西川貴教「今この作品を、ほかの方に
やらせるわけにはいかないと思いまし
た」  ミュージカル『スクールオブ
ロック』インタビュー

ジャック・ブラック主演の大ヒットロック映画(2003年公開)を天才アンドリュー・ロイド=ウェバーが舞台化(2015年初演)したミュージカル、『スクールオブロック』がついに日本に上陸! ひょんなことから名門私立学校で教鞭をとることになってしまう破天荒なロック中年、主人公のデューイ役をWキャストで務める西川貴教をビジュアル撮影現場で直撃した。数あるオファーのなかから、西川がこの作品を選んだ決め手とは――?
ロイド=ウェバーのスコアと向き合って
ーー西川さんは3年前、ブロードウェイで作品をご覧になっているそうですね。
そうなんです。T.M.Revolutionの20周年を記念したベスト盤を作るためにニューヨークで作業していて、合間にツアーパンフレットの撮影とかもあったのでスケジュールはキチキチだったんですけど、ど~うしてもミュージカルを1本観たいと。観たことがない作品なら何でもいいという感じだったので、この作品になったのは本当に偶然です。その時はもうね、自分が出演することになるとは露知らず(笑)、普通に楽しんでいただけだったので、お話をいただいた時はびっくりしました。
西川貴教
ーー舞台の印象は?
もともと映画は観ていて好きだったんですが、80年代のアーティストの曲がたくさん使われていた映画とは全く違う、ロイド=ウェバーのスコアの豊かさにすごく惹かれました。それと、以前やらせていただいた『ザ・ミュージックマン』の現代版みたいな雰囲気だな、とも。あれも主人公が、自分は音楽の先生だと嘘をついて楽器のセールスをして、最後にはバレてしまうんだけど、音楽の力で町のみんなが救われるっていうお話だったんです。そう考えると、巡り合わせのようなものを感じますね。あとはとにかく、主役が忙しそうだなっていう(笑)。だからお話をいただいた時びっくりしたんですよ、「あれを僕がやるの?」って。ずっとテンション高いし、そこはちょっと、今でも心配してますね(笑)。
ーーその忙しそうな役を、引き受けられた決め手とは?
ロイド=ウェバーの楽曲です。自分のキャラクターや持っている武器を考えると、それを生かしながら彼のスコアと向き合えることって、今この機会を逃したらもうないだろうと思ったんです。舞台のお話はありがたいことに色々いただきますが、音楽活動があるのでどうしても時間が限られるなかで、「これだけはほかの方にやらせるわけにはいかない」と思う作品がある。この作品がそうだったので、一も二もなくお引き受けさせていただきました。
ーー西川さんのロイド=ウェバー観、ぜひお聞かせください。
歌い手の表現力が試される楽曲、という気がすごくします。彼のスコアや世界観とこちらが一つになった時に、初めて生きたものになるような……。魂とか思いを込めることができれば、セリフ以上のものをお客さんと共有できるけれども、段取りだけで歌ってしまうと何も表現できない気がするんですよ。デューイが忙しいのも、それだけの運動量と熱量が絶対に必要だ、ということなんだと思います。ロイド=ウェバー自身、あの年齢になってからこの作品に向き合ったことを考えると、すごい熱量だったと思いますから。
西川貴教
何かを始めるきっかけになる作品に!
ーーデューイは、どちらかと言えば冴えない中年です。オファーが来た時、そこに難しさは感じませんでしたか?
いや、そこは全然。役作りで太れって言われたらどうしようとは思いましたけど(笑)、太らなくていいということだったので。(Wキャストの)柿澤君はね、キラキラを抑えるのが大変かもしれないですけど、僕はふだん通りにやっていれば多分、冴えない男でいられると思います(笑)。不安があるとしたらそれよりも、初めてのWキャストっていう部分かな。自分がいない時間にもカンパニーが動いてるってどんな感覚なんだろう、いない間に起こった楽しい話をされたらどうしよう、とか思って(笑)。
ーー柿澤さんの役作りが気になる、とかではないのですね(笑)。
ああそれはもう全然、アプローチも違うだろうし、柿澤君のほうが圧倒的に舞台経験が多いので、勉強する気持ちでいます。柿澤君とは、まだ『サムシング・ロッテン!』を観に来てくれた時にちょっとご挨拶したくらいなので、ちゃんとお会いできるのが楽しみです。
西川貴教
ーー演出の鴻上尚史さんとも、今回が初顔合わせになります。
鴻上さんとも、『サムシング・ロッテン!』の楽屋でご挨拶させていただいたんですけど……。「初めて僕を観ていただく作品がこれかぁ……」という気持ちでいっぱいでした(笑)。福田(雄一)さんにやれって言われてやってるだけで、僕が自分からはしゃいでるわけじゃないんです! って言いたかったんですけど、その時は「次よろしくお願いします」くらいで。顔合わせの日は、まずは言い訳をさせていただくことから始めたいなと思います(笑)。
ーーそして今回は、オーディションで選ばれた生徒役の子どもたちとの共演も大きな見どころです。今日、一緒に撮影をしてみた感想は?
僕、数年前から「天才てれびくんYOU」っていう子ども番組の挿入歌を歌ってるんですよ、“マーヴェラス西川”として。ちょうど見てくれてる世代の子どもたちだから、撮影中も「マーヴェラスだ!」みたいなテンションでしたね(笑)。これから始まる稽古のなかで、デューイ先生と思ってもらえるようになったら嬉しいです。それにしてもみんな、うちの甥っ子や姪っ子と違って本当にしっかりしてるので、ちょっと末恐ろしいです。すぐ業界慣れして、「ええ、この時間なのにタク券ないの?マジで~?」みたいなことを言うようにならないといいんですけど(笑)。
ーーぜひそうならないよう“教育”してあげてください(笑)。では最後に、改めて意気込みをお願いします!
音楽をやっている人って、僕もそうですけど、自分の気持ちを素直に伝えるのが下手クソだから音楽で伝えてる、というところがあると思います。僕は音楽という手段を見つけたことで救われたから、今度は僕がこの作品を通して、観に来てくれた皆さんがそういう何かを見つけるきっかけを提供できたら。この作品では、子どもたちが僕と同じく音楽を見つけますけど、音楽じゃなくてもいいし、子どもだけに限った話でもないと思うんです。大人になると、何かを新たに始めることが少なくなってくるけれど、勇気さえあればいくつになってもどんなことでも始められる。そんなことを、幅広い年齢層の方に感じてもらえる作品になったらいいなと思っています。

西川貴教

取材・文=町田麻子 撮影=池上夢貢

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