【シーナ&ロケッツ インタビュー】
大好きな曲をカバーするのは喜びで、
ロックバンドの腕の見せどころ
天国のシーナをがっかりさせんように
今まで通り調子に乗って演奏する
先ほどシーナさんはGSが好きだったという話をしてくださいましたが、“LIVE FOR TODAY!”というタイトルは収録されているザ・テンプターズのカバー「今日を生きよう」から付けたんでしょうか?
そう。シーナにとってザ・タイガースのジュリー(沢田研二の愛称)とザ・テンプターズのショーケン(萩原健一の愛称)は2大アイドルやったんです。シーナ流に歌うGSの曲が面白いと思っていたから、「今日を生きよう」は『ROKKET RIDE』で余った時間に僕が“やろう”って提案して録った曲なんです。特にそのためにオリジナルを聴き直したわけじゃなく、自分たちの頭に残っている感じで演奏したんですけど、僕のリズムギターにシーナが“トゥトゥトゥトゥ”ってスキャットを入れてくるのが好きでね。本物にはそんなの入ってないんだけど、曲を楽しみながら遊び倒す。そういう意味でも気に入っています。
途中の鮎川さんとシーナさんの掛け合いも素晴らしいです。
“こんな感じだよな”って行き当たりばったりな感じが良かったですね。
サンハウスのオリジナルでシーナ&ロケッツの代表曲のひとつ「レモンティー」は演奏する予定ではなかったけれど、6曲録ったあとにシーナさんが“やろうよ”っておっしゃったとか。
「レモンティー」は毎日のようにやってきた曲ですからね。2018年に40周年を記念して7インチのアナログ盤が発売されたんですけど、もとの音源はシーナ&ロケッツがYMOと出会って“一発、俺たちが得意な曲を演奏しようぜ”ってアルファレコードで録音したものなんです。40年も経ってシングル盤になるなんて夢みたいな話なんですけど、“ロックは生きとる”っていうのが僕らの姿勢だし、僕らが夢中になってるロックは毎日新しい。そうじゃないといかんと思っているから、あの日も“今日の「レモンティー」を録るのはいいな”って。疲れ果てた「レモンティー」なんやけど(笑)。
鮎川さんのギターソロも炸裂していますよ。
疲れ果てても炸裂する(笑)。川嶋くんも体調が悪かったってあとで言いよったけど、そんなこと思いもせんかった。“もう1曲やってくれ”って言われるとどこまでも頑張ってしまうのがバンドマン根性ですから。
The Rolling Stonesも「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」を毎回のように演奏してますけど、いつでも新しいですものね。
そう。毎日、初めて聴く人がいるっていうのが僕らにとって大切な教え。“やっと生で聴ける!”っていう人が会場にいるから、そういう人たちにも聴いてほしいから毎回、今日の「スイート・インスピレーション」(1984年発表の5thアルバム『NEW HIPPIES』収録曲)や今日の「ユウメイドリーム」(1979年発表の2ndアルバム『真空パック』収録曲)をやる。そういうふうにずっと演奏できるのが嬉しいです。
今のお話もアルバムのタイトルとつながっていますね。ロックやR&B、ポップスなど幅広い曲のカバーがパッケージされていますが、鮎川さん自身が入れたかった曲というのは?
これは氷山の一角で、他にも曲はいっぱいあるんです。ただ、とても大切なChuck Berry、The Rolling Stones、The Beatlesの曲が入れられたし、最初に好きになったRay Charlesの曲は入らんかったけど、Ray Charlesから教わったR&Bやったり、モータウンの曲やBarbara Lewisの曲も入れられたから自慢の選曲になりました。
あと、鮎川さん自身、シーナさんが亡くなられてからより“今日を生きる”ということを意識してステージに立たれるようになったとか?
ええ。最初はシーナがいなくなって目標がなくなって、もうやれないっていう気持ちになったんです。ものすごく頼っとったからね。どこか母親と子供の関係に似ているところもあるかもしれんね。“あそこのギターが良かったよ”って言われるだけでバラ色になってしまったり、褒められると調子に乗る(笑)。シーナはバンドの観せ方もいろいろ考えていたけど、メンバーのことも見守ってくれたんです。だから、曲を演奏しても張り合いがないと思ったけど、すぐに“やっぱり、頑張らないかん!”と。“天国にいるシーナががっかりせんように今まで通り調子に乗ってやる。生きとる者はそうせんと”…そんなふうに思いました。シーナが亡くなって2カ月後に横浜でステージがあったんですけど、以前は何曲か僕が歌うレパートリーをやって、盛り上がってきたところでシーナが出て来て歌ったのに、その時はシーナが先にステージで待ってる気がして、すごく嬉しい気持ちに襲われたんです。“シーナに会える!”と思ったの。そう思ってからはますますステージが恋しくなりました。それから2年ぐらい掛けて47都道府県を回ったり。“47=シーナ”と思ったのもあるし、シーナが亡くなった時に花ややさしいメッセージをくれた全国のみんなのところに行きたいと思ったんです。
それで今も精力的にステージに立ち続けているんですね。
あと、やっぱり音楽が好きっちゅーのが原動力ですね。ロックはシークレットですよ。人生のシークレット。
どういうことですか?
ロックンロールと出会うと人生がすごくパワフルになる。ロックは“周りのみんなが好きやから私も好きにならないとあかん”とかじゃない。俺たちはそれぞれ違うのにファッションとかトレンドとかひと括りにしようとするやん。ロックを好きっちゅーことは自分を信じることやからね。それが人生のシークレットです。
4月7日には“シーナの日#6”として下北沢GARDENでライヴがあるし、5月2日には同会場で鮎川さんの72歳のバースデーライヴが開催されるし、まさにライヴは元気の源ですね。
源です。ステージがあるから僕は生かされていると思ってる。もとを辿ると大学に入学したその日から福岡の中州にあるダンスホールで演奏しているバンドの一員に加えてもらってバンドマン人生が始まったんですけど、その当時は毎日演奏するのが基本だったんです。だから、今も毎日やるのが理想です。息をするように歌ってギターを弾く。ぜひ観に来て一緒に騒いでください。
取材:山本弘子