関西フィルハーモニー管弦楽団の定期
演奏会、4カ月ぶりに開催へ

新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の発令により活動自粛の波を受け、人が集っての作品作りに制限のかかるエンターテインメント業界。
クラシック音楽の世界でもご多分に漏れず、リモートによるアンサンブル演奏が話題となっているが、ホールに鳴り響く迫力のオーケストラサウンドが恋しく感じていたまさに今、大阪のオーケストラで演奏会を再開する動きが出て来たのだ。
関西フィルハーモニー管弦楽団と日本センチュリー交響楽団は、6月の楽団主催公演を本拠地のザ・シンフォニーホールで行うと発表した。大阪フィルも、フェスティバルホールで行う6月の定期演奏会は開催する方向で現在調整中。大阪交響楽団は7月の定期演奏会から開催予定だそうだ。
関西フィルは先日、練習場にオーケストラのメンバーが集まり、ソーシャルディスタンスを意識した楽器配置などを検証する目的で、リハーサルが行われた。
これだけの間隔を空けて配置すると、弦楽器は6型がいっぱい。 写真提供:関西フィル
上記の写真のとおり、奏者は出来る限りの間隔を空けて練習場に座っている。その光景は見慣れたそれとはずいぶん違い、違和感さえ感じるのだが、これが演奏するために求められる条件なら仕方がない。メンバーはいつもと違う位置関係に戸惑いながらも、どうするとアンサンブルをしやすくなるか、立ったり座ったりしながら、最良の音を模索していた。
結果、6月の定期演奏会は弦楽器6型で行う事に。曲目も予定されていたブラームスの「ハイドンの主題による変奏曲」と交響曲第2番を、モーツァルトの交響曲第29番とシューベルトの交響曲第5番に変更して行うこととなった。関西フィル本来の音の響きを再現する事は難しいものの、ナマの音楽の素晴らしさは十分に感じて頂けると判断し、開催を決定した。
また、出演者・スタッフの体調チェックは万全を期し、奏者は可能な限り本番でもマスクを着用。管楽器を吹く際に生じるの唾(水分)は、使い捨ての給水の良い紙等で処理。その上で、空気清浄・除菌機の導入にてホール内の換気の強化の徹底を図るそうだ。
演奏会の開催を決断した関西フィルハーモニー管弦楽団・楽団長の手塚裕之に聞いた。
楽団創立50周年記者発表会の光景。一番右が楽団長の手塚裕之。 写真提供:関西フィル

ーー 思ったより早いタイミングでの演奏会の再開ですね。
緊急事態宣言が解除された事を受け、大阪府のホール収容ガイドラインを守りながら、演奏会の開催が出来ないものか、ザ・シンフォニーホール側とも話し合いを重ね今回の決定に至りました。3月から40本を超える演奏会がキャンセルとなりました。その間、オーケストラのメンバーは完全にステイホーム。先日、久し振りに集まった際には、積もるハナシもあったと思いますが、短時間で楽器の配置やアンサンブルの取り方などを確認して、慌ただしく解散しました。でも皆とても嬉しそうでしたね。やはり、皆で集まって音楽作りが出来てこそのオーケストラですからね。
ーー それにしても動きが早かったですね。管楽器の飛沫の問題などもそうですが、楽器同士の適正間隔に付いて、はっきりと基準が打ち出されたのですか。
ヨーロッパの方で発表されているレポートなども参考にしています。今回は、必要以上に大事を取って進めようと思っています。実例報告が増え、研究結果などが上がってくると、そこまでしなくてもという事になるかもしれませんが、やはり最初は世間の注目も浴びると思うので、しっかり対応していこうと思っています。
ーー 収容人数や客席の作り方などは、ホール側からの要請があるのでしょうか。
はい、ザ・シンフォニーホール側から座る位置などの要請がありました。1704席のうち809席を使用してもいいという事になっていますが、今回の演奏会では700席ほどに絞っています。チケットは既に前売販売を終了しており、当日券も販売予定はありません。いつもなら1席でも販売したいところですが(笑)、今回ばかりは少ないなら少ない方がいいという事ですね。 
ーー 弦楽器6型で曲目も変更しての開催。指揮者の鈴木優人さんはどう仰っていますか。
全ての事情をご理解いただいております。モーツァルトの交響曲第29番とシューベルトの交響曲第5番への変更は、こちらからのリクエストですが、二つ返事でOKが返って来ました。この情勢下での演奏ですので、マエストロの思いも相当なモノ。良い演奏会になると思います。
6月定期演奏会を指揮するのは、2年連続定期演奏会に登場する鈴木優人 (c)Team Miura

ーー ここまで40公演以上がキャンセルという事ですが、経営的にも相当なダメージだと思います。聞くところによると、楽団に対する寄付が思いの外あったらしいですね。
はい、こんなに関西フィルは皆様に愛されていたのかと、思いを新たにしました。実は今年、楽団創立50周年の記念の年だったのですが、踏んだり蹴ったりのスタートで、泣くに泣けない思いだったのですが、皆様の温かさに触れ、これから頑張っていこうと気持ちを切り替える事が出来ました。これはしっかりと私達の演奏でお返しするしかありません。どうぞ皆様、遅ればせながら始まりました関西フィル50周年の活動にご注目ください!
ーー ありがとうございます。関西フィルの益々のご活躍を祈っております。
見慣れた終演後のオーケストラ立礼スタイル。この光景が見られるのはもう少し先になりそうだ。 (c)s.yamamoto
最後に今回の演奏会開催に際し、入場上の注意点が発表されているので、ご覧頂こう。1日も早く演奏する側も聴く側も、音楽の事だけを考えてコンサートに臨める日々が来ることを願ってやまない。
【新型コロナウイルス感染拡大に際し、お客様へのご案内】
・ソーシャルディスタンスを確保できる席配置にするため、同一席種内でお手持ちの指定席券とは異なる席への移動をお願いする事となります。ご協力のほどよろしくお願いします。
・入場時に体温チェックをお願いします。37.5度以上の方は入場をご遠慮願います。
・開演前、休憩時間の際は、極力会話を避けるよう協力をアナウンスします。
・プログラムの手渡しはせず、会場内に置いている冊子を各自お持ち頂きます。
・チケットはご自身で切り離し、所定のボックスに入れて頂きます。
・スタッフは全員マスクを着用します。お客様は、入り口で手消毒の上、マスクの着用をお願いします。未着用の方のご入場はお断りします。お客様用のマスクのご用意はございません。
・飲食物の販売は休止し、クロークやプレイガイド(キオスク)は閉鎖致します。
・「ブラボー!」等の掛け声は禁止し、楽章間の咳払いも、極力控えて頂きますようお願い申し上げます。
チケットを持ちの皆さま、会場でお会いしましょう! 写真提供:関西フィル
取材・文=磯島浩彰

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