白樺派の作品が狙われる! 舞台『文
豪とアルケミスト 異端者ノ円舞(ワ
ルツ)』東京公演がスタート

2019年12月末に大阪にて公演が始まった舞台『文豪とアルケミスト 異端者ノ円舞(ワルツ)』、いよいよ東京公演の幕開けだ。
原作は謎の“侵蝕者”から文学作品を守り抜くために、「アルケミスト」と呼ばれる特殊能力者が文学の持つ力を知る文豪たちを転生し、“侵蝕者”を追伐する物語。2020年春に待望のアニメ化も控えている。
舞台第1弾は昨年2月、太宰治・芥川龍之介らを中心としていたが、今回の第2弾は志賀直哉・武者小路実篤ら白樺派と呼ばれる文豪らにスポットが当たっている。関係者向けに行われたゲネプロと初日会見の様子をレポートする。
初日会見――ダイレクトに届く舞台「文アル」のメッセージ性
舞台『文豪とアルケミスト 異端者ノ円舞』囲み会見
ーーご自身のシーンでみどころを教えてください。
志賀直哉役 谷佳樹:
今回は前作と比べると立ち回り、殺陣のシーンがすごく増えました。前はほんわかするシーンが多かったかなと思うんですが、今回はずっと戦っているなというのがあります。今回新しく登場したキャラクターが半分、以前から出演しているのが半分。全体の空気感が前と違ったものになっているので、そんな新しい風を吹き込んでくれている4人が見どころですね。うーん、みどころいっぱいありすぎてまとまりがない! 自分のシーンで言うとネタバレの核心をついてしまいそうなので……劇場に足を運んでください。
武者小路実篤役 杉江大志:
今回は有難いことに志賀と武者にスポットを当てていただいたので、どこがどう見どころと言うよりはこの作品全編通して出来上がったものが、このふたりのみどころになるように作っていただいたなと思っております。ここだけを見て! というような厳選は僕らはできないかなと。全体で何かを受け取っていただけたらなと思います。強いてみどころをピックアップするなら、志賀のダサいポーズですね。
谷:やめとけ(笑)!
(※本編早めのところで該当箇所があります。見逃し注意です!)
芥川龍之介役 久保田秀敏:
前作では僕がお話の内容的に太宰治(平野良)に生かされ、生に希望を見出したというところでしたが、今回はその逆で前回の太宰ポジションとして僕(芥川)が生きることを強く前にメッセージとして出す役回りです。前作から観た人は、ここまで芥川が生きることに対して希望を持って前向きに明るく未来を突き進んでいこうという、中身が変わった様子を感じ取っていただければすごく嬉しいなと思います。
萩原朔太郎役 三津谷亮:
僕が演じる朔太郎は「信じる」ことにすごく恐怖しているのが背景にあります。「信じる」って目にも見えないですし、自分自身が思うことしかできないんです。「信じる」ってすごく大事なんだなと感じられる物語になっているんじゃないかなと思います。目には見えないけど、自分自身をコントロールするのは自分なんだっていうことを含めて感じて頂けたら、そこが見どころになるのではと思います。
有島武郎役 杉山真宏:
有島は生きることをあきらめてしまったという役柄です。再び転生して、自分をまた見つめ直す時間ができて、生きることについて考えさせられる。自分と向き合う時間があるので有島の葛藤などを、みなさんに伝えられたらと思っております。ぜひ観に来てください。
坂口安吾役 小坂涼太郎:
谷くんが「殺陣が多い」と仰っていましたが、殺陣が多いからこそ、僕は安吾鍋と呼ばれる鍋のシーンに注目してほしいです。最近寒くなってきたし、:に来るお客さんも鍋を食べたくなるんじゃないかなと思っております。見どころはそこです!
国木田独歩役 斉藤秀翼
独歩と藤村は自然主義というカテゴリに分かれていて、一瞬取材のために、自分たちの目的のためにって見られがちなところがあります。そんな中で志賀と武者の友情と同じように、人間らしさとかが一瞬垣間見える、藤村と独歩がふたりで自分たちの当時生きていた時のことを話すシーンがあるんですが、そこに僕らの主義を貫く動機や自分たちの罪の意識などが入っていると思っています。そこのシーンをお芝居としては一番観ていただけたらうれしいなと思うところです。
島崎藤村役 小西成弥:
僕も個人としては、自然主義のふたりの過去をお芝居で表現できるシーンがあるのでそこを見ていただきたいです。志賀と武者から影響をどう受けてどう変化するのかを観て頂けたらうれしいです。
(c) DMM GAMES / 舞台「文豪とアルケミスト」製作委員会
ーー谷さんへ質問です。大阪公演を終えて心境の変化などがあれば教えて下さい。
谷:稽古が始まる前からたくさんの取材を受けて色々お話させていただきました。そこでも(杉江)大志と「今回ふたりで支えあっていこうね」って話をしていたんですが、稽古期間を含め本番で幕が開くまで、自分たちも本当に不安でした。でも大阪5公演を終えて、僕たちもそれぞれ自信がついたと言うか、確信をひとつ掴んで「これは勝負できる!」と。お客さんの前で見せて初めて、自信が確信に変わるということがありました。これから東京公演が9公演ありますが、今は楽しみだし、(お客さんには)楽しんでもらいたいし、楽しませるという攻めの姿勢でいけるなって思ったことが心境の変化になっています。
ーー杉江さんへ質問です。ダブル主演ですが苦労されたことは?
杉江:今、谷やんが言ってくれたように「支え合ってふたりで頑張ろうね」って始まる前に言っていたんですが、支え「合う」ということがすごく難しいことだっていうことを改めて感じました。「支える」、「支えてもらう」っていうのはわかりやすいんです。ですが、支え合うのはすごく繊細なことで、どちらかの力が強かったらバランスが取れなくて倒れそうになったりなんてことも、稽古の中ではあったなと思います。もともと谷やんとはすごく近い距離を感じているので不安はなかったんですが、支え合うということの難しさを痛感しました。でもそれを乗り越えたからこそ、大坂で初日を明けた時の達成感、出来上がった完成感というものに繋がったのかなと。そこが大変なところであり、乗り越えられたからこそ出来上がったのがこの作品かなと思っております。
(c) DMM GAMES / 舞台「文豪とアルケミスト」製作委員会
ーー東京公演に向けての意気込みを教えてください。
小西:大阪公演で積み上げてきたものをさらにもっと上を目指してやっていけるように、精一杯頑張ります。ぜひ楽しみにしていてください。
齊藤:新年の駆け出しを、素敵な時間をお客様に感じて頂けるように精一杯頑張りますので、ぜひ劇場にお越しいただければと思います。
小坂:心温まる作品になっています。寒いですが、お気をつけていらっしゃってください。
杉山:大阪公演でお届けできたものをしっかり、またみなさんにお届けできたらいいなと思っております。全身全霊でカンパニー一同頑張ります!
谷:取材でも全部「全身全霊」って言ってるよね?
杉山:いいんですよ! でも谷くんも「全身全霊」って使ってますからね!
三津谷:良いですか、僕がしゃべって!? ぜひ僕たちの図書館に遊びに来て、心の一ページに刻んで頂けたらなと思います。
久保田:「文学」って言葉だけを聞くと堅苦しい感じもしますが、またこの「文豪とアルケミスト」という作品を見て、また改めて文学に興味を持っていただければ僕らも幸いですし、もっともっと人生が豊かになるんじゃないかなと思います。ぜひお楽しみください。
杉江:殺陣が満載だとか、ふたりの友情に亀裂が、だとかそんな話が出ていると思いますが、全体を通したらとてもほっこり楽しく、そして心に何かが届いたらいいなと思って作った作品です。その何かを受け取りに来てくださるとうれしいです。
谷:前作に「生きろ!」と全員で言うシーンがあったんですが、まさに本当に明日から生きるための活力やメッセージがダイレクトに届く作品でした。今回は志賀と武者の友情やそれぞれの関係性がすごく深く掘り下げられている話です。それって現代に生きている僕たちにも通じていて、「友情とは何か」、「大切なひとはどういうものなのか」を改めて認識させられるものだと思います。生きることの価値を前作で見いだし、生きてる上で「大事なものは何か」をこの作品で受け取っていただけたらと思います。
(c) DMM GAMES / 舞台「文豪とアルケミスト」製作委員会
ゲネプロレポート――『カインの末裔』、『友情』、白樺派の作品が侵蝕された理由
萩原朔太郎(三津谷亮)が武者小路実篤(杉江大志)の著作『友情』を読んでいると、そこに本物の武者ら白樺派が姿を現す。今の自分がアルケミストによって転生した存在であることを知る朔太郎と、転生した仲間の登場に喜ぶ面々。舞台上が賑やかになったところで、侵蝕者の気配が忍び寄る。
有島武郎(杉山真宏)の『カインの末裔』を救うべく潜書するが、侵蝕者との戦いは一筋縄ではいかないようだ。一方、自然主義の島崎藤村(小西成弥)と国木田独歩(斉藤秀翼)は侵蝕者とその文学についての調査を進めていた。
(写真左から)武者、有島、志賀。3人は戦闘時に剣を使用する。
本人以外から見る志賀と武者の関係性、志賀から見る武者との友情、武者から見る志賀との友情……。狙われたのは武者の著作『友情』。
国木田と島崎は、白樺派同様に「自然主義」というカテゴリーとしてふたりで行動することが多い。
今回無頼派はひとり、坂口安吾のみ。鍋のシーンは必見。
芥川龍之介は仲間の身を案じ、時に強い感情を表す。
ステージは「文アル」のモチーフでも良く使われている歯車の装飾や本棚が並び、舞台セットが左右に稼動する。また、ステージ床に映し出された照明が文字になっているなどの視覚的要素はもちろん、使用されているBGMやテーマ曲などの聴覚的要素を含む演出の美しさにも注目だ。
もちろんこの第2弾が初見でも世界観やストーリーがわかるつくりであったり、舞台における熱量を伺うことができるが、前作を観た人には嬉しいネタも散りばめられているので、思い出しながら見ると一層楽しく観劇できるだろう。
本公演は2020年1月13日(月・祝)まで、東京・品川ステラボールにて公演。なお、千穐楽日公演はニコ生配信が決定している。
武器や衣装、ウィッグの紹介が公演パンフレットにも記載されているとのこと。
(c) DMM GAMES / 舞台「文豪とアルケミスト」製作委員会
取材・文・写真=松本裕美

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