LiSA「紅蓮華」 リリースから1年を越
えてなお続く快進撃の要因とは

2019年4月22日に配信リリースされたLiSAの「紅蓮華」がヒットを続けている。主なトピックは以下の通り。
・ストリーミングでの再生回数が1億を突破
・MVの再生回数が3700万を突破
・シングルCD出荷枚数+配信DL数で合算ミリオン(=100万)を達成
・配信DL数が75万を達成。2020年4月度、日本レコード協会有料音楽配信認定にて「トリプルプラチナ」を獲得

また、「紅蓮華」のみならず、LiSAというアーティスト自体がますます注目を集めている。
・「ADAMAS」(2018年リリース/TVアニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション』OPテーマ)が日本レコード協会有料音楽配信認定で「ダブルプラチナ」(=50万DL)を獲得
・LiSAオフィシャルYouTubeチャンネルの登録者数が100万人に到達

上記トピックの詳細に関しては、こちらのニュース記事をご参照いただきたい。(https://spice.eplus.jp/articles/269616
「紅蓮華」は、アニメ『鬼滅の刃』のOPテーマだ。アニメは2019年9月に最終回を迎え、テレビでの放送は終了したが、NetflixやHuluをはじめとした定額制動画配信サービスでは引き続き配信がされているし、Abema TVでは今年に入ってから何度か全話を一挙放送している。YouTubeでは『週刊少年ジャンプ』のキャンペーンの一環として、第1話が期間限定で無料公開された(現在は終了)。
アニメ『鬼滅の刃』では、原作漫画における第53話までのエピソードしか描かれていないため、物語の続きが気になる人はアニメを全話観たあとに漫画に移行すると考えられる。また漫画は、コミックスの最新刊(第20巻)が今年5月13日に発売され、5月18日発売の『週刊少年ジャンプ』24号で最終話を迎えている。2019年、『鬼滅の刃』は社会現象と呼ばれるほどの盛り上がりを見せたが、話題は絶えず、盛り上がりが落ち着く気配はない。そんななか、昨今の巣ごもり生活を機に『鬼滅の刃』に触れる人がこのタイミングで増えたことが、「紅蓮華」ロングヒットの主な要因だろう。
「紅蓮華」は多くの著名人にカバーされ、そのたびに話題に上がっている。例えば、岡野昭仁ポルノグラフィティ)はYouTubeで、X JAPANのToshIは『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)でカバー動画をそれぞれ歌唱した。また、SNSを検索すると、一般ユーザーによるカバー動画も多数ヒットする。つまり、「紅蓮華」に対するニーズは「聴きたい」だけでなく「唄いたい」にまで及んでいる。冒頭で示したとおり、「紅蓮華」はストリーミングで聴かれているだけでなく、配信DL数においても非常に高い数値を出している。曲をDLする層には「すぐに曲を再生できるようにしておきたい」「繰り返し聴きたい」という潜在的な欲求があると考えられるが、そのなかには「歌の練習をするため」という人もいるのかもしれない。
「紅蓮華」のボーカルは、一言で言うとアクロバティックだ。運動量が多く、スピード感も求められる。
まず、メロディの音域がかなり広い。最低音はAメロに登場するmid1E(<走馬灯に酔う>の3つ目の「う」etc.)、最高音はサビに登場するhiG(<紅蓮の華よ>の「な」)で、その範囲は2オクターブを超える。また、アニメではオンエアされていなかった2番に入ると、1番にはなかったメロディが登場するなどそれまでと異なる展開が待ち受けている。これはLiSAの楽曲ではよく見られる手法で、リスナーの予想を裏切ることにより、“飽き”を回避する効果がある。そんなメロディを、LiSAはあらゆるテクニックを使いながら唄い上げている。例えば、Bメロの伸ばしの音は、いずれも一音下から入り、音程をずり上げている。同じ音程の音でも、地声を張り上げるようにしている箇所とファルセットで息を抜いている箇所があり、両方を器用にスイッチさせている。<運命を照らして>の「う」のように、ドスを利かせるような唄い方をさりげなくしている箇所もある。
また、(広瀬香美が指摘しているように)歌詞において「k」や「t」といった発音時のアタックが強くなる子音を多めに使用することで、スピード感を増強。さらに、静と動の対比をはっきりと打ち出したバンドサウンドにより、シンプルなコード進行をドラマティックに聴かせることに成功。こうして、メロディ・ボーカル・歌詞・アレンジが掛け合わせることによって、バトル漫画さながらのスリル溢れる楽曲――「唄えるようになったらきっとカッコいい」というイメージを掻き立てるような楽曲が完成した。因みに「紅蓮華」は、作詞をLiSA、作曲を草野華余子、編曲を江口 亮が手掛けている。草野と江口は、これまでにもLiSAの楽曲を多数手掛けているクリエイターであり、LiSAというアーティストの魅せ方をよく理解している人物だ。
さて、漫画が最終話を迎えたことにより、『鬼滅の刃』の勢いもいよいよ落ち着くのか? というとそうではなさそうで、今秋には映画『劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編』の公開が控えている。同作の主題歌は現時点では不明だが、鬼滅ブームも、「紅蓮華」ブームもまだまだ続いていく予感だ。

文=蜂須賀ちなみ

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