go!go!vanillas プリティ不在の間も
4人で歩んできた1年間、ライブで示し
たバンドの気概

THE WORLD TOUR 2019

2019.11.16 Zepp Tokyo
おなじみのSE「We are go!」が流れるとミラーボールが回転。場内が光に溢れ、オーディエンスによる手拍子の音が鳴り響くなか、牧 達弥(Vo,Gt)、長谷川プリティ敬祐(Ba)、ジェットセイヤ(Dr)、柳沢 進太郎(Gt)が登場した。4人はステージ前方に出てきて、揃って拳を突き上げてからそれぞれの立ち位置へ向かう。楽器を構え、ジャーンと音を合わせたあと、「帰ってきたぞー! Zepp Tokyo、今日は俺たちの全部を受け取ってくれー!」と牧が叫んだ。4月の『LIVE! TO \ワー/ RECORDS feat. go!go!vanillas ~新曲大解禁~』、3人でまわったあのツアーで牧が言っていた「あいつを連れて帰ってくる! その時にこの続きをやろうや!」という言葉。その宣言通り、4人のgo!go!vanillasがここに帰ってきたのだ。
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『THE WORLD TOUR 2019』、終盤戦のZepp Tokyo 2days、2日目。本サイトでもレポートした通り、約1ヶ月前の名古屋公演よりプリティが復活。久々に4人が揃ったこのツアーで彼らが最初に選んだ曲は「マジック」だった。<とめどもなく涙が 溢れだすのに笑いが絶えぬ/そんな場所 探してる あるでしょうか? この辺りに>。今回のツアーにこれほどぴったりな唄い出しが他にあるだろうか。オーディエンスのジャンプにより、イントロが鳴るや否や沸騰するフロア。それを見て柳沢は笑顔を浮かべているし、セイヤの打撃一つひとつにも熱がこもっているのがよく伝わってくる。「クラップ行くぞー!」とにこやかに煽るプリティのベースラインは名古屋の時よりさらにパワーアップしているほか、「SUMMER BREEZE」ではコーラスでも存在感を見せている。やはり彼がいてこその、4人揃ってこそのバニラズなのだと実感させられた。
>>【ライブレポート】『THE WORLD TOUR2019』 2019.10.11 Zepp Nagoya
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牧のロングトーンが綺麗に伸びていた「バイリンガール」を終え、一旦MC。「やっと帰ってきたぜー! 最高やー!」(牧)、「手術もリハビリも全部乗り越えて帰ってきました。ただいまー!」(プリティ)、「この奇跡も喜びも全部噛み締めてみんなで最高の夜にしよう! ここからだ!」(牧)と喜びをそのまま言葉にすると、アルバム『THE WORLD』のオープニングナンバー「パラノーマルワンダーワールド」へと繋げた。柳沢がイントロのメロディを情感豊かに奏でるなか、世界地図で言うところの経線と緯線を彷彿とさせるような、舞台セットの格子状の骨組みが東の方からオレンジに染まる。そこから牧の「過去も未来も全部繋がってる。俺たちは繋がってるから! そんな夜にしよう!」という言葉をきっかけに始まったのは、インディーズ期の曲「人間讃歌」。酸いも甘いも噛み締めて前へ進む人の美しさを表現した新旧の名曲が続けて演奏されたのだった。「人間讃歌」は他の曲よりも心なしか粗さが残っており、青かったあの頃の自分たちのことをも大きく抱きしめるような演奏になっている。牧と柳沢が背中を合わせてギターをガシガシと鳴らすなか、牧がプリティを手招きし、そこにプリティが加わる。その背後ではセイヤが絶叫しながら叩いていて、空から何か降ってきたと思ったらそれはセイヤのスティックだった。
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コール&レスポンスの最中、観客の様子を見て「楽しそうでOK!」と笑っていた牧。後のMCで彼は「窮地に追いやられると青春を思い出す」と言っていた。それを聞いた時は、いったいどういう意味だろう?と思ったが、もしかするとプリティが目を覚まさなかった間、バンドメンバーとして今後の活動を心配する気持ちより、いち友人としての“敬祐がいなくなるなんて嫌だ”“いなくなってほしくない”という気持ちが勝っていた、ということなのかもしれない。だから今のバニラズの音からは、この4人で鳴らすのが楽しくてしょうがないんだという気持ちが、“生きてる!”という根源的な喜びが溢れ出している。それが堪らなくグッときてしまうのだ。
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一方、プリティの復活は喜ばしいことだが、“本当によかった”“めでたしめでたし”的なテンションに終始するのではなく、ちゃんとライブそのもので観客を感動させなければ意味がないのだという意識があったのだろう。「サイシンサイコウ」、「ワットウィーラブ」、「NO NO NO」、「Do You Wanna」と、『THE WORLD』初収録の新曲群を連投したブロックにはそんなバンドの気概が強く表れていた。曲間をセッションやコール&レスポンスで繋ぎつつ、オーディエンスのことも巻き込みながら、バンドの最新モードを丁寧に伝えていく4人。プリティが最前の柵に乗り出しながらベースソロをするシーンは名古屋公演の時にもあったが、やはりあの時より明らかに良い。名古屋の時は若干心配そうな表情をしていた牧も、この日はもうプリティに任せきっている様子だった。普通に考えたら、そもそも復活の舞台がフルサイズのワンマン、それも新作のツアーだなんてかなりハードルが高い。メンバーが1人欠けている間、バンドを進め続けた3人もすごいが、3人と合流するにあたりプリティもまた、私たちに見えないところで並々ならぬ努力を重ねていたのだろう。
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「やっぱツアーって楽しいんだよなあ! 大の大人が全国まわって、青春やなあって」としみじみと語ったプリティ。4人全員がボーカルをとる「デッドマンズチェイス」がバンドという青春の象徴として爆発すると、「エマ」ではイントロのあのリフをバンドが鳴らした直後、オーディエンスが「1・2・3!」と元気よくカウント。パブロフの犬並みの条件反射から、この曲が如何に愛されているかを読み取ることができた。いつになく血と汗が滲む「ストレンジャー」、「プリティおかえり!」「バニラズおかえり!」「全員揃ってgo!go!vanillas!」コールを経ての「カウンターアクション」が鳴らされる頃には、場内はめちゃくちゃ蒸し暑い。背中からフロアに飛び込み、オーディエンスの上で仰向けになった状態でギターを弾く牧。スモーク噴出もお構いなしに前方へ躍り出て、嬉しそうにフロアを覗き込む柳沢。背面弾きするプリティ。投げたシンバルを空中で叩くセイヤ。「デスから這い上がろうぜ! ここからだ!」と牧が未来へ吠えたのをきっかけに本編ラストの「No.999」を終えると、4人で向き合い、キメを数回。最後にジャーンと音を合わせてから彼らはステージを去った。
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アンコールではまずプリティが一人で登場。お見舞いに来てくれたヒトリエのシノダから「生きてて良かった。生きてたら何でもできるから」と言われて泣いてしまった、というエピソードを紹介しつつ、「俺が生きてここにいること、みんなが生きてここにいること……当たり前なんてなくって。こういう夜をずっと大切にしたいし、いつまでも続けていきたいと思います」と語った。その後3人を呼び込んでから演奏したのは「続きはプリティが帰ってきてからやろう」と約束していたあの曲、「おはようカルチャー」。次の「ライクアマウンテン」含め、牧は目から溢れるものをこぼさぬよう、頻繁に天を仰いでいる。
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「バンドは解散するし人は死ぬ。別れは絶対あるよ」と牧は言っていた。確かにその通りだ。バニラズやヒトリエをはじめ、今年はバンド界隈で悲しいニュースがあまりにも多かった。それに今年だけではなく、昨年も私たちが知らないところで悲しい出来事は起こっていただろうし、来年だってそれを避けて生きることはできないだろう。しかし牧はこう続けた。「だから口を開けて唄うし、手術後のおぼつかない手でベースを弾くし、野生児のように叩くし、感情を露わにしてギターを弾く。みんなが生きてる!って思える瞬間、空間を作っていきたいです。まだまだ楽しいこと、あるよな!」と。「今日出会ったのは偶然ではなく必然です。だから一緒に生きよう! 一緒に唄おうぜ、兄弟!」と。ステージには生き様を曝け出すバンドの姿があり、フロアには、共に生きようと歌声を上げるオーディエンスがいる。その光景はあまりにも美しいものだった。
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プリティがいなかった、しかし確かに4人で歩んできたこの1年は、バンドのことを成長させた。バニラズが鳴らすロックンロールとは何なのかを、自分たちにとってバンドが如何に大切なものなのか、そういった核心と改めて向き合うこととなった。こうなったらもう、ちょっとやそっとのことではgo!go!vanillasは揺るがないだろう。今一番に思うのは、そんな彼らの新曲が早く聴きたいなあということ。2020年の活動、楽しみにしています。
取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=ハタサトシ
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