「強いアーティストになります」TRU
Eの5周年を締めくくる、切なく温かな
ストリングス・ライブをレポート

2014年「UNISONIA」でデビューしたアニソンシンガー・TRUE。その5周年を記念するライブの第3弾が、12月14日(土)に東京・めぐろパーシモンホール 大ホールにて開催された。ライブタイトルは『TRUE 5th Anniversary Live Sound! vol.3 ~with Strings~』。これまでTRUEがリリースしてきた楽曲たちが、バラードを中心に、ストリングスアレンジにて演奏された。オールスタンディングならぬオールシッティングのしっとりとしたライブの模様をお届けする。

TRUE初の試み! 新たな魅力に気付くアコースティックライブの幕開け
今回のライブホールには、レーザーや大型モニターなど派手な舞台装置は無かった。天井には帆船のような形のシャンデリアが8台吊らされ、厳かな雰囲気が漂う。開演に先だってアナウンスされた諸注意では、眩しすぎるペンライトや、団扇、旗、横断幕、鳴り物の使用も禁止と告げられた。オールスタンディングで盛り上がるようないつものTRUEのライブとは一線を画す舞台に、少し緊張したファンも多かったのではないだろうか。
やがて登壇したのはピアノ・櫻田泰啓、1stヴァイオリン・押鐘貴之、2ndヴァイオリン・山本大将、ヴィオラ・渡部安見子、チェロ・笠原あやの、の計5名の伴奏者たち。そして主役のTRUEは、透明感のあるシルバーのワンピース姿に、なんと裸足でステージ中央のカーペットに立った。
1曲目は悲しげな旋律から始まる「Lonely Queen’ s Liberation Party」。原曲の出だしはピアノだけの楽曲だが、今回のストリングスアレンジでは弦楽器も最初から加わる。いっそう儚く美しい音色で、その響きだけですでに涙がこぼれそうだ。そこにTRUEの温かく力強い歌声が重なり、伸びやかに会場を音楽で満たす。ストリングスアレンジになることで、聴き手の感情の柔らかい部分に直接訴えかけてくるような曲になっている。
演奏を終えて大きな拍手が起こった後、「皆さんこんばんは、TRUEです」と、歌っているときとは異なる可愛らしい声でMCを始めるTRUE。ライブの概要と今回の伴奏者を紹介し、「いつもとは違う編成のコンサートですが、そんなに緊張しないでくださいね。歌うのは皆さんがよく知ってくださっている私ですし、歌う楽曲は皆さんが沢山愛してくださっている楽曲なので、リラックスした気持ちで、思い思いに音を楽しんでいただければ」と場を和ませる。
続けて「evolve」、「Fraction」、「名前のない空腹」と、バラードが3曲続く。どれもしっとりとした楽曲ながら、かくも力強く聴く者の心を打つのはなぜだろう。その答えと言うべきか、試みについては次のMCで明かされる。これまでバラードを大切に制作してきたというTRUE。その中で、よりシンプルな音で、歌声やそこに込めた想いを受け取ってもらいたいという気持ちから今回のライブが開催されるに至ったそう。なるほど、伸びやかでパワフルなTRUEの歌声は、少ない楽器の演奏によりますます引き立てられている。一曲一曲の歌詞が、直接心に響いてくる。とくに「Fraction」のサビの、「ねえ生まれた日を覚えていますか」「ねえ別れの日を覚えていますか」など、聴き手一人一人に問いかけられているようで、筆者自身も自分の人生を振り返りながらまた涙しそうになった。
曲調変わって、続いては「少しあったかい、柔らかい楽曲」3曲を演奏。「海底のお城」は、前曲の涙から一転、思わず笑顔になり、手拍子をしたくなるような軽快で優しい楽曲だ。「キネマ」は、前半はピアノのみの伴奏で、中盤から伴奏者の「ワン、トゥー、スリー!」の掛け声で弦楽器が加わり、一気に華やかな装いに。「フロム」は、まるで大草原を駆けていくような、風を感じる爽やかで心地のよい演奏。裸足で歌い上げるTRUEが、少女のように可愛らしく見えた。
クリスマスプレゼントにドリカムをカバー! 号泣必至の『ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン』楽曲も
続いてクリスマス直前ということで、TRUEからクリスマスソングのプレゼントが。ただTRUE自身の楽曲にはクリスマスソングが無いことから、「私がカバーする意味がある、私の想いに一番合う曲」として、DREAMS COME TRUEの「雪のクリスマス」が演奏された。ストリングスアレンジで、しかもTRUEの歌声で、優しく可愛らしい、まったく別の楽曲に生まれ変わったドリカムの名曲。この上なく贅沢なプレゼントが、ファンの耳に、心に届けられた。
しかし演奏後のMCにて、残念なお知らせが。「あ、もうここから後半ですね」の声で、ザワつく会場。「えっ、思った以上の反応が!」と驚き、笑うTRUE。けれど次に演奏される曲こそ、今回のメインディッシュとも呼ぶべき楽曲たちである。「未来のひとへ」「Letter」「Sincerely」と、アニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』からの3曲が披露された。
演奏の前に、楽曲への想いを語るTRUE。2019年を振り返ったときに、本当に色んなことが起こり、TRUE自身もたくさん悩んだそう。そんなとき、今まで誰かのためにと思って作ってきた楽曲たちにTRUE自身も支えられたのだと言う。「皆さんも、生きていると嬉しいこともあるし哀しいこともあります。ときには信じられないくらい理不尽なことも起きたりするんですよね。でもそれが生きているということだし、何か立ち止まってしまったら、ふと手を伸ばして、そばに音楽があることを覚えておいてほしい」。
音楽というものには、聴くだけで人々の心を揺さぶる何かがある。今回演奏された3曲も、舞台に映像を映し出すモニターがなくても、聴けばアニメの情景や、それに関連した出来事などもありありと蘇ってくる。それら3曲は、もともとはアニメの主人公・ヴァイオレットのために作られた楽曲だった。けれど会場で演奏されたそのときは、ファンの一人一人のための音楽にもなり、伸びやかに歌い上げるTRUE自身を支える音楽になり、今を生きる人々すべてに捧げる楽曲へとなった。楽曲自体が成長していたようにも感じる。ストリングスアレンジではあれ、同じ楽曲が、同じ歌い手の声で、新しい音に聴こえてくる。
「未来のひとへ」「Letter」にて、すでに緩み始めていた涙腺。「Sincerely」で完全にダムが決壊したように涙がこぼれ始めた。それは筆者だけではない、会場のいろいろな方面からすすり泣くような音も聞こえていたことから、きっと同様に泣き出してしまった人が何人かいたのだろうと思う。「Sincerely」の歌詞と同じく、「わたし なんで 泣いているんだろう」。そして「生きること やめないこと あなたに今日を 誇れるように」そのフレーズと同じように、歌い踊るTRUEの姿がステージにあり、聴く我々の姿が客席に、あった。

後半戦は手拍子と共に!『オルフェンズ』『転スラ』『ユーフォ』一気に駆け抜けた名曲の数々
「いよいよラストスパートのブロックがやってきました。ここから曲が進むごとに、徐々に強い楽曲になっていきます」続くMCでそう語るTRUE。「コールアンドレスポンスのある楽曲もあるので。特に、Another colony(TVアニメ『転生したらスライムだった件』エンディングテーマ)も後ほどやってきます。それだけでも!」と先のセットリストのネタバレまでしてしまい、会場中に笑いが起こった。
ここからはファンたちもリミッター解除。まずはTVアニメ『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 』エンディングテーマの「STEEL -鉄血の絆-」からライブの最終幕が開く。ピアノ伴奏のみながら「遠く遠く、強く強く、荒野に咲け!」とTRUEが拳を高く掲げながら力強く歌い上げる。続く「UNISONIA」はイントロの最中に会場中の手拍子がスタート。伴奏には弦楽器も加わり、スリリングに楽曲は進む。「モドレナイ」「カエリタイ」の歌詞はMCで予告された通り、コールアンドレスポンスで会場中が声を合わせて歌う。観客の中には、たまらず腕を前後に振り始める人も。
「Divine Spell」では、皆は手拍子も忘れTRUEの歌声に聞き惚れたが、いよいよ予告された「Another colony」が演奏されると、再び大きな手拍子が始まる。サビではもちろん、「負けちゃいけない!」とコールアンドレスポンスで全員の大合唱だ。演奏が終わり「どうもありがとう!」と言うTRUEに、この日、大一番の拍手喝采が巻き起こった。
「いよいよ次の曲が最後となります」とMCで語るTRUE。興奮冷めやらぬ観客から「えー!」と残念がる声が上がると、「いいですね、今のもう一回やろう! いよいよ次の曲が最後となります!」と繰り返すTRUE。またそれに応えるように、観客も一層大きな「えー!!」を返す微笑ましい場面も。
最後は今年リリースされた新曲からということで、『劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~』主題歌である「Blast!」が演奏された。この曲は、作品の主人公・久美子のための楽曲でもあるのと同時に、TRUE自身の音楽への決意が込められた楽曲でもあるそう。「音楽は鳴り止まない、続いてくファンファーレ」のフレーズは印象的だ。そして演奏終了後の拍手も、ずっと鳴り止まない。TRUEが舞台を去り、伴奏者たちが舞台を去っても拍手は続いていく。鳴りやまず続いていく。
アンコールは3曲、そして6周年に向けての告知も!「終わらない音楽は続いていく」
長いアンコールを求める拍手の後で、ブランケットを羽織って舞台に戻ってきたTRUE。ブランケットには、これまでTRUEが発表してきたシングルのタイトルすべてが英字で記載されているという。そんなグッズの告知もしつつ、さらに6周年に向けての新情報も解禁。フルバンド編成の『TRUE Live Sound! vol.4 ~Progress~』が、2020年5月17日(日)、東京・日本青年館ホールにて開催されることが発表された。
そしてアンコールの1曲目として、アニメ『響け!ユーフォニアム2』オープニング曲「サウンドスケープ」を披露。もちろんストリングスアレンジで、明るくはじけるような元気いっぱいの原曲とはまったく違う、優雅なピアノと弦楽器の音にふんわりとのっかるような、やわらかで温かな歌声だ。
演奏後の、最後のMCパート。ここだけは何を語るか決めず、空欄のまま舞台に立ったというTRUE。そこで語られたのは、この5周年を振り返りでもあり、これからに向けての新たな決意表明だ。
今年、初めて歌うことが怖いと思ったこともあるのだそう。自分が大切にしていた楽曲を誰かが聴いて嫌な気持ちになったらどうしよう。しかし自分が救われた歌は誰かにとっての救いになるかもしれない、そんな葛藤をしながらライブ活動を続けてきた。そのたびに新たな学びもあり、ファンとの出会いや仲間との出会いも重ねながらライブを行う会場も大きくなり、自分の進んできた道に間違いがなかったことを感じたのだという。
最近は「強いアーティストになります、強いアーティストでいたいです」と話すことが多いというTRUE。強さとは、皆を支えられる強さだとライブ後の取材でも答えてくれた。その思いが込められたアンコール2曲目として歌われたのは、「ヒカリ」だ。ファンに支えられ、進むべき道を照らされて歩んできた。そしてその思いに歌で応えるTRUE。圧巻の歌唱力でホール全体を包んだかと思えば、ファンにすごく近い距離感で可愛らしいMCを披露する不思議なアーティストである。そんな彼女だからこそ、これほどまでにその歌声が、聴き手一人一人の心を震わせるのだ。改めてそう感じる、圧倒的な演奏だった。
そして演奏後には、ステージから客席すべてを収めるセルフィ―撮影会があり、「本当に本当に最後の曲」として、定番である「DREAM SOLISTER」の、「La La La……」から始まる終盤のフレーズをアカペラで観客全員と合唱。これにてライブの幕は閉じた。
上品なだけのストリングス・ライブでは終わらない、涙が抑えきれない感動的な場面もあれば、コールアンドレスポンスなどストリングスの枠を超えた熱い場面もあった。TRUEというアーティストの幅の広さを感じるだけでなく、自分自身も支えられ、また前に進もうというパワーがもらえる舞台だった。
来年、TRUEの6周年と共に、また我々も2020年を歩き出そう。立ち止まることがあっても、また音楽に支えられながら再度進んでいこう。音楽は、これからもずっと続いていくのだから。
取材・文:平原 学

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