明石家さんま×中尾明慶が対談 さん
まの命を中尾が狙う!? 抱腹絶倒の
時代劇『七転抜刀!戸塚宿』はどんな
作品になるのか

2000年初演の『七人ぐらいの兵士』以降、数年ごとに演劇作品にも取り組んできた明石家さんま。2015年に再演された『七人ぐらいの兵士』以来およそ5年ぶりの舞台『七転抜刀!戸塚宿』は、脚本を福原充則、演出を水田伸生が担当。幕末から明治へと移り変わる時代を背景に、藩士の仇討ちを軸にしたアツイ人間模様が繰り広げられる、さんまにとっては舞台では初の時代劇となる。共演には、『PRESS~プレス~』(2012年)、『七人ぐらいの兵士』(再演)に続き3回目の参加となる中尾明慶のほか、山西惇、温水洋一、八十田勇一、佐藤仁美らが顔を揃える。ポスターやチラシ用のビジュアル撮影が行われていたこの取材時、ちょうど脚本の第1稿があがってきたばかりだということだったが、果たしてどんな作品になりそうか、さんまと中尾に話を聞いた。
ーーさんまさんは今回、時代劇になるとは思っていなかったとか?
さんま:5年くらい前に水田監督にアイデアを聞いた時には「次はイヌイットの話です」って言ってたんですよ。雪国で陽気に過ごすおっさんの姿を描きたい、とか言うて。そうしたら突然、時代劇になってたんです。監督は結構いつも、僕を不似合いなところへ行かしたがるんですよね。
明石家さんま
ーー中尾さんは今回の出演の話を聞いて、いかがでしたか。
中尾:既に何度かこのみなさんで、お芝居をやらせていただいているので。僕としては「やったあ、また集まれるんだ!」と、うれしく思いました。
ーー昨日できたという、台本の感想はどうでしたか。
さんま:いや、僕は昨日、マージャンだったんですよ。
ーー読んでいないんですか?(笑)
さんま:そやねん、前々から決まっていた予定のほうが大事やから。
中尾:マージャンのほうが大事なんですか!(笑)
さんま:今のところはな。初日を迎えたら、こっちのほうが大事やけど。初日を迎えるまでは自分の生活のほうが大事なんで、そっちを優先させていただきますよ。ただ、僕だけ実はチラッと、0号くらいの原稿には目を通していて、それをさらにこうしよう、ああしようという話はだいぶ前にしているんです。できてきたものは、監督が「すごい面白い」って言ってたんで大丈夫でしょう。おまえは、もう読んだ?
中尾:はい、読ませていただきました。今回は脚本が福原さんで。
ーー福原充則さんが、さんまさんの芝居の脚本を書かれるのは初めてですね。
中尾:そうなんですよ。あとは、稽古でこの台本がどうなっていくか。今は、思っていたよりも短めの台本になっていて、普通にやったら1時間ちょっとで終わるような気がするんですけど。これがさんまさんによって、何倍くらいの上演時間になるかが僕も楽しみです(笑)。
(左から)明石家さんま、中尾明慶
ーーさんまさんは、共演者としての中尾さんの印象はどう思われていますか。
さんま:『PRESS~プレス~』(2012年)という作品に出てもらったのが最初で、これがいきなり冒頭から中尾のひとりしゃべりだったんです。その5分くらいの長ゼリフが、非常に軽妙でね。飄々とやっている姿を見て、とても安心したんです。二人で絡んで芝居している時にも、こいつって、かなりできる役者なんだなと気づき、「あ、こいつならジミー役、いける!」って思いついたんですよ。
中尾:アハハハ。
ーーそんなに前に?
さんま:そう、『PRESS』の舞台中です、中尾にジミーをやってもらおうと初めて思ったのは。あのドラマ(『Jimmy~アホみたいなホンマの話~』2018年、Netflix)はもともとは映画にするつもりだったんですけど、Netflixさんとご縁がありドラマ化ということになったんです。そのあとの『七人ぐらいの兵士』の再演でも中尾と絡むシーンがあって、その時にもまた改めて「あ、こいつはジミーできるわ」って確信を持ちました。ある日、ジミーのドラマのことをずーっと考えながら中尾と芝居をしていたことがあるくらいですよ。
中尾:えっ、あの瞬間にですか? 何百人、下手したら何千人のお客さんが見ている本番中に?
さんま:だって初日、ちゃうぞ? 何日かたったら、もうわかってるやないか、こことここで笑いが来るとかは。
中尾:そんなに、余裕があるんですか! 僕はもう、あのシーンが来るたびにいつもヒヤヒヤしていたんですけど。
中尾明慶
さんま:でも、おかげで夢が叶ったので。だってもうずっと、ジミーの役を誰にしようかって悩んでいましたからね。あくまでもドラマなので、お笑い芸人にやってもらうよりは役者さんに演じてほしいと思っていたので。その確信を持てたのが、忘れもしない、オオカミ地区のあのシーンでした。
中尾:あそこだったんですねえ(笑)。
さんま:あのシーンは、まさにふだんのジミーと僕みたいなやりとりやったからね。僕が好き勝手なことをやると、中尾が「それ、なんですか?」とか「一体、何をおっしゃっているんですか??」って、ずーっと言い続けているような。また中尾は芝居ができるだけでなく、ヘンな“やってる感”が出ないところが好きなんです。まあ、そこに関しては好き嫌いがあるとは思いますけども。やってる感が出ているお芝居のほうが好きって人もいるでしょうからね。でも僕はやってる感が出ないほうが好きなので。だから、チャップリンとキートンなら、キートンのほうが好きです。あとは、ピーター・セラーズあたりの芝居が好みですね。
ーー中尾さんは、その“やってる感”を出さないというのは、ご自身で意識されているんでしょうか。
中尾:いやいやいや、僕はそんなことはまったく、何も考えていないです(笑)。
さんま:自然にやってるんでしょうけどね。
中尾:僕は常に、ただただ一生懸命やっているだけです。
さんま:僕が一番すごいなって思ったのは、やっぱり『PRESS』のオープニングのひとりしゃべりの時ですね。舞台を観に来てくれていた関根勤さんが「あの冒頭の中尾くん、いいよね」って言ってくれていたのを覚えています。いろいろな芝居を観ていらっしゃる関根勤さんも、キャッチされたっていうのはすごいことですよ。
明石家さんま
中尾:あの冒頭のシーンは本当に長いセリフだったので、いろいろなことを考えて緊張も相当していました。だけど、もうホント開演する30秒前くらいまで、楽屋でみなさんがハイテンションでめちゃめちゃ盛り上がっているんですよ。だから僕は何も考えず、楽屋での盛り上がりを持ってそのままバーッと舞台に出て行く感じだったんです。
さんま:楽屋の延長線上だったから、良かったのかもしれへんな。
中尾:はい。「いい芝居をしてやろう!」とか、「冒頭だからどうにかしないと!」って力を入れるのではなく、「あ、もう行かなきゃ! ヤバイ、間に合わない、ちょっと行ってきます!」みたいな感じだったので。
さんま:ハハハ、そうやったな。
ーー今回は『七転抜刀!戸塚宿』というタイトルですが。ちなみにお二人が最近、何か“七転八倒”されていることはありますか。
さんま:もう、僕は八倒だらけの人生ですよ。昔、僕はサインする時に名前の横に“七転び、よう起きん”って書いていたんです。よう起きんってことは、つまり転んだままやということ。それを座右の銘にしていた時期がありましたね。
別に、転んでばかりでいてもええやろ、いちいち起きてたら邪魔くさいからね。七転び一起きで、本当はいいんですよ。八つも起きなくても転んだままいて、最後だけ一起きすればいい。七つ転んで七つ起き、さらに八つ目も起きろだなんて実際しんどいですよ、これは経験上の話。だから、今の小学生、中学生に言いたいです。「七転び八起きなんて、すんな。最後の一起きだけすればいいんだよ」と。
中尾:なるほど。なんだかいい話ですね(笑)。
中尾明慶
さんま:倒れていたほうがラクですから(笑)。あと、モハメド・アリがジョージ・フォアマンと対戦した時に、わざとボディーは打たしていたというんです。打たれるつもりでわざと打たせれば、効かないんだと。打たれないと思っていて打たれると効いちゃうけれども、打たれると思って打たしたら効かないんです。その言葉を読んだ時も「あ、僕と同じ考えや!」と思って、また改めて好きになりました。それにしても、僕の場合は八倒だらけやな。おまえも、結婚したからわかるやろ。結婚したら、八倒だらけになるんや。
中尾:ハハハハ! そうですかねえ。その件に関しては、あまり語りたくないんですけれども(笑)。
さんま:ヒャーッ、ハハハ!
中尾:だから、言いたくはないんですが、まあ……ちょいちょい八倒してはいますね(笑)。
さんま:結婚はね、うまいことできるかどうかはもう、仕方がない。七転びというより七死、やもんな。
中尾:え、死んじゃうんですか!(笑) まあ……確かに七回、死にますね(笑)。
さんま:うん。七回瀕死やな。七瀕死八倒や。
中尾:ハハハハ!
(左から)明石家さんま、中尾明慶
取材・文=田中里津子 撮影=山本 れお

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