根本 要(Vo&Gu)

根本 要(Vo&Gu)

【スターダスト☆レビュー
インタビュー】
根本 要が語る
“幸せなライヴバンド”の最新進化形

これは“ライヴバンド”という言葉を定義する、最も幸せなサンプルのひとつ。『スターダスト☆レビュー ライブツアー「還暦少年」』を収録したライヴDVD/Blu-rayとライヴCD。1981年のデビューから39年間、文字通り日本の津々浦々を訪れて音楽を届け、陽気なリズムで踊らせ、切ないバラードで泣かせ、当意即妙トークで笑わせ、いよいよ60代に突入したバンドの、これが最新進化形。14曲入りのライヴCDと、24曲たっぷり収録のライヴ映像に詰め込んだ想いを、いつものように軽やかに伸びやかに根本 要(Vo&Gu)が語ってくれる。

いつどこに行っても、
“また来る”ことを前提にしている

『還暦少年』ツアーは、およそ1年2カ月、81本。長いツアーでした。

もともとライヴが好きだというのもあるんですけどね。僕らが81年にデビューしたあと、世の中はバブルに向かって行って、いろんなミュージシャンのミリオン曲が連発するわけですけど、僕らはその枠にまったく入らず(笑)。CMソングとか、いろいろやらせてもらったおかげで、名前だけはなんとか世の中に出たかな?というぐらいで、代表曲もなかったんだけど、ライヴをやり続けたら、思いのほか人が集まってくれるようになりました。その結果、全国ツアーができるようになったことが一番大きかったですね。その頃から何となくテレビやメディアを利用するより、自分たちがその場所に行って演奏して、観たい人たちに観せることが“このバンドのやりたいことだ”ということが分かったんです。

ライヴが基準になったと。

そう。当時のスタッフの提案で“武道館やアリーナはステイタスとしてやっていきましょう”ということになったんだけど、正直、僕はあまり魅力を感じませんでした。もちろん大会場でソールドアウトしたら、それはそれで嬉しいけど、逆に言えば観られない人もいるということですからね。だから、当時は空席覚悟でアリーナツアーとアルバムツアーを同時にやっていたんです。実際、スタッフから“ここは厳しいです”と言われても、“赤字にならない限りなんとか行こうよ”と言ってました。80年代後半の…例えば青森とかはなかなかお客さんが入らなかったんですね。スタッフに“次回からできなくなるかもしれない”と言われて、それも仕方ないのかなと思ってステージに出て行ったら、やっぱりそういう場所のほうがアツいんですよ。

分かります。僕がお客さんなら燃えます。

半分しかいないんだけど、その人たちがすごく盛り上がってくれた。終わって、スタッフが“いいライヴでした”って言うから“そうだろ?”って。“こういうところに来なくなったら、俺たちのライヴは面白くなくなっちゃうよ”って。その時から僕は空席が怖くなくなったし、お客さんとよりコミュニケーションを取って、これをいつか思い出にできるようにしようと思った。僕はいつどこに行っても“また来る”ことを前提にライヴをしてるんですね。それは今日が良かったことよりも、次はもっといいライヴをこの街でやりたいと考えてやってるから。そうすると、自然にライヴ回数が増えていくんです。

その81本の全会場に、巨大な遊園地のセットを持って行ったという。

そうです。一番小さいところは僕の地元の埼玉県行田市で、会場のキャパが1,000人弱なんですね。それでもスタッフが頑張ってくれて、フルセットを組みました。現実的には僕らのツアー会場は1,000人弱から3,000人以上の会場まであるんだけど、お客さんにとってはどの街でも同じスタレビのライヴ。どの会場でも同じように観せたいですからね。そこはスタッフの頑張りでしかない。だから、僕はライヴの最後にいつもスタッフを紹介して、拍手をもらうようにしてます。

そして今回、映像になっている中野サンプラザ公演は、大変なハプニングがあったという。まさか収録の日にそんなことが。

ほんとですよ! 中野サンプラザはツアーの中で4日間やったけど、まさかその最後の日に限って(笑)。リハーサルまではいつも通りだったのに、開演5分前にステージ袖に集まったら、スタッフがみんながあたふたしてる。“照明がトラブって15分くらいかかりそうです”と。うちのライヴは余程の事情がない限り、多少遅れてくる人を考慮して5分押しで始まるんですけど、それ以上に遅れる時は、必ず自分でアナウンスを入れるようにしてるんですね。そのほうが聞いてくれるから。だから、“15分押しです。待っててください”というアナウンスを入れたんだけど、その後も復旧しなくて、これは出たほうがいいということで、ステージに出て行って、アカペラとトークでつないだわけです。

その模様は「特典映像2」にばっちり収録されております。

自分で観て思ったんだけど、我ながらよくできてるなと(笑)。MCもちゃんと説明してるし、これならお客さんも安心するだろうと。(山下)達郎さんバンドの難波弘之さんが、娘さんの玲里ちゃんと一緒に観に来てて、あとで“いやー、今日は学ばせてもらった”と(笑)。すごい嬉しそうに、“いいもの観せてもらった”って言ってくださいました。

今回のツアー、アルバム『還暦少年』曲をほとんどやってますよね。

それも珍しかったんですよ。ある先輩ミュージシャンの方がライヴのMCで“みなさんは新しい曲より過去の曲たくさん聴きたいんでしょ?”って仰ってたけど、その方のように過去に輝く曲をたくさん持ってる人はいいけれど、僕らなんて、どれ聴いたって同じようなもんだから(笑)。だからこそ、恐れずに新しい曲も昔の曲もうまく混ぜて流れを作れるんじゃないかな。

はい。なるほど。

特に僕らはバンドだから出てくる音も時代とともに変わっていくしね。このツアーにしても81公演同じメニューでやってるわけじゃなくて、日替わり曲が7、8曲ありました。ツアーの中で4、5公演観てくださるかたも結構いらっしゃるんですけど、本音を言えば一公演で十分納得できるライヴを作りたいんです。何公演も来てくれるのはありがたいけど、4、5公演観ないと納得できないというライヴはちょっと悔しいかな。だけど、観たい人がいるなら日替わりでメニューを考えたいし、一公演しか観ない人もちゃんと納得できるものをやろうという感覚があるから。今回、オープニングが3種類、バラードが5種類、アカペラが3、4種類のメニューを作って、“どの日がベストだと思う?”ってスタッフとメンバーに訊いたら、“どれとは言えないなぁ”と言われたんで、“これで良し”と決断できました。もし“この日がベストだね”という日が出ちゃったら、偏りがあるってことだし、どの日を観ても“ベスト”と思ってもらえるメニューにしなきゃいけない。その日だけ特別ということは、できるだけ避けたいんです。だって、どの日も特別ですから。でも、ツアー最終日とか、これを言うと驚かれるんだけど、僕のコンディションが悪い時は曲を足すんですよ。普通は引くらしいですけど。

普通はそうですね(笑)。

でも、コンディションが悪いからこそ歌える歌があるんですよ。“今日はこんな声だから、いつもやらない曲を1曲やります”とか、そういうふうにやったりする。それが自分流というのかな。

『還暦少年』は非常に溌剌とした、ロックバンド然としたアルバムでした。ブルースがあったりラテンがあったり、泥臭いというか、そういう感じも多分にあって。

やっぱりね、佐橋佳幸プロデュースということが大きいと思うんですよ。とにかく音楽をよく知っていて、あいつのほうが年齢は下だけど、僕よりも圧倒的にやれることが多くて、“こいつがいてくれたら僕の表現はもっと変わるんじゃないか?”と思ってお願いしたら、ぜひやりたいと言ってくれたんです。僕が佐橋と組んだのは、佐橋はマニアックな音楽からヒット曲まで何でもできるけど、僕はヒット曲のほうの、華々しさやキラキラした部分を持ち込んでもらおうと思ったんですよ。そしたら、佐橋が僕らの中のマニアックな部分を見つけて、それを佐橋流にアレンジしたらそこが僕らのお客さんに響いちゃった。実は、僕はそこに行くことを一番嫌がってたんですよ。

あら。そうなんですか。

聴く人を選ぶようなアルバムになるのは嫌だと思ったから。ところが、昔からスタレビを聴いてたお客さんがそれをすごく喜んでくれた。今のスタレビを聴いて“歳食ってこんなふうになったんだ”って、納得してくれたのかな。もしも佐橋と組んでヒット狙いで行ってたら、“昔のほうが良かったね”って言われたと思う。でも、佐橋が地に足のついた音楽をやらせてくれたことによって、80年代にテレビに出ていた頃に聴いていた人たちが“これなら今の自分でも聴ける”って喜んでくれた。そういうことなんじゃないかなと思ってます。それは僕の自信にもなりました。

その雰囲気の良さと自信の強さは、今回のツアー、この映像作品にもすごく出てます。

新しい曲が今までの曲の中に織り交ざって、お客さんも違和感なく楽しんでる。本当にいいライヴになりました。で、これはまた別の話だけど、『還暦少年』を多少マニアックに作ったら、次のアルバムでは逆にヒット狙いみたいなキラキラした曲もいっぱい出てきて、それはそれで面白いんですよ。なるべくしてなるんだなと思いましたね。『還暦少年』は今のスターダスト☆レビューが持ってるポテンシャルを、佐橋がうまくまとめてくれたけど、次のアルバムは逆にポップなものが出てきてて、“これはバンド史上最強のアルバムになる”と思ってます。まだできてもいないですけど(笑)。

素晴らしい。ネクスト・イズ・ザ・ベスト・ワン。

佐橋がプロデューサーとしていてくれる、安心感というのかな。ある時期から僕が自分で歌もギターも、詞も曲もサウンドも見るということになったんだけど、そこで見えなくなってた部分がたくさんあるような気がしてたんですよ。これは人に任せたほうがいいと思って、佐橋と一緒にやったら楽になったというのかな。メンバーのテンションもどんどん上がってるし、素晴らしいなと思います。
根本 要(Vo&Gu)
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LIVE DVD&Blu-ray『スターダスト☆レビュー ライブツアー「還暦少年」』
LIVE CD『スターダスト☆レビュー ライブツアー「還暦少年」』
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OKMusic編集部

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