UNISON SQUARE GARDENの真髄を“カッ
プリングしかやらない”ツアーにみた

UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2019 「Bee side Sea side~B-side Collection Album~」 2019.11.15 大宮ソニックシティ
デビュー15周年のアニバーサリー・イヤーを締めくくる、全17公演のホール・ツアー『UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2019 「Bee side Sea side~B-side Collection Album~」』が、12月23日の福岡で無事ファイナルを迎えた。このツアーは、夏にリリースされた過去全シングルのカップリング集『Bee side Sea side~B-side Collection Album~』と連動するもので、つまりカップリング曲のみにスポットを当てるレア曲満載の特別メニュー。普段のツアーにはない“縛り”をあえて課すことで、彼らは何を伝えようとしたんだろう。ツアー2日目、11月15日の大宮ソニックシティで観た光景を回想しよう。
UNISON SQUARE GARDEN 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle)
開演時刻の18時半ちょうど、照明と楽器以外は何もないシンプルな舞台にゆっくりと3人が現れる。1曲目は「リトルタイムストップ」だ。テクニカルでストイックな演奏に、踊らず騒がずじっと見入るオーディエンス。たぶん緊張しているんだろう。「セク✕カラ✕シソンズール」で一気に光とビートがはじけ、解凍されたようにフロアが揺れ始めた。いつもと違う曲、違うムード。何かワクワクすることが起きそうな予感がする。
UNISON SQUARE GARDEN 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle)
「今日はほんっとにカップリングしかやらないので。どうかお気をつけて」
斎藤宏介(Vo/Gt)のユーモラスな挨拶に続き、柔らかいミドル・テンポの「flat song」から一気にスピードを上げ「over driver」へ。高速変拍子に乗せて斎藤が凄いソロを決めると、田淵智也(Ba/Cho)も負けじと歪んだベースをかきむしる。「ピストルギャラクシー」も「ギャクテンサヨナラ」も、1曲ごとにそれぞれに見せ場と聴きどころがあり、「僕は君になりたい」では鈴木貴雄(Dr/Cho)が、繊細なシンバルの音を響かせて情緒的なプレーを聴かせてくれる。一つ一つの楽器を聴いているだけでワクワクする、15歳になったユニゾンは本当に演奏能力が高い。
UNISON SQUARE GARDEN 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle)
「スノウループ」は、ボーカリスト斎藤の魅力が最大限に発揮されるミドル・ロック・バラード。硬質な中に柔らかい情感を潜ませる凛とした声に、田淵と貴雄の優しいハーモニーがぴたりと寄り添う。純白の光が雪のように降り注ぐ照明がいい。ジャズっぽい4ビートのセッションをイントロに配した「ここで会ったがけもの道」、トリッキーなキメの多い高速チューン「ノンフィクションコンパス」では、珍しい曲に聴き入っていたオーディエンスも楽しそうに飛び跳ねてる。ここまで10曲、ほぼノンストップで45分。時間の経つのが異常に速い。
UNISON SQUARE GARDEN 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle)
ユニゾンのカップリング曲は全部で31曲あり、アルバム・リリースを記念してファン投票による「B-Side総選挙」が行われたのは、今年の1月のこと。「そこで31曲中30位に輝いた大人気曲を――」と、斎藤の自虐MCに続いて歌われた「三月物語」。柔らかいミドル・テンポと伸びやかなグッド・メロディ、なんでこれが30位? 逆に言えばユニゾンのカップリング曲は、30位であろうともかっこいい。つまり順位はつけられない。ステージ背後にぽっかり浮かんだ三日月に見守られながら、幻想的な「三日月は夜の真ん中」をしっとり聴かせると、貴雄の気合満点のドラム・ソロ、田淵のクレイジーなパフォーマンスをはさみ、とことん楽しいロックンロール「サンタクロースは渋滞中」へ。1曲ごとに世界が変わり、景色が変わるカップリングの世界は、ひょっとしてリード曲以上に深くて広い。
UNISON SQUARE GARDEN 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle)
ライブは終盤に入ってきた。「スノウリバース」は、「B-Side総選挙」で栄えある1位に輝いた本物の人気曲で、ソリッドなビートと鋭角的なリフ、切ないメロディが絶妙に絡み合う。ユニゾンのカップリング曲は、1位もやっぱりかっこいい。ドラマチックな逆光の中、さらにスピードを上げて「シグナルABC」から超然ハードでダークな「ラディアルナイトチェイサー」へ。序盤の緊張や遠慮はどこへやら、フロアはちんちんに沸いたお湯のように沸騰してる。
UNISON SQUARE GARDEN 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle)
最後はやっぱり明るく激しく、「I wanna believe、夜を行く」と「Micro Paradiso!」を連ねて一気に突っ走る。スポットを浴びた田淵のおどけた身振りに貴雄が笑ってる。みんなも笑ってる。「この番組はご覧のスポンサーの提供でお送りしました」。このライブのエンディングに、これほどふさわしい歌詞があるだろうか。セトリ・マスター田淵もたぶん自画自賛してるだろう、見事なショータイム。
UNISON SQUARE GARDEN 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle)
アンコール、斎藤が「5分後のスターダスト」のイントロを爪弾くと、控えめな拍手があちこちで起きた。いつかこの曲を聴きたいなあと、ずっと待っていた人がここにいる。そう思うとなんだか胸が熱くなる。カップリングだけでライブになっちゃう――斎藤宏介はそう言って、自らのバンドを誇って見せた。15周年の今年は、自分たちが楽しいことを突き詰める1年だったこと。でもやりたいことをやると、みんなが楽しんでくれたこと。このツアーは、バンドにとって大事なことを思い出したり経験したりするツアーだったこと。「これを経て来年もっといいバンドになれる気がします」という、力強い言葉に贈られる力強い拍手。これが15年の証、バンドとファンの絆は揺るぎない。
UNISON SQUARE GARDEN 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle)
会場いっぱいに明るい光と、あたたかい気持ちがあふれた「さわれない歌」。そして最後の最後は、マラソンのラスト100メートルを9秒90で駆け抜けるような爆裂ロック・チューン「ラブソングは突然に~What is the name of that mystery?~」。たかがカップリング、されどカップリング。こんなにいい曲ばかりだったんだと再確認しつつ、今後もきっとそうなるだろうと未来に思いをはせる。UNISON SQUARE GARDENのライブ・ヒストリーにまた一つ、忘れがたい特別なシーンが刻まれた。

取材・文=宮本英夫 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle)
UNISON SQUARE GARDEN 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle)

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