(C)Driven Film Productions 2018

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【映画コラム】1980年代の車とヒット
曲が彩る『ジョン・デロリアン』と『
ラスト・クリスマス』

 1980年代の車とヒット曲が彩る2作が、今週末に相次いで公開される。まずは7日公開の『ジョン・デロリアン』から。
 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85)でタイムマシンに改造されて登場し、世界的に有名になったデロリアン。この伝説的な車を作った男ジョン・デロリアン(リー・ペイス)の物語を、実話を基に映画化した。果たして彼は詐欺師だったのか、それとも天才だったのかが、大きなテーマとなる。
 監督のニック・ハムと脚本のコリン・ペイトマンは「複雑なデロリアンの人生の一部、一定の時間だけに焦点を合わせて伝記映画を作ろうと考えた」という。そして、舞台を1977年前後のカリフォルニアに絞って、実業家、ペテン師、FBI、麻薬ディーラーが入り乱れる、エンターテインメントに仕立て上げた。
 加えて、この映画のユニークな点は、デロリアン本人ではなく、彼の隣人でFBIの情報提供者だったジム・ホフマン(ジェイソン・サダイキス)との関わりを中心に描いているところ。だから、サダイキスが「この映画は、デロリアンとホフマンのラブストーリーとも取れる」と語るように、2人の不思議な友情物語として見ることもできるのだ。
 くしくも、年明けの1月10日から、これまた実話を基に、1960年代の米カーレース界の裏側を軸にして描いた『フォードvsフェラーリ』も公開される。両作を見ると、アメリカが車社会であること、あるいはアメリカ人にとっての車は、単なる道具ではないことを改めて思い知らされる。
 一方、6日公開の『ラスト・クリスマス』は、歌手になる夢がかなわず、荒れた生活を送りながらクリスマスショップで働くケイト(エミリア・クラーク)の前に、好青年のトム(ヘンリー・ゴールディング)が現れる。ケイトはトムに心引かれるが、彼にはある秘密があったという話。
 同名タイトル曲のほか、ワム!とジョージ・マイケルの曲に乗って展開するほろ苦く切ないクリスマスストーリーだ。ミシェル・ヨーがクリスマスショップのオーナーを演じたほか、ケイトの母親役を演じたエマ・トンプソンが脚本を書き、『ゴーストバスターズ』(16)などのポール・フェイグが監督をしている。
 よくあるクリスマスの奇跡話の中に、移民、ホームレス、LGBTなどの問題を盛り込んでいるところが今風で、クラークがだんだんとかわいらしく見えてくるのがキーポイント。トンプソンが癖の強い、言葉に訛りがある東欧移民に扮(ふん)して、“メリル・ストリープ化”していたのには驚いた。
 これは余談だが、ワム!の「ラスト・クリスマス」(84)は、藤子・F・不二雄原作、森田芳光監督の『未来の想い出 Last Christmas』(92)でも主題歌として使われた名曲だが、バブルの頃に街中に流れていた印象が強いので、その恩恵にあずかれなかった者としては、聴くと複雑な思いがするのは否めない。(田中雄二)

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