NIGHTMARE 結成20周年、新曲も披露
し復活のエネルギーに満ちた横浜アリ
ーナ公演をレポート

NIGTHTMARE 20th Anniversary SPECIAL LIVE GIANISM「再悪」

2020.2.11 横浜アリーナ
「ただいまー」という呼びかけに「おかえりー!!!!!」と喉も張り裂けんばかりの観客一丸となった声が横浜アリーナという巨大空間に響き渡る。
誰もが、この瞬間を待っていた――。
2016年11月23日、東京体育館で行なった『NIGHTMARE LIVE 2016"NOT THE END"』から活動を休止していたNIGHTMARE。彼らがバンド結成20周年イヤーに突入した2020年。2月11日に横浜アリーナで行なった単独公演『NIGTHTMARE 20th Anniversary SPECIAL LIVE GIANISM「再悪」』で、3年3カ月ぶりにバンドとして復活の狼煙を上げた。
NIGHTMARE 撮影=宮脇進(PROGRESS-M)
バンド史上初、過去最大級のキャパとなるとなる今回の会場、横浜アリーナ。場内に入ると、センターエリアを横向きに設営するというイレギュラーな仕様で作られた巨大ステージが目の前に広がる。さらに、その舞台からセンター席のちょうど真ん中あたりをぐるりと1周できる花道や、1階席までつながった長いスロープまでが用意されている。過去に、さいたまスーパーアリーナや日本武道館でも1度も見たことがないステージの作りから、NIGHTMARE復活にかけるスタッフたちの並々ならぬ熱い想いが伝わってくる。
NIGHTMARE/YOMI 撮影=宮脇進(PROGRESS-M)
NIGHTMARE/柩 撮影=宮脇進(PROGRESS-M)
NIGHTMARE/咲人 撮影=宮脇進(PROGRESS-M)
NIGHTMARE/Ni~ya 撮影=宮脇進(PROGRESS-M)
NIGHTMARE/RUKA 撮影=宮脇進(PROGRESS-M)
場内が暗転すると「nizm!nizm!nizm!」のSEが流れだし、ステージが真紅に染まると同時にスクリーンにRUKA(Dr)、Ni~ya(Ba)、咲人(Gt)、柩(Gt)、YOMI (Vo)の顔が次々とアップになり、彼らを名前入りで紹介するというNIGHTMAREらしからぬオープニング映像に、観客は両手を広げて咲きまくる。その間、5人はオンステージ。復活の幕開け、聴こえてきたのは「Awakening.」だった。活休を告げるとき、メンバーの心情を読み込んだ咲人作品だ。《歩いて 止まって 裸足で また歩いてく》、画面に映るリリックビデオを見て涙を拭う観客たち。機能性発声障害になり、NIGHTMARE活休の要因を作ったYOMIが《歯をくいしばる》というパートを胸に手をあててアカペラで歌いあげる姿、それに続いてアウトロでコーラスを歌う柩、咲人、Ni~ya、歌わないRUKAの顔もカメラが追いかける。悪い夢が覚めないことは決して悪くはないんだという祈りを自ら叶え、再びこの5人は舞台に集結した。それだけで、胸が震える。そこから活休前ラストの東京体育館と同じ流れで「Can you do it?」を鳴らし、大量のレーザービームが走るなか《もう迷わない もう大丈夫》とあの当時とは比較にならないほど強度を増した歌とサウンドで、堂々復活宣言し、《素敵な悪夢を見たいなら、さあこっちにおいで》と開演早々から「ASSaulter」を叩きつけていく。
NIGHTMARE/YOMI 撮影=宮脇進(PROGRESS-M)
「ただいま」――。この日の第一声をYOMIがマイク越しに大きな声で届けると、オーディエンスが「おかえり!」と温かい言葉で彼らを迎える。幸せな光景だ。この3年半、お互いが一番いいたかった言葉を交わした後は、いよいよ本格的に悪夢が再来!!
ここからは5人がNIGHTMAREとしての本領を発揮。序盤、少し不安定だったYOMIのボーカルはどんどん安定感を増し、ブランクを感じさせない演奏力で現在のNIGHTMAREを見せつけていく。まずはRUKAの代名詞でもある懐かしの「東京傷年」はイントロが鳴っただけで、客席に悲鳴が轟く。RUKAのドラムの切れ味は一気に倍増。このような曲調に柩のラップが入るという曲展開がいま聴くと新鮮に響く。咲人がギターソロをスラップで弾く「ジャイアニズム碌」、いまの時代にぴったりマッチしたおしゃれソウルな「MASQUERADE」など、当時から新しいことをふんだんに取り入れていた彼らを、このライブでは改めて発見した。
NIGHTMARE/咲人 撮影=宮脇進(PROGRESS-M)
カメラが咲人をとらえ、破壊力満点のギターイントロからNIGHTMARE流の爆アゲダンスチューン「惰性ブギー」が始まると、横浜アリーナに大歓声が吹き荒れる。BメロでYOMIが咲人のところに走り寄り、身長差のある2人がくっついて1本のマイクで歌うところや、サビラストに観客がハートを飛ばす振りまで、ここでは昔と変わらない風景を描き出す。センターの花道中央でギターソロを弾き終えた咲人がピックにキスをして客席に投げ込むと、続いて柩が(衣装につけた)しっぽをフリフリしながら笑顔で花道にやってきたり。その間、上手スロープの最先端まで移動していたNi~yaは柵に足をかけ、観客と触れ合うなど、この日のメアは横アリという広大なスペースをメンバーがあちこちに移動することで、観客に距離を感じさせないパフォーマンスを届けていった。こんなに広大な場所を走りまくって移動するNIGHTMAREを観たのは、これが初かもしれない。
NIGHTMARE/柩 撮影=宮脇進(PROGRESS-M)
こうして巨大空間でも客席との距離を感じさせないライブで、場内の温度を刻一刻と高めていったところでNIGHTMAREの看板曲であり彼らの代名詞でもある「the WORLD」を投下。ここからは、バンド結成当初からとことん暗闇のメロディを“歌もの"として届け続け、シーンを魅了してきたNIGHTMAREのドラマチックゾーンがスタート。
誰もが陶然と聴き入っていくなかで始まったRUKA作の夏の終わりのロストラブソング「Lost in Blue」は、ダークな曲だらけの彼らだが、この曲のエンディングではメジャーコードへと転調。そこでYOMIが《最高の顔で笑うんだ》とストレートにポジティブなワードを伝え、歌うと、アリーナ全体が感動の嵐に包まれる。
NIGHTMARE/Ni~ya 撮影=宮脇進(PROGRESS-M)
そうして、NIGHTMAREの原点にこのような歌ものがあることを確認するように、最初期ナンバー「わすれな草」を届けた後は、「Cherish」から再び場内の温度を上げていく。この曲はYOMIとギター隊の絡みでも場内を盛り上げる。YOMIのじゃれ合いに、にゃんにゃんポーズで愛嬌を振りまく柩に対して、咲人は必死に逃走。それでも、最後はYOMIに露出多めだった肌をあちこち触られていた咲人。暗い曲を歌いながらも、こうしてメンバー同士がステージ上でワキャワキャしているところがビジョンに映し出されるたびに、場内は大盛り上がり。
そんな空気をビシッと引き締めるように、続けてNi~yaのベースが観客を沸かせる天下無敵のキラーチューン「HATE」を大量のレーザービームとともにドロップ。このあと、YOMIがバンドとして20周年を迎えられたことについて、観客に感謝の気持ちを伝え「20周年、ここから新しい夢に向かっていきたいと思います」と宣言し、ライブはいよいよ終盤戦へと突入。
NIGHTMARE/RUKA 撮影=宮脇進(PROGRESS-M)
「dogma」のメンバーコールで肩慣らしをしたあとは、「3年ぶりに飛ばしていくぞー! かかってこい!」とYOMIが叫び、RUKAのカウントから「DIRTY」が始まると会場内が絶叫。この曲は、テンポチェンジを繰り返しながらも優れた歌ものとしての整合感に改めて感動。重量感たっぷりの「mimic」は咲人、柩、Ni~yaがアスリートのようにステージ、花道、スロープを大移動するたびに大歓声を巻き起こし、そのままノンストップで「ジャイアニズム究」、炎が吹き上がるなかRUKAの高速ドラムが客席にヘッドバンギングを巻き起こす「ジャイアニズム天」を畳み掛け、センター&スタンド席を狂気の熱狂へと導いていく。
NIGHTMARE 撮影=宮脇進(PROGRESS-M)
そうして、熱狂の果てにさらなるクライマッスを描き出したのは、やはり「Quints」だった。目の前にいる5人が声(RUKAは心の声)と演奏を奏でるなか、観客たちは合言葉を唱えるように《1,2,3,4,5》と指を折り曲げる仕草をする。NIGHTMARが活動休止を発表した後からこの復活までを、メンバー同士、さらにはメンバーとファンをつなぎとめていたといっても過言ではないこの曲をいまここで歌えることに、みんなの心が強く震えている。それが伝わってくるような場内一体となった熱演が、メンバー5人とファンの心を再び強くつないでいった。そうして、暗闇に風と太陽が差し込むような「VERMILION.」で本編を美しく締めくくった彼ら。
NIGHTMARE 撮影=宮脇進(PROGRESS-M)
アンコールは5人の挨拶からスタート。さんざんイメトレをしたおかげでプレイにブランクは感じなかったが、年齢を重ね身体はブランクを感じてると話し出したYOMIは「今日は(中継が入っているので)下ネタいわないように我慢してる(笑)」と明かし、場内の笑いを誘った。次に咲人が話し出すと、YOMIがそのセクシーすぎるボンテージな衣装を指差し「もっと見せてあげて」とリクエスト。すると、カメラが咲人に近づき、下からなめるように身体をアップで映し出し、場内には割れんばかりの悲鳴が轟く。「もうそれなりの年齢なのに、よくこんな格好してるなって思うよ(笑)」と嘆きながらも“老いてなお盛ん"という自身の美学を貫いているところをアピールした。Ni~yaは「よっ! ただいま帰ってきたぜ!」と親しみを込めてファンに話しかけ、復活までの3年半が「意外と早かった」と発言し、ファンを驚かせていた。ハンドマイクを手渡されたRUKAは「なんだろう……いいね」と珍しく自ら言葉を発し、場内をざわつかせる。それを見たYOMIがすかさず「下ネタいいたい?」と近づいていくと「(お前は)ハガネの心の持ち主だな。尊敬するよ」といってRUKAが苦笑いをうかべる。さらにRUKAの言葉を引き出そうと「この後もありますけど」と粘るYOMIに「よろしくお願いします」と返し、RUKA はマイクを置いた。柩は「ここでいいたいことがある」といって「横アリはまーな!」と、柩が敬愛するhideが同所で叫んだ言葉を真似して叫ぶ。
NIGHTMARE 撮影=宮脇進(PROGRESS-M)
そして、活休後各々で音楽活動をしていた5人だが、こうして再び集まってみたら「俺たちは1✕5が5ではなく50にも100にもなる」と話し、「これからも爆発させていくからついてこいよ!」と叫ぶと、場内からは賛同を伝える拍手が沸き起こった。そのあと、YOMIから「俺たち、この日のために新曲を作ってきました」と突然の衝撃発言が飛び出し、客席は狂乱。続けて、この曲が20周年のアニバーサリーシングルとしてリリースされることを伝えたあと、アンコールはその新曲「GIANIZM:RE悪T」の初披露から幕開け。英語になったGIANIZM。そのダークスピリットの根源にあるものを確かめるように「My name is"SCUM”」、Ni~yaのスラップが響き渡る「ジャイアニズム死」と激しく爆走するヘドバンチューンをつなぎ、最後は白煙が吹き上がるなか「極東乱心天国」で天国へ。RUKAの前のお立ち台にメンバーが集まり、観客の合唱に耳を傾けたあと、《もう迷わない》とYOMIが全身を振り絞るような絶唱を放って、ライブは終了。
NIGHTMARE 撮影=宮脇進(PROGRESS-M)
そのあともメンバーを呼ぶ声は止まず、ダブルアンコールはYOMIが「一緒に歌ってね」といって、NIGHTMAREとファンをつなぐ彼らのなかでも唯一無二の明るいナンバー「Star〔K〕night」が始まると、観客たちは手にしたライトに明かりを灯し、横浜アリーナに満天の星空を作り上げる。ライトを掲げた満場の観客のシンガロングが、心温まる光景を作り上げたあとは、それをぶち壊すように「自傷」でステージも客席も最後まで惜しみなく暴れ倒していったフィナーレ。そこには、20周年をこれから勢いよく駆け抜けていくNIGHTMAREの強い意思と、復活後、エネルギーに満ち溢れたいまの彼らの迫力が弾けんばかりに満ち溢れていたのだった。
そう……悪夢は、まだまだ終わっていなかったのだ。
これから始まる『NIGHTMARE BIRTHDAY LIVE 2020』、『NIGHTMERE TOUR 2020』と復活したNIGHTMAREがいま奏でる最高の悪夢を、ツアーを通して体感してみてほしい。意外と、悪夢も悪くないものだ。
取材・文=東條祥恵 撮影=宮脇進(PROGRESS-M)
▼【インタビュー】活動休止中の3年間、何を想い、そして歩き始めるのか?
>>【YOMI(Vo)/柩(Gt)/咲人(Gt)編】
>>【Ni~ya(Ba)&RUKA(Dr)編】

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