新章の幕開けを高らかに告げる、いき
ものがかり最新作『WE DO』

2019年12月25日(水)、いきものがかりの8thアルバム『WE DO』がリリースされた。今年は、1999年にグループを結成してから20周年というメモリアルイヤー。また、2017年1月の“放牧宣言”から約2年間の活動休止以降、初めてのCD作品であり、オリジナルアルバムとしては実に5年振りの作品となっている。

いきものがかりとしての喜びを再発見す
るために必要だった“放牧”

「この2年間、3人それぞれに多くの気づきと出会いに恵まれました。そしてなにより、これまでとこれからについて、3人だけで言葉を交わす時間をたくさんとることができました。 もっとこの3人でいきものがかりを楽しみたい。 そして、その楽しさを僕ら以外の、たくさんのひとたちにも面白がってもらいたい。 ちょっとお調子者が過ぎるかもしれませんが、今は素直に、そんな風に思っています。」 (「集牧宣言」より引用)

2018年11月に公開された「集牧宣言」において、いきものがかりは上記のように活動再開への思いを綴った。この言葉の通り、“放牧”は3人がそれぞれに自分を見つめ直し、いきものがかりとして活動する喜びを再発見するための重要な準備期間となったようだ。

ボーカルの吉岡聖恵は、2018年10月に自身のボーカリストとしての可能性に挑戦したカバーアルバム『うたいろ』をリリース。山下はテレビ神奈川『ミュートマ2』内でレギュラーコーナー「山下穂尊です。」を担当したり、ウォーカープラス紙上での連載をまとめたエッセイ集『いつでも心は放牧中』を出版したりと、音楽活動だけにとどまらず多方面で活躍。そして、リーダーの水野は関ジャニ∞大原櫻子から和田アキ子石川さゆりまで、幅広い歌手/グループに楽曲を提供し、“放牧”期間中に作った曲は約60曲にも及んだという。

大きく音楽性の幅を広げた『WE DO』

個々の活動が育んだ収穫は、ニューアルバム『WE DO』にも色濃く反映されている。最も明確に耳に飛び込んでくるのは、音楽性の幅の広がり。デビュー当時から一貫してこだわってきたJ-POPの王道的な響きは維持しつつも、本作における音楽的な豊かさは過去最高と言っていいだろう。

冒頭の「WE DO」では勇壮なホーン隊を全編に配置し、ビッグバンド的なサウンドを展開。「STAR LIGHT JOURNEY」は、フィル・スペクターから大瀧詠一までを髣髴させるウォールオブサウンド風味。その他にも、言葉と音の両面で簡潔で親密な表現を追求したバラード「あなたは」、三拍子のワルツ「太陽」、オリエンタルなディスコナンバー「しゃりらりあ」と、曲調は多岐にわたる。メンバー全員がバランス良くソングライティングを手掛けたことで、3人の描くトライアングルが一回り大きく、力強くなった印象だ。

いきものがかり自身を重ね合わせたスト
ーリーとメッセージ

また、これまで日本の大衆に訴求する普遍性を追求するために、前面に押し出してこなかったいきものがかりというグループ自身のストーリーやメッセージが自然と歌われるようになったのも特筆するべきだろう。“集牧宣言”の直後に公開された楽曲「太陽」は、グループ史上初めていきものがかり名義で制作され、ずっと待ってくれていたファンに向けられた感謝の言葉が綴られていた。その後、同曲はファンクラブ限定で配布され、最新作『WE DO』にも収録されることとなったが、彼らが特定の誰かを明確に意識して楽曲を作ったのは同曲が初めてのことだったという。

この楽曲を皮切りにした“集牧”後の一連の配信シングルは、これまで通りタイアップ先との同調性が意識されつつも、いきものがかり自身の状況や思いも重ね合わせた仕上がりへと変化している。“集牧”後の第一弾シングルとなった「WE DO」では、自信に満ちた再スタートが明快に綴られており、高いテンションそのままにニューアルバムのタイトル&オープニングを飾ることになった。

また、「歌いはじめよう ぼくらの声は だれかを愛するためにあるんだ」「語りはじめよう ぼくらのことを わかりあうために つながるために」と歌われる「SING!」は、いきものがかりで歌うことの喜びを再発見した吉岡の真っ直ぐなボーカルと相まって、自らを反映することに肯定的な意義を見出した決意宣言のようにも聴こえる。あくまで“曲”を伝えるため、より多くの人に届けるために、グループとしての存在感を主張してこなかった彼らは、再出発を経て自らに課した縛りを解き放ち、もっと自由な可能性を追求し始めたのだ。

20年の時に思いを馳せて、変化を恐れず
に新章へ

「WE DO」で始まったこのアルバムは、最後に積み重ねてきた年月に思いを馳せる「季節」で幕を閉じる。ここで歌われる「季節」は、春。彼らの記念すべきデビュー曲となった「SAKURA」の舞い散る春の季節だ。20年もの間、良い時期も悪い時期もひっくるめて歴史を刻んできた、いきものがかり自身の物語そのものが、ここで歌われている。

いきものがかりがいない間にも、J-POPのシーンは刻一刻と変わり続けてきた。ずっとJ-POPという言葉にこだわってきた彼らが、“集牧”後のリリース形態として、CDではなく配信限定という形を選んだという事実にも、音楽シーンの変化は表れているだろう。ただ、いきものがかりの3人は「普遍性」の大義名分のもとに自身のポジションを守るのではなく、変わり続け、挑戦し続けることでJ-POPの“今”を更新しようとしている。ニューアルバム『WE DO』は、そんな彼らの決意が詰まった、新章の幕開けを高らかに告げる作品なのである。

<リリース情報>

いきものがかり 8th Album
「WE DO」
2019.12.25 release 

通常盤[CD]
ESCL-5315 ¥3,000+税

初回生産限定盤[2CD]
ESCL-5313~4 ¥4,200+税

■いきものがかり公式サイト:
http://ikimonogakari.com/

新章の幕開けを高らかに告げる、いきものがかり最新作『WE DO』はミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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