宝塚宙組が新たなSFの世界観に挑む!
 『FLYING SAPA-フライング サパ-』
制作発表会見レポート

宝塚歌劇団宙組トップコンビ、真風涼帆、星風まどか、男役スター芹香斗亜らの選抜メンバーが、未来の水星(ポルンカ)で起こる出来事を描いた上田久美子の意欲作に挑戦する、『FLYING SAPA-フライング サパ-』が、3月30日(月)~4月15日(水)までTBS赤坂ACTシアターで上演される。この作品は、未来のいつか、水星に移住した一部の人たちが繰り広げる上田久美子のSFオリジナル作品。世界的に活躍している作曲家・三宅純が楽曲提供することなど、宝塚歌劇の新しい挑戦が詰まったものとなっている。
(左から)芹香斗亜、上田久美子、真風涼帆、星風まどか
そんな作品の制作発表記者会見が27日都内で開かれ、パフォーマンスとトークショーの形で、物語の一端が披露された。
まず、真風涼帆、星風まどか、芹香斗亜によるパフォーマンスが、話題の三宅純の音楽に乗せて展開。作品そのもののある事情で、メインキャストが多く歌わない設定だということで、パフォーマンス披露定番のテーマ曲披露ではなく、上手にデッキチェア、下手にハイテープルとグラスが置かれ、真風演じるオバクの声による「夢」「誰かの」「この場所」「知らない」と言った短いワードの連なりから、コンテンポラリーなダンスが続き、謎が謎を呼んでいく。
真風のオバクと芹香のノアがグラスを片手に交わす会話も、ノアが精神科医でありつつ、地球から移住してきた人々が住むここでは、ほとんどなんでも屋だというキーワードが残るものの、多くは謎に包まれ、真風のオバクも星風のミレナも、人物像がハッキリとはしないまま、パフォーマンスは終了。摩訶不思議な雰囲気が辺りを包んだ。

そこから行われた会見はトークショー形式だったが、なんと作者である上田久美子の要望により、ネタバレ禁止のお達しが!

上田久美子
その理由について上田は「自分の役の背景や年齢を各々に語って欲しいところでもあるのですが、SFということで。SFというのは想像のつく世界観の中で、登場人物たちが出会って恋をしていく過程を追うような作品とは全く違って、叙事的に事件を追っていく。この人たちはいったい誰なのであろうか? が段々判明していくのが楽しいというタイプの作品にどうしてもなってしまいますし、今回はそれにチャレンジしたいなと思いました。ですから、そもそもどういう仕事をしているのかですとか、どんな設定でどういう状況ですということも言うのはマズイと(笑)。そう言うとまるで意地悪のようなのですが(笑)そうではなく、お客様に良い状態、良いコンディションで観劇して頂きたいという思いでございます」と語り、会見自体が大変ミステリアスなものに。
真風涼帆
それに対して真風が自分の役柄オバクについて「記憶を失っている兵士ということで、政府の……あ、ちょっとこれ以上はダメみたいなので(笑)」と、上田とのアイコンタクトで話を引っ込めたあと、「話しづらい!」と吐露して会場の笑いを誘う。その上で役柄と自分が近いか? という問いには「いや、あまりないですかね。結構私もアンニュイな渋い男性をすごくイメージしていたのですが、ちょっと言えない部分などをいまお稽古している段階で、人間じゃない部分も少し必要となってくるので、そこの感覚というのをいま模索しつつ、人なんだけれども、テン、テン、テン、という、自分の男役像に近いような、でも全然違うという、両面の感覚があります」と分析した。
(左から)芹香斗亜、真風涼帆
そんな真風を星風は「皆さんもポスターで思われたと思うのですが、今までにないようなお衣装がとてもカッコいいので、私もそういう思いで日々拝見させて頂いております」と語り、芹香は「アンニュイ感や気だるい感、声を張らない感じもカッコいいですね。真風さんは元々男役を演じる時に無駄な動きが凄く少ない方で、人が三歩くらいで行くところを、大きく一歩、使っても二歩で行かれるところが、オバクにピッタリだなと思っています。そこが萌えポイントです。動かないんです。全然動かない」と重要なキーワードを。
そんな、あまり動かず、話さず、寝ている場面が多いというオバク役を描くにあたって、真風の個性に役柄を寄せたという上田は「元々SFをエンターテインメントで描きたいなという気持ちが昔からあって、記憶を無くした兵士が主人公で、長身で力をわざと抜いた感じがカッコいいみたいな、あまりやる気が見られない感じ(笑)が出せる方の方が良いと思っていて。その怠惰な雰囲気がむしろカッコいいみたいな人でと。そこに真風さんの大人の男の人の雰囲気、芹香さんがおっしゃるような動きをイメージしながら書いていった」と解説した。
星風まどか
星風は演じるミレナ役について「物語が進んでいくにつれて、何故そういう行動に至ったかですとか、ちょっとしたことをしっかり噛み砕いていかないと。謎が多いからこそ自分でしっかりと納得した上で初日に向けて、ストーリーを皆様にお伝えできるようにやっていきたいと思います」と、稽古開始から5日目だというこの日の段階で、役柄を模索していることを真摯に話す。
(左から)芹香斗亜、真風涼帆、星風まどか、上田久美子
その様子を真風は「星風自身もこれまでにやったことがない役なので、自分がどう進んでいくのかわからない部分と、役の謎の部分を咀嚼して、これからやっていこうという状態です」と相手役からの目線で語り、芹香は「今回の役はすごくビジュアルもモード系な感じで素敵だなと思いますし、元々まどかちゃんが持っているハムスター的な可愛らしさ(笑)みたいなものを封印した上での役じゃないといけないので、新たな星風さんが見られるのではないかな? と思います」と期待を込める。
元々あったヒロイン像を星風の個性に当てて、性格付けをしていったという上田は「彼女には何か大きいものを背負って欲しいんです。『神々の土地』では王家を背負っていましたし、ミレナも今回は色々背負っていて、そういう役が似合うのかなと。どちらかというとフランス映画のヒロインのような感じで、普通の宝塚のヒロインですと、わりと正当化されるような行動をとるんですけれども、もう少し本能の赴くままに、普通に考えたら正義とは違うという行動を平気でやってしまう人間の面白さ、ちょっと崩れたところの魅力を、ある程度正当化せずに勇気をもってバンとぶつかってやって欲しい。野性がある方がかえって面白い役だと思うんですね。それが最後にどうなっているのか? というところなので、それをやっていってもらったらいいんじゃないかなと」と、期待を込めた。
芹香斗亜
三人の中では一人役柄の職業がハッキリしているノアを演じる芹香は「基本情報は精神科医。でも台詞にもあったようになんでも診ちゃう。出産もお手伝いしますし、色々な疾患を診ます……どこまで言っていいんですか? わりと普通の人です(笑)」と、地球から何らかの理由で、水星に脱出した人々が住む場所ならではの、医師像を披露。
(左から)芹香斗亜、真風涼帆、星風まどか
芹香のノアは真風から見ると「私が思っていた役作りとはまた違う感覚を出していて。また新しい役作りができるんじゃないかな? と楽しみにしています」との面白さがあるようで、星風も「芹香さんの演じられるノアは理性的で、穏やかな部分もあって。それが普段お話させて頂いている芹香さんと少し重なるものがあるのかな? と思いながら、お医者様なので私もちょっとお世話になって……」と言いかけて、上田を見て「そんな感じです」と言葉を濁して笑わせる。上田は「芹香さんは一見明るい太陽のような感じだけれども、ちょっと影のあるところも魅力だと思っていて。この二人に比べれば精神科医として安定している役柄ではあるのですが、ノアにも背負っている問題がありまして、明るい雰囲気を出しながらも影があるという役ですので、翳りに魅力のある芹香さんにやって欲しいと思いました」と、芹香が演じるならではのノア像に期待した。
また、音楽を三宅純に依頼したことについて上田から「エンキ・ビラルという人の、大人のアート系の漫画『モンスターの眠り』が好きで。それを読んでいる時に、たまたま三宅さんの音楽が流れてきて、この絵の雰囲気とこの音楽が合うなと思ったところから、音楽を聴いていて今回のお話のような世界観が浮かんできたんです。ですから元々三宅さんの音楽から生まれてきた世界観だったので、だったら源流に戻って三宅さんにこの作品の音楽を書いて頂けたら、どんなことになるんだろう? と思いましてお願いすることになりました」という経緯が語られた。
その音楽の魅力に対して真風は「この世界観を創らせて頂く上で、初めて音楽を聴いた時には衝撃でした。これまでは比較的自分の身体から音楽が出てくるような感覚になることが多いのですが、実際に今日のパフォーマンスですとか、作品を作らせて頂いている時の感覚としては、自分のお役とも関連しているのかも知れないのですが、出てくるというよりも細胞に染みこんでくるような感覚の方が強くて、新感覚の体験でした」
星風が「今回のパフォーマンスでもそうですし、曲とのバランスとの感覚がアンニュイな世界観につながっていくのかなと思いながら、無意識に動かされていく感じとかもリンクしています。作品の中でどんどん色々な曲と出会っていくことで、次はどんな気持ちになるのかな? も楽しみです」
芹香が「曲を聴いた時に心地よい違和感のみたいなものを感じて、それがすごく魅力的だなと思ったので、曲との出会いも楽しみですし、曲からイマジネーションを得て創っていけたらいいなと思います」と、それぞれ、音楽から触発されていくものの多さを語った。
(左から)芹香斗亜、真風涼帆、星風まどか
最後に真風が「私自身、新しい挑戦に日々楽しくお稽古させて頂いております。TBS赤坂ACTシアターに初めて出演させて頂くので、お客様と一緒にどんな世界が創れるか、まずはお稽古を精一杯務めたいと思います」星風が「初日に向けてまだお稽古ははじまって間もないですが、先生が作られた世界観を咀嚼して皆様にお届けできるように、頑張りたいと思います」芹香が「普段は過去のものを演じることが多くて。それがフィクションであってもその時代を調べたり、どういう歴史があったかを知ることによって、自分の中で役柄に対するヒントが蓄積されて、演じていける部分があるのですが。今回は何も情報が調べられない。逆に自分の中からの想像力だけにかかっているかと思うので、そこは楽しみながら想像力を膨らませていきたいと思います」とそれぞれ意気込みを述べ、新たな作品へのヒントとなる言葉が様々に聞かれ、公演への期待が膨らむ会見となっていた。

(左から)星風まどか、真風涼帆
(左から)星風まどか、真風涼帆

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