でスタートすることが出来るのは恵まれていることだし、とてもわくわくしています。自分の名義だけでは、まだ何もなし得ていないわけですから。何でもしたいし、何でもするべきだなって」とコメント。“何でもしたいし、何でもするべき”という言葉はそのまま、本作『ASTERISK』の生き生きとした歌の表現に結びついている。
『ASTERISK』は、森山直太朗とのセッションから生まれた「uzu」で幕を開ける。映画『ムヒカ 世界で いちばん貧しい大統領から日本人へ』の主題歌に起用されたこの曲は、アコースティックギター、ピアノなどが(まさに“渦”のように)溶け合うサウンドのなかで、三浦の穏やかで美しいハミングが広がる楽曲。癒し、憂い、滑らかさ、芯の強さなど、様々な感情を同時に描き出す歌声に魅了される。
続く「愛にできることはまだあるかい」は、映画『天気の子』のボーカル・オーディションで最初に歌った曲。今回のバージョンは、エレクトロニカ的な音響とピアノ、チェロ、フリューゲルホルン、サックスを交えたクラシカルなアンサンブルにより、彼女のピュアで素朴なボーカルを際立たせている。
彼女が以前から敬愛しているサンタラ(田村キョウコ、砂田和俊)が手がけた「蜜蜂」は、ブルースの香りがたっぷり漂うアコースティックギター、スモーキーな手触りの歌が交じり合う。“秘密の恋人”をテーマにした歌詞は、バーボンやタバコが似合うような大人びた雰囲気だ。
シティポップの進化型と称すべき「おちつけ」は、TENDRE(河原太朗のソロプロジェクト)がプロデュース。軽快なファンクネスをたたえたトラック、華やかなメロディと“リア充たちのパーティをちょっと冷めた目で見ている彼女”をモチーフにした歌詞のバランスが楽しい。
現代のポップマエストロ、澤部渡による「波がたった」は、J-POPと海外のパワーポップが絶妙に絡み合うポップチューン。シンプルでありながら随所にヒネリを効かせたバンドサウンド、真っ直ぐで切ない青春の風景を映し出す歌に心を揺さぶられる。
曽我部恵一のペンによる「ブルーハワイ」は、免許取り立ての“僕”が大好きな“君”を夏のドライブに誘う、というシチューエーションを描いたナンバー。ゆったりと響くディストーションギター、儚げな三浦のボーカルからは気だるい夏の空気が漂ってくるよう。
本作の最後を飾る津野米咲(赤い公園)が手がけた「FISHANDCHIPS」はエキゾチックなムードとトラックの中で、和の情緒性をたたえたメロディとラップ、“話をしよう、すぐそばで”と率直なコミュニケーションを求める歌詞が一つになったダンスチューン。自由に舞い踊る三浦のボーカルが鮮烈だ。
サウンドやアレンジ、歌詞に含まれたストーリーや情景を的確に表現すると同時に、シンガーとしての個性もしっかりと感じさせてくれる三浦透子の歌。7組のアーティストとの化学反応によって生み出された『ASTERISK』によって彼女は、シンガーとしての才能をさらに向上させた。この先、彼女がどんな歌を描いていくのか、本当に楽しみだ。
文=森朋之
三浦透子「波がたった」

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