「幸せとは?」をユーモラスに描く 
劇団SET創立40周年記念公演『ピース
フルタウンへようこそ』東京公演が開

三宅裕司が座長を務める劇団スーパー・エキセントリック・シアター(SET)創立40周年記念・第57回本公演『ピースフルタウンへようこそ』が2019年10月11日(金)からサンシャイン劇場で開幕した。初日公演の様子をお伝えしたい。
物語の舞台は、東京都巷区(ちまたく)にある高級住宅街・青金台。治安がよく、おしゃれな店が建ち並ぶ人気エリアだ。ある日、この青金台に、志賀内吹京(しがないふきょう・小倉久寛)が、妻や子どもたちを連れて引っ越してくる。彼らは青金台を参考にして、隣町の廃れた故郷・素裸無町を再興しようと目論んでいた。超富裕層(ことみゆうぞう・三宅裕司)は巷区の区長で、青金台の住民でもある。彼をはじめとするセレブな住民たちは、そんな志賀内一家を快く受け入れる。
平和で幸福な毎日ゆえ、青金台の住民たちは常に笑みをたたえ、自然と歌を口ずさみ、身体はウキウキと踊り出す。町のあちらこちらでは、ミュージカルのような光景が繰り広げられる様に、最初は戸惑う志賀内一家だが、次第にその不思議な魅力の虜になっていく。
しかし、ある夜、不気味な現場を目撃してしまい、青金台が信じがたい秘密を隠しているのではないかと疑念を抱くことになる。そんな矢先、歌とダンスで町の幸福度を競い合い、優勝した町は好きな町を吸収合併できる「幸福度コンテスト」なる破天荒な企画が開催されて...というあらすじ。
一見、リッチな青金台vs廃れた素裸無町という二軸で進む、“ベタ”なストーリーに見えるかもしれない。​確かに前半は、ストーリーに安心感があるというか、無難に平穏に(?)進んでいく。「幸福度コンテスト」で行われる、青金台と素裸無町の両住民によるダンスと歌は、どこかブロードウェイミュージカルの『ウェスト・サイド・ストーリー』を彷彿とさせるような構成で、劇団員たちのポテンシャルの高さを見たし、三宅と小倉が中心となって合間合間に挟まれる小ネタ(これは劇団SETの“名物”だろう)は即興性があって面白い。
しかし、中盤から終盤にかけては想像もしなかった展開となる。思えば伏線はあるのだが、まさかの路線に舵がとられ、「幸福とは何か」「笑いとは何か」「本当の平和とは何なのか」などと考えさせられるのだ。とある小さな町を描いた小さな世界から、どんどんと世界が広がっていき、最後は宇宙さえ感じる、壮大なストーリー。詳しくは伏せるが、特にラストはいろいろな意味で、圧巻でユーモラスである。
劇団創立40周年。初日のカーテンコールで座長の三宅は「台風が近づくなか、こんなにたくさんのお客様にお越しいただき嬉しい。40周年を迎えて、これからも体力が続く限り続けようと思いますが、ちょっと疲れました(笑)。ここまで来られたのも、劇場に足を運んでくださるお客様や関係者の皆様のおかげです。感謝しています。来年・再来年と続けていきたいし、これからも楽しくて元気が出るような作品を作り続けていきたい」と語っていた。三宅によれば、第1回公演は160人のキャパシティの劇場で、出演者15人だったが、お客はたった7人だったそう。そう思うと、舞台上から見た、サンシャイン劇場の満席の光景は感無量だろう。
上演時間は約2時間(休憩なし)。ぜひお見逃しなく。
※なお、台風19号接近に伴い、10月12日(土)13時開演の公演の中止が発表された。20日(日)17時より振替公演が行われる(20日17時公演に行けない場合は、希望日程に空席がある場合のみ振替可能。いずれも対応が難しい場合は、払い戻しとなる。詳しくは劇団の公式ホームページを確認してほしい)。
取材・文=五月女菜穂 写真=オフィシャル提供

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