第三章から観る、舞台『銀河英雄伝説
Die Neue These』みどころとは 押
さえておくべきポイントを紹介

田中芳樹によるSF小説「銀河英雄伝説」は、1982年の刊行より累計発行部数1500万部を超え、アニメ、漫画、ゲーム、舞台……と多くのメディアミックスを経て、現在もなお根強い人気を誇っている。
2018年よりProduction I.Gによって制作されたアニメ「銀河英雄伝説 Die Neue These(ディ・ノイエ・テーゼ)」の放映がスタート。さらにそのアニメを基軸に再構成されたのが、新シリーズである舞台『銀英伝』である。
原作を知らなくてもわかりやすい舞台のつくり
長く続いた銀河帝国と自由惑星同盟の二国の宇宙空間での対立の歴史は、「常勝の天才」ラインハルト・フォン・ローエングラムと、「不敗の魔術師」と呼ばれるヤン・ウェンリーという二人の天才の登場によって動いていく。
ラインハルト・フォン・ローエングラム役 永田聖一朗(舞台『銀河英雄伝説 Die Neue These』第一章 ゲネプロ写真より)
ヤン・ウェンリー役 小早川俊輔(舞台『銀河英雄伝説 Die Neue These』第二章 ゲネプロ写真より)
第一章では「アスターテ会戦」、第二章では「イゼルローン要塞攻略」が主に描かれ、第三章はその続きからとなる。原作を知る人はもちろん、知らない人でも物語を把握しやすいように構成されている舞台だ。SF作品は専門用語が多いかと思われることが多いが、ナレーションや音と照明、そして役者の熱演により状況を把握しやすいように作られている。また演出家の大岩美智子をはじめとする関係者は『銀英伝』の理解も非常に深く、敬意と愛を持って作品や役者に接しているのも過去のキャストインタビューで明らかになっている。そのためとても丁寧に作られており、初めて作品に触れる人でもストーリーがわかりやすく、スムーズに『銀英伝』の世界観に入っていけるだろう。また、アニメの迫力ある映像に音や照明が臨場感を与え、広い宇宙間での戦闘をダイナミックに描いている。
(舞台『銀河英雄伝説 Die Neue These』第二章 ゲネプロ写真より)
(舞台『銀河英雄伝説 Die Neue These』第二章 ゲネプロ写真より)
2.5次元舞台でも活躍する主要キャスト
2018年10月に第一章、2019年5月に第二章と公開され、10月からは第三章となる。公開のスパンが短く、第一章からキャスト変更もされていない。その濃密な時間の中で構築された人間関係、信頼関係が舞台『銀英伝』での強みになっていることも確かだろう。
「常勝の天才」と呼ばれる、銀河帝国のラインハルト・フォン・ローエングラム。黄金色の髪とアイスブルーの瞳を持つ野心家を演じるのは永田聖一朗。2019年現在21歳で作中のラインハルトと近い年齢でもあり、公演毎にその成長ぶりを感じられる人物である。
側近のジークフリード・キルヒアイスを演じるのは加藤将。赤髪の長身を持つ軍人で、柔和な笑顔を見せつつもしゃんとした立ち振る舞いに目を惹かれる。ラインハルトとキルヒアイスという幼馴染、そして『ミュージカル テニスの王子様』などで共演歴のある永田と加藤。舞台にはこのふたりにしか出せない空気感というものがある。
さらに、今後のラインハルト陣営のキーマンともいえる人物、パウル・フォン・オーベルシュタインを演じるのは藤原祐規だ。独特な話し方はまさに異質で、冷徹な人物ではあるがラインハルトの参謀として多く活躍する。
礼節、様式美を重視する銀河帝国はこの三人を筆頭に容姿端麗なキャスト陣が揃いぶみだ。
右:キルヒアイス役 加藤将(舞台『銀河英雄伝説 Die Neue These』第一章 ゲネプロ写真より)
オーベルシュタイン役 藤原祐規(舞台『銀河英雄伝説 Die Neue These』第二章 ゲネプロ写真より)
対照的に、個性に溢れた人物たちの塊であるのが自由惑星同盟のキャストたち。「不戦の魔術師」と呼ばれ、心ならずともその運命に巻き込まれていくヤン・ウェンリーを演じるのは小早川俊輔。軍人を辞めて平和に暮らしたいという望みを持つヤンだが、彼が任務中に作戦や計略を語るシーンは、巧みな戦略的思考と戦術眼の持ち主であるだけではない、キャラクターの深みとも言うべき表情がにじみ出ている。
ヤンと親しい人物・アレックス・キャゼルヌを演じるのは米原幸佑。小早川や伊勢大貴(ダスティ・アッテンボロー役)らより実年齢も上ということもあり、役者間でも頼れるお兄ちゃん的な存在とのこと。実際の役者の関係性が芝居にも強く影響されている。
ヤンと暮らす少年、ユリアン・ミンツは小西成弥が演じており、ヤンに憧れを抱いているような眼差しはとてもまぶしい。最新のキービジュアルでユリアンは自由惑星同盟の軍服を着用している。彼もまた軍人となってヤンとともに戦う日が来るのであろうか。
:左:キャゼルヌ役 米原幸佑、右:アッテンボロー役 伊勢大貴(舞台『銀河英雄伝説 Die Neue These』第二章 ゲネプロ写真より)
右:ユリヤン役 小西成弥(舞台『銀河英雄伝説 Die Neue These』第一章 ゲネプロ写真より)
第三章から見る舞台『銀英伝』
第三章からも新しい登場人物が追加される。まず注目したいのは空戦の天才、オリビエ・ポプラン。第一章でジャン・ロベール・ラップを演じた碕理人が第一章ぶりに帰ってくるが、今度は性格の全く異なる別のキャラクターを演じることとなる。
右:ジャン役 碕理人(舞台『銀河英雄伝説 Die Neue These』第一章 ゲネプロ写真より)
また今後、ラインハルトと深い関係性をもつこととなる女性、ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフ(ヒルダ/君島光輝)も今回からの登場となり、そのビジュアルや演技にも期待が寄せられている。
さらに他にも、オスカー・フォン・ロイエンタール(畠山遼)とウォルフガング・ミッターマイヤー(釣本南)の双翼の活躍、ヤン艦隊の一員であるワルター・フォン・シェーンコップ(大高雄一郎)や副官・フレデリカ・グリーンヒル(福永マリカ)の存在がどう物語に影響してくるのかにも注視したい。
左:ミッターマイヤー役 釣本南、右:ロイエンタール役 畠山遼(舞台『銀河英雄伝説 Die Neue These』第二章 ゲネプロ写真より)
シェーンコップ役 大高雄一郎(舞台『銀河英雄伝説 Die Neue These』第二章 ゲネプロ写真より)
左:フレデリカ役 福永マリカ(舞台『銀河英雄伝説 Die Neue These』第二章 ゲネプロ写真より)
また、これまで同様に会場となるのは東京・Zepp DiverCity(TOKYO)、大坂・Zepp Namba(OSAKA)で、どちらもアーティストのライブなどで使用されることが多い会場だ。音響の良さはもちろん言うまでもないが、天井が広くて空間を大きく使えるのも特徴のひとつ。シンプルな舞台セットに音響と映像が加わって宇宙空間が再現されると、まるで彼らと同じ艦に乗っているかのようだ。
終演後のトークイベントやお見送りイベントもファンにとって非常に楽しみである要素だろう。キャスト登壇のアフタートークは大人気で、ここでしか聞けない話を聞ける。今回は原作者・田中芳樹先生のトークショーも開催されるので楽しみにしておこう。
新キャストが加わる事でどう化学反応が起き、第一章・第二章を経てこれからの重要なシーンを役者や演出がどう舞台の上で表現するのか。さらに深まる作品愛や進化するステージに楽しみな要素は尽きない。演劇は映像でなく、実際にその場で生の空気を体感するのがいちばんだ。原作を知っているか、キャストのファンであるか、これまでの舞台を観ているかなどはあまり気にせず、とにかく生で見て舞台『銀英伝』の世界を味わってほしい。
(舞台『銀河英雄伝説 Die Neue These』第二章 ゲネプロ写真より)
文・写真=松本裕美
(c)舞台「銀河英雄伝説」制作実行委員会

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

新着