『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シ
ネマシーズン 2019/20』オープニング
はロイヤル・オペラ『ドン・ジョバン
ニ』~アーウィン・シュロットが熱演

英国はロンドンのコヴェント・ガーデン、ロイヤル・オペラ・ハウス(ROH)で上演されたロイヤル・バレエ団、ロイヤル・オペラによる世界最高峰のバレエとオペラを、日本全国の映画館で鑑賞できる『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン』。すべての上映作品に、人気の高い案内人による舞台裏でのインタビューや特別映像等が追加されており、日本にいながらもそのボリュームある内容や迫力ある音響でライブで観劇しているような臨場感を味わう事が出来るとともに、大スクリーンに映し出される細やかな表情や美しい映像を楽しめることで、人気を博している。そして2020年1月3日(金)からは、いよいよ『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2019/20』のオープニング作品として、ロイヤル・オペラ『ドン・ジョバンニ』が全国公開される。
今回は、このロイヤル・オペラ『ドン・ジョバンニ』の見どころを音楽・舞踊プロデューサー・石川了氏の解説とともに紹介する。
2015年 英国ロイヤル・オペラ来日公演で話題になったカスパー・ホルテン演出のモーツァルト《ドン・ジョバンニ》は2014年に新制作されて以来、現地ロンドンでもすでに三度目の再演となる人気プロダクション。イタリアで640人、ドイツで231人、スペインで1003人の女性を虜にした史上最強のプレイボーイ、主人公のドン・ジョバンニをウルグアイ出身のバス・バリトン歌手、アーウィン・シュロットが演じる。
Erwin Schrott as Don Giovanni (c) ROH 2019 Photographed by Mark Douet
石川氏も「そのエキゾチックで精悍な顔立ちと男の色気を醸し出す立ち姿、そして深みのあるバリトンヴォイスは、見た目も声もドン・ジョバンニそのものだ。スクリーンにアップで映るシュロットの憂いのある瞳と表情も、女性からすると堪らないだろう」と語るアーウィン・シュロットは、男の色気が溢れる歌唱と演技、そして艶のある美声にロンドンの聴衆が熱狂し、現代最高のドン・ジョバンニの一人して高い評価を得られてる。
Erwin Schrott as Don Giovanni and Malin Bystrom as Donna Anna in Don Giovanni (c) ROH 2019 Photographed by Mark Douet
また、この公演ではレイプされ復讐に燃えるが、婚約者には見向きもせず、それでもドン・ジョバンニに惚れているとしか見えないドンナ・アンナ、自分からドン・ジョバンニに迫りながら、拗ねた夫マゼットとよりを戻すためにあの手この手を尽くすツェルリーナ、ストレートだが、少しストーカー的と言える愛を持つドンナ・エルヴィーラと、ドン・ジョバンニだけではなく、彼に翻弄される女性たちもとても興味深い描かれ方をしている、と石川氏は注目する。
Malin Bystrom as Donna Anna and Erwin Schrott as Don Giovanni (c) ROH 2019 Photographed by Mark Douet
Leon Kosavic as Masetto and Louise Alder as Zerlina in Don Giovanni (c) ROH 2019 Photographed by Mark Douet
Myrto Papatanasiu as Donna Elvira in Don Giovanni (c) ROH 2019 Photographed by Mark Douet
演出のホルテンは本作を、「彼が恐れるのは、地獄の炎ではなく孤独である。孤独を恐れるがあまり、彼はあらゆる女性を誘惑し現実を忘れようとしているのだ」と解釈し、人間の偽善や存在の脆さが浮かび上がる、シェイクスピアの国ならではの演劇的な舞台が展開する。
ROH 19-20_DON GIOVANNI_PRODUCTION PHOTO_THE ROYAL OPERA (c)2018 ROH_PHOTOGRAPH BY BILL COOPER
そして舞台デザイナーはオペラから映画、ファッションまで幅広いジャンルを横断し、アデルやビヨンセ、カニエ・ウェスト、レディ・ガガ、U2といった多くのミュージシャンのクリエイティブ・ディレクターとしても活躍するエス・デヴリンだ。時代を特定せず、白く塗られぐるぐると回転する二階建ての建物を用い、そこにロンドン五輪閉会式の映像クリエイティブ・ディレクター、ルーク・ホールズによるプロジェクション・マッピングを投影。様々なイメージや文字が写し出される様は、まるでドン・ジョバンニの心の迷宮を目の当たりにしているかのようで、映像で観ても迫力満点である。夢と現の間をさまよう舞台がモーツァルトの音楽に呼応する。
Production Image of Don Giovanni at the Royal Opera House (c) ROH 2019 Photographed by Mark Douet
石川氏は、オペラを一度でいいから観てみたいが値段も敷居も高いと思っているオペラ初心者に向けて、「映画館でのオペラ映像体験がその第一歩として最適ではないだろうか。値段はお手頃だし、臨場感あふれる音響も映画館ならでは。さらに劇場では見えにくい歌手たちの表情も楽しめる。本作は公演映像のみならず、指揮者・演出家・歌手などへのインタビューや作品解説、リハーサル風景もたっぷり追加され、オペラをできるだけわかりやすく鑑賞できるような創意工夫が嬉しい」と背中を押す。そんなオペラ初心者にとって、そしてもちろんオペラファンの方々にとっても、今年のオープニングを飾るROHの人気プロダクション、ロイヤルオペラ『ドン・ジョバンニ』は決して見逃すべからざる作品であることは間違いない。
【動画】ロイヤル・オペラ『ドン・ジョバンニ』予告編

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