市村正親が本領発揮! 7回目の主演
を務めるミュージカル『スクルージ』
いよいよ開幕

市村正親が7度目の主演を務めるミュージカル『スクルージ ~クリスマス・キャロル~』がいよいよ2019年12月8日(日)から東京・日生劇場にて上演される。初日前日、同劇場にてゲネプロ(通し稽古)が公開され、その前に囲み会見が行われた。
本作は、文豪チャールズ・ディケンズの代表作『クリスマス・キャロル』をベースにしたミュージカル。市村演じるどケチで思いやりがまるでない金貸しの老人エベネザー・スクルージが、クリスマスイブに夢の中で過去、現在、未来の3人の精霊と出会ったことから、その心根と運命を変えていくハートウォーミングストーリー。
Wピースいただきました!
開演前の会見では、会場の階段の上でピースポーズ! その後のフォトセッションでもカメラマン1台1台に少しずつ異なるピースサイン、もしくはスクルージおじさんモードで応じて、報道陣を喜ばせていた。
気難しいスクルージおじさんスイッチが入るとご覧のとおり!
市村は本作の歴史について「この『スクルージ』は阪神大震災のときからやっていてもう25、26年くらいかな」と振り返る。また自身の事についても「40代のときにやって、今、古稀(70歳)を迎えてまたこうしてやることができて、本当のスクルージに近づいているみたい。(当時は)70歳の頃にまたやれたらいいなと思っていたんですけど、今70歳でやってるでしょ? 今度は80歳になってやれたらいいなあって思ってるんですよ。80歳になったらノーメイクでやれると思いますよ(笑)。今は(顔のシワなどを)描かないと“青年”が抜けない気がして、スクルージになれない気がするんです」と年齢不詳スタンスで場を沸かせる。市村は「とても古稀とは思えないです」という声に「♪古稀と言われても~」と昭和の大ヒットソング・西城秀樹の「激しい恋」の替え歌で即座に切り返し、また場を盛り上げていた。
「この作品には3人の精霊が現れるんです。過去、現在、未来の精霊がスクルージの前に現れるんです。僕にとっての過去の精霊は浅利慶太さん、現在の精霊はこの日生劇場を造った日本生命の創始者・弘世 現さん、そして未来の精霊はいつも黒い服を着ていた蜷川幸雄さんだと思ってぞっとしたんです」と語る市村。この言葉が持つ意味は是非『スクルージ』を観た後に、改めて思い出して考えていただきたい。
本作を長くやっていて、失敗することはあるのかという質問も飛ぶが「失敗もその日の味ですね。失敗なのか、そういうものなのか、正解がないんですよ。セリフを間違えないで言えたというのは正解であって、でも言えたからといって良い芝居だったとは限らないし」とベテランの余裕を見せる。すると、現在出演中のドラマ『ドクターX』で米倉涼子が演じる主人公の決め台詞「私、失敗しないので」にひっかけて「僕、失敗を見せないので」と便乗してまた笑いを呼んでいた。
70歳にしてこの身体の柔らかさ! 恐れ入ります。
今年は『ラブ・ネバー・ダイ』そして草笛光子と共演した『ドライビング・ミス・デイジー』そしてこの『スクルージ』。来年は『ミス・サイゴン』と多忙な舞台生活を続ける市村。
事実、年齢をまるで感じさせない秘訣を問われると、「僕は劇場に入る前に岩盤ヨガに行って腹に電気当てて腹筋してから劇場に入るんです。そうしないと劇場で皆さんに挨拶されるたびに遮られてウォーミングアップにならないんです。だから先に外で身体を温めて出来上がった状態で劇場に入るんです」と語り、その場で足を3度も高々と振り上げる市村。それならば若さの秘訣は? という問いに「美しいカミさん(篠原涼子)と、あとは2人の子どもね。3人が観に来てくれることが1番の僕の励みですね。長男なんか、感想で批評しますよ。あそこは2階にもお客さんがいるんだから気を配らないとねって言われたりして」と子どもにデレデレな父親の表情を見せていた。
長男さんの話になると身振り手振りが増えていました(笑)
最後にお客様にメッセージを求められると「市村スクルージが帰ってきます! 古稀を迎えて皆さんに“こき”つかわれながら頑張りたいと思っています。チケットは完売ですがキャンセル待ちで是非お越しください!(※当日券あり)」と最後までサービス精神満載で会見場を「市村劇場」にしていた市村だった。
最後まで報道陣に笑顔で手を振る市村さんでした!
そんな市村とは真逆のスクルージのゲネプロの模様はというと……
ミュージカル『スクルージ ~クリスマス・キャロル~』舞台写真
19世紀半ばのクリスマス・イブのロンドンは街中に讃美歌が流れ、明日のクリスマスに向けて皆陽気ににぎわっていた。スクルージの事務所を除いて。スクルージは徹底したケチで思いやりのない老人。事務員はボブ・クラチット(武田真治)だけ。しかもこの忠実な部下を長年安月給で雇い、クリスマス休暇も1日しか許可しないという始末。それでもボブはたった一日、イブを家族と暮らすため、いそいそと家に帰っていく。
スクルージが自宅に帰ると7年前に死んだはずの共同経営者マーレイの亡霊(安崎求)が現れ、今夜3人のクリスマスの精霊(過去、現在、未来)が訪れるが、3番目の未来の精霊こそがお前の救いとなるだろう、と言って姿を消す。果たしてスクルージの身に何が起きるのだろうか……。
ミュージカル『スクルージ ~クリスマス・キャロル~』舞台写真
ほぼ全キャストで讃美歌を歌い上げるオープニングはどこまでも華やかでこの場面だけで観る者の身体にたまった澱のようなものを昇華する。今の日本の商業的なクリスマスのムードとはかなり異なる、純粋に聖夜を待ち望む人々の笑顔が実に心を和ませる。
が、市村が姿を現すと見事に場の空気が一変する。甥のハリー(田代万里生)がやってきても依然彼の周りの重苦しい空気は変わらない。この場の空気を支配する市村の演劇力はこの後も最後まで続いていた。時にはたった一人、ステージのセンターで歌い上げる時もその場の空気がすべて市村の支配下に置かれていた。市村のちょっとした表情や身のこなし、そして台詞一つで観客が笑い出し、何かに恐れを抱き、涙腺を刺激する。さながら舞台の上から観客の心を操る魔法使いのようだった。
この市村の空気に対峙する他のキャストたちも皆、子役に至るまで実力派。皆自分の役どころを十二分に理解し、一致団結して『スクルージ』の世界を作り上げている。これほど観る側に安心感と信頼感を与えてくれる舞台はそうそうない。職業柄つい、あと一歩なところを無意識で探してしまうのだが、この作品においてはそんな邪念が一切湧かなかった。これこそがクリスマスの奇跡かもしれない。
ミュージカル『スクルージ ~クリスマス・キャロル~』舞台写真
三人の精霊に出会い、空も飛んでしまうスクルージは、過去の辛い経験や未来の衝撃的な運命までも突き付けられてしまう。そこから彼が何を学んだのか。そして学びから彼はどんな行動に出たのか。描かれるのは最後に訪れる最高の笑顔。ぜひ一人でも多くの方に観ていただきたい名作だ。
取材・文・会見撮影=こむらさき
舞台撮影=田中亜紀

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