山田ジェームス武・櫻井圭登インタビ
ュー「“エグい物量”に苦戦」 吉谷
光太郎、原案・脚本・演出の舞台『R
E:CLAIM』

「2.5次元」という言葉が世間一般的にも認知されてきた昨今。その2.5次元とはアニメや漫画・ゲームを原作とする舞台作品で、演者は外見や雰囲気、声、仕草などあらゆる面で観客の持つキャラクター像に近くなければならず、その世界を構築する作り手側もできるだけ原作のイメージを「再現」するようなものが求められる。
吉谷光太郎が作る「RE:VOLVER」シリーズは、ストレートなお芝居でありながらも2.5次元に近く、アニメや漫画のようなコミカルなところがありつつも、自由を手にするために必死で戦う少年たちの群像劇であった。それを表現する役者は、2.5次元の舞台で活躍する若手俳優の中でも一癖も二癖もありさらに実力もある曲者揃い。当て書きでつくられたキャラクターたちは、俳優本人のイメージとも少し異なった性質を持っており、そんな違いを楽しめるのも俳優ファンには見どころとなるポイントであった。
2018年10月に上演された第一弾は大好評のうちに幕を閉じ、ついに第二弾となる舞台『RE:CLAIM』の上演が決定。山田ジェームス武と櫻井圭登のW主演で、前作から10年前の世界を描き、親友である玄汰(クロダ)と壬浦(ミウラ)にスポットを当てた物語になるという。
今回はW主演の山田と櫻井に話を聞いた。前作での苦労話はもちろん、冗談を交えつつ語る演出家・吉谷への信頼の厚さなどを伺い知ることができる濃厚インタビューとなっている。これを読んだ後、再度前作「RE:VOLVER」の映像を見ると、また新たな視点で見ることができるかもしれない。
特に『RE:VOLVER』はエグかった
ーー前作『RE:VOLVER』での苦労談を教えてください。
山田:音ハメじゃないかな。一番最後、クライマックスの時にROUさんが曲を提供してくれていたんですが、そこの芝居が全部決まっているんです。ここの音が来た瞬間にはここの芝居は終わってなかったらいけないとか……。あれキツかったよね。
山田ジェームス武
櫻井:ですね! 最後の最後のシーンでしたし。
山田:そう。歌が5~6分くらいだったかな。その中で、普通に芝居したら溢れる芝居をそこで全部ぎゅっと収めていて。音を気にしながら殺陣もして飛び降りもあって。ちょっと頭を冷静に保ちながらも芝居を熱くしないとならないっていう環境は全員が苦労していましたね。
櫻井:うん、あれは本当に大変でしたね。でも決まるとすごくかっこよかった!
ーー稽古中でもそのシーンの練習に多く時間をかけたんでしょうか。
山田:その場面に出てるメンバーで集まって、とにかくセリフ合わせをしたよね。
櫻井:やってました! 音を流しながら何回も何回も繰り返して。
ーー吉谷さんの演出では音ハメが多いんですか?
山田:多いかもしれないです。僕がご一緒した舞台では多かった。
櫻井:僕もです!
山田:じゃあ音ハメの吉谷ですね(笑)。曲と芝居の種類にもよるけど、特に「RE:VOLVER」はエグかった……。とめどない感情や芝居、特にあの流れをこの曲中に全部やるのかー! って驚いたし大変でした。曲にハマってたから、めちゃくちゃかっこよかったけど。
櫻井:僕も普通にやっていたら全部収まらないなと思ってかなり早めました。実は危ない瞬間もありました……。
山田:誰かがズレると、もう本当にヤバい。他の人の芝居を見ている余裕もないけど、見るのも仕事でもあってそこを逃していたら全部が崩れちゃう……。でも曲のカットアウトと同時に僕らの芝居もきれいにドンって終わるから、そこがズレたら訳がわからなくなっちゃう。あの芝居ができたのは、みんなで助け合いながら作ったっていう部分があるのかなって。
櫻井:あれ今思うと本当にすごかったですよね。
櫻井圭登
どんどんぶつけていったら全部受け止めて返してくれた
ーー改めて第二弾をやるとなったとき、前作での印象的なセリフやシーンなど、強く思い出すものはありますか?
山田:僕はやっぱりあのシーン。壬浦に「お前もだ」っていうところはいまだにやっぱり印象深いかな。
櫻井:毎公演ジェーくんの熱量が半端なかったので、自然とそこに向かう感情を作れました。やっててすごく楽しかったですね。それにみんなでバトンを繋いでるなって感じも大きかったです。
山田:みんな良い意味で同じ芝居をしない。その日の感情のぶつかり合いでどんどん大きくなっていくような。前日より下回ることもなかったし、どんどんいいものが出来上がってた。メンバーも良かったし、スタッフさんも良かったし、本当に環境がいい中でやらせていただいたなというのが一番の印象ですね。
ーーお二人はこの作品で初共演ということですが、第一印象とそれと変化したことは?
山田:初対面では「めっちゃアホなやついるな!」って思いました。
櫻井:あはは(笑)
山田:でもそういう性質「だけ」の子を好かない吉谷さんがすごく絡んでいくし、イジってるし、かわいがってる。そういうところを見ていて、多分それだけの子じゃないんだろうなって思いました。まぁでもしばらくはアホの子だなって印象を持ちながらの稽古でした。『RE:VOLVER』の最初のほうは結構コメディタッチで、そういう部分の芝居作りから始まっていたのもありましたしね。そこからだんだんかっこいいところが見れるようになってきて、クライマックスのシーンを経て、最終的にはすごくしっかりしてるんだなって印象に変わりました。このギャップがすごかったですね。ここまで恥じらいなく出せる人なんだなって。
(左から)櫻井圭登、山田ジェームス武
櫻井:(照れ笑い)
山田:いや、良い意味だよ?
櫻井:嬉しいです。めっちゃ嬉しいんです!
山田:恥ずかしいからかっこつけたり隠しちゃうような感じではなく、全部曝け出してくれるので、僕もそれに応えようって感じになりましたね。
櫻井:ジェーくんも最初はマジで未知数でわからない人でした。でも話してみると徐々に人の好さやアツい人だなってことが見えてきたんです。芝居だけじゃなくて、生き方がしっかりしているんだなって。
山田:自由なだけだよ?
櫻井:ちゃんと「自分」を持っているというような部分に憧れました。ジェーくんにどんどんぶつけていったら全部受け止めて返してくれました。そこで玄汰と壬浦のような関係性も築けていけたのかなって思ってます。
山田:キャストみんなそうだったよね。どこにぶつけても絶対に返ってくる。本当にすごい現場だったなぁ。
脚本・演出 吉谷光太郎にしか作れない舞台
ーーさきほどもチラっとお話が出てきましたが、演出の吉谷さんはどういう方なんでしょうか。
山田:すごい真面目で、すごく寂しがりやな方です。誰かに構ってもらわないとダメみたいな。(吉谷さんと一緒の)今の現場ではボケを言いまくるんだ。
櫻井:エッ、そんな感じなんですか!
山田:厳しそうに見えるけど、すごくフラットでフレンドリーな方。ただシャイだし、寂しがりやだし……。ちょっと偏屈な入り方をするんですけど、そこを理解すると本当に可愛らしい方だなと思います。あとめちゃくちゃ涙もろい!(笑)思ってる以上に柔らかい人だよね。
櫻井:僕も、厳しめな人なのかなって思ったんですが、知れば知るほどすごく愛のある方だと思います。そこを僕たちは信じて演じられるので。本当に素敵な方ですね。
山田:でも“きっかけ”が多すぎるわ。本当にもう!
櫻井:ですね。そして今回もまた盛沢山なんでしょう!
(左から)櫻井圭登、山田ジェームス武
ーー“きっかけ”ですか?
山田:例えば「明日はお誕生日です、おはようございます」というセリフがあったとします。「明日は」で何かが起きて、「お誕生日」で何かが起きて、「おはようございます」で何かが動く、みたいな。そのくらいセリフの一つひとつに“きっかけ”があって、何かが全部動いてました。その辺のストレスはある種ありましたけどね!
櫻井:(笑)
山田:真っ直ぐに芝居できない! でも後半はそれに慣れた上で熱量も出せるようになって本番を迎えられたので良かったんですが、稽古中は「こんなんで芝居できるかよ!!」って思ってました!
櫻井:いや、本当にこれは大変でした……。
山田:だから全員が連動して全員が一緒に動けないと成り立たない舞台でした。でもそういう構築の仕方というのは僕らじゃ考えられない部分なので、さすがの演出家さんだなって思います。
ーーBlu-ray&DVDの特典映像でも(聖木役の)植田圭輔さんが「物量が多くて」という話をしていましたね。
山田:まさにそういうことです。でもやり終えた時には「また吉谷さんとやりたいな」って思うのがまた不思議なところで。
櫻井:達成感がすごいんです!
山田:スタッフさんとご飯に行くと「ちょっと量多すぎじゃないですか!」っていう愚痴大会が開かれます。
一同:(笑)
山田:『RE:VOLVER』はもう(“きっかけ”の物量が)すごすぎる! もう僕は出たくないです! とかね。スタッフさんも次は考えようかなって言うんですが、千秋楽とか打ち上げとかで吉谷さんに面と向かって、「最初は本当にもう出たくないって思ったけど、やっぱり出たいっすわ!」って話になるんです。みんながそうなるから、それだけ出来上がったもののボリュームがすごいので、改めて吉谷さんのすごさを感じますね。
山田ジェームス武
ーー吉谷さんって役者さんへだけではなく、スタッフさんにも要求するものが高いんでしょうか。
櫻井:高いと思います。それに応えられるスタッフさんがいるっていうのもすごいです。
山田:役者がこう動くにはこういう照明を当てたらやりやすいだろうなとか、逆に照明さんがこう出したいなら役者をこう動かすっていう架け橋にもなってくれています。そして結局素敵な舞台が仕上がっている。こういう世界観は吉谷さんじゃなきゃ作れないよね。
櫻井:ですね。『RE:VOLVER』は本当にかっこいい作品になりました!
壬浦、玄汰に何したの?
ーー次回作は新たなキャラクターも出てきますが、どの方が気になりますか?
櫻井:僕は碕(理人/志岐役)さんが帝国軍の役になるので、とても楽しみです! 普段プライベートで会う碕さんとは真逆な役どころなんじゃないかなって。碕さんがどんなお芝居をなさるのか、今からドキドキしてます。
山田:僕は理人とタメなんですが、あまり同い年が周りに多くないのでそういった意味でも共演が楽しみです。アラケンくん(荒木健太朗/埋都役)と崚行(長江崚行/葉取役)も別な舞台でご一緒したことがあって。アラケンくんとは敵同士で僕が殺した(役)っていう作品もありました。でも一番は佑くん(吉岡佑/紗灘役)! あの佑くんが剣豪の殺し屋って、どんな芝居をするのか。いつもキラっとした王子様のようなイメージがすごく強いので、こんな男らしい佑くんが見れるんだなって思うと……! 多分、僕と戦うんだろうなぁ。あの身長で剣振ったらマジでかっこいいだろうな。
櫻井:めちゃめちゃかっこいいと思います。……怖そうですよね。
山田:あと前回から引き続き出演されるのが山岸さん(山岸拓生/策間役)とタイソンさん(タイソン大屋/衣澄役)のおふたりですが、吉谷さんのストレスのはけ口になってましたね。特にタイソンさん。
櫻井:そうかもしれないですね(笑)、特にタイソンさん!
櫻井圭登
山田:タイソンさんは保健室の先生みたいな立ち位置でしたよね。
ーーメンタル的な面ででしょうか?
山田:全部の支えになってましたね。その分、タイソンさんのメンタルが大変になるっていう。
ーー今回のストーリーは10年前が描かれるということですが。
山田:僕らふたりの関係性が描かれるんだと思います。そこを知ることができるっていうのは僕らも楽しみですし、お客さんも楽しみにしてくれているところだと思うので、どういう風に仲良くなって、「親友」って言える関係性になったのかっていうのは一番気になる部分ですね。
櫻井:でもあらすじだけ見ると、別行動してる感じでしたよね。
山田:「もう二度と俺の前に現れるな」って言われてるんだよ? 壬浦、僕に何したの?
櫻井:わかんないっす……何かしちゃいましたね! 周りの方々も新しく登場する方もたくさんいるので、その関係性も楽しみですよね。
山田:今回の公演を見て、また『RE:VOLVER』の映像も見たいなって思ってもらえたら嬉しいですね!
ーー最後にファンのみなさまへメッセージをお願いします。
櫻井:前作から応援してくださる方も今回から初めて観に来てくださる方も、絶対楽しめる作品にします。第一弾からの想いを紡ぎながら戦っていきたいと思っていますので、ぜひ応援のほど、お願いいたします。
山田:前回に関しては今思い出してもしんどいぐらいキツかったですが、それ以上に楽しくて素敵な作品を作れたと思っています。今作、前作にまけないように、もう一段階熱を上げてうえちゃん(植田圭輔/聖木役)とか、しんた(安西慎太郎/阿羅来役)とか祥平(橋本祥平/伊透役)が観に来て、出たかったな! って思わせられるような。そして次のバトンを託せたらいいなと思っています。ボリュームもあって、絶対に素敵な作品になると思います。ぜひ観に来てください!
(左から)櫻井圭登、山田ジェームス武
取材・文=松本裕美 撮影=荒川 潤

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