堀込泰行

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【堀込泰行 インタビュー】
またいろんな人とコラボして
刺激を受けたかった

D.A.N.、WONK、tofubeatsらとコラボレーションしたことで彼らのファンにも訴求した2017年リリースの『GOOD VIBRATIONS』。その第二弾にはSTUTS、TENDRE、SKIRTといった、またしても化学反応が楽しみな共演者が並ぶ。前回以上に密なコミュニケーションをとった上で、新たな扉を開いた印象のある『GOOD VIBRATIONS 2』についてじっくり語ってもらった。

前回よりも密な
コミュニケーションをとった上で作れた

前回の『GOOD VIBRATIONS』はもっといろんな人にご自分の音楽を聴いてもらいたいという動機があったと思うんですが、今回は新しいモチベーションはありましたか?

オリジナルアルバムを出したいとは思ってるんですが、その前にもう一回フットワークを軽くいろんな人とコラボして、また刺激を受けたいっていう気持ちがあって。あとは、やっぱり前回と同じように、もっと自分の音楽をいろんな人に聴いてもらいたい…そういった動機ですね。

いろんな音楽をチェックしていました?

気になったものはチェックしてるんですけど、世の中のサウンドが今の音にみんな寄ってる感じがするので、漠然と“みんな似たようなことをやってるなぁ”っていう印象があって。結果的にそういう中で引っかかってくるのは、わりとオーソドックスなことに戻ってやってる人っていうか。何年か前までは今っぽいことをやってたんだけど、セルフプロデュースで自分たちのバンドのサウンドをそのまま録ろうぜ!みたいなことをやってる人を聴いたりしてますね、1リスナーとしては。

今回は前回以上に振り幅が広い気がしました。

そうですね。いろいろ面白かったです。前回はシンプルなデモを渡して、そこからはお任せで“アレンジをしてください”っていう感じだったんですけど、今回はコラボした方々が忙しい時期にお願いしちゃったんで、僕のほうで第一弾のシンプルなデモを渡してから、ちょっと時間があったんですよ。僕は待機しつつ、その間に曲も発展させて、ある程度曲の進行や尺とかを作った状態で…とはいえ、関わってくれるアーティストのサウンドとか個性が入り込む余地がある状態のデモを渡していたので、人によっては自宅とその人の自宅スタジオに何回か行って繰り返しコミュニケーションをとったり、人によってはメールが主だったりっていう感じで、コラボってことに関しては前回よりも密なコミュニケーションをとった上で作れた実感はありますね。

それぞれの音楽性が違うので、どんなプロセスを踏まれたのか興味深いのですが、「Sunday in the park + STUTS」のSTUTSさんは何がきっかけだったんですか?

スタッフとミーティングをしてアーティストを挙げていった中で、STUTSくんという人がいることを知って。サンプラーの手打ちですごく面白いことをやってるって聞いて、まずYouTubeを観たんですよ。アメリカにひとりで行って、路上の…ほんとハーレムみたいなところでビートを刻んでて、だんだんと黒人たちが集まってきて、ビートに合わせてラップをやり出したり、踊り出したりっていう。そういうのを観てすごい面白いと思って、ぜひ一緒にやってみたいと。ヒップホップ周りの人と多くやってますけど、彼のキャラクターはそんなにヒップホップ的な人ではなく、しなやかでやわらかくて。そこのギャップも面白いと思ったし、ヒップホップを軸としながらもいろんなタイプの音楽ができるんじゃないかなって予感がしました。作ってるトラックを聴くと、結構トロピカルだし、エキゾチックな要素も含んでたので、一緒にポップスを作っても面白いことになると思いましたね。

この曲、トラックが違えばオーソドックスなポップスになりそうですね。

そうですね。ソウルクラシックスというか、マービン・ゲイみたいな曲に結果的になったんですけど、STUTSくんの場合は他のアーティストの人と違って、まず最初に彼のほうが僕をイメージしてトラックを作りたいっていう話になり、それで作ってきてくれたのが最初の4つのコードの繰り返しだったんですね。それにサビっぽい進行がついてたんですけど、まずは4つのコードを基準に僕がフェイクっぽいメロディーを乗っけていって。ただ、僕の場合、途中でラップをやるわけではないので、グッと歌心のあるところに行きたいという気持ちがあったから、サビの展開は僕のほうでコードとかをつけてみて、STUTSくんがそれを受けて、そこにまた新たにドラムのビートを加えたり、いろんな音を積み重ねたりして曲が出来上がっていきましたね。

“日曜日の午後、何もしない”みたいな歌詞ですけど、これはトラックができてからのイメージですか?

STUTSくんが送ってくれたトラックの仮タイトルが“GARDEN”だったんで、そこからなんとなく人が集まってガヤガヤしてるところをイメージしました。仮タイトルとリラックスしたあのサウンドから、公園に行って彼女と何気なく過ごしてるんだけど、ふとした瞬間に彼女がいつもよりすごくきれいに見えるというか、改めて魅力に気づくとか、だらだら過ごしているんだけど、ふとした瞬間に風が吹いてハッとするとか。“この時間は貴重だぞ”とか“この瞬間を忘れないでいよう”というような想い、そういう日常の中に突然飛び込んでくる貴重な瞬間みたいなものを書けたらいいなって、段々と歌詞のアイデアがシフトしていき、ああいうかたちになりましたね。

続く「強く優しく+ TENDRE」ですが、完全に河原太朗さんにオケを振った感じですか?

サウンドに関してはそうですね。曲の展開自体は僕のほうでアイデアを出してたんですけど、河原くんも忙しい人だったので“なかなか返ってこないなぁ”と思っていたら、ある日デモが返ってきて。そしたら、僕が考えてるTENDREとはまた違うサウンドだったんですよね。僕のTENDREに対するイメージはAORとかシティポップを今のサウンドでやっている感じだったんですけど、返ってきたものはすごくミニマルなアレンジで。シンセがいっぱい鳴ってるとかじゃなくて、たぶんギターが3つとか4つとか入ってると思うんですけど、それ自体がまず斬新だと思ったんですよ。それプラス、シンセとパーカッションの音だけで成り立ってるんですけど、すごく物語の起承転結が感じられるアレンジになっていて、さすがだなぁって。ギター中心のアレンジで返ってきたことも意外だったし、僕もギターの人間なので親近感があるアレンジでもあるし、でも自分には作れない新鮮味も兼ねている。そういう意味で“あぁ、いいものにしてくれたなぁ”という感謝はすごくありますね。

情景描写は少ない言葉で、でも気持ちがウワッと動く表現なのですごくしっくり来ました。

良かったです。河原くんが僕のデモを聴いて、“教会っぽいイメージを浮かべました”みたいなメールが来たんです。なんとなく僕も教会のオルガンとかが後ろで鳴っててもおかしくないような曲だと思っていたので、シンプルなカップルのストーリーというか、今と過去と未来が短い曲の中で揃っているというか、そんな物語を書きたい気持ちで歌詞は作りましたね。

主人公の気持ちが動いて行ったことがはっきり分かるというか。

物語を書きたいってなった時に…例えば出会いのきっかけが狭いクラブで、楽しめないで端っこにいて、なんとなく退屈だから話しかけたらわりと気が合ったというか。でも、そんなに興味はなかったんだけど、みたいな。単純なラブソングというよりは、そういうことも書いて、歌の中の主人公たちにリアリティーを持たせたかったんですね。
堀込泰行
EP『GOOD VIBRATIONS 2』【CD】
EP『GOOD VIBRATIONS 2』【LP】

OKMusic編集部

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