ポルノグラフィティ「アゲハ蝶」が20年近くも愛され続ける理由

ポルノグラフィティ「アゲハ蝶」が20年近くも愛され続ける理由

ポルノグラフィティ「アゲハ蝶」が2
0年近くも愛され続ける理由

詩的な世界に描かれる人生観
『アゲハ蝶』は、ポルノグラフィティの楽曲の中でも、特に詩的センスが輝く一曲です。
ラテン調のメロディーとノスタルジックな雰囲気。
アゲハ蝶のジャケットが印象的で、記憶に残っている人も多いかもしれません。
作詞はギタリストの新藤晴一。ポルノグラフィティの持つ、唯一無二の世界観を作り上げてきた人だといえます。
まずは、『アゲハ蝶』を象徴するサビの歌詞からみていきましょう。
アゲハ蝶 歌詞 「ポルノグラフィティ」
https://utaten.com/lyric/ja00009645
夏の夜、まるで誘いかけるかのようにヒラヒラと姿を見せるアゲハ蝶は、聴き手を曲の世界へと誘います。
「夏の夜の真ん中 月の下」という表現がクセ者で、聴く人の耳に残る、引っかかりのある言い方を選んでいる点が見事。
「夏の夜の真ん中」というのは、アゲハ蝶が飛んでいる位置を示しているのか、それとも主人公「僕」の心の真ん中に、強烈に焼きついた何かを示しているのでしょうか?
歌い出しの短い歌詞だけで、夜空を舞う美しいアゲハ蝶の姿が、鮮やかに浮かんできます。
「旅人」が意味するものは?
アゲハ蝶 歌詞 「ポルノグラフィティ」
https://utaten.com/lyric/ja00009645
『アゲハ蝶』には旅人が登場します。
「僕」の問いかけに対して「終わりなどはないさ終わらせることはできるけど」という答えが秀逸です。
ゴールがなく、終わらせようと思えばいつでも終えられるもの。それはまさに人生ではないでしょうか?
誰もが歩んでいく「人生」というものへの一つの答えを提示したような歌詞が印象的です。
アゲハ蝶 歌詞 「ポルノグラフィティ」
https://utaten.com/lyric/ja00009645
見送ったはずの旅人が、実は自分自身であったことに気づくということは、人生、誰もが道なき道を歩む旅人である、ということでしょうか。
旅人を「お気をつけて」と見送ったつもりで、自分自身も旅人であることに、その時は気づけないものです。
さまようことを他人事だと思っていたら、自分自身もそうだった・・・そのことに気づく頃には、もう遅いのかもしれません。
詩人=恋に翻弄される自分自身
旅人=自分であると気づいた「僕」は、一体何のためにさまよっているのでしょうか?
その答えが、2番の歌詞に色濃く描かれています。
アゲハ蝶 歌詞 「ポルノグラフィティ」
https://utaten.com/lyric/ja00009645
ここで歌われる「詩人」とは「僕」のことでしょう。
吐き出した言葉の中に込めた思いは、本人しか知り得ません。
“それでも、ただあなただけに届いてくれたら・・・”
切なる思いを募らせる相手はきっと、人知れず思いを寄せる大切な女性です。

アゲハ蝶 歌詞 「ポルノグラフィティ」
https://utaten.com/lyric/ja00009645
実らぬ恋を戯曲にたとえるところも、晴一のセンスの素晴らしさが光ります。
あまりにも残酷な戯曲だと思える程に、胸の内に秘めた思いは届くことなく、悲しい一人舞台を繰り広げるばかり。
脚本家がいるなら文句の一つも言えるでしょうが、これは戯曲ではありません。現実の恋です。
恨む相手を探しても見つからない虚しさが、「僕」の胸を締め付けるのでしょう。
アゲハ蝶 歌詞 「ポルノグラフィティ」
https://utaten.com/lyric/ja00009645
“思いが届かないのならばせめて、大切な人を守りたい。そのためなら命さえ惜しくない”
どこまでも純粋な思いが、聴く人の心に刺さります。
“もしも身体が朽ちてしまっても、そこに残った思いの欠片を、愛しい人が受け止めてくれたら・・・
あなたを愛する男がいたということを知ってくれたら・・・”
恋を叶えることよりも、相手の幸せをひたむきに願う。まさに、究極の愛ではないでしょうか?
アゲハ蝶が導き出す恋の行方は?
アゲハ蝶 歌詞 「ポルノグラフィティ」
https://utaten.com/lyric/ja00009645
初めは、出会えただけで幸せだった恋が、「愛されたい」と願ってしまったことで、世界が一変します。
愛されるという見返りを求めてしまったばかりに、「僕」は果てしない悲しみの底へと突き落とされるのです。
アゲハ蝶 歌詞 「ポルノグラフィティ」
https://utaten.com/lyric/ja00009645
「荒野に咲いたアゲハ蝶」「近づくことはできないオアシス」という歌詞から、彼女が高嶺の花であり、絶対に手に入らない存在であることが分かります。
だからこそ愛していけなかった、ましてや、愛されたいなどと願ってはいけなかったのです。
「荒野」「揺らぐ景色」「オアシス」というワードから、「僕」が置かれた状況はまさに砂漠なのでしょう。
視界も揺らぐ砂漠で、オアシスで命の水を口にすることもできず、力尽きてしまうのです。
それでもせめて、最期の瞬間には大切な人に側にいてほしいと、願ってやみません。
「僕の肩で羽を休めておくれ」という歌詞に、最後の望みが込められているようで、切なさがこみ上げます。
長きにわたり愛される秘訣
『アゲハ蝶』に登場するアゲハ蝶は、日本でよくみかける種類ではありません。
黄色、黒、青と、歌詞に登場する羽の色を持つアゲハ蝶は、セラムタイマイという外国の蝶だといわれていますよ。
「喜びとしてのイエロー」「憂いを帯びたブルー」「世の果てに似ている漆黒の羽」という歌詞の通り恋をした時の高揚感、叶わぬ恋だと知った時の絶望、それでも死の間際まで愛を求め続ける姿を、見事にアゲハ蝶の羽で表現しているのです。
世の果てにも似た漆黒の羽を持つアゲハ蝶が、誘いかけるかのように舞う夏の夜。何とも美しく、妖艶で、不穏な始まり方ですね。
決して愛してはならない人を愛してしまったばかりに、永遠に報われない恋をさまよい続ける男の憐れさを、ラテン調のメロディーと美しい歌詞で、一篇の詩のように描き出した新藤晴一。
さらに、歌詞の世界に魂を吹き込み、一度聴いたら忘れられない強烈な印象を与える岡野昭仁のボーカル。
『アゲハ蝶』が、発売から20年近く経った今もなお愛され続けるのには、こうした理由があるのでしょう。
今こそ、ポルノグラフィティの名曲中の名曲を、改めて聴き直してみてはいかがでしょうか?

TEXT 岡野ケイ

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