映画『主戦場』 KAWASAKIしんゆり映
画祭での上映見送りを受け、アップリ
ンク吉祥寺が再上映へ

映画『主戦場』が11月8日から東京・アップリンク吉祥寺で再上映されることが決定した。あわせて、同館を運営するアップリンク代表・浅井隆氏がコメントを発表している。
『主戦場』は、ミキ・デザキ監督が“慰安婦問題”をテーマとして制作したドキュメンタリー映画。慰安婦問題について、日本、アメリカ、韓国など、それぞれの立場の人々にインタビューを行った作品。一部出演者が上映禁止などを求めて訴訟を起こしていることでも知られている。

同作は、川崎市麻生区で開催中の『第25回KAWASAKIしんゆり映画祭』で上映が予定されていたが、10月27日に映画祭側が上映見送りを発表。その経緯を「上映作品の選定時に『主戦場』が候補にあがり、作品をとりまく提訴の状況も踏まえて、一旦は上映の申し込みを進めていくことを判断しましたが、共催者の一員である川崎市からの懸念を受けました。上映時に起こりうる事態を想定し、私たちができうる対策を何度も検討した結果、今回は上映を見送らざるを得ないと判断をさせていただきました」と説明していた。11月1日現在は、「『主戦場』の上映実現にむけて前向きに協議しています」と報告している。アップリンク吉祥寺での上映は、この“上映見送り”を受けてのもの。
映画『主戦場』 (c)NO MAN PRODUCTIONS LLC
アップリンク代表の浅井氏は「映画館として、まず『主戦場』を観てもらい、映画祭主催者たちがどういう論点で上映を中止したのかを考えるきっかけを作りたいと思い『主戦場』を再上映することにしました」と説明している。
アップリンク代表・浅井隆氏のコメント全文は以下のとおり。
浅井隆(アップリンク代表)
ミキ・デザキ監督の映画『主戦場』を11月8日からアップリンク吉祥寺で再上映します。
この作品は、2019年5月24日から9月19日まで既にアップリンク吉祥寺で上映し、合計5,624人の方が鑑賞し、何の問題も起きることもなく上映を終えました。
今回、「KAWASAKIしんゆり映画祭」での上映が決まっていたのに、上映が中止になったということを受け、映画館として何ができるかを考えました。
その結果、『主戦場』を再上映することにしました。大きな話題になった作品ですが、観ていない人もまだまだ多いと思います。
「KAWASAKIしんゆり映画祭」の会場、川崎市アートセンターから直線で18キロ離れたアップリンク吉祥寺ですが、まず『主戦場』を観てもらい、映画祭主催者たちがどういう論点で上映を中止したのかを考えるきっかけを作りたいと思います。
今年は、表現に関してさまざまな出来事がありました。『あいちトリエンナーレ』での「表現の不自由展・その後」に抗議が殺到し、安全な運営ができないということで主催者が展示を中止しました(閉幕1週間前に再開)。またその『あいちトリエンナーレ』に対して、主催者が来場者を含め展示会場の安全や事業の円滑な運営を脅かすような重大な事実を申告しなかったため、実現可能な内容になっているか、そして事業の継続が見込まれるか、適正な審査ができなかったことを理由に、文化庁が助成金交付を取り消しました。
太田信吾監督の『解放区』は、西成の釜ヶ崎地区の描写で2014年に大阪市から助成金交付の条件として修正を指示されましたが、監督は修正を拒否し助成金を返還し、今年公開されました。
真利子哲也監督の『宮本から君へ』は、出演者のピエール瀧氏が麻薬取締法違反で有罪判決を受けたことで、文部科学省が所管する日本芸術文化振興会が「国が薬物使用を容認するようなメッセージを発信することになりかねない」と判断し、一度交付した助成金を取り消しました。
そして、『主戦場』は、上映差し止めを求める裁判中の映画を上映するのは難しいと「KAWASAKIしんゆり映画祭」を共催する川崎市が表明し、それを受けた映画祭運営委員会が上映中止を決めました。
私個人の考えは、あらゆる人から徴収した税金を使い、公的資金で運営する組織、イベントこそ、人権に配慮した上で、あらゆる人の意見を反映した表現や活動を制限することなく公的なサポートをすべきと考えています。
アップリンクの立場からは、まず議論されている映画を自分の目で確かめて、今、日本で起こっている表現の自由、検閲、公的助成金、自主規制、自粛、忖度などをキーワードとした問題を考えてほしく思います。
浅井隆
アップリンク代表
『主戦場』アップリンク吉祥寺にて11月8日(金)より上映。

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