Weekend Brothersインタビュー マイ
ンドもグルーヴも相性抜群な3人の放
つポップスが“楽しい”ワケ

昨年解散したShiggy Jr.の男性メンバーだった3人が、新しいバンドを始動した。バンド名は、Weekend Brothers。週末に訪れる、あの心踊るワクワクした気分を掲げたバンド名が表すとおり、このバンドのコンセプトについて、ボーカルの原田茂幸(Vo/Gt)は、「“いろいろあるけど、大丈夫だよ、楽しくやろう”みたいな音楽をやりたい」と語っている。そして、そんなバンドの想いを込めた第一弾シングルが、1月17日にリリースされた「最高の1日を」だ。80年代ソウル・テイストを現代的な感覚で良質なポップスへと落とし込んだその楽曲は、決して高らかにバンドのはじまりを歌うわけでもないし、直接的に熱いメッセージが込められているわけではないかもしれない。だが、ひとつの信念を掲げて、再びバンドを動かし始めた男たちの覚悟が詰まった曲だと思う。以下のテキストでは、その楽曲を軸にしながら、改めて新しいスタート地点に立った原田、森夏彦(Ba)、諸石和馬(Dr)の3人に、Weekend Brothersが目指すものは何なのか、話を訊いた。
——どういう経緯で新バンド結成の流れになったんですか?
原田:んー……誰か話して。俺はあんまりうまく喋れない(笑)。
森:(Shiggy Jr.が)解散するってなったときに、この3人で飲みに行ったんです。そのときに、誰が言い出したわけでもなく、自然に“3人でやろう”ってなったんですよ。
諸石:そのときに、“今後どうする?”みたいなことを話し合ったんです。で、“やっぱり3人でやるのが一番おもしろいんじゃないか”っていう流れになって。そこから、具体的に何をやるか?みたいなことを飲みながら話して、そのまま始まった感じですね。
——ホームページには「15分にわたる激論があった」というようなことが書いてありました。
森:そうですね(笑)。本当に15分ぐらいで決まったから、結成した日とかも覚えてないんです。
——当時、選択肢はたくさんあったと思うんですよ。もう音楽を辞めてしまうとか、続けるにしても、このメンバーではやらないとか。でも、一緒にやることに迷いはなかったですか?
諸石:バンドをやる熱量が下がってなかったんです。3人とも、“ずっと音楽を続ける”っていう意思は固かったから、シギーは解散してしまうけど、バンド自体は続けたいっていう気持ちが残ってる状態だった。だから、この3人でバンドをやるのは自然な流れでしたね。
——このメンバーなら、もっと面白い音楽をやっていけると。
諸石:そうですね。しかも、これからはシゲが歌うことになるから、それでどうなっていくんだろう?っていう期待感もあって。それを想像して気分が高揚する感じでしたね。
——新しいボーカルを迎えるとか、引き続き女性ボーカルでやるっていう案はなかったですか?
原田:一瞬アイディアとしては出たんですけどね。
森:ここから新しいメンバーを迎えて関係性を作っていくのも難しいし、せっかくこの3人が良い感じだから、これを核にしていったほうがワクワクするんじゃないか?っていうのが共通認識だったんです。今後、活動のなかでフィーチャリングとかを入れることはあるかもしれないですけど。
——それから3人でスタジオに入って?
原田:基本的に作業をするのは、諸石の家ですね、スタジオというよりは。
諸石:最初はシゲの家だったんですけど、3人でどんな音楽を作るのかっていう形ができてからは、すぐに録っちゃおうみたいな感じになって、作業現場が諸石宅に移っていったんです。大体3~4日の合宿形式で曲を作ることが多いかな。
森:やろうって決めたときに、集中してバッと作る感じですね。
——この3人だけで作業しているときというのは、どんな心手応えを感じてますか。
原田:いちばん最初のインディーズ時代に戻った感じがしますね。他の誰かに何かを言われるわけでもなく。すごく自然なかたちで作れてるのかなって。
諸石:本当にシギーを組む前の状態ですよね。何かを作っていく初期衝動みたいなものが溢れてて。3人でアレンジをしてるから、“この展開が熱いんじゃない?”とか、“このフレーズを入れようぜ”っていうのが、ガンガン採用されていくスタイルなので。録っていて面白いですね。
森:たぶん、一人で作ったらできないような音楽ができるんですよ。“これ、ありえないでしょ”って思うようなことも、やってみたら意外とハマって。そういう化学反応も出てるから、わりと一筋縄ではいかないアレンジなったりするのが面白いですね。
——いまどれぐらい曲のストックはあるんですか?
諸石:5~6曲ですかね?
原田:昔からやってた曲もあったりするから、デモはもっと多いですね。
森:全部で10曲ぐらいかな。
——いまは完全に自分たちだけでバンドを動いているんですか?
原田:そうです。ディストリビューション(商品流通)は入っていただくんですけど。それ以外は、アー写を撮るにしても、レコーディングするにしても全部自分たち主導でやってますね。諸石のお兄ちゃんがマスタリングエンジニアだったりするので、自分たちのツテを頼って作ってる感じです。
諸石:だいぶDIYなんです。
Weekend Brothers 撮影=風間大洋
——話は逸れるけど、原田くんは『LIVING ROOM RECORDING』っていう、インターネットで配信する音楽番組をはじめましたよね。
原田:あ、カバー動画ですね。あれはウソツキの竹田(昌和)くんが“YouTubeで何かやりたい”って言って。で、三浦(隆一/空想委員会)さんを誘ってやりはじめたんです。いままでは、メンバー以外の人たちと一緒に演奏する機会が少なかったから、楽しいですね。“この人はこういうプレイだな”とか、“世の中には上手い人がいっぱいいるな”って思いますし(笑)。アーティストっていう感じではないスタジオ系の人も多いんですけど、知り合いが集まってやってる感じです。
——そこには、諸石くんと森くんは参加してないんですよね?
原田:なんか、メンバーは嫌じゃないですか(笑)。竹田くんも“メンバーは呼ばない”って言ってて。まあ、バンドとは関係なく、息抜き的な感じでやってますね。
——そこでのカバーの選曲が、竹内まりや「プラスティック・ラブ」とか、山下達郎「クリスマス・イブ」あたりだから、原田くんのルーツを感じられて面白いなと思ってます。
原田:そのへんは大学生のときに、いちばん聴いていた曲なんですよね。
——で、Weekend Brothersとしてリリースされた初の楽曲「最高の1日を」も、90年代の日本の良質なポップスに通じる部分もあるなと思っていて。
原田:ありがとうございます。
——バンドの第一弾ナンバーにこれを選んだ理由はありますか?
諸石:ああ、なんでだろう……?
森:3曲ぐらい候補はあったんですけど、自然と“これだ!”ってなったんです。
諸石:なんとなく、はじまりっぽいというかね。
森:曲自体はシギー時代からあったものなんですよ。
原田:これからやろうとしてるものに直結した内容だなと思ったんです。歌詞にしても、サウンドにしても。僕らは、“いろいろあるけど、大丈夫だよ、楽しくやろう”みたいな音楽をやりたいなと思ったんですよ。“楽しけりゃいい”みたいな雰囲気があるので。
諸石:楽観的なムードというか。僕らは全員“なんとかなるっしょ”とか、“楽しく生きるのが一番いい”っていう感覚が共通してるので、その感じですかね。
原田:葛藤とか、そういうことを歌うんじゃなくて。もっと前向きなものをやっていきたいなっていうのはありますね。
森:バンドのコンセプトに一番合ってたのかもしれないですね、この曲が。
——あえて“楽しい音楽”をコンセプトに掲げるのは、たとえば、病んだ感情を吐き出すような音楽が多いことへのアンチテーゼだったりもするんですか?
原田:うーん……そこはないですね。そういう音楽も好きではあるし。でも、そもそも僕ら自体がそういう雰囲気の人たちじゃないというか、どちらかと言うと、バカっぽいくらい明るいので。
諸石:“こんな3人もいるぜ”って見せることで、明るくなってもらったほうがいいんですよ。
森:むしろ暗い音楽をやることに違和感があるよね。狙ってやってるわけじゃなく、本当にこういう人たちだから、“なんとかなるっしょ”っていう曲ができるんです。
——例の最初の飲みのときに、そういう話もしたんですか?
諸石:そう言えば話したよね。“これから、どういうジャンルをやっていくか?とか。そのなかで、“オルタナティブR&Bじゃね?”っていう話にもなったんですよ。アーバンな感じがいいんじゃない?っていう流れにもなったんでけど、結局そうはならないんですよ、シゲの曲は。
——ルーツとして通ってないから?
原田:というよりも、人じゃない? 性格として。
諸石:性格的に、アーバンにならないというか。バカっぽい感じになっちゃう(笑)。
原田:Shiggy Jr.のインディーズ時代に“ニート歌謡”って言われたことがあるんですよ。無責任な楽しさみたいなことですよね。生きてたら、いろいろあるじゃないですか。でも、音楽は無責任でいいんじゃないかなっていうこと。それが悪くない表現だなと思ってるんです。
——そういう意味では、精神性としてはShiggy Jr時代の流れも受け継いでいると。
原田:それが好きなんだろうなと思います。
——バンド名にも、その意思は込められているわけですよね。
諸石:そう、週末のみんながワクワクする感じですよね。最初はWeekendersっていう案も出たんですけど、ハマらないなってときに、Weekend Brothersが出てきて。
森:ダサさは紙一重だけどね(笑)。
諸石:ダサいけど、なんかいいなってなったんですよ。
原田:ソウルっぽいのがいいなっていうのはあったんじゃない?
森:ブレッカー・ブラザーズとか、アイズレー・ブラザーズとか。
原田:ザ・ブラザーズ・ジョンソンとか。
諸石:そういうノリのバンド名にしたかったんです。
Weekend Brothers 撮影=風間大洋
——もともとはオルタナティブR&Bっぽいジャンルを目指してはいたけど、自分たちらしいサウンドを探っていくうちに、結果として自然とソウルに落ち着いたっていうのは面白いですね。
原田:結局、楽観的な音楽には、ソウルっぽいもの、モータウンっぽいものが似合うなっていうのはありましたね。俺はモータウンをずっと聴いてたし、メンバーもみんな好きですし。
森:あと、打ち込みでキラキラしたものというよりは、バンドっぽくしたいっていうのもあって。3人でやってる意味というか、顔が見えるものにしたいっていうのは意識してます。生々しい空気感が伝わるようなアレンジとか音にしたかったんです。
——最近の音楽シーンの傾向としては、ブラックミュージックにルーツがあって、卓越した演奏技術とかグルーヴ感を持ったうえで、良い歌を聴かせられるバンドに人気が出てきてると思ってて。Weekend Brothersも、その系譜に連なる可能性はあると思います。
原田:でも、シーンとしては、もう少しアーバンなものが流行ってる印象はあるかな。
諸石:僕らのやってることは、もっと泥臭い感じなんですよ。シティっぽいけど、シティには、クールなシティと泥臭いシティがあって。どちらかと言うと、僕らは泥タイプなんです(笑)。
——なるほど(笑)。今回、Weekend Brothersを始動するにあたっては、シギー時代の音楽性と比べられるところもあると思いますけど、その差別化は意識しましたか?
原田:そこは、池田(智子)が歌っていたのと、俺が歌うって違いだけで差別化はできますからね。「最高な1日を」っていう曲自体、さっきも言ったとおりシギー時代からずっとあった曲ではあるんですけど、“これは俺の曲だな”と思って、ずっと温めていたものだったんです。基本的に、作り方は同じなんですけど、“誰かに”作ってるものじゃなく、より“自分に”っていうか……何って言ったらいいんだろうな、よりパーソナルなものにはなるんだろうなと思います。
——作った当時から、“自分の歌だな”と思ったっていうのは、ちょっと言葉では説明しづらい感覚かもしれないですね。
原田:うん。池田にもハマるとは思ってたんですけど、でも、俺が歌ったほうが、たぶんいいなって思ってて。もともとインディーズの、本当に最初の頃は、全部自分のために曲を作ってたんです。そこから、少しずつ池田が歌うことを意識して曲を作るようになっていくようになるんですけど。いまはまた自分に戻ってくる感じはあるんですよね。
——意識しなくとも、それが自然とシギーとの差別化にもなっていく。
原田:と、俺は思うけど、どうだろう?
森:うん、そう思う。シギーのときは、(原田は)作曲者の立ち位置だったけど、いまは自分で歌って詞も書いてるから、全然違いますよね。フロントマンっていう感じになってるので。
——最後に、今後のWeekend Brothersの活動について聞かせてください。
原田:ひとまず、この「最高の1日を」を皮切りに3ヵ月連続で新曲を出していきたいと思ってます。5月ぐらいには5曲入りのEPみたいなのを出せたらいいなと思ってますね。で、10月ぐらいにアルバムができたらいいなあっていう。……3人だけで動いてるので、どうなるかわからないけど。
諸石:もう第二弾の曲はできてるんですよ。
森:ちょっとアップテンポなんですけど、次も楽しい感じの曲ですね。
——その先の目標とかはありますか?
諸石:やっと「最高の1日を」を出して、スタートラインに立てたところなので、いまは目の前のことにいっぱいいっぱいな状態でもあって。やっていくなかで、これから大きい目標もできてくるんじゃないかなと思ってるんです。強いていうなら、……まあ、人気者になりたいですよね(笑)。
——(笑)。いまは1曲1曲、自分達たちが良いと思う曲を聴いてもらうことが大事というか。
諸石:そうですね。純度の高いものを出し続けていきたい。そっちの優先度のほうが、バーンと一気に人気に火をつけるっていうことよりも高いなと思ってます。
森:楽しい感じをやり続けて、それを見てお客さんも楽しくなってくれて、そういう人たちが増えていけば、勝手にバンドは良い感じになっていくと思うから。まずは自分たちが楽しむっていうことを最優先にしてやっていきたい。それが自分たちのエネルギーを加速させていくと思ってます。
原田:せっかく自由なのでね。いまは何もしがらみがないぶん、より音楽を煮詰めていけたらいいなっていうのはあります。がんばるのは、もちろんがんばっていくんだけど、“こういう人に届けるには、こういうことをやらなくちゃ”とかいうことは一切やらずに、単純に自分たちがやりたいこと、楽しいと思うことを、1曲1曲でやっていけたらいいなと思います。
——原田くんはツイッターで「我々はゾンビのように這い上がる」って書いてましたね。
原田:それ、言われると恥ずかしいですけど。這い上がろうと思います!(笑)

取材・文=秦理絵  撮影=風間大洋
Weekend Brothers 撮影=風間大洋

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