カンパニー総出の濃密な稽古場潜入!
 ミュージカル『フランケンシュタイ
ン』稽古場レポート

二人の男を主軸に巻き起こる愛憎劇を鮮烈な楽曲と人間ドラマで描き出す、ミュージカル『フランケンシュタイン』が、2020年1月、東京・日生劇場にて待望の再演を迎える。開幕までいよいよ1ヶ月を切った師走某日、都内の稽古場に潜入した。厳しい寒さが続く一方で、稽古場は日に日に熱を増していっているようだ。

この日はフランケンカンパニーの他、抽選で当選した一般参加者20名の姿もあった。通常とは異なり一般参加者に向けての“稽古場潜入”企画でもあったため、キャストや演出家からの挨拶あり・解説ありという贅沢な稽古場取材となった。
拍手と共に登場したのは、ルンゲ/イゴール役の鈴木壮麻とステファン/フェルナンド役の相島一之。序盤からテンション高めの二人の掛け合いは見事で、参加者に「いかがですか潜入した気分は?」とマイクを向けるなど、軽快なトークでその場を盛り上げた。その後、日本版初演に続き演出を務める板垣恭一が登場。「『フランケンシュタイン』の稽古場へようこそ!」と、板垣が直々に稽古場やセットを説明し、作品づくりに尽力するスタッフたちを紹介した。
演出 板垣恭一
稽古場中央にドドンと構える巨大なセットは、初演を観た人は見覚えがあるのではないだろうか。ベースの鉄骨部分は実際に舞台で使うもので、白い板の箇所は稽古用なのだという。板垣はピンクの小鳥が一羽入った鳥かごや、紙幣の小道具を持ち出し解説。たくさんの紙幣は一般参加者に手渡され、実物の小道具を間近で見ることができた。
「本番中必ず出現します。一体どこで出てくるかはお楽しみに」と板垣さん
稽古場内の下手手前にはピアノがひとつ。このピアノが、オーケストラが稽古に入るまでの全ての伴奏を担っている。オーケストラが役者陣の稽古に参加するのは稽古の最後の4、5日程度。この日は稽古が始まって約3週間、もうそろそろ通し稽古が始まる時期だという。
板垣からの解説が終わると、いよいよ目の前で稽古が始まる。2幕のM15『欲と血の世界』のシーンだ。闘技場の女主人・エヴァのエネルギッシュな歌唱と、怪物をはじめとする男たちの命懸けの格闘がスピーディーに繰り広げられる。
このシーンは舞台上の登場人物が多く、歌・踊り・殺陣、どれも非常に激しく迫力満点。それ故に、役者の安全を考慮して稽古に工夫が凝らされていた。板垣によると、今回のような複雑なシーンでは念入りに殺陣の手を確認するために、一度テンポとテンションを落とした状態で通しを行うそうだ。この日もテンポを落としたショートバージョンの後に、通常のテンポでフルバージョンが披露されるという流れとなった。怪物役はダブルキャストの加藤和樹と小西遼生の2パターンで順に行われた。
今回の再演からフランケンカンパニーに参加、かつ本作が初ミュージカルだという露崎春女は、それを感じさせない堂々とした立ち居振る舞いでエヴァを熱演。「こいつは金よ、金ぇ!」というガツンとした第一声は痛快だ。
エヴァが「来たぞついにやつが 熊を殺した男」と歌い扇子を振りかざすと、闘技場に怪物が登場。フラフラとした足取りだが、その怪力で襲いかかる男を容赦なくなぎ倒していく。劇場とは全く違う稽古場という密な空間で行われる殺陣は、文字通り息を呑む迫力だ。

もちろん殺陣だけでなく、アンサンブルの歌とダンスも勢いがあり、特に歌声はマイクなしとは思えない力強さが感じられた。殴り合いの横で、鈴木演じる闘技場の召使い・イゴールが時に陽気に、時に不気味に舞い踊る姿からも目が離せない。『フランケンシュタイン』の中で最も“目が足りないシーン“の一つだろう。
ちなみに、怪物役の二人は上記の出番までは下手で待機している。待機中の二人は対照的で、加藤は音楽にノッて体を動かし、小西は微動だにせずジッと舞台を見つめていた。ちょっとしたことかもしれないが、同じ役でもタイプの違う二人なのだということが感じられる。
稽古披露後には、プリンシパルキャスト8名からそれぞれ挨拶があった。トップバッターの相島は、「『フランケンシュタイン』はとてもおもしろい作品だと思います。素晴らしい音楽と、本当に素敵なミュージカルのスペシャリストたちがここに集結して、すごく重量感のあるミュージカルを作っています」とコメント。
相島一之
演出の板垣から「『欲と血の世界』でイゴールは踊り狂っているけれど、実は振付はしていない」と暴露された鈴木は、「振付は自分の中ではちゃんとあります(笑)。そんなところではなく、すごいレスリングを観ていただければと思います(笑)」と弁解。
鈴木壮麻
ジュリア/カトリーヌを演じる音月桂は「私は舞台に立つことが大好きです! でも、舞台を作っていく過程がさらに大好き。台本と向き合っていると一人ぼっちの世界ですが、それがどんどん膨らんで大きい世界になっていくのがすごく楽しい時間なんです」と熱心に語り、心から稽古を楽しんでいる様子が伝わってきた。
音月桂
初のミュージカル出演となるエレン/エヴァ役の露崎は、「正直こんなに体力がいるものなのかとひしひしと感じながら、スーパープロフェッショナルな方々に優しく迎え入れてもらい、必死についていこうと頑張っているところです。最初の1週間は『鬼かよ!』というくらい(笑)、再演ですしどんどん進んでいっちゃって……」とがむしゃらに稽古に食らいついている日々を明かしつつ、「でもやっと最近、楽しいなと思える瞬間が出てきました」と笑顔を見せた。
露崎春女
アンリ/怪物役の加藤(ダブルキャスト)は「3年ぶりの再演で、改めて稽古に入って『こんなに体力が必要な舞台だっけ』と感じています。精神的にも肉体的にも一番大変な作品です。ここにいるメンバーは皆が一人二役演じるので、それも見どころの作品でもあります。本当に楽しいシーンが少なくて、観ていて辛くなるようなシーンもたくさんあります。でも、その絶望の中での希望や光、友情や愛を感じていただけたらと思います」と作品の見どころを交えて想いを述べた。
加藤和樹
同じくアンリ/怪物役の小西(ダブルキャスト)は「僕が出ていないときは(加藤)和樹が演じているから客観的に作品を観れるんですが、『お客さんがもう一度観たいと思ってくれるところはどこなのかな』とずっと考えていたんです。いろんな要素はあると思いますが、とにかく息を呑むシーンがいっぱいある。それは感動だったり恐ろしさだったり、いろんな心が動く作品になっているんだなと最近感じています」と、本作の魅力を独自の視点で語った。
小西遼生
この日披露されたシーンでは出演がなかったビクター/ジャック役の柿澤勇人(ダブルキャスト)は「今日、僕、皆さんの前でやりたかったな……。(『欲と血の世界』の直後に)ジャックの登場シーンあるじゃないですか」と発言するやいなや、過激なシーン故に周囲から「あそこは見せらんないよ」「あそこはダメだよ」と即座にツッコまれていた。
柿澤さんの発言に思わず吹き出しそうになるメインキャストの皆様
続けて柿澤は「前回公演時は20代だったんで、3年経って本当に老化を感じています(笑)。でも個人的には1年ぶりのミュージカル出演なので、体力面と精神面と、歌も練習して、正月にぴったりな作品をお届けしたいと思います!」と意気込んだ。
柿澤勇人
ビクター/ジャック役の中川晃教(ダブルキャスト)は、「小学生のとき音楽座の『シャボン玉とんだ宇宙までとんだ』を観て、どういう仕組なんだろうって子どもながらに興味を持って。あのときの自分が今ここにいたら『すごい、ミュージカルの現場ってこういう現場なんだ』ってきっと感じただろうな」と、自身が初めてミュージカルを観たときのエピソードでこの日の一般参加者の想いを代弁。さらに、「稽古場に足を運んでくださった皆さんにいろんなことを話していただいて、そうした一つひとつが次の未来に向かってミュージカルが盛り上がっていく要素になっていったら本当に幸せだと思います」と溢れんばかりのミュージカル愛を熱く語った。
中川晃教
8名の作品への想いが語られた後に、つい先程まで使われていた巨大セットに実際に上がる貴重な時間が設けられた。セットに登っている間、加藤が下から大きく手を振ったり、「足元滑るので気をつけてくださいね」と中川が声をかけたり、それらの一連の様子を小西がスマートフォンで撮影するなど、終始和やかな雰囲気で終了した。
稽古場潜入は合計1時間弱。キャストの前説から始まり、演出家による稽古場解説、1シーンの通し稽古、キャスト挨拶、そして最後は舞台セットに上がるという、とてつもなく濃密な時間だった。
日本初演からさらにパワーアップするであろう新たな『フランケンシュタイン』の誕生に想いを馳せつつ、年末を過ごしてみるのもいいかもしれない。舞台の幕が開くまでのワクワクも、観劇の醍醐味の一つだ。
取材・文・撮影 = 松村蘭(らんねえ)

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