Editor's Talk Session

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【Editor's Talk Session】
今月のテーマ:
ライヴハウス支援に立ち上がった
Dとlynch.に訊く

日々変わる状況に
適応していかないといけない

千々和
話が戻るかもしれないけど、思ってることがあって…数年前ってCDに数千円使うのも、ライヴのチケットに1万円近く払うのも抵抗がなったんですけど、サブスクが出てきた時、月額千円以下でものすごい数のアーティストの曲が聴けるし、今まで買ってきたCDの曲も聴けるようになって便利だと思った反面、すごく怖いと感じたんです。もうほぼ無料じゃないですか。実際、サブスクを使うようになってから買ったCDの枚数も減ってしまったし。今って自粛要請の中でアーティストが無料でライヴ配信したり、ライヴ映像を公開したりしていて…もちろん有料でやってる人たちもいるし、新規のファンを取り込むプロモーションにもなるとも思うんですけど、今までちゃんとお金を払っていたファンにとっては、無料というのは疑問に思うんです。音楽の価値が一気に下がってしまったというか。
ASAGI
めっちゃ分かりますよ、その気持ち。でも、僕的にはアーティストマターで無料で公開することに関しては反対派じゃなくて。今ってメジャーとインディーズの差ってほぼなくなってますけど、昔で言う“メジャーのメリット”っていうのはブランディング以外には、圧倒的な無料公開の力だと思うんですね。タイアップによって無料で聴いてもらって、テレビ番組に出て歌ったり、ラジオでかけてもらうことで無料で聴いてもらって、そこで知ってファンになってくれた人の購入につなげていくっていう。そういう意味では今も同じというか、無料公開することで、その先にいる未来のコアファンを獲得していかないといけない。だから、僕らも結構YouTubeでも無料公開してるんですね。ただ、僕らは今回の応援プロジェクトとしてもサブスクを使ってますけど、ちゃんとCDも発売してるんですよ。これからのCDはコレクターズアイテムになっていくだろうから、歌詞、アートワークも含めて価値のある作品を提示しないといけないと考えてるんですね。僕らの立場からは言いずらいんですけど(笑)、アーティストを支えるという意味では、グッズとして持っておきたいものということでCDを買っていただいて、サブスクで持久的に聴いてもらうというのがアーティスト側の理想なのではないでしょうか。実際に作品価値を高めた豪華仕様…それこそ受注生産の単価の高いCDでも、その価値のあるものであればちゃんと納得して買ってくれているファンはいますし、並行して手に取りやすい価格のCDも出しつつ、配信もするというスタイルで今後もやっていくつもりです。やっぱり、欲しい、実際に手に取りたいという人がいる限り、なるべくCDというものはなくしたくないんですよ。ストリーミングよりも音がいいしね。
葉月
おっしゃる通り! CDを提供する立場としては、ASAGIさんとまったく同じ考えですね。CDを出す際には、いつも初回盤…豪華盤と通常盤を出してるんですけど、ほとんどのファンが豪華盤を買ってくれるんですよ。
ASAGI
やっぱりそうだよね!
葉月
ですよね。やっぱり豪華盤って写真集やBlu-ray付きになるから価格的にも高くなるんですよ。まさにコレクターズアイテムで。コアファンが納得するアイテムとして出すっていうか。そこに対する戸惑いもないです。“CDが売れなくなっちゃったからどうしよう”っていうのも思わないし。まぁ、CDが売れてた時代に自分たちのCDが売れてた経験もないし(笑)。
ASAGI
それは俺も一緒だ(笑)。
烏丸
おふたりのお話を聞いて、“ミュージシャンが元気で良かった”と思いました(笑)。
千々和
それ、私も思いました!(笑) 状況を悲観していないというか、その中で前に進もうとしていて。
ASAGI
ありがとうございます。せっかくこの時期にお声かけいただいたので、少しでもこの音楽シーンを生き抜くための前向きなお話ができればと思っていました。日々変わる状況の中、音楽を続けるためには時代に適応していかないといけないと思ってて。それをファンの子たちも懐を深く理解してほしいというのはありますね。変わってほしくないっていう想いも分かるんですよ。でも、僕の場合は本質的な“らしさ”というものは絶対に変わらない。材料は変わらず、料理のレパートリーが増えて、提供方法が変わるだけなんですよね。明日はどうなっているか分からないっていう状況の中、生きていくためにそれらを変えないほうが難しい…というか、先を見据えていかないと僕らのようなバンドはもう生き続けられないでしょうね。ただひとつ言っておきたいのは、僕は活動の方法や仕組みが変わっても、音楽を生み出すための核となる“自分らしさ”や“ポリシー”や“世界観”は絶対に揺るがないということ。これを信じてついてきてほしいですね。
烏丸
元来、音楽家の収益はパフォーマンスに対する投げ銭が基本にあるのでしょうから、オンライン上で魅力的なことをやっていければいいですよね。
ASAGI
そうですよね。投げ銭以外では、自分たちに適したやり方でWEBチケットを一律の金額で販売してやればいいわけだし。アーティストのスタンスによって違うだろうから、いろいろ模索していけばいい。僕は自分の心に嘘をつかず、価格以上のものを提供していきたいと思ってて。だから、おそらくアーティスト各自の正義を貫いた上で、ファンの子も楽しめれば、それが正解。逆に、事情をよく知らない外からの見解では、必ずしもそれが不正解であるかどうかの判断はできない。今、この非常に苦しい音楽シーンでは普段はライバルだとしても有益な情報は共有し、音楽の未来のために支え合うべきなのかなって思います。だから、何度も言いますけど、lynch.が同時期に動いてくれていたのが心強かったんですよ。
葉月
ありがとうございます(笑)。

OKMusic編集部

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