SASUKE「僕は楽しいことしかやらない
と決めているので」――現役高校生に
して新世代のポップスターの軽やかな
現在に迫る

新世代のトラックメイカー、いや、ポップスター現る。彼の音楽に、彼の言葉に耳を傾けて覚えるこの大いなる予感。2歳で踊り始め、5歳でガレージバンドで作曲を開始。10歳で多くのトップスターを輩出してきた米ニューヨーク・アポロシアターの登竜門、アマチュアナイトで見事優勝。12歳でフィンガードラム日本一を決める『ACHIEVEMENT BEAT BATTLE』で準優勝etc……。数え上げたらキリがない偉業を軽やかに成し遂げてきた、デジタル・ネイティヴ世代の驚異の16歳、SASUKE。楽曲のストックは1000曲以上、愛媛県在住の現役高校生でありながら世界照準の実力と可能性を秘めた彼は、稲垣吾郎草彅剛香取慎吾による新しい地図 join ミュージックへの楽曲提供や、m-floBuffalo Daughterらのリミックスも手掛けるなど、多才の才がどのベクトルもハンパない。この夏も「J-POPは終わらない」「夏ぼっち」と1ヵ月で2曲の配信リリースに加え、Vtuber「カミナリアイ(ヤッターマン2号)」とのコラボ楽曲「ウラオモテ(Veil Real)」の作詞・作曲・プロデュースを担当するなど、その勢いは止まらない。80~90年代の邦楽ポップスのオマージュ溢れる「J-POPは終わらない」の最後の1行には、<トレンド意識しないでfree でいい/本当の自分の音で>とあるが、まさにこの時代を生きるSASUKEの指針のようなものを感じる。「楽しい」を貪欲に追い求めここまでやってきた、2003年生まれの話題のアーティストに迫る。
●今の日本って必要以上に海外の音楽を頑張って取り入れようとしている●
SASUKE
――昨年12月の「インフルエンザー」を皮切りに、今年に入って3月に「平成終わるってよ」、5月に「新元号覚え歌」。そして、8月は「J-POPは終わらない」に加え急遽「夏ぼっち」と1ヵ月で2曲配信のハイペースなリリースですね。
「J-POPは終わらない」までにちょっと空いちゃったんですけど、実はその間も本当はめっちゃ曲は作ってたんですよ。それも「J-POPは終わらない」を7パターンぐらいずっと作っていて(笑)。結果、これになったんです。
――それぐらい「J-POPは終わらない」というテーマに執着したということですよね。
「平成終わるってよ」「新元号覚え歌」みたいな路線が続くと思わせておいて、また「インフルエンザー」みたいに誰もやっていないようなヘンな曲を出したら面白いかなと思って「J-POPは終わらない」を作ったので、大事な想いがあったんですよね。ここから改めてやっていく宣言みたいな曲だったし、結構迷いながら作っていました。ただ、最初はこれ自体をもっとヘンな曲にしようと思ったんですけど、いろいろ考えていくうちに、昔の音を再現したJ-POPをやってみようかなと。今は世の中にたくさん音楽が出回っていて、新しいジャンルも次から次へといっぱい出てきますけど、EDMだったりトラップだったり、1つ出てきたらみんなそれをやり出すじゃないですか。そういう流れに逆らおうとしているところもあります(笑)。
――「J-POPは終わらない」は80~90年代の邦楽ポップスのオマージュ&アップデートが感じられる曲ですが、SASUKEくんとは世代が全く違うそこを抽出して、曲を作ろうと思ったキッカケは?
親の影響もあって、80~90年代初めのポップスをすごく聴いていて、岡村靖幸さんとか飯島真理さん、山下達郎さん、竹内まりやさんetc……。YouTubeを見ていても、関連動画が結構出てくるんですよ。あと、海外ではその時代の日本のアーティストの曲をビートに乗せてリミックスするのが流行っている。逆に今の日本って必要以上に海外の音楽を頑張って取り入れようとしているじゃないですか。海外でも流行っているし、「日本人だからこそ今それをやるべきでしょう!」と思って。当時は、コードだったり音の重ね方が綺麗な曲が多いし、今にはないアプローチだなぁと思って。他にも、飯島真理さんをプロデュースしていた教授=坂本龍一さんとか、テイ(・トウワ)さんとか、何でも聴いていました。だから多分、そこの年代の魂が僕には入っちゃっているんです(笑)。
――「今の邦楽シーンが海外の影響を受け過ぎている」みたいな目線って、すごく冷静だなと。言わば、SASUKEくんなんかはそれを疑わずにやってもおかしくない世代じゃないですか。
多分、他の人は学校に行ったり友達と遊んだり、いろいろすることがあると思うんです。だけど、僕は今、通信制の高校なので尚更ですけど、より音楽について考えている時間が長いからだと思います。ただ、別に何も変わっていないというか、中学生の頃から授業中も頭の中ではずっと音楽のことを考えていたので(笑)。
――あと、「J-POPは終わらない」はMVもめちゃくちゃ遊んでいて、「シティーハンター」のような80〜90年代のアニメの雰囲気と、ブラウン管サイズの画角や画質の粗さも最高で(笑)。自らダンスを披露するシーンもありますけど、そこには憧れのストリートダンスユニット、Hilty&Boschさんを呼んで。
いや〜まさか会えるとは思っていなかったし、僕からすればテレビで見ていた人なのでめっちゃ嬉しかったですね。しかも振り付けまでしていただいて、3ショットで踊れるなんて……もう夢みたいな話ですよ。最近はすごい勢いでいろんな方に会えているので、何だか気持ちがついていけていないです(笑)。
――さらに、「J-POPは終わらない」はジャケットも自ら作ったと。もう何でもできちゃいますね(笑)。
いや、何でもできる「ふう」ですよ(笑)。アニメのエンディングっぽい感じで……というか、もう「エンディングテーマ」とジャケットに勝手に書いちゃっていますし(笑)。イメージを人に伝えるのが逆に難しかったので、だったらもう「自分でやっちゃえ!」って。やりたいことやっていたらできたという感じですね。

●「別にいいじゃん!」で何とかここでまでやって来れたのかなって(笑)●
SASUKE
――単純に疑問だったのは、キャリアとしてはダンスでアポロシアターのアマチュアナイトで優勝までしたのに、その道に進まなかったのは?
一番得意なはずだし、本当は得意なことをしていくべきだと思うんですけど、僕は楽しいことしかやらないと決めているので。その流れに任せていたら、どんどん割合が逆になってきただけで。今も家では踊ったりしていますし、ライブでも踊るので(笑)。
――「楽しい」に忠実に生きていたら、音楽のボリュームが増えてきたと。
結局、今考えたら音楽が楽しいから踊っていたんだなと思いますし。そこから、ダンスが楽器やら曲やらになってきた=表現できることが増えてきただけなのかなって。
――ちなみに、アポロシアターに出たときのこと、今でも覚えています?
結構覚えていますね。ステージからの眺めがすごかったです。ビッチリ入ったお客さんの歓声がヤバかった。そこにいるお客さんの数以上の歓声を感じるというか……あとは、ニューヨークに行ったこと自体が大きくて。僕は昔から周りからすれば迷惑なぐらいノリがいい人間だったんですけど、向こうの人って全員そんなノリなので(笑)。「自分はおかしくなかったんだ」と思えるようになりました。日本だと、いつでもどこでも踊っていたら、「何あの子?」となるじゃないですか。でも、海外だと「めっちゃ踊ってるじゃん!」みたいな感じで人が集まってくる。そういうところで自信が付いたのかなとは思いますね。
――だからこそ、早くから「芸の道に進んでいいんだ」とハンコを押してもらえた感覚はあったのかもしれないですね。そのまま普通に進学して、いずれは就職してって、日本の社会にいたらどうしても、そうなりがちなので。
しかも、僕がそうしたくなくても、することになるかもしれないですからね。それを痛感したのが中学生になる前で、その頃の僕は今よりも自分にすごい自信があったんです。なので、何かしら音楽の才能が芽生えて、東京の中学に行くことになるだろうと思っていたのに、普通に地元で進学することになって。すっごい泣いて、拗ねて、「何で!?」と怒った覚えがあります(笑)。
――ハハハ(笑)。そこから、14歳のときに原宿でフィンガードラムの路上パフォーマンスをしたことが大きな転機になったと。
12歳のときにフィンガードラムの大会(=『ACHIEVEMENT BEAT BATTLE』)に出て2位になったこともあって、僕が使っている機材のメーカーの方から、「東京支社に遊びに来ませんか?」みたいな感じで誘っていただいて。その空き時間に、「機材も持ってきているし、やってみるか」というノリで。そのときの動画がSNSで拡散されたのが大きなきっかけでしたね。ずっと路上ライブをやってきたわけでもなかったので、本当にビックリしましたね。
――稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾による新しい地図 join ミュージックへの「#SINGING」の楽曲提供も、それがキッカケに?
そうですね。そこで拡散されたことで、今度は取材で東京に呼ばれたんですよ。じゃあ、もう1回路上ライブをしてみようと。そのときに、SNSのダイレクトメッセージか何かで、いろんなレコード会社の方々からメッセージをいただきました。
――あのとき泣いて拗ねて怒ったのが報われましたね(笑)。ただ、若くして音楽の世界で生きていくことになったのと同時に、高校→大学→就職のような同世代からすれば、ドロップアウトのような見え方も当時はしたと思うんですけど、早いタイミングでそこまで純粋に楽しさを追求できたのには何かあるんですか?
元々そういう性格だったのもありますね。悪く言えば適当で、自分のことしか考えていない(笑)。よく言えば、すごくポジティブだったので。小・中と学校生活を経験してきて、イヤなこと、やりたくないなと思うことがどんどん増えてきたのもあると思いますね(笑)。
――コミットできないこと、イヤだと思うことがマイナスではなくて、「じゃあ好きなことをやろう!」というパワーに変換できたのはいいですね。
何をやっていても、周りの意見を気にしないタイプなんだと思います。「別にいいじゃん!」で何とかここでまでやって来れたのかなって(笑)。
●全部音楽ですから、やっていることは●
SASUKE
――今年の夏もそうやって音楽に没頭する日々を過ごして。ただ、「J-POPは終わらない」は7パターンも作ったならそりゃ時間もかかるよなと思いつつ、「夏ぼっち」に関してはたった1日で一気に作ったらしいですね。
「J-POPは終わらない」を考え抜いて作った、その反動ですね(笑)。「J-POPは終わらない」を作り終えて、空いた時間にアイデアがめっちゃ出てきたんですよ。そこから、「じゃあ蝉の声を録ろう」、「次は風鈴だ!」とか言って買ってきて(笑)。ただ、1つだと意外と風鈴っぽい音にならなかったので、後から買い足して最終的に5つ吊るして録ったら、やっとよく聞く風鈴の音になりました。そういう加工をしていたら、今度はなぜかウクレレも弾きたくなり(笑)。歌詞は結構早く書けたんですけど、歌まで全部録り切ってから違うなと思って書き直しました。サビとかも全然違ったし、最初は「宇治抹茶」の部分が「バニラアイス」だったので。
――それは全然印象が変わってきますね。そもそも、「夏ぼっち」はリリーススケジュールも関係なくいきなり作ったんですか?
はい。だから、周りは困ったと思いますよ(笑)。8月7日に「J-POPは終わらない」を出したばっかりなのに、「いや、夏の曲なんで8月中に出したいです!」って(笑)。
――確かに、この夏に出させなかったら次は来年の夏になっちゃいますもんね。
そうなると多分、1年前に書いた曲を僕は気に入らないと思うので、「今出すしかないんです!」とか言って無理やり(笑)。MVを外注している暇もないし、「自分で作ります!」って。
――全編愛媛ロケというのは、だからか!(笑)。
そうなんです(笑)。お父さんに撮ってもらって、一緒に編集しました。いや〜何とか間に合いました。
――自分の曲をすぐ世に発信できる今の環境は刺激的ですね。
何だか嬉しいですね。昔は親とか親戚にしか聴かせられなかったので、聴いてもらいたい欲がすごくあったし、今は曲を出したらいろんな人が感想をくれるのが幸せで。逆に今はそれに追いつけなくなっているぐらいで(笑)。
SASUKE
――2019年はSASUKEくんにとって、いよいよ山が動き出した感じがありますね。
ありますね。そのおかげで全然愛媛に帰れないという(笑)。ここ最近は帰っても曲を作って2日経ったらまた行きます、みたいな感じで。今もまた1曲、面白いものが出せたらいいなと思っていますけど(笑)。
――マジで(笑)。途切れぬ創作意欲。
「こういうテーマで、こういうサビで、こう歌えるな」とか、「あのスネアとあのクラップを重ねてあの音にして」ぐらいまで、いつの間にか考えちゃっているんですよ。中学生のとき、朝のホームルーム中に頭の中で曲の構成が全部できちゃって、家に帰って2時間とかで完成したのが「インフルエンザー」なんですけど、「あと6時間授業があります」というタイミングで思い付いちゃったので……。家に帰るまで覚えておくのが大変でした(笑)。
――その日のSASUKEくんは、全然授業が頭に入っていなさそう(笑)。それだけ音楽に魅入られた人生ですけど、今の段階で自分にとって音楽とはどんな存在だと思います?
音楽は僕が唯一できることですね(即答)。
――はたから見ると、歌にダンスにトラックメイクにMVにジャケットにと、こんなにいろいろできるのにと思っちゃいますけど。
いやいや、全部音楽ですから、やっていることは。得意なことだし、音楽以外できないし、音楽以外あんまり好きじゃないっていう感じだと思います。物心付いたときにはパソコンを触っていて、いずれライブをして、みたいなことも考えていましたし。勝手に歓声を入れたライブバージョンまで作ったことがありますからね、やったこともないのに(笑)。僕がステージに出てきた想定で、イントロから歓声が「ワ〜!」みたいな(笑)。
――本当に音楽が遊び道具みたいなところもありますね(笑)。そうやってクリエイトしたものを、人前でアウトプットするライブに関してはどうですか?
僕は音源に執着があり過ぎるので、ライブをもうちょっと頑張ろうと今は思っていて。準備もちゃんとしたいですし、いろいろ弾けるように練習もしたいですし、歌もまぁめちゃくちゃ上手くはないですけど(笑)、もっと慣れていきたいなという感じですね。
――まだまだやるべきこと、やりたいことがありますね。
ありまくりです! まずは、もっと曲を聴いてもらえる人を増やしたいなって。そうじゃないと、伝えたいことがあってもなかなか広がらないし、いつか世界のステージに立つとか、新しいジャンルを作るとかいう話にはならないので。今はとにかく頑張るしかないなと思っています。
SASUKE
取材・文=奥“ボウイ”昌史 撮影=森好弘

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