BIGMAMA、一夜限りの“ロック×クラ
シック×クリスマス”なロックパーテ
ィーでBLITZを揺るがす

Roclassichristmas 2019.12.25 マイナビBLITZ赤坂
クリスマスの夜、BIGMAMAが赤坂にやってきた。2019年11月25日、マイナビBLITZ赤坂、名付けて『Roclassichristmas』。記憶が正しければ、BIGMAMAのクリスマス・ライブは今年でちょうど10年目。そして10年前も今年も、くしくも『Roclassick』シリーズのリリース直後だ。偶然か必然か、何かが起きる予感がする聖なる夜。
ステージにはクリスマスリースと、電飾の灯ったクリスマスツリー。ベートーヴェン「歓喜の歌」に乗って現れたメンバーは、お揃いのブラック・スーツとタイでばっちり決めてる。金井政人がギターにキスをする。東出真緒が弾くヴィヴァルディ「春」の旋律を、リアド偉武のドラムが急加速させる。1曲目は「走れエロス」だ。厳かなムードからカオスのロック・パーティーへ、ぎゅうぎゅう詰めのフロアは、源泉のように人が沸騰している。誰もがこの夜を楽しむ気満々だ。
BIGMAMA 撮影=高田梓
「BIGMAMAです。よろしくお願いします」
金井の挨拶もそこそこに、クリスマス・ライブには欠かせない「My Greatest Treasure」から「LEMONADE」へ。原曲で金井とデュエットした長屋晴子(緑黄色社会)は最高だったが、ライブ・バージョンを任された真緒だって負けちゃいない。歌にヴァイオリンにキーボード、近年のライブでの彼女の存在感は本当に素晴らしい。さらに、『Roclassick』シリーズの代名詞とも言える「荒狂曲“シンセカイ”」から、「ワルキューレの非行」へと、荒ぶるラウド・チューン二連発。柿沼広也のギターが、笑っちゃうほど常軌を逸して歪んでる。バンドの気合も満点だ。
「Perfect Gray」「the cookie crumbles」と、スピード・チューンのあとに置かれたミニマルでクールな「高嶺の花のワルツ」の、じわじわ効いてくる温熱効果がいい感じ。一転して、「Animanimus」では金井がハンドマイクを握り、まがまがしいほどのヘヴィなサウンドに乗ってステージを右から左へ。からの、メタリックなダンス・チューン「mummy mummy」に繋ぐ流れが実にスムーズ。痛快だ。
BIGMAMA 撮影=高田梓
それまで黙々と弾いていた安井英人が、突如猛烈なスラップの鬼と化す、カオスでワイルドな「Swan Song」。猛烈ラウドな超絶変拍子が、不思議な浮遊感覚を生みだす「Royalize」。どちらも鬼気迫る演奏で圧倒するが、その興奮を上回って見せたのが「the Last Song」だった。最新アルバム『Roclassick-the last-』のラストに置かれた、ショパン「別れの曲」をモチーフにした1曲。金井がピアノを弾きながら声を振り絞り、カッキーがギターをかきむしり、リアドが地鳴りのようなドラムを響かせる。静と動が鮮烈に入れ替わる、荘厳なほどにエモーショナルなロック・バラード。一言、凄い。
BIGMAMA 撮影=高田梓
独りステージに残った金井が、ピアノ弾き語りで「春は風のように」を歌う。カッキー&真緒と3人で、「最後の一口」を奏でる。かつて見たことのない珍しいシーン、それはBIGMAMAからの、感動という名のクリスマス・プレゼント。続けて「叫びましょうか、愛を」と金井が紹介し、歌いだしたのはDREAMS COME TRUELOVE LOVE LOVE」だった。オーディエンス全員参加、後半のゴスペル風のコーラスが美しく響き渡り、その余韻の中で「Sweet Dreams」へと繋ぐ。今日のセトリは本当に流れがいい。さらに続けて、まだレコーディングもしていない新曲「St.Light」の初披露という、またも嬉しいクリスマス・プレゼント。良い意味で、キャリア12年の重さを感じない、伸び伸びと躍動するロック・チューン。BIGMAMAの辞書には、安定や停滞の文字はない。
BIGMAMA 撮影=高田梓
「お互い、出し惜しみのないように行きましょう。喜びの歌です」
金井が紹介する、曲はもちろん「No.9」。金井のアコースティック・ギター、リアドがマレットで叩くドラムの優美な響き、そして誰もが知るヴェートーヴェン「歓喜の歌」のあのコーラス。素晴らしい一体感の中、「We Wish You a Merry Christmas」の陽気なメロディを、カッキー、真緒、金井がリレーして、ノンストップで「MUTOPIA」へなだれ込む。ミラーボールが光の雨を降らせる中、ハッピーな高揚感たっぷりの見事な演奏だ。
ここからはもう止まらない。明るい解放感とコーラスで一つになった「あなたの声で僕の名を呼んで」から「秘密」へ、スピード感あふれる展開に、終幕が近いことを察したオーディエンスが一気に盛り上がる。『Roclassick』シリーズの始まりの1曲と言える「計算高いシンデレラ」は、明るいタテノリの曲調に合わせ、フロアいっぱいのコーラス大合唱になった。『Roclassick』シリーズは、オーディエンスが歌って騒いで参加できるパートが多い、ライブで映える曲が多いことをあらためて実感する。
BIGMAMA 撮影=高田梓
「『Roclassichristmas』、ありがとう。続きは『Roclassick tour 2020』でお会いしましょう」
一期一会、特別な夜を締めくくる1曲は、「誰が為のレクイエム」だった。恐れることなく鐘を鳴らせ――全ての終わりは未来への始まりに通ずる、熱いメッセージとドラマチックを極めた劇的な演奏、これがBIGMAMAの今の頂点だ。最後の挨拶は金井からの一言「メリー・クリスマス!」。アンコールはなし、24曲をおよそ100分で駆け抜ける、後味は爽快。2019年のBIGMAMAはここに終わり、2020年の新しいBIGMAMAがここから始まる。
追記。12月26日午後2時、ドラムのリアド偉武が、『Roclassick tour 2020』のファイナル、5月10日Zepp Tokyo公演をもってバンドを脱退することが発表された。リアドとメンバーからのメッセージは、オフィシャルHPをチェックしてほしい。そして、残り半年となった5人のBIGMAMAをサポートしてほしい。終わりは始まり。それはレクイエムではない、生きてゆく者のための歌だ。

取材・文=宮本英夫 撮影=高田梓

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