今なお世界を熱狂させる『デスノート
』 ミュージカル版が描き出すもの<
後編>

「このノートに名前を書かれた人間は死ぬ」
週刊少年ジャンプで2003年から連載され、世界発行部数シリーズ累計3000万部を超える言わずと知れた大ヒット漫画『DEATH NOTE』。それを原作としたミュージカル『デスノート THE MUSICAL』は、2015年4月、日本発のミュージカルとして日本初演で幕を明け、同年6月には韓国のキャストで韓国版も上演された。その後2017年に日本版・韓国版ともに再演され、日本のキャストが台中での海外公演も果たした。そんな本作が2020年1月、これまでのキャストを一新して日本で再々演される。
本コラムは、再々演を前に、初演時に日本と韓国で本作を観た筆者が『デスノート THE MUSICAL』の魅力について語る<後編>だ。前編ではミュージカル版ならではの注目ポイント、そしてフランク・ワイルドホーンの楽曲について書いた。後半では、改めて『デスノート』の魅力と新生『デスノート THE MUSICAL』の個人的注目キャストに言及したい。
数々の派生作品を生み出す『デスノート』の魅力
『デスノート』は派生してアニメ、映画、ドラマ等の様々なジャンルで関連する作品がつくられているが、それぞれが漫画の物語を忠実に別メディアへ展開したというより、「名前を書かれた者が死ぬ“デスノート”」以外は設定や物語に変更を加えて、独自の路線でつくられている。
漫画を読んでいなくても映画は観たという人も多いであろう2006年の映画版(夜神月役:藤原竜也、L役:松山ケンイチで大ヒットした)も、実はオリジナルな要素が盛り込まれており原作とはまた話の展開が異なる。月がアイドルオタクで普通の大学生という、キャラクターの設定自体が変更された2015年放送のドラマ版もある。ほかに派生している作品としてアニメ、小説、ゲームなどが挙げられ、このことからも、デスノートという作品が原作を核として新たに広がりを見せる作品であることが分かる。
映画「DEATH NOTE デスノート」 ジャケット  提供:ホリプロ
広がりを生む原作の魅力は、脚本のアイヴァン・メンチェルが『デスノート』初演のパンフレットで語った「意図的に埋め込まれたものなのか、あるいは豊かで創造性にあふれる物語から生まれた、偶然の副産物なのか。恐怖、憎悪、正義、自己陶酔、犠牲、復讐、愛、これらはあらゆる演劇にとって欠かせない要素であり、ミュージカル化するにはとびきりの題材だったのです」という言葉に現れている。
コミックスは全12巻あるため”デスノート”を使うルールがより複雑になっており、月がノートをどう使って追われる状況を打破するのかハラハラするし、Lとの心理戦もさらに詳細に描かれている。もし『デスノート』の映画は見たけれど漫画は見たことがないのであれば原作の漫画も非常に面白いのでおすすめしたい。
2020年の再々演には韓国版レムを演じたパク・ヘナが参加
2020年に再々演が決定した『デスノート THE MUSICAL』はどんな作品になるのか。
今回の2020年版にあたっては、これまでのオリジナルキャストから出演者が一新される。新キャストに村井良大、甲斐翔真、髙橋颯などフレッシュな俳優が顔を揃えるなか、レム役を韓国版で同役を演じたパク・ヘナが演じる。
パク・ヘナ(2015年/2017年 韓国プロダクション)  提供:ホリプロ
『デスノート THE MUSICAL』の韓国版は日本初演の直後に韓国で韓国キャストによって上演された。韓国でも原作の漫画は有名で、パク・ヘナ自身も学生時代に読んでいたと初演時に話している。
韓国版の初演は夜神月役に韓国ミュージカル俳優の中でも際立って歌唱力が高く、韓国のみならずロンドン・ウエストエンドで『ミス・サイゴン』に出演した実力派俳優のホン・グァンホ、L役に、アイドルグループの一員として日本でも活躍したのち、韓国ミュージカル界にアイドル歌手が進出するさきがけとなったキム・ジュンス。そして圧倒的な歌唱力を誇り『アイーダ』『ジキル&ハイド』など数々の作品に出演している弥海砂役のチョン・ソナが出演し、豪華なキャスト陣でも話題を集めた。
2015年/2017年 韓国プロダクション  提供:ホリプロ
レム役を演じたパク・ヘナはパワフルな歌声に定評があり、『ウィキッド』のエルファバ役や映画『アナと雪の女王』韓国版のエルサ役の劇中歌部分も担当している。
日本語でのパク・ヘナの歌声はYouTubeで先行公開されているが、聴いて驚くのは韓国の人が発音しにくいとされる日本語の「つ」の音が完璧なことだ。発音に慣れていないため通常は「ちゅ」と発音しがちだが、誰が歌っているか知らずに聴いていると韓国の俳優が歌っているとは分からないほど。ここだけでも日本語の発音を習得するためにいかに努力しているかが分かる。一年ほど前から準備を進めてきたとのことで期待が高まる。パク・ヘナが日本語で演じるレムはどういった歌唱を聴かせてくれるのかにも注目したい。
『デスノート THE MUSICAL』2020 レム役 / パク・ヘナ紹介映像
そしてなにが残るのか
新キャストで幕をあける新生『デスノート THE MUSICAL』。
漫画『DEATH NOTE』が連載されたころよりも、漫画の世界に近付いていると感じる現代。
悪と認定するやいなやその人間の素性を個人が晒し、私刑を正義だと主張するSNSでの炎上行為、極端な主義主張を世界のトップですら自由に発信して憚らなくなった。人は正義の前にはどんな行動も厭わない。
2020年に『デスノート THE MUSICAL』を観た時に何が残り何を想うのか。ぜひ、“いま”の『デスノート』に触れてほしい。
(c)大場つぐみ・小畑健/集英社 提供:ホリプロ
文=yuma.

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