TOKIO×椎名林檎が生み出した「雨傘」の鮮烈な世界観

TOKIO×椎名林檎が生み出した「雨傘」の鮮烈な世界観

TOKIO×椎名林檎が生み出した「雨傘
」の鮮烈な世界観

TOKIOの新たな挑戦
TOKIOの『雨傘』は2008年9月3日に39枚目のシングルとして発売され、同グループでドラムを務める松岡昌弘の主演ドラマ「ヤスコとケンジ」の主題歌として起用されました。
作詞・作曲を椎名林檎が手掛け、アレンジを自身のバンドである東京事変が担当しました。
この曲の中で見られる椎名のこだわりの1つは、歌詞に込められたメッセージを最も効果的に引き出せるキーの高さでした。
レコーディングにも立ち会った椎名は、ヴォーカルの長瀬智也と試行錯誤を繰り返し、最終的に彼がギリギリ出せる最高音に合わせたキーを原調に設定しました。
ハイトーンボイスに定評のある長瀬も、この楽曲の難易度の高さには苦労したようで、嬉々としてキーを上げていく椎名に対し「すごいSだな、この人」と感じたことを音楽番組で明かしていました。
裏を返せば、椎名が彼の歌唱力に絶大な信頼を寄せていたからこそ、高い要求を貫き通したのだと思います。
キーボードを担う国分太一は、デモテープを受け取った際に自分達でこの楽曲を再現できるのかと心配になったそうです。
しかし、TOKIOの確かな演奏技術と長年にわたり培われたプロ意識で見事にその高いハードルを乗り越え、グループの新たな魅力を引き出すことに成功しました。
本能を刺激するような強烈な歌詞
雨傘 歌詞 「TOKIO」
https://utaten.com/lyric/jb10809001
「待って」というシンプルかつ斬新な投げかけから始まります。この一言だけで「どこかへ向かおうとしている自分」を「引き留める誰か」という構図が立体的に浮かび上がるのではないでしょうか。
つづく「鼻を利かせなよ」というフレーズは、雨が降る時の独特の匂いを思い起こさせると同時に、忘れかけていた野生本能を刺激するような力強さを放っています。
ここで言う「雨」とは避けたくなるような試練や逆境でしょうか。
これから向かう先で困難が待ち構えていることを示唆しているかのようです。
「携える」には「持つ、身につける」といった意味があります。
単純に考えれば「傘を持って行け」という意味でしょうが、あえて「携えて行け」という言い回しにすることによって「傘」がただの道具ではなく、相棒のように傍に据えておける道具のようにも感じられます。その反面「傘くらい」という軽々しい表現もしている点から、自分の力を以てして初めて有効活用できる物なのだから、あくまで道具に頼りすぎるなというふうにも受け取れます。

雨傘 歌詞 「TOKIO」
https://utaten.com/lyric/jb10809001
全体を通して強気な姿勢がとても印象的なこの曲ですが、唯一「流されること」を恐いと表現しています。
では、ここで登場する「流されること」とはいったい何なのか。それは「周りの人やその場の雰囲気に流されること」を指すのではないでしょうか。
また、1人が大勢に流される様は、傘に落ちた1粒の雫が後から降り続く雨によって流されていくイメージとリンクしているようにも感じます。
このフレーズでは、周りに同調し続けることに慣れてしまった人間が、自分で考えるのを止めてしまう事を危惧しているのだと思います。
「五官」とは人間の5つの感覚器官、つまり「目、耳、鼻、舌、皮膚」を指します。
他人に流される前に、まず自分が使えるものを大いに活用し、そこから感じ取った感覚を信じるべきという意味が込められているのではないでしょうか。
歌詞を通して見つめる自分の可能性
雨傘 歌詞 「TOKIO」
https://utaten.com/lyric/jb10809001
「瞳が暗く翳っている」という歌詞が指すのは、瞳が余計なフィルターに覆われてしまい、目の前にあるものがその通りに見えていないような状況でしょう。
このフィルターとは、例えば物事を判断する際に障害となるような偏見や先入観ではないでしょうか。
「気圧」は天候を左右する要素です。その日によってどう変化するか分からない、言わば運のようなものです。
「お前」の瞳がくすんで正常な判断が出来ない時は、そんなあいまいな事象のせいにして現実から目を背けているだけなんだ、という強いメッセージが込められているのかもしれません。

雨傘 歌詞 「TOKIO」
https://utaten.com/lyric/jb10809001
言葉1つ1つが今にも自我をもって飛び出していきそうなほど、エネルギーに満ち溢れたフレーズが並びます。
「自分の道具」とは困難という雨を凌ぐ為の「雨傘」を指すのでしょう。
この曲が意味する「雨傘」とは自分の身や、時には他人さえも守ることが出来る「術」や「強み」ではないでしょうか。
それぞれに異なる「強み」は、なかなか自分では気づくことが出来ないかもしれません。
だからこそ、その人だけが持てる独自の武器を生かせないのはもったいないと訴えているのではないでしょうか。
「持て余すくらいなら濡れて帰れよ」という歌詞は、一見突き放しているように感じるかもしれませんが、言い換えれば、それほど価値のあるものを1人1人が持っていることに気づかせたいのだと思います。
TOKIOといえば「まっすぐで男らしい」というイメージを持っている方も多いと思います。
今回ご紹介した『雨傘』では、椎名林檎×TOKIOという異色のコラボによって、斬新な世界観と大人の色気の際立つ作品が生み出されました。
これまでとは違うTOKIOの新たな魅力を存分に味わえる1曲となったのではないでしょうか。

また、椎名林檎が歌う英語ver.の『雨傘』が、セルフカバー集『逆輸入~港湾局~』に収録されています。
気になる方はこちらもぜひチェックしてみてください。

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