ももすももす

ももすももす

【ももすももす インタビュー】
人間ってひとりじゃ
生きていけないし、
曲もひとりきりでは作れない

嫌いなものを好きって
嘘付いちゃうこともある

やっぱりももすさん自身にも説明のできない感覚的な魅力がたくさんありますよね。「アネクドット」にも知らない表現や、聴いたことのない言葉がたくさんありました。でも、“届かない気持ちを歌っている”っていう切ない想いは感じるんです。

ありがとうございます。この曲は珍しくタイトルが先に決まってたんですよ。アニメの世界も人間も、短編の物語を何回も繰り返しながら積み重ねて生きているって思うんです。でも、増えていって分厚くなるとだんだん忘れていっちゃうじゃないですか。それはすごく寂しいことなんですけど、逃れられない。だから、そのひとつひとつの物語にある焦燥感を曲にしたくて、“逸話”っていう意味のある“アネクドット”と名付けました。

前作に比べて全体的にアップテンポな楽曲が収録されているから、今作は次から次へと物語が巡っていくスピーディーさもありました。

「アネクドット」を1曲目にして、自然とそうなったんだと思います。カップリングの「プルシアンブルー」はそのあとにできた曲だし、早く届けたいっていう感覚もあって収録したんです。

バンドサウンドで届けることにはこだわってますか? ライヴだとよりロックですよね。

まずはバンドが好きっていうのがあるし、もともとのルーツはピアノだけど、曲を作るようになったのはギターに触れてからなので、曲作りはバンドのほうが染み付いているのもあります。家ではピアノだけの曲も作ってるんですけど、今回は『旗揚!けものみち』のパワフルなイメージ的にもバンドが合いそうだと思ってこのアレンジになりました。

カップリングの「プルシアンブルー」はどんなきっかけでできた曲なんですか?

伊藤若冲さんの画集を見ていたら、すごく青色が使われていて。昔は青い塗料がすごく貴重だったってことを知って、“青い曲を作りたい”と思って作りました。青色って水に溶かすとすごく儚いんです。他の赤色とかとは違って流されて消えちゃいそうな感じがする。その印象も込めました。

伝えたい想いが伝わらないもどかしさがあるように感じましたが、こういうもどかしさって他の曲にもある気がして。常にももすさん自身にあるものなのかなと。

実は記憶力がなくて、自分の経験を全然覚えてないんですよ。それがもどかしく感じることが結構あります。すごく辛いことがあったはずなのに思い出せないとか。だから、もし昔の出来事を覚えていたら明日の行動が変わっていたんじゃないかっていう、漠然としたもどかしさが曲の中に入っていたのかもしれないです。

3曲目の曲名である“シクラメン”には“憧れ”“内気”“はにかみ”という花言葉があって、いつも何かを追い求めながら、憧れの気持ちを心に秘めているももすさんにぴったりなタイトルだと思いました。

憧れていたものを追い掛けていたのに途中でそれが憧れじゃなかったことに気が付いたりとか、その存在がなくなっちゃった時の気持ちが込められています。この曲は1年以上前の深夜に作ったんですけど、今でもある気持ちだし、歌ったら当時に返れる感じがするんです。

《本当は猫も映画も 別に好きじゃなかったよ》と歌ってますが、好きなものを素直に伝えるだけじゃなくて、ちょっと嘘をついてしまうのも愛情表現のひとつなのかなと。

私は素直になれない人間なので、本当に好きなものを“嫌い”って言うこともあるし、嫌いなものを“好き”って嘘ついちゃうこともある。でも、それって何かを思ってのことではなくて、自分を守るためだけにやっているから醜いと思うんです。自分の凹んでいるところに何か投げ込んでほしくて、本当は凹んでた部分がすでに埋まっているのに、わざと足りないふりをしたりとか。

そういう弱い部分って誰もが持っているものだから、この曲を聴いて共感する人もたくさんいるんじゃないかと思います。あと、ももすさんは猫も映画も本当は好きですよね。

本当は大好きです!(笑) 好きだからこそ、好きじゃないって大声で言いたくなることがあるんです。ひねくれてるから?照れ隠しでもあるし、好きすぎて距離を置きたくなる、人に自分のことを分かられたくないっていうのもあります。理由はないけど、無意識でそう思っちゃうんです。

ももすさんの人柄が出ている3曲なんですね。あと、12月16日のワンマンライヴ『ももすももすワンマンライブ 〜HUEは鳴き続ける。〜』のタイトルも気になるのですが…。

このタイトルはちょっと当日のお楽しみにしたいかな(笑)。隠している巻きものがあります。ライヴの時はいつもそう思ってるけど、今回も屋根とか壁とかがない開放的な気持ちでやりたいです。

取材:千々和香苗

シングル「アネクドット」2019年11月6日発売 TRIAD/日本コロムビア
    • COCA-17669
    • ¥1,300(税抜)

『ももすももすワンマンライブ 〜HUEは鳴き続ける。〜』

12/16(月) 東京・TSUTAYA O-nest

ももすももす プロフィール

モモスモモス:2015年よりロックバンド・メランコリック写楽の作詞作曲を手がけ、ヴォーカル&ギター“ももす”として活動。18年より“ももすももす”としてソロ活動を開始。中毒性の高いハイトーンヴォイスと純文学の影響を受けたユニークな言葉遣い、そして絵画のように奥深く、予測不能なメロディーの渦を宅録から世界へ発信している。19年2月にはシングル「木馬」でメジャーデビュー、20年3月には1stアルバム『彗星吟遊』を発表。23年2月にソニー・ミュージックレーベルズ移籍第一弾シングル「エソア」をリリース。その後も配信シングルを2曲、CDシングルを1枚発表し、11月に移籍後初となるアルバム『白猫浪漫』をリリース。12月にはワンマンライヴ『黒猫会議』を開催する。ももすももす ソニー・ミュージックレーベルズ アーティストページ

「プルシアンブルー」MV

OKMusic編集部

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