『D4DJ D4 FES. -Departure-』ライブ
レポート!キャストとファン達が強く
結びつける空間

「BanG Dream!(バンドリ!)」、「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」など、大ヒット作品を送り込んできたブシロード。彼らが新プロジェクト「D4DJ」のタイトルを発表したのは、2018年12月末の「ブシロード DJ LIVE」でのことだ。
そこから1年をかけて、ライブ活動を通し、さまざまな発信をしてきた。DJライブ・アニメ・ゲームという3メディアでの展開、キャラクタービジュアルの紹介、大事な情報はすべて「ライブ」という現場から伝えてきた。
今回TOKYO DOME CITY HALLで催された『D4DJ D4 FES. -Departure-』は、前後に告知されていたナンバリングライブとは別に予定されているという特殊性や、全キャストが初めて揃うということも加わり、ファンからも非常に大きな注目を浴びていた。
登場する5組のユニットは、それぞれに与えられたイメージや方向性を落としこみ、まだ本格的な始動を迎えていない作品として、どのようにユニットを表現していくのか?そこはやはり難題だっただろうと思う。演じるキャスト達にとっては答えの出にくい問いかけであろうし、反面、「どのように表現されるのか?」という期待も生まれてくる。フルキャストでお送りした今回のライブは、一つの指標になりえるライブだったといえよう。
ライブ開始10分前から、フロアは完璧に埋まり、いまか今かと待ちわびるディグラー(注釈:今作ファンの愛称)が笑顔で待ちわびる。19時になったと同時に、照明が落ち、映像が流れはじめ、大歓声とともに沸く会場。海外フェスの大観衆が盛り上がる映像と、大音量で往年の名曲がかかった。。壮大な演出での始まり方が、この日のライブのムードにハマっている。
Happy Around! (c)bushiroad All Rights Reserved. Photo:福岡 諒祠
最初に登場したのは、この作品で主役を務める4人組のHappy Around!だ。「彼女らの明るい曲調が、会場の期待をバーストさせ、先頭バッターを務めるのがふさわしいパフォーマンスを見せた。1曲目で披露したのは、彼女らの代名詞とも言える曲「Dig Delight!」で、早くもディグラーたちのテンションはマックスに。
Happy Around! (c)bushiroad All Rights Reserved. Photo:福岡 諒祠
Happy Around! (c)bushiroad All Rights Reserved. Photo:福岡 諒祠
だが、1番歌詞を終えたタイミングでこの曲から次曲へと繋ぐ、え?!こんなに盛り上がってるのに?と驚くディグラーも多かっただろうが、「曲から曲へと繋ぐ」DJというコアな部分を見せつけるように、ドンドンと繋いでいく。
Happy Around! (c)bushiroad All Rights Reserved. Photo:福岡 諒祠
カバー曲はすべてクラブ向けのサウンドにリミックスされている。ハウス、ドラムンベース、EDM、レイヴ、トランス、ハッピーハードコアなどをしっかりと踏襲しつつ、パートによってはドリルンベースか?と思えるほどに細かなキックサウンドもある。例えば「ココロオドル」はフル尺での披露となったのだが、ドラムンベース寄りのリミックスになっていて、原曲のファンキーさよりも、ハードなキックサウンドをメインにしたリミックスになっていたのが面白い。
Happy Around! (c)bushiroad All Rights Reserved. Photo:福岡 諒祠
アニソンDJの経験もある西尾夕香(愛本りんく役)と、ステージ上での笑顔が印象的な三村遙佳(大鳴門むに役)と、ショルダーキーボードのパフォーマンスで魅せる志崎樺音(渡月 麗役)とDJを務める各務華梨(明石真秀役)はロートーンなボーカルと、演奏と振る舞いを通じて、キャラクター本人のハッキリとした顔を見た気がした
20分少々のアクト、「ありがとうございました!」と告げてステージをあとにすると、すぐに2番手の燐舞曲(ロンド)が登場した。この日のライブ、実はMCらしいMCを挟むタイミングが本当になく、矢継ぎ早に楽曲が披露され、5組のライブが披露されたのだ。
リミックスとはいえ、次から次に有名曲や好きな曲がかかっていく、このスピード感たるや、アニソンクラブイベントに何度か足を運んだことのある自分から見ても、それらに引けを取らない怒涛の展開と言えるものだろう。
燐舞曲 (c)bushiroad All Rights Reserved. Photo:福岡 諒祠
5組のなかでも、最もロック色が強いユニットが燐舞曲(ロンド)である。1曲目の「瞬動-movement-」から、大塚紗英(月見山 渚役)のギターがラウドに鳴らされ、ドラムサウンドもクラブ寄りのフレーズとロックバンド寄りのフレーズとが掛け合わされ、さながらミクスチャー・ロック系のサウンド。楽曲制作にMY FIRST STORYのShoが関わっていることからもわかるように、サウンドの指向性はラウドロックにかなり寄せたものになっているのだ。
燐舞曲 (c)bushiroad All Rights Reserved. Photo:福岡 諒祠
燐舞曲 (c)bushiroad All Rights Reserved. Photo:福岡 諒祠
新たにカバー楽曲として披露された「Rising Hope」に続き、「東京テディベア」を披露したあたりで、燐舞曲のメンバー4人が楽曲に合わせたストーリーを演じていることに気づく。4人でボーカルをとる場面もあるが、4人全員ともに歌声は繊細。轟音のロック&クラブサウンドのなかで、聞こえる歌声は、自己憐憫と生き辛さを嘆くように見えた。

燐舞曲 (c)bushiroad All Rights Reserved. Photo:福岡 諒祠
燐舞曲 (c)bushiroad All Rights Reserved. Photo:福岡 諒祠
新曲として披露された「Horizontal Oath」からカバー曲の「unravel」に至るまでの4人の姿は、既にユニットとして一つの世界を堂々と提示していたといえよう。合計6曲を経て、会場にピンと張り詰めていた緊張感は、照明の点灯でフッと途切れた瞬間に、あふれるようにして拍手へと一気に変わっていた。4人一列に並び、挨拶を終えてもなお、彼女らへの拍手は鳴り止まなかった。
Photon Maiden (c)bushiroad All Rights Reserved. Photo:福岡 諒祠
続いて登場したのは、Photon Maidenの4人、割れんばかりの歓声が彼女らに向けられる。同じブシロード作品である「BanG Dream!(バンドリ!)」「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」に参加している紡木吏佐(出雲咲姫役)、前島亜美(新島衣舞紀役)、岩田陽葵(花巻乙和役)佐藤日向(福島ノア役)の4人で結成されているため、彼女らをすでに知るファンからすれば期待値は当然高いわけなのだが、実はこの日のライブが、4人が揃う初めてのライブなのだ。
Photon Maiden (c)bushiroad All Rights Reserved. Photo:福岡 諒祠
Photon Maiden (c)bushiroad All Rights Reserved. Photo:福岡 諒祠
ブシロード作品を追いかけるファンの方からすれば、彼女ら4人がどれほどに忙しい身かはおわかりのはずだ、この1ヶ月の間で4人は別作品のライブや舞台などに参加していたのだ。曰く、このライブのために非常に限られた時間の中で4人全員が集まってリハーサルをした。
Photon Maiden (c)bushiroad All Rights Reserved. Photo:福岡 諒祠
Photon Maiden (c)bushiroad All Rights Reserved. Photo:福岡 諒祠
だが、この日のステージを見た人からすれば驚かれるだろう。EDMとフューチャーベースを志向したエレクトロなサウンドのなかで、前島・岩田・佐藤はキレのあるダンスパフォーマンスを見せてくれた。ステージや舞台に向けて日頃から体を動かしている3人にとって、ダンスを覚え、フォーメーションを確認できれば、時間が少ないなかでも完成度を一気に高められるということなのだろう。

もう一つ驚きだったのは、4人の声色と楽曲とのマッチ度だ。4人の声色はそれぞれ違えど、クリーンな声を出せる4人だ。曲の途中で、ロボット声のようなエフェクトが怖いほどハマる、クセや雑味のない透き通った声が出せる4人。フューチャーベースやEDMには、そういったクリーンな歌声がよく映える。
ハイライトシーンと言えるのは最終曲の「“What” are you?」だろう。高水準のパフォーマンスのなかで初めて披露された新曲ということもあって、固唾を飲んでライブを見つめるディグラー、曲がフッと終わった瞬間、拍手と歓声がワンテンポ遅れて巻き起こった。彼らがPhoton Maidenにどれほど魅入られていたか、そしてこの日のハイパフォーマンスがどれほどのものだったか、あの瞬間が雄弁に語るだろう。
Merm4id (c)bushiroad All Rights Reserved. Photo:福岡 諒祠
4組目に登場したのはMerm4id、黄色を基調にした衣装、花飾り、他のユニットに比べるとちょっとだけ多めに肌を露出し、往年の名曲「CAT'S EYE」「キューティーハニー」をカバーしているところで、セクシー&ギャルな路線とキャラクター性は目に見えてわかる。新たなカバー曲として披露されたのは「Gamble Rumble」という選曲で、ユーロビート、レイヴ、トランスをしっかりと組み込んでいた。
Merm4id (c)bushiroad All Rights Reserved. Photo:福岡 諒祠
Merm4id (c)bushiroad All Rights Reserved. Photo:福岡 諒祠
そういったバックボーンに90年代ミュージックシーンを想起するのは、自然な流れだろうと思う。彼女らのオリジナル曲を歌ったときには、VJにドライブシーンが頻繁に使われていた。車を愛する日本人ならば、そういった過去の流れとMerm4idを、どう関連付け、あるいは距離を置き、オリジナリティを生んでいくのか。その意味でも注目に値するだろう。
(c)bushiroad All Rights Reserved. Photo:福岡 諒祠
Merm4id (c)bushiroad All Rights Reserved. Photo:福岡 諒祠
また彼女ら4人のうち3人は、もともとはアイドルとして活躍していたメンバーである。それがゆえに、ライブ上でのダンスや振る舞い一つ一つに衒いや迷いがほとんど見受けられないのが印象的だった。実は彼女らMerm4idは、D4DJという枠を飛び越え、他のアーティストと肩を並べてDJイベントにも出演した実績があるのだ。D4DJという看板を背負ってのライブをこなしてきた彼女らは、今後のキーユニットになりえるのかもしれない。

Peaky P-key (c)bushiroad All Rights Reserved. Photo:福岡 諒祠
最後に登場するのは、Peaky P-keyだ。1曲目に披露された「電乱★カウントダウン」、10から始まるカウントを割れんばかりの声でカウントダウンしていき、始まった瞬間からの盛り上がりは、まさに今日一番と言っても過言ではなかったろう。キラーチューンであるこの曲が生む瞬発的な攻撃力はさることながら、Photon Maidenと同様にディグラーにも周知の4人のメンバーが、この日初めて4人揃って登場したのだ。
Peaky P-key (c)bushiroad All Rights Reserved. Photo:福岡 諒祠
Peaky P-key (c)bushiroad All Rights Reserved. Photo:福岡 諒祠
Peaky P-keyは、愛美(山手響子役)をメインボーカルに、小泉萌香(笹子・ジェニファー・由香役)と倉知玲鳳(清水絵空役)はパフォーマー、高木美佑(犬寄しのぶ役)がDJとして登場していた。
Peaky P-key (c)bushiroad All Rights Reserved. Photo:福岡 諒祠
妥協しない姿勢で音楽に取り組み、ヒロインユニットであるHappy Around!が憧れているユニットになると思われる、その姿勢がライブでこのように現れていたのだろう。Photon Maidenの4人と同じく、リハーサルが限られている中で、ここまでフロアを沸かせられるパフォーマンスは見事だと言えよう。
Peaky P-key (c)bushiroad All Rights Reserved. Photo:福岡 諒祠
特にアニソンDJとしても活動している高木は、エフェクトにあまり頼ることなく、次々と曲を繋ごうとトライしていた姿は印象的。初々しさを感じる場面はあったものの、4人揃って初めてのライブ、そしてこの日の大トリをしっかりとこなしてみせた。
こののち、ゲームプロジェクトとアニメプロジェクトの発表会へと移っていき、発表された新情報もディグラー達による大歓声を持って迎えられていた。
これまでキャラクターの立ち絵と少々のショートストーリーが発表されているのみだったこの作品が、どうして満員チケット売り切れとなり、映画館でのライブビューイングまで行われるほどになったか。それはライブ活動を通し、キャストとファン達が強く結びつける空間がまず先に用意されたからだろう。
この日のライブは、衣装やパフォーマンスを含めて、一つの答えをだしたといえよう。もちろんここが新たな段階へのスタートラインであり、ライブ活動としては叩き台となりえるライブだったと思う。大歓声で迎えたフロアのディグラーにとっても、十分すぎるほどのライブアクトだったと思う。
彼女ら5組により多くの時間が与えられていたら?より作品が広く深く知られるようになったら?どんなライブは表現されるのだろうか?さまざまな可能性が脳裏をよぎる、大成功のライブだったのではないだろうか。
取材・文:草野虹

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