never young beachとCHAIがアジアツ
アーを開催 ーー自分たちの好きな音
楽スタイルで確固たる存在感を放った
2つのバンド

『NEVER YOUNG BEACH AND CHAI ASIA TOUR 2019』2019.10.21(mon)Zepp Tokyo
never young beachとCHAI。絶妙な組み合わせだ。どちらも流行りや時代に左右されず、自分たちの好きな音楽スタイルで確固たる存在感を放つバンドだが、そんな2組によるスプリットツアー『NEVER YOUNG BEACH AND CHAI ASIA TOUR 2019』が東名阪+台湾の4公演で開催されている。今年はそれぞれフルアルバムをリリースし、新たなフェーズへと突入したタイミングで実現した今回のツアー。その日本編のファイナルとなったZepp Tokyo公演は、圧倒的なオリジナリティを持つ互いの音楽を、ピュアな心で称え合う2組のリスペクトがあふれた一夜になった。
CHAI
まず、トップバッターはCHAI。ステージがピンク色に染まり、バンド名をかたどった電飾が鮮やかに光ると、お揃いの衣装で身を包んだメンバーが登場した。「ハイ、エブリバディ! ウィーアーチャイ! イッツショータイム!」。マナ(Vo.Key)のキュートな声を合図に「CHOOSE GO!」からライブはスタート。ユナ(Dr.Cho)&ユウキ(Ba.Cho)という強靭がリズム隊が繰り出す骨太でブラックなグルーヴにのせて、ラップとメロディを行き来する独特のメロディが、マナ&カナ(Vo.Gt)の双子によるツインボーカルで紡がれていく。
<せこい せこい>という、他の歌にはあまり登場しないようなフレーズを連呼して、<やすい男にはついてくな>と歌う「ボーイズ・セコ・メン」 から、自分らしいファッションを楽しもうと軽やかに提案する「ファッショニスタ」。そして、CHAIの表現の軸にある「NEOかわいい」という考え方――スタイルがよくて顔立ちが整っている一般的な「かわいい」だけではなく、自分らしい個性を生かした「かわいい」を追求するというスタンス――を綴った自己紹介ソングでは、最後にメンバー全員がステージの前面に並び立ち、4声によるアカペラを歌って、最後にポーズを決めた。

CHAI

彼女たちのルーツには、ロックもジャズもブラックミュージックもニューウェイヴのエッセンスもあるが、いま目の前で鳴っているのは「CHAI」としか言いようのない音楽、自分という生き方をすべて武器にした音楽だ。

CHAI

「CHAIだよ!」。マナが親しみの込めたあいさつを交わしたあと、最初のMCは、マナが英語でしゃべる言葉を(「私たちの人生に金髪マジ必要」とか、そんな内容)、ユナが日本語で通訳するという鉄板ネタで湧かせると、ひときわ大きな歓声が湧いたのは「N.E.O.」だった。ダンサブルなビートにのせて、マナの声に強めのリバーブをかけながら繰り出される攻撃的なラップがかっこいい。ステージが真っ赤に染まり、サイレンのような音が響きわたった「クールクールビジョン」では、ユウキがセンターに移動してマナのシンセを弾く場面も。
CHAI
そのまま途切れずになだれ込んだ「GREAT JOB」でも、3台のシンセを駆使したエレクトロなサウンドを聴かせると、「カーリー・アドベンチャー」では、壮大で浮遊感のある音像が、ここではないどこかへと連れ出すようなトリップ感を生む。最高にクールな展開だ。
CHAI
かと思えば、続く「THIS IS CHAI」では、全員がもさもさの衣装を身にまとって、演奏せずにダンスをしたりと、CHAIのライブは全く先を読ませない。おそらく彼女たちには「こうでなければいけない」というバンドという概念がないのだと思う。どんな楽器を使おうが、むしろ楽器を使わなくても、かっこよければ、あるいは、かわいければオッケーだ。

CHAI

終盤、全員がサングラス姿になり、会場中にブーイングを起こす「ぎゃらんぶー」から、未来への懸け橋となる「フューチャー」を届けると、最後のMCでは、今回がバンドにとって初のスプリットツアーになったことに触れ、「大リスペクトするネバヤンと一緒にやれてうれしい」と、ユナが喜びを伝えた。
CHAI
ラストナンバーは「アイム・ミー」。始まりと同じようにピンクの光に包まれ、自分が自分であるというアイデンティティの大切さを、どこまでもポップに表現するCHAIの真骨頂となるナンバーで幕を閉じた。

never young beach

美しい光がステージに降り注ぐなか、never young beachのライブは「うつらない」から始まった。心地好く揺れるローテンポのバンドサウンドにのせて、ギターのストラップを短めに構えた安部勇磨(Vo.Gt)の朴訥としたボーカルが会場に響きわたった。
never young beach
ステージ下手に立つ阿南智史(Gt) と、逆サイドでサポートギターを務める山本幹宗が繰り出したギターのユニゾンも味わい深い。ステージにうっすらとスモークが立ち込めるなか届けたのは「白い光」。そして、スティールパンのまろやかな音色がトロピカルなムードを演出した「Let's do fun」へ。今年5月にリリースされた最新アルバム『STORY』の楽曲のほか、久々にリリースされた楽曲も交えたセットリストだ。

never young beach

最初の3曲を終えて、「だいぶ良い調子だね」(阿南)、「今年の僕らは一味も二味も違うから、このフロアを縦ノリにすることもできるけど、まだしない。焦らして焦らして。テーマは「じわじわ」だから(笑)」(安部)と、気さくなMCでフロアを和ませると、休日の海辺をまったりと散歩するような「SUNDAYS BEST」へ。<デカイピンクのタンク><光るインコ><赤と白のパラソル>……という独特の風景描写と豊かなサウンドアプローチによって、映像装置など使わずとも、彼らの音楽は目の前に鮮やかな景色を描いてくれる。
never young beach
バンドが敬愛する高田渡のカバー「自転車にのって」から、巽啓伍(Ba)と 鈴木健人(Dr)が繰り出す躍動感のあるグルーヴに、言いようのない焦燥感を綴った「なんかさ」へと、中盤からは、予告どおり「じわじわ」と、曲のテンポを上がりはじめた。
never young beach
そんななか、「大阪、名古屋でやったとき、アレンジを変えすぎて、何の曲かわからなくてスベったみたいになった曲」と前置きをしたのは、「ちょっと待ってよ」。オリジナル音源とは違うシーサイド風なイントロは、たしかに何の曲かはわかりづらかったが、歌が入った瞬間に「ああ、あの曲!」と、会場から大きな歓声が湧いた。CHAIのステージもそうだったが、この日のお客さんは、曲調に合わせて、手を挙げたり、横に揺れたり、「ふ~!」と声を出してみたり、自由に体を動かして楽しんでいる感じが良かった。みんなで同じ動きをする一体感のあるライブも楽しいが、それとは別のところに、ネバヤンやCHAIの目指すライブの形はある。
never young beach
中盤のMCでは、「CHAIになりたくて。楽屋でCHAIの衣装を着てみたけど、パツパツだった(笑)」というスプリットツアーならではのトークで笑わせた安部。メンバー全員で歌う清涼感のあるコーラスが寂しげな歌詞に寄り添う「いつも雨」に続けて、「ついに阿南がアコースティックギターを弾く新曲ができた」と紹介されたのは「やさしいままで」。メンバーの足元を温かい光が照らし、センチメンタルな歌詞を歌い上げるスローバラードは、今までのネバヤンにありそうでなかった楽曲だと思う。そして、「どうでもいいけど」「あまり行かない喫茶店で」からは、いよいよ「縦ノリのコーナー」へと突入していく。すでに良いムードが出来上がっている会場に、安部が「もっともっとー!」と呼びかけると、クライマックスに向けて会場の熱気はさらに加速していく。
never young beach
阿南の泥臭いチョーキングが炸裂した「STORY」から、巽の踊るようなベースラインが口火を切った「fam fam」へ。楽器隊の見せ場をいくつも演出しながら辿り着いたラストソングは「お別れの歌」だった。<いつかまた会えたら>と、再会の約束をかわすその曲で、たくさんの笑顔に包まれてライブ本編は幕を閉じた。
never young beach×CHAI
鳴りやまないアンコールに答えて、再びメンバーがステージに戻ると、「CHAI、本当にかっこいい」と切り出した安部。「まず、あんなに踊れないよね(笑)」と、リスペクトを込めて語った安部は、CHAIのライブのときには、ステージ袖で一緒に踊りながら見ていたと言う。さらに、昔、阿南に「踊って」と頼んだら断られたことがあると明かすと、次の曲では、その阿南が「踊る」と宣言。改めてCHAIを呼び込み、コラボで披露したのは「明るい未来」だった。メインドラムをユナが担当するなか、マナ、カナ、ユウキと安部の男女ボーカルが織りなすハーモニーは息を呑むほど美しかった。約束どおりCHAIと一緒に阿南も軽やかに踊っている。時代も令和を迎えたが、どこか古き良き昭和の年末のような、懐かしくも新しい不思議な雰囲気で大団円を迎えるあたりは、この2組ならではだろう。
never young beach×CHAI
なお、ネバヤンとCHAIのスプリットツアーは、このあと、11月に台湾・台北THE WALL、そしてバンコクでのMaho Rasop Festival出演と続く。いま、日本にはこんなにもクールでキュートなロックバンドがいるということが、アジアにも伝わっていくと思うと、とても誇らしい。この2組が台湾のお客さんをどんなふうに熱狂させるのか。日本に帰ってきてから語られるであろう、彼らからの「お土産話」も楽しみだ。
取材・文=秦理絵 撮影=森好弘

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