天才フランク・ザッパの
記念すべきデビュー作、
マザーズ・オブ・インベンションの
『フリーク・アウト!』

本作『フリーク・アウト!』について

本作レコーディング時のメンバーはザッパの他、レイ・コリンズ(Vo)、ロイ・エストラーダ(Ba)、ジミー・カール・ブラック(Dr)、エリオット・イングバー(Gu)で、メンバー以外に多くのセッションマンが参加している。ドクター・ジョン、ポール・バタフィールド、レス・マッキャンらロック・ジャズ界の著名人も参加しており、彼らはトム・ウィルソンの要請で参加が決まったようだ。

収録曲は全部で14曲。サイドAとB(当時のLP)に収録された11曲はロックとR&Bをモチーフにしたノーマルなナンバーだけれど、ストーンズ、アニマルズ、バーズ、ママス&パパスあたりをパロディー化したようなサウンドが展開されている。また、タイトルの「Anyway The Wind Blows」はディランの「Blowin’ In The Wind」を、「I’m Not Satisfied」はストーンズの「Satisfaction」をもじったものだろう。ただし、メロディーを引用しているわけではない。また、3曲目の「Who Are The Brain Police」は頭脳警察の名前の由来となった。

サイドCとDにあたる4曲はザッパの先鋭性を物語る前衛的な要素を持ち、この1枚を聴かせたいがために、前半の11曲を収録したのではないかと勘ぐってしまいそうになるほどだ。呪術的なパーツや民族音楽的なパーツがコラージュされていたり、パンク〜ポストパンク時代に登場する破壊的なイメージが提示されていたりするなど、サイケデリックロック時代に突入しようとしていたアメリカ西海岸のロック界の中で、ザッパの異端ぶりがよく分かる。このまったく新しいロックサウンドの提示は、次作『アブソリュートリー・フリー』(‘67)ではもっと過激な表現へと進化し、早くもひとつの完成を迎えるのである。

フランク・ザッパのアルバムには難解なものも少なくないが、60〜70年代の作品は傑作が多いので、ぜひ聴いてみてほしい。

TEXT:河崎直人

アルバム『Freak Out!』1966年発表作品
    • <収録曲>
    • ■Side A
    • 1. ハングリー・フリークス、ダディ/Hungry Freaks, Daddy
    • 2. アイ・エイント・ガット・ノー・ハート/I Ain't Got No Heart
    • 3. フー・アー・ザ・ブレイン・ポリス?/Who Are The Brain Police?
    • 4. ゴー・クライ・オン・サムバディ・エルスズ・ショウルダー/Go Cry On Somebody Else's Shoulder
    • 5. マザリー・ラヴ/Motherly Love
    • 6. ハウ・クッド・アイ・ビー・サッチ・ア・フール/How Could I Be Such A Fool
    • ■Side B
    • 1. ウーウィー・ズーウィー/Wowie Zowie
    • 2. ユー・ディドゥント・トライ・トゥー・コール・ミー/You Didn't Try To Call Me
    • 3. エニイ・ウェイ・ザ・ウィンド・ブロウズ/Any Way The Wind Blows
    • 4. アイム・ノット・サティスファイド/I'm Not Satisfied
    • 5. ユー・アー・プロバブリィ・ワンダリング・ホワイ・アイム・ヒア/You're Probably Wondering Why I'm Here
    • ■Side C
    • 1. トラブル・エヴリィ・デイ/Trouble Every Day
    • 2. ヘルプ、アイム・ア・ロック/Help, I'm A Rock (Suite In Three Movements)
    • ・1st Movement: /Okay To Tap Dance
    • ・2nd Movement: /In Memoriam, Edgar Varese'
    • 3.イット・キャント・ハプン・ヒア/It Can't Happen Here 
    • ■Side D
    • 1. ザ・リターン・オブ・ザ・サン・オブ・モンスター・マグネット/The Return Of The Son Of Monster Magnet (Unfinished Ballet In Two Tableaus)
    • ・I. チャイルド・キラーの儀式のダンス/Ritual Dance Of The Child Killers
    • ・II. ニューリウス・プレテーイ(商品価値皆無)/Nullis Pretii (No Commercial Potential)
TEXT:河崎直人 『Freak Out!』(’66)/The Mothers of Invention

OKMusic編集部

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