BAROQUE コンセプチュアルなアルバ
ム3作を通して表現してきた哲学的メ
ッセージと来るツアーへの想い

BAROQUEが怜(Vo)と圭(Gt)の2人体制になって以降発表してきた『PLANETARY SECRET』(2015年5月発売)、『PUER ET PUELLA』(2019年7月発売)に続く、3作目のアルバム『SIN DIVISION』を発売した。これまでとはガラッと作風を変え、全曲マイナーキーで挑んだダークな本作で、彼らは人が普段見せない闇の部分に切り込み、徹底的に追求していった。今作が出たことで、2人になったときから構想していた3枚のアルバム、そのピースがすべて出揃ったことになる。根本に無垢の愛を持ち、生まれてきた人間を描いた『PLANETARY SECRET』。成長するなかで、忘れがちになる愛の記憶、存在を思い返しながら生きていく人生を描いた『PUER ET PUELLA』。そして、その愛を奪われ、失なったとき、心の闇に潜む悪魔に奪われたまま生きていく人生を描いた今作『SIN DIVISION』。この3作を通して、人間とは、生きるとは、ということを哲学的にメッセージし続けてきたBAROQUE。そうして3枚が出揃って初のワンマンツアーとなる、これこそがBAROQUEが表現したかったPERFECT WORLDになるに違いない。今回は、2人にアルバムを解説してもらいながら、この3作を通してBAROQUEが表現してきたこと、ツアーについて2人に訊いた。
――これまでとはアルバムのアートワークがガラリと変わりました。『SIN DIVISION』のアートワークにはどんな意味が込められているんでしょうか?
圭:「地獄の門」というオブジェがありまして。ダンテの『神曲』からインスパイアされたものなんですけど。このアルバム自体、『神曲』がインスピレーションの源になってるので、「地獄の門」は絶対に使いたいなと思ってたんですね。なので、それをモチーフに、闇とか地獄とか悪魔崇拝を感じさせられるものにしました。本で例えると、“赤い本”を作ろうというところから始まったので、テーマカラーは赤。
――前2作を本に例えて色分けすると?
圭:『PLANETARY SECRET』は黒い本で、『PUER ET PUELLA』は白い本ですね。
――色がそれぞれの作品のコンセプトを物語っている訳ですね。
圭:そう。『PLANETARY SECRET』は、無から生命が生まれ、生命とは、命とはなにかを概念的にとらえ、それが宇宙ともつながるアルバムで。『PUER ET PUELLA』は、現実世界ってなんだろう、そこで生きる上で大切なものとしての愛を描いたアルバムで。だけど、この世界はその2つだけではないというのは薄々感じていて。現実世界には、家族を殺された人もいれば、人を殺す人もいる。普通に暮らしているなかでも憎しみや怒りは常に隣り合わせにある訳じゃないですか。そこを描いてこそ、この世界というのがより分かるのかなと思ったので、『SIN DIVISION』はそこがテーマです。普段は隠してて、人にいわないような闇の部分を形にしたのが今作ですね。
――普段は隠している闇という意味では、2人が在籍していたkannivalism時代に出した『helios』の「another world」~「again and again」~「a growth ring scroll」のパートも深い闇をえぐっていった作品だと思うんですね。当時インタビューで、闇を描くにあたって自分のなかの見たくない部分を掘り下げる作業になるからとても辛くて怖い作業だという話をしてくれていたと思うですが。今回はどうだったんですか?
怜:そういう意味では、今回はライブをしつつ『SIN DIVISION』の制作しつつだったので、現実に戻りやすかったっていうのはあります。あの頃とは全然違ったね。
BAROQUE/怜(Vo) 撮影=大橋祐希
ラップやらないでコーラス歌ってたらクビでいいよっていうぐらい、ライブでやることを前提にやったから。ライブで舌噛まなきゃいいんだけど(笑)。
――やはりそうでしたか。なんでこんな質問をしたかというと、同じように闇の扉を開けて表現したにも関わらず、『SIN DIVISION』は「again and again」ほどおどろおどろしくも怖くもないんですよ。闇に透明感があるというのか。視界がクリアなんですよね。とても。
圭:いいですか? それについて僕が思うのは、「again and again」の頃って10年前ですよね? あれも確かに自分の心の闇を書いたものだけど、あのときは未知なるものだったんですよ。でもどこかに常にあって、なんでこれがあるのかも分からない、淀んでいて正体もなにも見えない夢のなかの悪夢の世界だったから、ああいう曲になったんですね。
――闇が不可解なものだったということ?
圭:そうそうそう。だけど、いまは不可解だった闇の正体、なんであれが自分のなかにずっとあったのかが分かった。全部見えてるんですね。だから、同じ闇でもすごくクリアなんだと思う。自分が闇の正体を知ってるかどうかの違いだと思う。
――ああー。闇を無闇に描いていったのが「again and again」の時代だとしたら、闇を自覚的に描いたのが『SIN DIVISION』ということ。
圭:そうですね。だから『SIN DIVISION』は一人の男を主人公にして、その人が悪魔になっていく過程、それを1シーンごとに切り取って描いていくというのができたんです。
――ということは、この作品自体一つの物語になっているんですか?
怜:1本の映画を観てるような感覚だよね。
圭:うん。そのなかの1シーンをいろいろ作っていって。だから、最後の「INFERNO」、地獄がこの主人公の現在で、そこに至るまでの過去の物語がそこまでに描かれてます。
BAROQUE/圭(Gt) 撮影=大橋祐希
去年の春頃に4~5年ぶりぐらいに酒を飲んで。バーに行ってるときに“地獄のバー”ってどんな感じかなと思って、作りました。
――今作がBAROQUEとしていままでにないサウンド感になった理由は?
圭:こういうテーマだからですね。赤い本、ダークなもの、闇や罪を描こうと思って、どういう曲がいいかなと考えたときに、ダークなものってロックの根本的なものでもあるから、ヘヴィメタルとか、そこに特化した表現をしている素晴らしいアーティストはいっぱいる訳ですよ。いままでそういう手触りのものをやってこなかった僕らがそれをやったとしても、稚拙になると思ったし、そういうものを表現し続ける人たちには勝てないと思ったので、自分なりにどんなものにダークさを感じるかを考えていって。そうしたら、ベルリンテクノとかのダンスミュージックにおどろおどろしさを感じたり、民族音楽にミステリアスで怪しい世界を感じたり。最近のヒップホップやトラップとかすごい低音が出てて、そっちのほうがメタルよりも重々しさを感じたので、そういうものを取り入れていったら新しいものになりましたね。
――アルバム全体として暗いトーンのアルバムというのも初めてですよね?
圭:「SKY FITS HEAVEN」(『PUER ET PUELLA』収録)とかの数曲以外、マイナー調の曲はなかったから。
怜:そうだね。
圭:今回は「I LUCIFER」のサビ以外は全部マイナーキーですからね。
――なのに、冷たい印象でもインダストリアルな質感でもなくて。ちゃんと“歌もの”になっているところがBAROQUEなんですよね。
圭:なんだかんだ一番こだわってるのは歌メロなので。BAROQUEは“怜が歌う”という前提で、歌で曲のメッセージが伝わるのが一番大事なところだから、メロはすごく考えて作ってるんですよ。マイナーキーでありえない転調だけどメロにはフックがあるとか。そこはすっごい考えて作ってます。例えば「SIN QUALIA」は、アンダーグラウンドなテクノっぽいサウンドですけど。
――サビになるといきなりキラーチューンっぽく聴こえますもんね。
圭:そう。「END VISION」は民族調で、サビもマイナーだけど1回聴いたら。
怜:響くんだよね。
圭:そういうところはめっちゃ厳しく考えてます。
――だから、ちゃんと歌が届くんですね。
圭:それがあったほうが、人の感動を呼び起こす間口は広がりますからね。
BAROQUE 撮影=大橋祐希
――怜さんは今作を歌ってみてどうでしたか?
怜:今回はうねらせる声が多かったんですよ。ああいうのは元々持ってたんだけど、いままではそんなに使ってこなかったので、まずそこが色濃く出たかなと思います。
――そういううねる声も新しかったですし、「SIN QUALIA」のラップも新しかったですね。
怜:ねっ(笑)。この曲は圭ちゃんが作詞してて「英語のラップとかしてみない?」っていわれて挑戦して。英詞で細かいメロディをラップしていく感じだから、結構苦労したよ。
圭:大変だよね?
怜:最初に「絶対大変だと思う」っていわれてたけど、大丈夫だろうって思ってたの。甘かったね(笑)。歌って歌って、歌い倒しましたね。
――ライブではラップの方をやるんですか?
怜:こっちやんないとダメでしょう。やんないでコーラス歌ってたら俺、クビでいいよ(笑)。っていうぐらい、ライブでやることを前提にやったから。元々細かいメロディをラップ風に歌うのは好きだったからね。
――でも、ここまで早口で歌うラップはなかったですよね?
怜:そうなんだよ。ラップ風なことはいままでもやってたけど、ここまでラップですよっていう歌い方はなかったから、挑戦だったね。しかも、速い。歌詞が持ってるパワーはこの速さだと感情的に伝わりやすい気がする。ライブで舌噛まなきゃいいんだけど(笑)。
――これをダンスビートのトラックに乗せたところがスタイリッシュでカッコよかったですね。
圭:この曲で大事にしたのは、まずその前にある「END VISION」がこのアルバムの世界観、そこの扉が開くイメージで。その次の「SIN QUALIA」は悪魔になる奴が最初はどんな男なのか。それを描いたシーンなんですよ。ラップは主人公の心の声で。この男はすごい自分にコンプレックスがあって、自分のことが好きじゃないってところが思春期の頃の自分とオーバーラップしたので、そこを描きました。そういう主人公が、最初は不満をいってるだけなんだけど、それが幻なのか現実なのかって意識がトリップしていって、地獄の狭間の世界に切り変わっていくシーンをサウンドで作りました。音はベルリンテクノに影響を受けてます。去年の夏にクラブとかに行ってて。
――そうなんですか?
圭:チャラチャラしたパリピなクラブじゃないですよ?(笑) ベルグハインというドイツのクラブがあるんだけど。そこで回してるDJが来日したときに、音の質感とかを聴きにいったり。あとは『バニラ・スカイ』という映画があって。それもこの曲のインスピレーションになってます。その主人公は男前でなんでも持ってるんだけど、事故にあって顔がグシャグシャになって、それがコンプレックスになるんですね。そいつがクラブにいって好きな女の子に会うんだけど、相手にされなくてどんどん地獄に落ちていく。絵的にはそういうイメージ。なので次の「REDME」からは闇のなかですね。
――「REDME」の冒頭の語りの部分から、闇に取り込まれていく感じがしますもんね。
怜:そことか、間の《Shall we play?》の語りの部分は最初から何か語りが聴こえてきたんですね。それを実験的に試して入れたところです。
――その次に出てくる「FALLEN VENUS」は、今作のなかでいままでのBAROQUEに一番近い曲でしたね。
圭:やっぱそうなんですね。
怜:なるほど。
圭:実際はすっごい変なコードで珍しい曲なんですよ。これは一番古い曲で。去年、楽屋でね、「こんなコードで曲作ろうと思うんだけど」って怜に聴かせたよね?
怜:うん。それで「すげーな」って思って。
圭:ずっと不協和音で、サビとか要所要所で絶対行かないようなコードにワザといってるんだけど、キャッチーに聴こえるようにしてる。
――歌詞は2人の連名になっていましたが。
怜:この曲はサビと一番最後が圭ちゃん。あとは俺ですね。俺が書いても、圭ちゃんの提案で一言言葉を変えるとかはいつもやってることだから。
――その拡大版、みたいな感じですか。
怜:そうそう。この曲はサビで圭ちゃんの女性目線の歌詞が入って完成した感じ。歌のテイクはこれが一番多かったかな。
――難しかったってことですか?
怜:うん。実際に歌ってみたら。サビが特に。表現の仕方にすごく悩んで、これに関しては何本も録って圭ちゃんに送った。
BAROQUE/怜(Vo) 撮影=大橋祐希
俺も人間だなと思いました。いいところも悪いところも自分にはあるんだなというのを、曲に教えてもらった気がする。
――今作のオープニング「RITUAL」、中盤「SUCCUBUS」、後半「COCYTUS」に収録されたインストがオリエンタルな曲調になっていたのはなんでだったんですか?
圭:ミステリアスなものを感じたからです。それで、民族音楽の音階を研究して、いろんな国の楽器、音階を混ぜて作りました。『アイズ・ワイド・シャット』という映画があって。悪魔の儀式で乱交シーンがあるんだけど、そこでオリエンタルな音楽が流れてて。そういうのが頭の中に残ってたかな。性的な欲望にのまれていくエロスな感じを、西洋の音楽やクラシカルな音で表現するのって難しくて。ダンスミュージックとエキゾチックなものを掛け合わせてみたら、妖艶な雰囲気が出たんですよね。
怜:この曲もそうだけど、圭ちゃんが映像的にインスピレーションを受けた映画は、俺も共有してめっちゃ観てました。
――「REDME」、「SABBAT」とメタル調のギターリフで押すアプローチがありますが。これ、圭さんが弾いてるんですよね?
圭:そうです。他に誰が弾くんですか(笑)。メタルも今回いろいろ研究して。このリフを7弦ギターのディストーションでやると普通になると思うんですけど、それを変な音で弾いてるんです。「SABBAT」のギターって、シンベみたいで聴き馴染みのない音だと思うんです。リフを普通じゃない音色で弾いたほうが面白いなと思って、もっと邪悪さを感じさせるギターサウンドを作りました。
――「GLOOMY LILITH」はどんなイメージがあったんですか?
圭:去年の春頃に4~5年ぶりぐらいに酒を飲んで。夏ぐらいからこのアルバムを作るようになったら飲みたくなって、また飲むようになったんですよ。バーに行ってるときに“地獄のバー”ってどんな感じかなと思って、作りました。
怜:それ、いってたね。
圭:悲しみを抱えた女の人が一人で飲んでて。そんなの見たことないですけど(笑)。悲しみや後悔から延々抜け出せない人っているじゃないですか。それも一つの地獄だなと思って。それをテーマに、ジャズっぽい雰囲気の曲はやったことがないので、地獄ジャズを(笑)。
――監獄ロックの親戚みたいな解説してますけど、これすっごく好きなんですよ。
怜:いいよね!
圭:怜には、ちょっと昔の女性のシャンソン歌手がステージで壊れた世界を歌ってるイメージっていってた。
怜:そうね。曲のムードからイメージが伝わりやすかったから、歌詞はスムーズにかけた。
――効果音の揺れが壊れたムードをさらに醸し出しててよかったです。
圭:これもコードはかなり変なんですよ。だけどメロをつけたらいい曲になっちゃったので、シンプルにやると普通にいい曲になっちゃうので。地獄の酒場のムードをどう出すかというので、シンセのピッチをわざとぐしゃぐしゃにして。ぐにゃぐにゃになった感じを出しました。
――そのぐにゃぐにゃを怜さんが海の空気感に仕上げたところは、さすがだなと。赤い海がこの曲で表現できると思うんですよ!
怜:嬉しいじゃない!! 俺もこれ大好き。
圭:だから俺、これは(baroque時代の)「exit」(2004年9月発売『sug life』収録)の系譜だなと自分では思ってて。
――そうそう! 「exit」の赤い海バージョン!
圭:と俺も思ってる。だから、この曲はライブ映えすると思うんです。ベースがめっちゃいいんですよ。
――ステージで歌う女性みたいですよね。
圭:最初は揺れてるシンベ入れてやろうかと思ってたんだけど、弾いてもらったらすっごいよくて。それで曲が化けました。
怜:それもあって居心地がいいの。歌ってて。
BAROQUE/圭(Gt) 撮影=大橋祐希
曲を作ってたら、悪魔の正体が分かった瞬間があったんです。子供の頃に家族が自殺したことがあって。その瞬間に感じたものとまったく同じものだった。
――そして「FROZEN ABYSS」。これは「PURIFY」(『PLANETARY SECRET』収録)系譜のマイナーキーバージョン?
圭:「PURIFY」はスーパーピュア、人を超えたピュアさで、こっちは完全なる孤独で。地獄なんだけど宇宙的でもありますよね。『2001年宇宙の旅』の後半って宇宙の話なのにすごいサイケで地獄を見てるみたいな世界じゃないですか。その感覚に近いかも。
――それを怜さんが海から《深宇宙》という言葉へとつないだことで、リスナーは深い孤独へと堕ちていく。そこもさすがだなと思ったところでした。
怜:うれしいね。
――歌詞カードでこの漢字を見たら、より宇宙に一人だけ取り残された気分になりました。
圭:たしかに。
怜:そういうところまでぜひ見て欲しいですね。
圭:これ、すっごい歌詞書くの早かったよね。3時間ぐらい?
怜:それぐらいスムーズにできちゃった。感じるままに書けたんでしょうね。最後の《深宇宙》は圭ちゃんと話して書いた。
――「I LUCIFER」は、その前に《I LOVE YOU》という語りも含め、このアルバムの重要なシーンを描いた楽曲に思えましたが。
圭:なぜ主人公は悪魔になったのか。LUCIFERもすごく美しい天使だったのに、悪魔になっていく。悪魔になるのには理由があるんですよ。それを表現しないとこのアルバムは完成しないなと思っていたので、そこをずっと探ってて。「I LUCIFER」は最初イントロしかなくて。曲を作ってたら、悪魔の正体が分かった瞬間があったんです。すごい怒ってて、怒り狂ってて、傷ついて、ボロボロで、でも純粋で。という感覚がぶわーっと自分の体にきて、それが泣けるぐらい恐ろしくて震えたんですね。“ああ、これが悪魔の心の感覚なんだ”とその瞬間、実感して。すぐ後に“あれ? この感覚、知ってるな”と気づいたんです。俺、子供の頃に家族が自殺したことがあって。その瞬間に感じたものとまったく同じものだったんです。なにかのリミッターがはずれて、心が燃え上がる瞬間みたいなものは自分にもあるものなんだと気づいて、やっとこの曲が分かったんですよ。いろんな地獄がぐるぐる回りながらも、急にそこに純粋性が出てきたり、前作『PUER ET PUELLA』の「BIRTH OF VICTORY」とつながったり。だから、一歩間違えば自分も悪魔になってたかもしれないと思ったんです。前作はあるかどうかは(死んだ時にしか)分かんないけど完璧な世界「PERFECT WORLD」で終わったじゃないですか? 本当はああいう人生もあったはずなんだけど、こっちはそこから一歩踏み外してしまった主人公の世界なんですよ。だから、「COCYTUS」の最後に「PERFECT WORLD」のピアノを半分のスピードにして逆回転させて入れて。そこに《I LOVE YOU》という言葉を重ねて、という形にすれば、LUCIFERがなぜ悪魔になったのかが分かるなと思ったんです。
怜:あそこで《I LOVE YOU》って聴こえたとき、ハッとしたもんね。言葉にならない気持ちにさせられたぐらい、このアルバムにとって大事なシーンだなって圭ちゃんにいった。
圭:うん。結局、愛を失って信じることをやめたからこの主人公は最後に「INFERNO」で愛を信じない、愛を捨てて、地獄にいる心理状態で悪魔になって終わる。
――つまり「PERFECT WORLD」と「INFERNO」は。
圭:紙一重というのを表現してる。
――ここまでのアルバム3枚を作って、なにが見えましたか?
怜:俺も人間だなと思いました。いいところも悪いところも自分にはあるんだなというのを、曲に教えてもらった気がする。
圭:この3枚は、自分自身が生きてきてこの世界で感じたことを、2人のBAROQUEで表現したと思うんですけど。愛ってなんだろう?と考えたとき、『PLANETARY SECRET』は始まり、根本にある魂の愛。『PUER ET PUELLA』は生きてると忘れがちだけど、あらためて気づく愛。『SIN DIVISION』は傷ついた愛とか失った愛。そういう3枚なのかな。
――つまり、全作とも根本のテーマは“愛”。
圭:ですね。自分の心が平穏で誰かを愛して誰かに愛されてるって、天国だと思うんです。だけど、例えば家族を殺されたりしたら、めちゃくちゃ誰かを憎むだろうし、悲しむ。その瞬間は地獄でしかない。
――その両方、現実世界でありえることですもんね。
圭:紙一重なんですよね。それをどう消化して生きていくのか。だから、人とはなにか?ということですね。この3枚のアルバムは。
BAROQUE 撮影=大橋祐希
アルバムが3枚出たので、美しいだけでも地獄だけでもない、振り幅として完全体でこの作品たちを表現できると思います。
――ライブはどんなものになりそうですか?
圭:基本的にはこの3枚のアルバムのなかからやろうと思ってます。大変だよね?
怜:そうだね。
圭:この『SIN DIVISION』を聴いたあとに『PLANETARY SECRET』を改めて聴いたら、より世界の美しさが見えてくると思うので。そういうものをライブでも表現できると思います。美しいものを壊すこともできれば、その逆もできて。3枚出たので、美しいだけでも地獄だけでもない、振り幅として完全体でこの作品たちを表現できると思います。
――ではツアーに向けて抱負を聞かせて下さい。
怜:今回アルバム3枚が揃ったので、楽しみにしててください。まずはライブに来て!
――ラップもやりますよね? もちろん。
怜:やるよ! やらなったらクビでいいよ(笑)。
圭:3枚アルバムが揃って2人のBAROQUEのアーティスト像がより明確に見えたと思うので、観たい人は観にきてくれればいい。ライブもいまはすごくエネルギッシュなので、いい感じになると思います。
――ところで、BAROQUEっていまもヴィジュアル系なんですか?
圭:ヴィジュアル系出身だし、ヴィジュアル系で育ってきてるけど、でもそれだけで育ってきた訳ではないし。だけど、ヴィジュアル系だと思いますね。これだけアートワーク、目に見えるもので一貫した何かを表現してしまうところは。目に見えるものすべてを使って、音楽で伝えたいことを表現したいと思うところは、本当の意味でのヴィジュアル系だと思います。
取材・文=東條祥恵 撮影=大橋祐希

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