雨のパレード、新体制の幕開けを飾る
『BORDERLESS』

1月22日、雨のパレードの新体制第1弾となるフルアルバム『BORDERLESS』がリリースされた。

2019年1月にベーシストが脱退し、福永浩平(Vo)、山﨑康介(Gt)、大澤実音穂(Dr)の3人体制で新たなスタートラインに立った雨のパレード。この1年で、彼らは楽曲制作やライブパフォーマンスの手法を根本から変え、PC機材の導入やライブにおける同期の使用など、新たな手法を試してきた。祝祭的なムードに満ちあふれた新作『BORDERLESS』は、そんな第2章の幕開けにふさわしい作品に仕上がっている。

新体制での1年でバンドに訪れた変化と、その集大成とも言うべきアルバム『BORDERLESS』について、3人に話を聞いた。

Photography_Kiruke
Interview&Text_Akihiro Aoyama
Edit_Miwo Tsuji

「漫画」から広がるカルチャー談義

――『BORDERLESS』の話を聞かせていただく前に……。福永さんには、大好きな漫画について熱く語る連載『漫画deトランス』で、いつもお世話になっております!

福永浩平(以下、福永) : こちらこそ、ミーティアさんには、いつもお世話になっております! Vol.3では地元の友達・マコを呼んで『鋼の錬金術師』について語ったので、これを読んでいる方には、連載も読んでもらいたいです。
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山﨑康介(以下、山﨑) : え! 一般の友達呼んだの!?(笑)

福永 : そうなんだよ、小学校からの思い出を友達と語るっていう。

――Vol.3がこれまでで1番面白い気がしています。福永さん以外のお2人も漫画はお好きですか?

山﨑 : 僕も好きですね。というのも、福永の影響をかなり受けていて……。

福永 : はい、教育しました(笑)。

山﨑 : もともと、王道の少年誌系はあまり読んでなかったんです。それよりも『ミナミの帝王』とか、『カイジ』とか、そういう年齢層高めの漫画が好きだったんですけど、とりあえず『ONE PIECE』から教えてもらって、今は少年誌系の有名どころは一通り読んでますね。最近だと、『BEASTERS』にハマってます。アニメもすごく面白くて。

大澤実音穂(以下、大澤) : アニメ、すごい面白いよね。私も『BEASTERS』と『鬼滅の刃』と『進撃の巨人』は読んでます。それも、福永の圧がすごくて(笑)。『進撃の巨人』は最初、絵が苦手だったんですけど、「絶対に読んだ方がいい!」って圧をかけられて、読み始めたら、すごく面白かったです。
――他に、音楽・漫画以外のカルチャーで好きなものはありますか?

福永 : 僕は時期によってピークがあるんですけど、いっぱい好きなものがあります。最近だと、スパイスカレー作りとか、ピストバイクいじったりとか。ずっと好きなのは、漫画と映画ですかね。アニメもちょくちょく観てます。あと、お皿が好きで、吉田直嗣さんっていう好きな陶芸家の作品を少しずつ集めてます。建築物も好きですし、写真も好きですし……。

――すごく多趣味ですね! ゲームとかはどうですか?

福永 : ゲームも好きなんですけど、長いRPGとかは苦手で。『塊魂』とか、単純な作業ゲーみたいなものや格ゲーが好きでした。ゲームは、音楽要素が良いものが好きですね。

――大澤さんは何かありますか?

大澤 : コスメはずっと好きですね。あと、上京したての頃は写真展をよく観に行っていました。地元・鹿児島は田舎だったので、あまり美術館とかが身近になかったんですけど、東京にはたくさんあるので。植田正治さんや、ライアン・マッギンレーさんだったり……、そういった写真家が好きでした。他にも、Netflixで映画やドラマを観るのも好きです。
――山﨑さんは?

山﨑 : ずっとハマっているのは、ゲームの『PUBG』ですね。2年くらい前にモバイル版がリリースされてからずっとやってます。

大澤 : すごい上手いよね。iPhoneの小さい画面に、指4本(両手の親指と人差し指)使ってやってる。

山﨑 : そう。だから、今iPadが欲しいんですよ! 上手い人はみんなiPad使ってるから。

新体制は本当に1からのスタートだった

――完全に話がそれてしまいましたが(笑)、ここからはアルバムについて聞かせてください。今回リリースされた『BORDERLESS』は、新体制初のアルバムとなります。アルバムとしてのビジョンが固まったのはいつ頃ですか?

福永 : このアルバムを作り始めた頃にベースの脱退があったので、ビジョンを掲げて作るというよりも、新しい曲の作り方だったり、新しいライブ方法の構築だったりに頭を使っていました。4人の時はセッションで曲を構築して、そのままライブして、っていう状況だったので、自ずと手の本数しか音数を出せなかったんです。今はセッションでの制作が出来なくなったので、PCに向かってDAW上で構築していく手法に変わりました。それによって、やりたかったけど出来なかったこと、重ねたかったけど重ねられなかった音を積極的に試せるようになったんですね。あとは、今までレコーディング後に詰めようとしていた作業をレコーディング前にも詰められるようになったり、ライブでも今まで出来ていなかった音の重ね方を試せるようになったり。制作面でもライブでも、いろいろと新しいことを試せて、充実した1年でしたね。
――新体制になって、セッションからPCを使った新しいアプローチに移行するまでに、戸惑いの時期はなかったですか?

福永 : 逆に、もう、やったれ! って感じでしたね。新体制になってすぐに、3人で渋谷の楽器屋さんに行って、インターフェイスを買いました。康介さんもパソコン買ったり、DAW買ったり、必要なエフェクターを買ったり。

――では、本当に機材を揃えて1からのスタート、という形だったんですね。

福永 : そうですね。その時点で既に次のライブが決まっていたので、それに間に合わせなければいけなかったんです。スタジオに入って実際にやってみると、意外とできるなって思いましたし、むしろ「レコーディングでこんな音入れてたな」とか「俺のコーラス、束でやるのカッコいいな」とか、新鮮に感じる部分がたくさんあって。それからライブを重ねることで作り上げていった形です。

「大人の言うことを聞いてみよう」

――それから、音源としては蔦谷好位置さん共同プロデュースの楽曲が続きました。蔦谷さんとの作業を始めたのは新体制になってからですか?

福永 : 実は、蔦谷さんとは4人の頃から作業はしていたんです。最初に出来たのが「Trust」で、それはほぼリミックスのような形でした。それから少し経って、「Ahead Ahead」を作り始める時期に脱退が決まったので、改めて昨年の1月に蔦谷さんと話して、新体制での「Ahead Ahead」を作っていきました。
雨のパレード – Ahead Ahead (Official Music Video)

――「Trust」はリミックスに近い形とのことでしたが、原曲とはどれくらい違うものだったんでしょうか?

福永 : 蔦谷さんには、自分たちではほぼ完成に近いと思っている形で投げたんです。蔦谷さんから返ってきたものは、楽器の質感が大きく変わっていたり、僕らの考えでは今まで入れてこなかったパーカッションの音が入っていたりして、最初はいただいたアレンジのご提案に違和感があったというのが正直なところでした。それで、バンドと一緒に構成してもらったり別のアレンジに作り直したりしてみたんですが、「Ahead Ahead」の制作を経て、もう1回「Trust」を聴き直したときに「あの音は消さない方がよかったのかな」という感覚があったんです。そこでまた作業し直して、最終的には最初のバージョンに近い形になりました。

――「Ahead Ahead」を出した前後で、何か意識の変化があったと。

福永 : そうですね。僕の中で、去年1年は「大人の言うことを聞いてみよう」という裏テーマがあって(笑)。蔦谷さんと作業を始めたばかりの頃は自分でも気構えていた部分があったのか、「絶対に自分の意見は曲げないぞ」みたいに思っていたんです。でも、作業を進めていくにつれ、凄くセンスのある方なんだって、当たり前なのですが実感して。導き出す答えや精神性だったりも僕とすごい近いように感じたんですね。信頼できる方だということは数回一緒に作業しただけで分かったので、「Ahead Ahead」では意見を主張し過ぎずに、受け入れる範囲を広げてみようと。
雨のパレード – Summer Time Magic (Official Music Video)

――蔦谷さんから言われた言葉で、印象的だったものは何かありますか?

福永 : パフォーマンスで圧倒するアーティストと、一緒になって盛り上がれるアーティスト。アーティストには2種類いて、どちらも正しいんだと言われましたね。僕らはどちらかというと前者だったんですけど、「Ahead Ahead」をリリースパーティーで初披露した時に、お客さんがすごく盛り上がってくれたんです。それは僕らの中では新しい感覚で、こういうライブもアリなんだなって。その経験があって制作を進めていったので、「Summer Time Magic」だったり「Trust」だったり、良いと思える曲の幅が広がっていきました。

雨のパレード、新体制の幕開けを飾る『BORDERLESS』はミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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