サンボマスターの思いが
その音に溢れて出た傑作
『僕と君の全てを
ロックンロールと呼べ』
何かが飛び出しているリリック
その伝えたいことの中身は何であるかと言えば、M7「戦争と僕」のように、ずばり戦争をモチーフとしたと思しきものもあったりするし、決してそのテーマは一辺倒ではないが、そのほとんどは“僕”と“君”(あるいは“俺”や“あなた”)の物語に要約される。M1「二人ぼっちの世界」、M4「君の声は僕の恋僕の名は君の夜」、M12「二つの涙」、M13「離れない二人」、M17「僕と君の全ては新しき歌で唄え」など、タイトルにもそれが表れている。その根底にあるものは、“君”、あるいは“あなた”とつながりたいという気持ちの表れ、少なくともその気持ちが届いてほしいという希求であると言っていいと思う。
《心の声をつなぐのが これ程怖いモノだとは/僕等なぜか声を合わす/今までの過去なんてなかったかのように歌い出すんだぜ》(M3「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」)。
《僕等ただ東京のさびしい恥さらしさ/あなたの夜が知りたいの そんな奴よ/僕等ただ愛しさはそっと感じてたいの/夜霧にまみれて何か変なことしたい気分/僕等はきっとそいつを唄にする》(M10「ゲットバックサンボマスター」)。
《俺たちは新しき日本のソウルミュージックで/あなたとオレでさぁ涙を流してぇんだよ!!/あぁそれでも美しく汚い世界》《新しき日本語ソウルの道と光をアンタと歌いてぇんだよ》(M12「二つの涙」)。
《今が光でも明日が闇ならば 僕はどちらの日々も要らぬさ/それでもあなたがウソだと言うなら/君と僕の ずっと消えないモノ すぐに消えるモノ/光と影の歌を唄うのさ》(M15「全ての夜と全ての朝にタンバリンを鳴らすのだ」)。
《僕たちの朝は今までのことただ許せるまで祈るのさ/輝くものにただ明日のため 歌えよ/僕らの生きたその証に水色模様の愛を探そう/心を乗り越えよう》(M17「僕と君の全ては新しき歌で唄え」)。
《僕にとってこの世界は理由(わけ)もなく怖いモノなんだ/大切なはずの人にも裏切ってばかりきたんだ/走り去って消えたモノや 今になって気付いたモノが/僕のこと呼び止めて唄いだす》《そして僕達は決して恐がらずに/言葉と肌の色を越えてさぁ/唄おうぜ 唄おうぜ》(M18「何気なくて偉大な君」)。
小難しい説明は不要だろう。つながりたいという気持ちを歌、バンドサウンドで届けたい。サンボマスターとはそうしたバンドであることが歌詞からもよく分かる。その強い気持ち、強い思いが、サンボマスターの楽曲を構成するあらゆる要素を溢れて出させ、噴き出させ、飛び出させているのだ。
TEXT:帆苅智之