【インタビュー】レニー・クラヴィッ
ツ、『Raise Vibration』を今改めて
語る「向かうのは俺にとっての真実」

11枚目のスタジオアルバム『Raise Vibration』を2018年秋にリリースしたレニー・クラヴィッツが、イベント出演のため来日。前作アルバム『Strut』から4年ぶりとなる『Raise Vibration』について語った。
アルバム『Raise Vibration』は約30年にわたるキャリアの中で積み重ねてきた知識と新しいインスピレーションの融合によって生み出されたものだ。自身はギター、ベース、ドラム、ピアノ、ボンゴス、グロッケンシュピール、モーグ、ローズ・ピアノ、エレキギター、カリンバなど、殆どの楽器を自分で演奏している。

制作直後のインタビューでは、これまで経験したことがないスランプに陥っていたことも報じられていたが、それから約1年後の今、改めて『Raise Vibration』の真実を語る。

   ◆   ◆   ◆

■30年間もずっと同じ機材を使ってる
■それをどう使うか、どう変化させるか

──音楽のみならず、映画や建築、デザインなど様々な顔を持っているわけですが、音楽は今でも…。

レニー:音楽は俺の人生そのものさ。

──人生で一番大切なもの?

レニー:ああ、間違いなく。

──アルバム『Strut』のツアー後、最新アルバム『Raise Vibration』を制作するにあたって、「曲作りが困難になるスランプに陥った」と発言されていたようですが。

レニー:いや、それってどこから出てきた噂か知らないけれど、俺が音楽制作でスランプになったことなんて一度もないよ。きっと誰かが俺の発言を何か勘違いして引用したってやつじゃないのかな。ホント、そんな問題はない。音楽なら泉のように湧き出てくる。
▲11thアルバム『Raise Vibration』

──自身の音楽ルーツに戻りましたよね?

レニー:俺が? そうかな。どのアルバムかな?

──最新アルバム『Raise Vibration』です。

レニー:意識的に、ではないんだ。聴く人が“レニーがルーツに戻った”と感じてくれたのなら、それはそういう解釈でいいんだけれど。でも、俺はこれまでもずっと自分のルーツに忠実に生きてきた。もちろん変化もあるけど、『Raise Vibration』に関してはどうかな……サウンドのトーンなどは、かつてを彷彿とさせるところがあるよね。だが、俺にとっては、いつもポジティヴに前進してるって感じだね。うん、自分のことを語るのって難しい。

──オーガニックという言い方はどうですか?

レニー:けど、俺の音楽って前からずっとオーガニックじゃないのかな、俺の見解だけど。そもそもオーガニックってどういうことだと思う?

──シンプルで楽器同士のアンサンブルが聴こえる、そんなサウンドとか?

レニー:うん、なら俺のアルバムを全部聴けば……そういえば、この間、普段はやらないんだけど、訓練みたいに自分のアルバムを実際に全て聴いてみたんだ。そうしたら変化はあれど、一貫して変わらない部分があって、結局はベース、ドラム、ギター、キーボード、ホーン、ストリングスという構成で出来てるんだよね。全てオーガニックなんだ。中には少しラフな感じで録られたものもあるけど、共通している。すごく似通ったコンセプトで30年間やってるよ。全てが俺自身によって演奏されている。少しばかり作り込んだサウンドの曲もあるけど、あまり作り込んでないものもある。だけど、あれこれ手当たり次第にやってるわけじゃないし、テクノを作って、その後ロックンロールを作るってわけじゃない。分かるかい? つまり、全て俺のルーツに基づいているんだ。

──ヴィンテージ・サウンドとも呼ばれますよね。

レニー:そうだね。でも、面白いのが、30年間もずっと変わらず同じ機材を使ってるってこと。30年間ずっと同じヴィンテージ機材なんだ(笑)。それをどう使うか、どう変化させるか次第。スタジオは大して変わっていない。それって興味深いよね。でも俺は毎回違ったサウンド体験を作るんだ。

──30年前に比べてレコーディングは簡単ではないですか? 時間が短縮できるとか?

レニー:同じだね。俺の場合は変わらない。
──ほとんど全ての作業をひとりでこなしていますよね? 大変だったりは?

レニー:楽しいよ。ずっとこのやり方でやってきたし、他の人にいちいち説明しなくて済むからね。すぐに取りかかれる。クレイグ・ロスだけだよ、いつも俺と一緒に作業をしてくれる人は。『Raise Vibration』では、ミックスは一緒にやったけどエンジニアは彼が務めたよ。彼が演奏したトラックもあれば、していないトラックもあるし。彼と俺の間には、言葉に出さなくても通じ合える共通言語のようなものがあるんだ。だから一緒にやっててすごくスムーズだし、彼は俺を見て、何をやろうとしているかすぐに理解してくれる。

──つまりバンドメイトのような存在ですか?

レニー:そうそう、彼はステージでも一緒だし、スタジオでもずっと一緒に仕事をしてくれる唯一の人なんだ。

──新作『Raise Vibration』からの「It’s Enough」は最も長いトラックですよね。

レニー:ああ、7分とか?

──確か8分とか。

レニー:うわ、8分も(笑)! 長い曲だけど、美しくもある。それだけの時間が必要な曲なんだと思うな。

──ビデオも美しいです。

レニー:ありがとう! トランペットのソロパートもすごく美しいよ。
──「5 More Days ‘Til Summer」のリミックスが、本日公表(取材は2019.10.5)になりましたよね。

レニー:ああ、確かそうだよね。夏にはちょっと間に合わなかったけど、ここなら大丈夫。ここは真夏だし (※この日、東京[@Jing Harajuku]は季節外れの夏日だった)。

──あのビデオが大好きです。裏話を教えてもらえますか?

レニー:酒場で出会った男の話なんだ。一度もバケーションに行ったことのない年配の男性。自分のために割く時間や余裕がなくて、夜勤をこなして、昼間は寝る生活。妻もいなければ、子どももいない。ずっと働きづめっていう。そしてついに人生で初となるバケーションに行って、初めて世界を冒険するわけさ。

──いい話ですね。

レニー:うん、そうそう。実在する人が基になっている。

──さて、アルバムがリリースされてから1年が経ちましたが、ずっとツアーをされてますよ。

レニー:ずっとツアーをしてきたし、2020年もこのアルバムのツアーを続けるよ。だからそのツアーでは日本にも戻りたいなと楽しみにしているんだ。以前はもっと頻繁に来てたからね。日本で丸1ヵ月間とか全国ツアーをしたこともあるよ。北海道かな? 日本の最北から……。

──沖縄まで?

レニー:いや、そこはまだ行ったことないけど、日本列島なら最北から最南端まで、広島、名古屋、大阪、東京とか回ったことがあるよ。最高だった。また同じように、あちこちに舞い戻れると嬉しいな。まず東京からスタートして、いろいろ行けると思うけど、また日本としっかり繋がりたいとすごく思うんだ。日本が大好きだし、デビューしたての頃に初めて来日した当時から、すごくいい思い出ばかりなんだ。
──例えばどういう思い出あるのか教えてもらえますか?

レニー:俺は駆け出しのアーティストだったから、まるで違った惑星に行くかのようだったよ。祖父を連れてきたこともあるし、父を連れてきたこともある。楽しいことばかりさ。素晴らしい人ともたくさん出会ったよ。日本の文化も大好きなんだ。日本の独創性、アートやデザインも大好きだよ、全てがね。食べ物もそう。さっきも言ったけど、日本に来る時はいつも他の惑星に行くみたいな感じで、ここでしか体験できないことを体験できる。それから、来日する度に俺はいつも洋間ではなく、日本間に宿泊するよ。毎日和食を食べて、すごく自分が快適でいられる場所なんだ。ずっとここにいられる、ここに住めるよ。すごく自分に合ってるんだ。

──日本で音楽も作れます?

レニー:日本でレコーディングしたことはないけど、やったらすごく面白くなると思うな。

──普段はバハマで音楽制作ですよね?

レニー:そうなんだけど、レコーディングならどこでも構わないよ。

──夢を見れるなら、ですね?

レニー:その通り。

──最後に、日本のファンにメッセージをお願いできますか?

レニー:昨日もホテルに多くのファンが来てくれているのを目にしたし、みんなの変わらぬサポートにはとても感謝している。すぐにまた戻ってくるよ。約束する。再会して、またみんなで一緒に“Raise Vibration”しよう!

取材・文◎村上ひさし
撮影◎Nadine Koupaei

■11thアルバム『Raise Vibration』

2018年9月7日発売
WPCR-18076 ¥1,980+税
01. We Can Get It All Together
02. Low
03. Who Really Are the Monsters?
04. Raise Vibration
05. Johnny Cash
06. Here to Love
07. It's Enough
08. 5 More Days 'Til Summer
09. The Majesty of Love
10. Gold Dust
11. Ride
12. I'll Always Be Inside Your Soul
13. Low (David Guetta Remix) ※BONUS TRACK

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