9月29日 at 新代田FEVER

9月29日 at 新代田FEVER

【The Wisely Brothers
ライヴレポート】
『Captain Sad Tour』
2019年9月29日 at 新代田FEVER

9月29日 at 新代田FEVER
9月29日 at 新代田FEVER
9月29日 at 新代田FEVER
9月29日 at 新代田FEVER
9月29日 at 新代田FEVER
9月29日 at 新代田FEVER
 今年の8月にThe Wisely Brothersが開催したワークショップで作られた、愛らしいモビールがきらきら揺らめく新代田FEVER。その下には学生と思しき若者から仕事帰りの大人まで、実にさまざまな年代の音楽好きたちが集っている。

 2、Special Favorite Music、そして主催のThe Wisely Brothersの3組が共演した『Captain Sad Tour』ファイナル公演。最初に登場したのはサックスやフルート、弦楽器などを携えた7人組バンドSpecial Favorite Musicだ。1曲目「Magic Hour」で流麗なコーラスとサックスを響かせると、さわやかさと切なさを纏った秋の空気が一気にフロアーに吹き込まれる。ド頭からいきなり彼らの音楽の美しさに心が持っていかれてしまったが、バンドはお構いなしに素晴らしいハーモニーを畳み掛けていく。儚くも一度聴いたら忘れられない声を放つlovinyuu(Vo)と、地声の温かみと柔らかさを活かす久米雄介(Vo&Gu)による男女ヴォーカルの重なり。パンチ力のあるドラムと太い音で観客を揺らすベース、そのリズム隊の音の上できらびやかさを演出するサックスとギター、幻想的な雰囲気を作り上げるフルートとバイオリン…ただただ胸が満たされっぱなしである。終盤も「Royal Memories」や「Baby Baby」などの多幸感溢れる楽曲でハンドウェイブやクラップを巻き起こし、フロアーを喜びで満たしたままステージを後にした。

 “ワイズリーに引っ張られてか、いつもとは違う始まり方をしてしまいました(笑)”と古舘佑太郎(Vo&Gu)が後に語った通り、この日の2のライヴは、しんみりとした空気の中でスタート。古舘がひとり舞台の真ん中に立ち、エレキギターで静かに弾き語り始めた「FALL FALL FALL」。エッジーさが効いている歌や音像が持ち味の2だが、この時の彼の歌声やギターの音色はどこか甘く溶け入るようなものだった。しかし、サビ終わりで他のメンバーが登場すると、轟音の波が一瞬で聴き手側に押し寄せ、そこから最後の楽曲まで暴発的なサウンドやヴォーカルが炸裂。しゃがれ声になりながらも振り絞るように歌う古舘や、頭を振り乱しながら各々の楽器を弾き・叩き狂う加藤綾太(Gu)、赤坂真之介(Ba)、yucco(Dr)の姿は、まるで“全身全霊”という言葉そのもののようだ。ラストの「フォーピース」でも4人それぞれが最後の一音まで力いっぱい鳴らし切り、オーディエンスは圧倒されながらも大喝采を送った。

 入場SEの地点で大きな手拍子が起こる中、いよいよThe Wisely Brothersが登場。真舘晴子 (Gu&Vo)のリズミカルなギターのカッティングに観客が飛び跳ねる「テーブル」、和久利泉 (Ba&Cho)が間奏でうっとりするくらい滑らかなベースラインを奏でる「ナイトホーク」と、最新アルバム『Captain Sad』の楽曲の良さがライヴの冒頭から花開いていく。MCでは先に演奏を終えた2バンドについて“Special Favorite Musicは本当に素敵な音楽をやっているなと思っていたので、東名阪の3公演を一緒に回れて良かった”“2は初めて対バンした時から、“きっとまたどこかで共演する”と思っていた”と、この3組で千秋楽を迎える胸のうちを語った。

 直後に行なわれたセッションでは、渡辺朱音(Dr&Cho)が他を圧倒するようなドシドシと力強い音を鳴らしていたのが印象的で、繊細だと思っていた彼女たちのサウンドにもこんな逞しい一面があったのかと思わされる。一方、The Wisely Brothersと言えばコーラスワークも秀逸だ。特に「イルカの背中」では重低音が轟くロックバラードの中に真舘の明るくて真っすぐな歌声とリズム隊2人の流麗なファルセットが浮かび上がり、何とも言えない美しさを描いていた。

 チャットモンチーのラストワンマンライヴの映像を観て “自分たちももっと曲に何かを込めていきたいと思った”と真舘がこれからの音楽との向き合い方について語り、本編は「気球」で締め括られる。しかし、すぐさまアンコールの拍手が湧き起こり、ものの10秒くらいでメンバーがステージに戻ると、シューゲイザーチックに歪んだギターと浮遊感のあるヴォーカル&コーラスという組み合わせが楽しい「メイプルカナダ」を最後に披露。“ワイズリーの3人が今までの楽曲に込めてきたものだって素晴らしい”と言わんばかりに、この日一番の拍手と喝采がステージに降り注いだのだった。

撮影:松木宏祐/取材:笠原瑛里


セットリスト

  1. 【The Wisely Brothers】
  2. 1. テーブル
  3. 2. ナイトホーク
  4. 3. はなればなれピーポーズ
  5. 4. つばめ
  6. 5. イルカの背中
  7. 6. River
  8. 7. 気球
  9. <ENCORE>
  10. メイプルカナダ
The Wisely Brothers プロフィール

ワイズリーブラザーズ:都内世田谷総合高校の軽音楽部にて結成。名付け親は真舘の父である真舘嘉浩(Manhattan Records、music.jpロゴ、夏の庭、装丁するデザイナー)。2014年より下北沢のライヴハウスを中心に活動開始。16年7月にタワレコメン、Apple Music『今週のNEW ARTIST』選出され、17年5月号の『装苑』にて『未来をつくるUNDERGROUNDER』で紹介され、スペースシャワーTV『NEW FORCE』にも選出。18年2月にアルバム『YAK』でメジャーデビューを果たす。The Wisely Brothers オフィシャルHP

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着