谷佳樹・杉江大志インタビュー「武者
と志賀のふたりだからこそ紡げる物語
」 舞台『文豪とアルケミスト 異端
者ノ円舞(ワルツ)』

実在した近代日本の文豪たちが転生し、侵蝕された著作を守るという、文豪転生シミュレーションゲーム「文豪とアルケミスト」。2019年2月に平野良(太宰治役)主演で舞台化され、その第二弾となる舞台『文豪とアルケミスト 異端者ノ円舞(ワルツ)』の公演決定が発表された。今回は第一弾でも出演した志賀直哉(谷佳樹)と武者小路実篤(杉江大志)らの白樺派にスポットを当てた物語になるという。
固い友情で結ばれている志賀と武者。彼らを演じる谷と杉江の仲はどうなのか気になるところ。2019年2月の第一弾『文豪とアルケミスト 余計者ノ挽歌(エレジー)』で初共演とのことだが、共演以上のものを感じているようで――?
インタビュー中は何度か脱線しながらも、次々に言いたいことが出てくるなど、優しくてアットホームな空気感だった。次公演の意気込み、ふたりの関係性から第一弾の共演者の話までたっぷりお届けする。
ーー出演が決まったときのお気持ちはいかがでしたか?
杉江:色んな要素を含めての「おおっ!」でした。嬉しいのもあり、プレッシャーもあり、大変そうだなっていうのもあり。
谷:驚きや嬉しさがありました。『文アル』が初演で大好きな作品になったので、同じ役で、そして相手役が大志でやれるっていうことがまず嬉しくて。そして白樺派をピックアップしてやっていただけるということがやはり嬉しかったです。役者としても自分たちとしても、僕たちの出番の回が来た、より深く掘り下げられるんだ! って。
谷佳樹
杉江:第一弾の時に2回目もやりたいな、できればここをもっと描いてほしいなって思っていたのが来ましたね!
谷:まさに思っていたことが! 裏で何か手回しした?
杉江:いや、してない。300円くらい渡したかもしれないけど。
谷:(笑)。それでいいんだったらもっとお金積むよ!
杉江:漫才師みたいにツッコミしないで(笑)。『文アル』というものを一から築いたのは平野良くんだから、今度は彼がいないのもまた……。僕らの後ろにいてくれたら安心もあると思うんですが。第一弾を超えたいというか、より良いものを見せたいなって思ってます。
谷:良くんも絶対観に来てくれるしね。だって良くん『文アル』大っっ好きだから! あんなにも生き生きしてる良くんを見るのは初めてで、本当に楽しんでるんだ~ってのが前回わかったんです。もちろん太宰治もファンのみなさんに愛されてたし、僕たちも愛していたし。みんなが愛している作品で、僕たちが代表としてやらせていただくからには、責任を持ってそういう想いを背負わないとだめだし、次に繋げないとってより強く想います。
杉江:「繋げないと」というのは大きいよね。
谷:舞台『文アル』はみんなで作りあげたものだからね。(杉江の脇腹を突く)
杉江:(笑)。ふたりで力をあわせて頑張ります。
ーー演じるキャラクターについて教えてください。
谷:「白樺派」は僕たち以外にも何人かいます。その代表的なのが武者小路実篤と志賀直哉です。お互いが家族のように、兄弟以上に思い合っていて、本当に大切な存在です。思いやるからこそ空回りする部分もあるし、思いが強いからこそ周りに勘違いされちゃったりすることもある。そんな不器用でまっすぐなのが志賀であって。それを上手く転がされていると思いながらもコントロールしてくれるのが武者です。プライベートの僕たちともリンクしてますね。
杉江:そうですね~杉江大志が谷佳樹を転がして、ね。
谷:そこは否定できない(笑)。
杉江:否定してよ! 結構、谷やんに転がされているところあるよ~?
杉江大志
谷:大志とは本当にいい距離感の中でいられるし、役としても良い距離感ですね。
杉江:武者はすごく前向きで元気、ポジティブ。武者小路先生も前向きな作品をたくさん書いておられた方なので、それがキャラクター性にも出ています。前向きでポジティブだからこそ、志賀の存在がすごく大事。志賀みたいな人がいてくれるから自分は前向きでいられる。振り返って見てくれる、後ろを支えてくれるから真っ直ぐでいられる、みたいな。お互いに持っていない部分を補い合っていて、良い部分を尊敬しあっていて、本当に素敵な関係だなって思います。
谷:武者は志賀の弱点を誰よりも理解しているというのも強いですね。だからこそ預けられる、信用できる。そういうのが志賀と武者の関係かなと思います。
■無言でいられるほど居心地良い
ーーおふたりはこの作品より前からご友人だったんでしょうか?
杉江・谷:いえ、この作品(第一弾『文アル』の共演)が初めてです。
杉江:そうとは思えないですね。コンビ組んで芸歴10年くらいあるみたいな!
谷:お互いがお互いを知り尽くしたかのようなね。第一弾の時は一緒に帰ることもあったのですが、一言も会話をせず、別れるときに「また明日、お疲れ~」って言うくらい。無言でいられるほど居心地良いんですよ。そういうのがお互いの中でわかってるから、楽だなって。
ーー​気を使いすぎないっていう感じですかね。
杉江:ゼロです。普段話している中で気を使うことはないんですが、その分わかりあっている……とはあまり言いたくないけど。
谷:言おうよ(笑)!
杉江:今日ちょっとピリッとしてるなぁとか、さっきのやつ嫌だったんだろうなってのがすごくわかっちゃう。だから二人でいたら、ずっとハッピーなんじゃないかな。お互いフォローしあえるというか。
(左から)杉江大志、谷佳樹
ーーおふたりの間で「友情」を感じるときはどんな時ですか?
杉江:(即答で)あんまりないですね。
谷:(笑)。ないよね。
杉江:お互いに居心地がいいから一緒にいると楽で、楽しい。「友情」っていう感じではないかな。例えば谷やんが2、3日入院してもお見舞いにはいかないかもね。メールとかするくらい。
谷:だよね~。それを聞いて、酒のアテにする(笑)。
杉江:そもそもプライベートで誰かと会うということがあまりないんですが……谷やんにはたまに電話するよね。
谷:うん、急に「ラーメン行きません?」みたいなのがくる!
杉江:なんなんだろうね。この関係。友情とは言わない気もするし、家族とも違う。しばらく共演なくてもすぐ感覚戻れそう。
谷:不思議だよね。はっきりとした居心地の良さの相手、良い距離感。……「同級生」に近いのかも? 連絡取り合わなくても、何かの機会で会った時に当時の間隔を思い出せる、高校の同級生のような。
杉江:それ近いかも。地元の友達みたいな! 年は離れてるけどね。
谷:大志に敬語使われると逆に気持ち悪いってのがあります。
杉江:顔合わせの時に「敬語とか全然いいから」って言ってくれて。
谷:言ったっけ?
杉江:うん。しゃべっているうちに、自然と敬語が抜けましたね。
谷:でも大志は態度とかで年上を立ててくれる。それがわかるからこそ許せる相手ですね。場面を読む力が長けてるから。
杉江:ふとした時は敬語だし、なんでもないときは敬語が取れる。そんな感じよな!
谷:おうおう、わかりやすくきたな(笑)
(左から)杉江大志、谷佳樹
■「感謝感謝圧倒的感謝!」キャスト全員でごはんに行った話
ーー第一弾の舞台を振り返って、座組みの雰囲気や印象的なシーンなどを教えてください。
杉江:座組みの雰囲気はすごく良かったよね。
谷:本当に良かった。京都公演の時にキャスト全員でごはん行ったもんね。
杉江:うん、みんな超仲良しだったな~。でもその中心にはいつも良くんがいたよね。その存在は大きかった。
谷:バランスもよかったよね。マイペースな白樺派、仲のいい無頼派(平野良、陳内将、小坂涼太郎)、そこにクボヒデくん(久保田秀敏)とか(深澤)大河とかがいて、ムードメイカーの和合(真一)くんがいて。
杉江:誰も誰かを否定したりしないし、すごく協調性があって。中には我の強い人もいるけど、それをバランスとれる人もたくさんいて。
谷:こなん(小南光司)と涼太郎がよく一緒にいるんですが、この二人もおもしろい。意外と不器用なこなんをうまく涼太郎が操ってて。
杉江:涼太郎はとぼけてる感じなのに「そういうこと言わない方がいいよ」とかしっかり制してくれる。こなんは器用で上手そうなのに子供っぽいところもある。
谷:(小南、涼太郎、谷、杉江の)4人でメシも行ったよね。お酒を飲みながら美味しいごはんを味わうつもりが、若いふたりは運動部かなって思うくらい勢いよく食べてて! そんなに食べるなら食べ放題のお店連れてくよ!(笑)
杉江:このふたりの関係も僕たちと似てたよね。良くんとか将さんはすごくしっかりしてるし、わごちゃんは自分の世界を持ってる。でもわごちゃんは一番常識人だと思う。いちばんすっとぼけてるのはやっぱり僕らだよ!
谷:そうかなぁ? しっかりしようとは思ってるんだけど、素が出ちゃうんだよなぁ~?
谷佳樹
杉江:他には何か思い出ある?
谷:思い出はいっぱいあるけど、大志が良くんのお芝居を袖でよく見てたのが印象的だったな。良くんのああいうところすごくいいよねとか話したよね。
杉江:楽しいときは見ますね。
谷:「感謝感謝圧倒的感謝!」ってのをいまだよく使う(笑)。あれはもう抜けない!
杉江:締めるところと緩めるところと(良くんは)上手いんだよね。
ーー今回の舞台に期待することは? アクション、ダンス、武器の扱いなど盛りだくさんの舞台ですが……。
杉江:今回はそれを全部やらなきゃいけない。「全てしっかりバチッと背負いきる!」って気合が入っています。
谷:オープニングから始まり、立ち回りがあり、会話やふたりの関係性やその他の文豪たちとの会話などは白樺派を中心に動いていくと思うので、そこに対する比重が僕たちでバランスを取っていけるか。稽古場からお互いを補い合って、フォローし合って上手くできたらいいなと思っています。
杉江:期待っていう意味では新しく入ってくる登場人物たちもですね。でも第一弾とは中心のキャラクターが違うから作品の色はだいぶ変わると思うし、そこに今回からのキャストの人たちがどんな色を持ってきてくれるのか。『文アル』という作品は同じですが、雰囲気はまた変わると思います! そのあたりは期待してますね。前と違って良いと思ってますし。
谷:うん、そうね。前回の良い所を取りつつ、違う方で攻めて行きたいね。
杉江:良くんたちには勝てないもん。
谷:勝てない。でも倒すよ! 倒すつもりでいくよ。
杉江:うん。(感動で)泣かせようぜ!
杉江大志
ーー最後にファンの皆様へメッセージをお願いします。
谷:みなさんの舞台『文アル』の期待値が上がっている中、第二弾という事でプレッシャーもあります。大志と僕だからこそできる白樺派や、新キャストが加わって新しい風が吹くことで「こういった『文アル』もありだよね」と思ってもらえる作品にしたいです。観たお客様が、続きや「また○○派を見たい」などと言っていただけたら、いちばん嬉しい形かなと思います。前回のバトンを受け継いで、それを大きくして、次の人たちにバトンを渡せるようにしたいです。ご期待以上のものを提供するつもりで僕たちは頑張りますので、ぜひ楽しみにしていてください。
杉江:第二弾ということで前回から引き継ぐものももちろんあると思いますが、キャストもガラッと変わるし、前回中心人物でありお笑い担当でもあった無頼派3人が揃ってないので、かなり色が変わってくるでしょう。今回は武者と志賀のふたりだからこそ紡げる物語で、すごくエネルギッシュで心に響くものになると思います。『文アル』という大枠を引き継ぎながらも新しい色を出して、「文豪とアルケミスト」という作品の幅を広げる公演になったらいいなと。谷やんの言うように、個性の詰まった新しい魅力をお届けして次につなげられるように頑張りますので、応援どうぞよろしくお願いします。
(左から)杉江大志、谷佳樹
ヘアメイク=佐々木渚香
取材・文=松本裕美 撮影=福岡諒祠

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