三山ひろし明治座初座長公演スタート
「歌手冥利につきる」天才棋士を描い
た舞台と歌謡ショーで新曲初披露

三山ひろしが、1月7日、東京・中央区の明治座で、<明治座 三山ひろし特別公演>の初日公演を開催した。三山は、2013年の<五木ひろしコンサート>で初めて明治座に出演し、その後も他の歌手の公演で明治座に出演したことはあるものの、今回が初の座長公演となる。1月7日から23日まで開催されるこの公演は2部構成で、1部は伝説の棋士・阪田三吉の半生を描いた舞台「阪田三吉物語」(原案:立川志の春)。第2部は、ゲストに宝塚で娘役トップをつとめた実咲凜音などを迎えた歌謡ショー「三山ひろしオンステージ First Dream 2020」という豪華な内容である。

会場には「三山ひろし」という文字入りのはっぴ姿のファンも多く見られる中、第1部は、立川志の春の落語調の語りで幕開き。三山が演じる阪田三吉は、将棋に人生を賭けた天才棋士だ。「堺に三吉あり」と言われるほど、関西で有名になっていた20歳の頃のエピソードから始まり、田中稔彦が演じる将棋のライバル・関根金次郎との緊迫の対決に深い心の交流、清水佐紀が演じる妻・コユウとの夫婦愛、ほんこんが演じる関西名人・小林東白斎とのコミカルなやりとりなどが盛り込まれ、見どころがたくさん。ところどころで、大きな笑い声が起こったり、涙を流す観客も見られる公演となった。
休憩を挟んで第2部の幕が上がると、大きな扇のセットの中央に羽織姿で現れた三山に、客席から“待ってました!”と声がかかる。口上を終えた三山が立ち上がると、一瞬にして真紅のスーツ姿に早変わりし、そのまま体が浮き上がってステージの中央へふわりと着地。そこから2009年のデビュー曲「人恋酒場」をはじめ、「四万十川」「お岩木山」など、三山の歴代シングル曲をメドレーで歌い上げる。あっと驚く演出に客席も大いに盛り上がり、色とりどりのペンライトの動きや手拍子、“ソレソレソレソレ!” “ひろし!”といったコールの息もぴったりだ。第2部は、構成・脚本・演出・振付を、玉野和紀が担当していることにも注目したい。玉野は日本を代表するタップダンサーで、オリジナルミュージカルやショーの作・演出、振り付けで国内のみならず海外でも高い評価を受け、多くの作品を手掛けている。
実咲凜音を招いてのミュージカルコーナーでは、舞城のどか、光海舞人との、女性3人によるダンス「ショーほど素敵な商売はない」で一気に華やかな雰囲気に。続いて、洋装に傘を差した三山が、「雨に歌えば」を踊りながら歌唱。ダンスに合わせて突如、けん玉を持ち、難しい技をたたみかけるように披露する場面にも拍手が起こった。三山と実咲による艶のあるチークダンス「ムーンライトセレナ―デ」の後、ミラーボールが現われ、「サタデーナイトフィーバー」で激しくディスコダンスを踊る三山の姿も貴重である。
そこからはうって変わった羽織袴姿で登場した三山は、歌謡浪曲「俵星玄蕃」を披露。同曲は、1964年に発売された三波春夫の代表曲。三山は自身のアルバム「歌い継ぐ! 昭和の流行歌IV」でカバーし、コンサートでも度々披露している。難易度の高い曲としても知られ、歌うためにはハイレベルの歌唱力に演技力が必要とされる「俵星玄蕃」を、三山はこの日も堂々と迫力たっぷりに歌い上げ、割れんばかりの喝采を浴びた。

昭和歌謡ミュージカルのコーナーでは、第1部で三山のライバル役の関根金次郎を演じた田中稔彦と、妻役のコユウを演じた清水佐紀も再登場。田中と舞城、光海による寸劇を交えた「青春時代」(森田公一とトップギャラン)から始まり、三山と実咲のコンビによる「神田川」(南こうせつとかぐや姫)、2人が同棲する部屋のセット内で「赤ちょうちん」(南こうせつとかぐや姫)、「結婚しようよ」(吉田拓郎)、三山と清水による「恋のフーガ」(ザ・ピーナッツ)などが、歌詞に合った芝居とダンスを交えて披露された。それぞれの役柄に合った衣装も必見である。このコーナーを通して、1つのストーリーが作られており、会場中がしみじみと聞き入るシーンも。テンポの良い台詞まわしやコミカルな動きに何度も爆笑が起こっていた。

ゲストのソロコーナーでは、実咲凜音が華麗なドレス姿に着替えて登場。ミュージカル・キャッツの代表曲「メモリー」を、宝塚時代を通して磨き抜かれた見事な歌声で熱唱し、会場中を魅了した。終盤は、三山の歴代シングル曲をじっくり聴かせる時間となり、「いごっそ魂」に、先月の第70回「NHK紅白歌合戦」でも歌唱した「望郷山河」、1月8日発売の最新曲「北のおんな町」を初披露した。「北のおんな町」は、作詩が喜多條忠、作曲が三山の師匠で昨年8月に亡くなった中村典正による作品。北海道の港町を舞台に女ごころを歌ったヒットを予感させる名曲である。最後は「あなたは灯台」を、美咲、田中、清水、舞城、光海もステージに並んで皆で披露。曲の途中で天使の羽を付けた三山が7メートルの高さまで浮き上がって舞台上を舞う、まるで夢のような演出に会場の熱気も最高潮のまま幕を閉じた。

終演後は、マスコミ向けの取材も行われた。三山は、今回の阪田三吉役について、「生涯が僕と似ているところがあるんですよね。1つのことを突き詰めるところや、あくなき挑戦をして闘志を燃やしているところとかがそっくりで、自分を出していいという感じで演じることができました」と明かした。歌謡ショーについては「今までやったことのない、フライングの演出やミュージカルにも挑戦しました。演歌歌手ではありますけれど、演歌の枠を超えて、こういった見せ方があるんだというかたちで皆さんにお届けできたというのはすごく嬉しいです。一人では歩いてこられない道のりを、皆さんに支えていただいて、今日の初日を迎えているのが本当にありがたいことと、皆さんの期待を裏切らないようにという責任がありますので、23日までしっかり務めていきたいです」。明治座の初座長について「歌手冥利につきる、一つの大きなステータスです。三山ひろしってどんな人?って思った人がウィキペディアで調べた時に“明治座特別公演”と知って、すごいんだなって思ってもらえるかと考えると感慨深いです」と語った。

関西の将棋名人・小林東白斎役のほんこんは、三山の座長ぶりについて「舞台に立ったらパッと変わりはる。声がいいし、間がとってもいい!」と絶賛。この日も三山とほんこんのアドリブシーンでウケていたことが明かされた。小林東白斎役はダブルキャストで、間寛平も出演することに触れて「寛平さんだとえらいことになりまっせ(笑)」とほんこん。日によって変わるアドリブシーンも見どころのようだ。原案を手掛けた立川志の春は「三山さんが主演と聞いて嬉しかったですし、ぴったりだと思いました。何回も一緒に稽古しているのに、袖で泣きそうになりました。語りの自分が出ていくのを忘れる位、本当に素晴らしいと思いましたし、ショーも見させていただきましたが超人的だと思いました。これ23日までやられるんですよね。げっそり痩せちゃうんじゃないの? ものすごいカロリー消費しますよね?」、清水は「三山さんは普段から温かくいお人柄で。稽古場もすごい温かかったですし、三山さんはほぼ毎日美味しい差し入れをしてくださって、どんどん太っちゃうなって(笑)、心配でしたけど、嬉しかったです」とコメント。差し入れは、三山の所属事務所の地下のレストラン「Liveレストラン青山」で作られたカツサンドやカレーライスで、稽古場で大評判だったとか。現場の雰囲気の良さ、出演者達の仲の良さも滲ませていた。

田中は、自身が演じた金次郎について三山が演じる三吉が最後に語るシーンが大好きなのだそう。「稽古場では、(そのシーンを)いつも正座をして、三山さんの芝居を観るのが毎日の楽しみで、その後に自分のシーンがあって、泣いてはいけないんですが、グッとくるのをこらえていました」。歌謡ショーの最後で三山に羽を付けるのも田中で、「(1部と2部の)パートがリンクしているような気がして。本当に身に余る光栄だと思って演らせていただきます」と語った。新曲「北のおんな町」について、三山は「大ヒットとなりますと、また明治座さんに呼んでいただけると思いますので、一生懸命頑張りたいと思います」とコメントし、最後に「たくさんの皆様に夢を見ていただけるような公演を作らせていただきました。たくさんの皆さんのおかげで、良いお芝居、良いステージがご覧いただけるのではと思いますので、ぜひ23日までたくさんの方にお越しいただきたいと思います」と締めくくった。

取材・文:仲村 瞳

<明治座初座長 三山ひろし特別公演>

日程:1月7日(火)〜1月23日(木)
時間:11:00 / 16:00
会場:東京・明治座
料金:S席(1階席・2階席前方)11,500円 / A席(3階席)6,000円

第一部「阪田三吉物語」
原案:立川志の春 脚本・演出:堤泰之
出演:三山ひろし / 立川志の春 / 田中稔彦 / 清水佐紀 / 丹羽貞仁 / 小野寺 丈 / ほんこん(Wキャスト) / 間 寛平(Wキャスト)

第二部「三山ひろしオンステージ First Dream2020」
構成・演出・振付:玉野和紀
出演:三山ひろし / 実咲凜音 / 田中稔彦 / 清水佐紀 / 舞城のどか / 光海舞人

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