「スタクラフェス」感動と興奮に包ま
れて二日間の祭典が閉幕~最終日レポ
ート

2019年9月28日(土)から横浜赤レンガ倉庫・特設会場で開催されていた国内最大の全野外型クラシック音楽祭『イープラス Presents STAND UP! CLASSIC FESTIVAL 2019』 (以下、「スタクラフェス」 )が、同月29日(日)午後8時、すべてのプログラムを終え、感動と興奮に包まれる中、二日間に及んだ祭典の幕を閉じた。
昨年(2018年)9月に第一回目がおこなわれ好評を博した「スタクラフェス」、今年は9月28日(土)29日(日)の二日間に開催を拡大、クラシックを中心に、さまざまな音楽ジャンルを横断するプログラムが29日(日)夜まで、二つのステージ(HARBOR STAGEとGRASS STAGE)を行き来しながら繰り広げられた(その他、場外FREE STAGEでも無料パフォーマンスがおこなわれた)。
著名アーティストが数多く出演するクラシック音楽のライブでありながら飲食も子連れも自由、また両日とも天候に恵まれたこともあり、同時開催していた「肉ワインフェス2019」とも併せ、幅広い層の多数の観客が赤レンガ倉庫の会場を訪れ、イベントを満喫した様子だ。
以下に、フェス第二日目(9月29日)のレポートをお届けする。
【1】「世界まるごとクラシック」@ HARBOR STAGE 10:30~
[出演] 青島広志(指揮)、宮本笑里(ヴァイオリン)、シアター オーケストラ トーキョー
第二日目最初のプログラムは、指揮者の青島広志が司会&指揮を務める人気コンサート・シリーズ「世界丸ごとクラシック」。青島らしいユーモアの効いた明るくわかりやすいトークを交えながらクラシックの名ナンバーやポップミュージックを紹介した。
1曲目はビゼーの「カルメン」前奏曲。第二日目の朝の開幕を告げるにふさわしい華々しい曲だ。最初からハイテンションでパワー全開。2曲目はバレエ音楽「コッペリア」から「マズルカ」が演奏される。熊川哲也率いるKバレエカンパニー公演の演奏を務めるシアターオーケストラトーキョーにとっては、ある意味、お得意の一曲だ。
ここでゲストの宮本笑里(ヴァイオリン)が登場し「タイスの瞑想曲」。
続いて「ミッキーマウスマーチ」「星に願いを」「イッツ・ア・スモールワールド」と、ディズニーのナンバーが続く。「イッツ・ア・スモールワールド」は客席も歌で参加。青島の指導に合わせて簡単な歌と振りを練習した後、オーケストラとの「合奏」を楽しんだ。
再びシアターオーケストラトーキョーのお得意ナンバー、チャイコフスキーのバレエ音楽「眠れる森の美女」から「ワルツ」を演奏したのち、コンサートはあっという間にクライマックスへ。
最後を飾るのはベートーヴェン「交響曲第7番」第1楽章。MCで青島は、さり気に聴きどころを教示する。
アンコールは再び宮本笑里も登場し、オッフェンバックの喜歌劇「天国と地獄」序曲を。宮本のために青島がヴァイオリン・ソロのメロディを追加して編曲した特別バージョンだ。「徒競走の曲でもない、カステラ一番の曲でもない」(青島)、このお馴染みの音楽による最高の盛り上がりでコンサートは幕を閉じた。
【2】「新世代の音楽を鳴らそう!」@ GRASS STAGE 11:50~
[出演] STAND UP! ORCHESTRA/スペシャルゲスト:三浦一馬(バンドネオン)
GRASS STAGEでの最初のコンサートはSTAND UP! ORCHESTRA。彼らは、クラシックでお馴染みの楽器をはじめ、ヴォーカル、尺八など和楽器も含め、多彩な楽器を演奏する演奏家たち約200人が登録メンバーとして、それぞれにユニットを組みながら活動している。
ファレル・ウィリアムズ「HAPPY」をオープニングに、スティービー・ワンダー「Sir Duke」、米津玄師「パプリカ」と有名ポップスナンバーがヴァイオリンやチェロ、トランペットやサックスなどで演奏される。タイミング良く鳴り響く船の汽笛が合いの手を打つ。
続いて前回もこのフェスに出演したバンドネオン奏者の三浦一馬が登場。演奏される曲はタンゴの革命児アストル・ピアソラの曲で、全て三浦が独自にアレンジしたもの。「デカリシモ」は開放感たっぷりに、2曲目の「天使の死」は力強く引き込む重力を感じさせる中から次第に哀しく飛翔するような、まるで物語のような展開。3曲目の「アディオス・ノニーノ」は冒頭のピアノとバンドネオンの共鳴箱を叩くことで鳴り響くハーモニーが特別な感傷を強く印象付ける。最後は名曲中の名曲「リベルタンゴ」だ。疾走感あふれる展開はさすが。
続いては、尺八の長谷川将山が加わりマイケル・ジャクソンの「Smooth Criminal」。さらにソプラノサックス(千野哲太)をメインに据えて、エルトン・ジョンの「Your Song」と続き、フィナーレはクラシックメドレー「HELLO」。どこかできっと耳にしたことのあるクラシック音楽の片鱗がちりばめられ、演奏にも客席にも熱が入る。最後は客席総立ちの盛り上がりとなった。
【3】「クラシック in アニメ」@ HARBOR STAGE 13:00~
[出演] 松下奈緒(ピアノ)、阪田知樹(ピアノ)、篠原悠那(ヴァイオリン)、種田梨沙(cv:宮園かをり役)、茅野愛衣(cv:相座凪役)、松沼俊彦(指揮)、STANDUP!ORCHESTRA
「クラシック in アニメ」のステージは、松下奈緒のピアノとスタンドアップオーケストラとの共演でスタート、「映画『ピアノの森』よりMoonshine~月あかり~」、松下のオリジナル曲「プリランテ」を披露。
続いては、人気アニメ作品「四月は君の嘘」をフィーチャリング。作品のヒロイン・宮園かをりのモデルアーティストである篠原悠那(ヴァイオリン)が登場。原作でも印象的な楽曲であるサン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」をオーケストラとともに演奏。潮艶やかに、かつ跳ねるようにヴァイオリンを奏でる姿はまさに原作の宮園かおりを思い出させてくれた。
続いて登場したのは主人公・有馬公生のモデルアーティストである阪田知樹。実力派ピアニストが奏でる音はまさに一級品。リストの「ピアノ協奏曲第1番 第1楽章」で観客を魅了。
そして今回はTVアニメ版で声優の宮園かをりを演じた種田梨沙と、相座凪を演じた茅野愛衣が登場し、生ゼリフを披露。作品を思い出せさせる計らいに会場は暖かい拍手に包まれた。そして演奏に引き続きトークコーナーにも参加した篠原は、アニメ版の制作のときにモーションキャプチャーを体験して大変だったと当時の思い出を語った。
後半は再び阪田が登場、アニメの本編映像と共にクライスラー「愛の悲しみ」、ショパン「バラード第1番 ト短調 op.23」を披露した。前者は作中でかをりと公生が共に演奏する作品を象徴する楽曲の一つ。アニメの印象的なシーンをスクリーンに映し出しながら奏でられた名曲は観客の心に染み渡っていくようだった。
【4】「ブランチ on クラシック」@ GRASS STAGE 14:20~
[出演] NAOTO(ヴァイオリン)/スペシャルゲスト:藤原道山(尺八)、宮本笑里(ヴァイオリン)
ベートーヴェン「ヴァイオリンソナタ第5番『春』」をNAOTOがジャズアレンジした自作曲「a beat spring」でスタート後、最初のスペシャルゲスト宮本笑里(ヴァイオリン)が登場し、「美女と野獣~ディズニー映画『美女と野獣』より~」で贅沢なヴァイオリンの共演を披露した。
もうひとりのスペシャルゲストは、尺八奏者の藤原道山。藤原の自作曲「東風」、そしてNAOTOがTEAM NACSの舞台のために書きおろした「PARAMUSHIR」を。「まだまだ盛り上がっていくぞ!」と叫んだNAOTOに呼応するように船の汽笛が「ボー」と響き渡る。「Glowing」では演奏しながらジャンプ!「客席も飛べ!」の声に、芝生の上で裸足になっていたオーディエンスも飛ぶ。遂には藤原も一緒になってジャンプし、会場が完全に一体化した。
4本ほどの尺八を吹き分けた藤原を送りだした後は、NAOTOのソロステージが再開。「Polyvalent」、「HARUKAZE~NHK『スタジオパークからこんにちは』テーマ曲~」で会場を煽り、「Make a Change」で唸るギターと向き合い演奏すると、ほぼロックフェスのような盛り上がりに。金髪をなびかせたNAOTOは、体を大きく揺らしながら情熱的なプレーでファンを釘付けにした。
【5】「This is ミュージカル」@ HARBOR STAGE 15:30~
[出演] LE VELVETS、朝夏まなと、伊礼彼方、相葉裕樹、エリアンナ/宮本笑里(ヴァイオリン)、Living Room MUSICAL and more(大月さゆ・彩花まり・岡本悠紀・吉田萌美・土倉有貴・田川颯眞)、松沼俊彦(指揮)、STANDUP!ORCHESTRA
ヒット映画「ザ・グレイテスト・ショーマン」の世界観からステージはスタート。渋谷道玄坂にあるeplus LIVING ROOM CAFE & DININGの人気企画「LIVING ROOM MUSICAL」のお馴染みの顔である、大月さゆ、彩花まり、岡本悠紀、吉田萌美、土倉有貴、田川颯眞がダンスアンサンブルを軽快に務める中、ストーリーテラーの伊礼彼方が登場。手拍子の起こる中、LE VELVETS、朝夏まなと、相葉裕樹、エリアンナ、指揮者の松沼俊彦を曲中で紹介していくテンポの良い開幕に、広い会場のボルテージが一気に上がっていく。
ステージは「Living Room MUSICAL and more」チームによる「サウンド・オブ・ミュージック」そして「アラジンメドレー」に。渋谷のオシャレなカフェから、横浜の野外ステージにまさに飛び出した面々には、またとない経験になったことだろう。
その「アラジン」の一環として伊礼が「ホール・ニュー・ワールド」を端正に歌うと、ジャスミンパートを受け持ったのはなんとヴァイオリニストの宮本笑里!これぞスタクラフェスならではの共演に心が躍り、声とヴァイオリンの音色のデュエットに酔いしれた。伊礼は十数年前に路上ライブで歌っていた頃、デビュー前の宮本が足を止めて聴いてくれたことがあっという。
LE VELVETSの宮原浩暢にエスコートされて登場したのは朝夏まなと。朝夏と宮原はミュージカルの舞台で共演を重ねる間柄で、楽しいトークのあと、朝夏が宝塚退団後の初主演ミュージカル「マイ・フェア・レディ」から「じっとしていられない」を。一般的には「踊り明かそう」として知られている名曲中の名曲を、これが初野外フェスへの参加だという朝夏が、クラシック唱法に通じる美しい裏声で歌いあげた。
続いて相葉裕樹が「ピピン」から「コーナー・オブ・ザ・スカイ」を。さらにMCの伊礼とは今年「レ・ミゼラブル」で共演してることから、伊礼に促された相葉は、自身の演じたアンジョルラスの“キメの一節”を無伴奏で披露。
再び登場した朝夏は「ムーラン・ルージュ」の「スパークリング・ダイヤモンド」を、「Living Room MUSICAL and more」女性陣と歌い踊る。
続いての登場はエリアンナ。「The Color Purple」から「I'm Here」。広い野外ステージにどこまでも広がるエリアンナの歌唱は圧巻。大きな拍手と喝采が贈られた。「ブロードウェイかと思った!」と伊礼も彼女を称賛。
クラシックとミュージカル、ジャンルの架け橋になることを目指しているというLE VELVETSは、「ラ・マンチャの男」から「見果てぬ夢」、「ムーランルージュ」から「ロクサーヌ」、そして名曲「Time To Say Goodbye」と、多彩な選曲。
ステージはウィーンミュージカル『エリザベート』の世界へ。まず、朝夏エリザベートと伊礼トートで「私が踊るとき」。宝塚歌劇団時代に黄泉の帝王トートを演じている朝夏が、エリザベートパートを真紅のドレスで歌う新鮮さ。続いて相葉ルドルフと伊礼トートによる「闇が広がる」。そしてコーナーを締めくくって伊礼トートで「最後のダンス」。ロックで野性的なトートはウィーン本家バージョンを思わせる魅力に溢れる。
いつしかひこうき雲が綺麗にかかった青空の下、ラストは「グレイテスト・ショーマン」の世界に帰還して全員揃っての「This is Me」。さらにアンコールは「RENT」の「シーズンズ・オブ・ラブ」。全員で歌い切った瞬間に、汽笛が鳴る! 笑顔の中ミュージカルづくしのステージが終了した。
【6】「プレミアムサンセット」@ GRASS STAGE 17:20~
[出演] TSUKEMEN、神奈川県立湘南高等学校 合唱部
夕暮れが青く染まりかけたころ、「Wヴァイオリン&ピアノ」という異色ユニットで独特の世界を繰り広げるTSUKEMENが爽やかな白い衣装で登場した。
まずは「チャルダーシュ」でヴァイオリンらしくスタート。前半の哀愁たっぷりな演奏はもちろん、終盤の軽快なノリとピアノのグリッサンドが効いている。ドラム、ギター、ベースが加わった「Sparking!!」では、まだ2曲目だと言うのに溢れるGroove感に会場は総立ちに。
和やかなMCの後にはアヴィーチーの「WATING FOR LOVE」。このEDM特有のノリに乗せられたマイナーチューンが、悲しげな弦の音色のせいなのか、感情に直接働きかけてくるように思えてくる。
次にクイーンメドレーを演奏すると告げると、会場の盛り上がりは頂点に。チャンピオン、ボヘミアン・ラプソディー、そしてお馴染みWe Will Rock Youを含むメドレーを披露。
ロックフェスさながらと思いつつ楽しんでいると「僕たちはふだんクラシックをベースに活動しています。今日はSTAND UP CLASSIC なのでベートーベンの月光を演奏します」とMC。Wヴァイオリンとピアノというアレンジで「月光」を聴く機会は、滅多にないのでは?
ラスト3曲はTSUKEMEN オリジナル曲。日本的な音階、節回しが日の出を象徴している「AKASUKI」、神奈川県立湘南高等学校の合唱部とともに「時を超える絆」、バンドと合唱、TSUKEMENによる「雨ノチ晴レ。」
【7】「Classic Revolution 新進気鋭の若手アーティストと オーケストラの饗演」@ HARBOR STAGE 18:30~
[出演] 反田恭平(ピアノ)、上野耕平(サックス)、紀平凱成(ピアノ)、三ツ橋敬子(指揮)、神奈川フィルハーモニー管弦楽団/特別出演:五嶋龍(ヴァイオリン)
すっかり日も暮れ、いよいよ「スタクラフェス」最後のプログラム。「楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいます」と、総合司会の松下奈緒。名残惜しさを感じる中、18歳の若き天才ピアニスト、紀平凱成が登場。ピアノに向かったかと思うと何か思い出したかのように、自分がスクリーンによく映る位置に戻り、観客に向かって手を振り始める。「かわいい」という声が客席からチラホラとあがる中、超絶技巧のカプースチン「24の前奏曲」から、11番、24番の2曲を披露。3曲目「WInds Send Love」は紀平のオリジナル曲。
続いて若手実力派サクソフォン奏者、上野耕平。フランスの作曲家ミヨーの「スカラムーシュ」を神奈川フィルと共に演奏。室内でも野外でも、その時々のシチュエーションに合わせた音を醸し出せるところが素晴らしい。
反田恭平が登場しチャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第2番」を演奏。日本では第1番に比べて演奏されることが少ないそうだ。88鍵をめまぐるしく駆け抜けていくレアな演奏に終始圧倒される。
五嶋龍によるブルッフの「ヴァイオリン協奏曲第1番」。一瞬、ここは本当に野外なのか?と思うほど、会場が静まり返る。演奏が終わるなり、客船から祝福のような「ボーー」の汽笛が。
続いては、五嶋龍&反田恭平。「ハウルの城」をこの2人のデュオで聴けることは、もしかして今日だけではないか?と思うと、音の一瞬一瞬を捕まえたくなる。
神奈川フィル(指揮:三ツ橋敬子)によるストラビンスキー「火の鳥」。三ツ橋の気迫に満ちた指揮と、オーケストラの壮大な演奏によって、この赤レンガの夜空に火の鳥が放たれたようだ。
ラストは本日のキャストが総出演し、CMソングとしてもお馴染みの「ボラーレ」を熱唱。イタリア語で「飛ぶ」という意味だそうだが、火の鳥と繋がっているのだろうか。ただの偶然だろうか。会場は総立ちとなり、オールキャストで大合唱。2日間で出演総勢300名超、演奏曲目200曲以上に及んだ「スタクラフェス」は熱狂のうちに幕を閉じた。

※本記事は、西原朋未氏、Ayano Nishimura氏、加東岳史氏、Junko E.氏、橘涼香氏の鑑賞レポートを元にアレンジのうえ作成したものです。各鑑賞レポート記事の完全版は後日SPICEにて掲載します。

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