望海風斗率いる宝塚雪組でミュージカ
ル化 『ONCE UPON A TIME IN AMERI
CA(ワンス アポン ア タイム イン
アメリカ)』制作発表会レポート

東京オリンピックイヤーの2020年初頭を飾る宝塚歌劇雪組公演、ミュージカル 『ONCE UPON A TIME IN AMERICA(ワンス アポン ア タイム イン アメリカ)』の制作発表会が9月27日(金)都内で行われた。
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』は、1984年に公開された、セルジオ・レオーネ監督によるフィルム・ノアール。禁酒法の時代から変貌を遂げていく20世紀のアメリカ社会を背景に、貧しいユダヤ系移民の息子の主人公・ヌードルスの少年期、青年期、初老期の三つの時間軸を交錯させて描かれたレオーネ監督の代表作。この作品の宝塚化を望み、長く温めてきた作・演出家の小池修一郎が、映画版の主演者ロバート・デニーロに、充実期を迎えている雪組トップスター望海風斗を重ね合わせ、満を持してのミュージカル化に挑むことになった。
その経緯をまず宝塚歌劇団小川友次理事長が語り「2020年は東京オリンピックイヤーであり、海外から多数の方々が日本を訪れるに際し、宝塚歌劇も世界の方々に観て、喜んで頂ける作品をという思いをこめ、ラインナップの第一弾に小池先生の熱望しておられた『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』を上演できることになりました。『今一番ノッている』また『実力派』と言われている雪組で正月を明けさせて頂きます。皆様この公演をどうぞよろしくお願い致します」という挨拶があった。
そこから出演者5名によるパフォーマンスが。このパフォーマンスはこれまで公演のテーマ曲などが披露されることが多かったが、今回台本と楽曲が鋭意制作中であることから、ジャージーなインストゥルメンタルに乗せて、ナレーションによるキャストの役柄と関係性を紹介しながらのダンスが展開されていく。
望海風斗の主人公で、ギャングとして生きるヌードルス。

彩風咲奈の、ヌードルスの親友で同じくギャングのマックス。

ヌードルスの初恋の人で、ブロードウェイのスターになっている真彩希帆のデボラ。
マックスの恋人「スピークイージー」の歌姫の、朝美絢のキャロル

そして彼らに助けを求めてきた、イタリアンマフィアに狙われる労働組合のリーダー、彩凪翔のジミー。
台詞も歌もないまま、動きだけで5人が関わる様がスリリングな異色のパフォーマンスになった。
そこから、会見は丸テーブルが用意されたトークショー形式のスタイルで進行。
まず、どうしてこの作品を宝塚で上演しようと思ったのか? との問いに小池が「この原作、映画がとても好きで、この中のシチュエーションにインスパイアされた、ある意味参考にさせて頂いて作った作品が何本もございます。移民の物語という意味では『ヴァレンチノ』、ラスベガスを作ったバグジーをモデルにして『カステル・ミラージュ』アウトローになった人たちの少年時代へのオマージュとして『アデュー・マルセイユ』という作品など、この作品への思い入れを反映させたものをやってきています。そんな中で今回、望海風斗主役ということで、いくつかの候補があった中、この作品を一番観てみたいと僕もすごく思いましたので、イメージから派生した作品ではなく、セルジオ・レオーネ監督、ロバート・デニーロ主演の『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』という題材そのものを使えないか? と交渉して頂いて。色々多岐に渡る複雑なことがあったのですが、最終的にご快諾頂き実現の運びとなりました。映画も一番よくわかるのが、エクステンデッドバージョン、4時間11分のものですが、私の上演時間としてはフィナーレを除いて2時間10分ですので、色々圧縮し、また原作や映画にないものもあります。ポイントは人生のアイロニーです。なかなか難しいところもあるのですが、望海は男役としての華やかさに加えて、男役の精神であったり、内に秘めたエネルギーから、さまざまな経験を経た「哀愁」も出せるだろう、そこがすごく魅力的だろうと期待致しています」と熱く語った。

少年時代からすべて演じて頂きたいと思っているとの言葉を受けて望海が「宝塚ではよく主人公の少年時代は違う人が演じて、そこから大人になって出てくるというパターンが多いと思うので、少年時代から自分達で演じることができると、その分関係性というのか、絆というのでしょうか、お互いに積み重なってきたものが表現しやすいし、気持ちもつくりやすいかな? と思うので、見た目はどうかわからないんですが(笑)やる側としてはすごくやりやすいんじゃないかと楽しみにしております」とウィットを交ぜながら意気込みを。

これまでにもマフィアの役柄を何度か演じている望海は、その参考にこの作品を観て、男の世界の哀愁や一筋縄ではいかない友情、恋愛等に強く惹かれていて、小池がこの作品が好きなのも聞いていたことから、いつか宝塚でやるのであれば出演したいと念願していたという秘話を披露。ヌードルス役については「一言で言うと静かな人だなと。哀愁と言いますか自分の中できちんと調和していく人に見えて、やっぱり色々な人との関係性によって彼の背負っているものが、ロバート・デニーロさんからにじみ出るところが魅力につながっていると思います。ですからヌードルスをどう演じるかというよりも、デボラとの、マックスとの、そして周りの人との関係性というものをきちんと作っていくことで、ヌードルスという人間ができていくのではないかと。今まで様々な関係性を演じてきた信頼感がすごくあるので、きっと上手くいくのではないかと思っています。周りに頼って、周りの人たちに助けてもらいながらヌードルスという人を作っていきたい」と、望海らしい謙虚で真摯な想いを述べた。
デボラの真彩は、役柄について「映画を観た印象が、幼少期の時代も成人された方も瞳がとても綺麗で、ミステリアスと言いますか、何を思っているんだろうというような不思議な瞳をした女性、きっとそれは大人と少女の狭間にいるからこそのものが表せたらいいなと思っています」と目標にしていることを語ると、小池からレオーネ監督は映像表現に長けているから、アップの表情が印象に残るのも当然だが、宝塚の真彩の場合は歌唱力を活かして、映画では場面としては描かれていないブロードウェイのスターとしてのシーンも創り、ミュージカル女優として表現するし、原作や映画で描かれているよりも、自己主張の強い女性として書きつつあると、宝塚版のヒロインのイメージが紹介された。
二人が出会うシーンには著名な「アマポーラ」が流れるが、そこで使うかどうかは検討中とのこと。
マックスの彩風は「私も初めて映画を観た時にはなんの予備知識もなく、ギャングものということで少し構えて観ていたのですが、自分が思っていたよりもずっと人と人との友情、愛情が詰まっていて、またとても難しい世界観に見入ってしまう作品でした。マックス役は私にとっても新しい挑戦だなと思うので、お稽古に入ってからたくさん学びたいと思いますが」
「何よりも映画を観ていて印象的だったのが、マックスがヌードルスをただ見ているという絵が何シーンもあり、その表情の中に、瞳の中に、憧れとか嫉妬とか、色々なものがこの人の中に込められているのだろうか、と思うところがあったので、その心を大切に演じられたらと思います。望海さんはギャングの先輩なので(笑)お稽古の時から先輩のレベルに合わせていけるように頑張りたいと思います」と、アウトローを多く演じている望海に思いを託すと、望海も「悪役がやりたいって言ってたものね」と応じ、複雑な「親友役」を組の要を担う二人で演じるならではの、コンビネーションが早くも感じられた。

ジミーの彩凪は「私もこの作品が決まってから映画を観たのですが、この時代の男性のダンディーな感じだったり、渋い感じ。女性はすごく色っぽくて、でもどこかカッコ良いところもある世界観が好きで、今回この世界に入れるのがとても嬉しいなと思っています」

「ジミーはエクステンデッドバージョンの方に出ているのですが、意志がしっかりしていて、自分をしっかり持っていて、大きな力にも屈しない強いものを持って皆を扇動していく人なので、自分が話すことに説得力を出していかなければならないと感じました。色々な人と出会ってこの時代の流れで、賢く野心を持ってのしあがっていく。その過程、心の中が変わっていく様が魅力的な人だなと感じています」と抱負を語る。
小池がこの役柄は映画ではあまり描かれていないのだが、明らかに全米トラック運転組合を興したジミー・ホッファがモデルになっていて、彼はロバート・ケネディ司法長官時代に告発されて懲役刑を受けたものの、ニクソン大統領が出してしまい、最終的には失踪して消えてしまう非常に面白い人物で、ジミーの在り方が映画よりもクリアに出ると、ラストシーンの後の出来事の謎が解けるというところがあるので、役柄を膨らませる。『るろうに剣心』で武田観柳や『ひかりふる路』のロラン夫人など、個性的な役が良いと感じているという彩凪への期待を込めた。

キャロルの朝美は「雪組でやらせて頂くと聞いてから映画を観たのですが、もちろんその時には自分は男役をやると思っていたので(笑)男性中心に観ていたところがありました。でもこの役をやらせて頂くと聞いてからもう一度映画を見返した時に、1920年代から1960年代に至るまでの、男性社会の中で素敵なドレスを着ている女性というものも華やかで、色気があり強く生きているなという印象があったので、1月の公演までに小池先生の熱いご指導のもと、色気たっぷりに演じられたらいいなと思っています」
「マックスのことも私は本気で愛していると思っていて。映画の中でもキャロルのマックスへの想いに対して、マックスはキャルロのことをどうなんでしょうか?(笑)というものがあるので、私は強い女性に見えて繊細なところのある女性だなという印象があるので、一途にマックスを思っていきます!」と語ると、彩風がニコニコと笑って「はい!」と答える微笑ましい光景も。

小池は朝美が月組時代にやはり女役を演じた『グランドホテル』のラファエラが非常に良かったので、そこを活かしたいなと思っているが、もちろん男役としても魅力的なので、男役で出てくるところもありますと語ると「今、初めて聞きました」」と驚く朝美本人同様に、会場もざわめく。サプライズがあった方が面白いと思っているからあまり語りたくないと言いつつ「でも今これでひとつサプライズがなくなってしまいましたね」と自ら種明かしをしつつ、残念そうな小池の様に会場は和やかな笑いに包まれる。

また、この作品がお正月公演になることから望海が「雪組は東京宝塚劇場でお正月公演をさせて頂くことが二年続きまして、来年は本拠地宝塚大劇場で元日から公演できるということがすごく楽しみでもありますし、やはり年のはじめにこのような作品に挑戦させて頂けるということで、良い一年のスタートが切れるのではないかなと思います。娘役は華やかに、男役はスーツやタキシードの中に男役の美学と言いますか、細かいこだわりもそれぞれ詰め込んで一月一日を迎えたいと思います」と早くも初日を見据えて話すと小池が「ちょうど今元旦という話が出て『正月早々暗い話ね』と言われるかな? とちょっと思ったのですが、でも東京でやったのは『ひかりふる路』?」と望海に問うと望海が「『ひかりふる路』と『ファントム』です。全部暗いです」と言い切り、会場は大爆笑。
でもそこに華やかなものも! と語る小池が「今もね、最初はこの茶色のテーブルクロスってどうなのかな? と思ったんだけど、今こうして見ると皆さんから見てどうかわからないけれども、なかなか良いですよね? 渋くて。味わいといい光沢感といいね、そういう風合いの中に輝きのあるものになれば良いなと。望海風斗17年の風合いの中から出てくる輝きと味わいが、作品のひとつのポイントになるのではないかなと思います」と、男役望海風斗の魅力に、全幅の信頼を寄せていることが伝わる、会見となっていた。

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