【ライブレポート】Chanty、新体制で
6周年ライヴ「これからもずっとそこ
にいていただけるように」

6周年を迎えたChantyが9月16日、<Chanty 6th Anniversary oneman『Chantyの世界へようこそ』>を新宿BLAZEにて開催した。
周年記念ライヴは1年目からTSUTAYA O-WESTで開催することにこだわってきたChantyだったが、今回は別会場での開催。その理由については以前、芥(Vo)が「メンバーの脱退などバンドに大きな変化があり進むことに迷いが生じた“自分たちの弱さ”だった。」と語った.。そんな中、新たに白(G)をメンバーとして迎え、再び歩き出すことを決めたChanty。そんな彼らを見届けようと、会場には多くのファンが集まった。
今か今かと待つフロアの照明が落ちるとともに、重々しいピアノの音色が開演を告げる。続けて楽器隊が音を合わせ始め、芥の「Chantyの世界へようこそ」の一言で「ららら」からChantyの6周年記念ライヴが幕を開けた。そのまま「BLAZE、見せてくれ!」と「白光」「ポリシー」「ねえ。」の勢いある3ナンバーを立て続けに披露すれば、フロアも腕を上げ、身体を揺らし、この日が待ち遠しくて仕方なかったと言わんばかりに存分に楽しんでいく。

MCでは「雨止んでました?」と芥。「止んでた!」とフロアから声が上がると「本当に!?」と嬉しそうな表情を見せたのは、これまでChantyの大事な日にはいつも雨が付き物だったからだろう。「忘れちゃったんですよ、てるてる坊主。でも賭けてみたんですよ、もしかしたらこの人(白)てるてる坊主みたいなんじゃないかなって。」そんな芥の期待通り、この日はライヴが始まる前にはすっきり雨が上がっていたのだ。早速、白はバンドに新しい風穴を開けたのかもしれない。

芥は「本当に6周年あっという間でした。始動ライヴから終わりを口にしてたバンドが、よもやここまでやってこれたのは、(中略)僕らというものを認識してくれてる全ての人が僕たちをここまで生かしてくれた結果だと思ってます。最後まで楽しんでいってください。」と、6周年を迎えた今日という日をしっかりと噛み締めるように言葉を紡いだ。
「それじゃあBLAZE、もっと声聞かせてくれますか?」の言葉で始まった「絶対存在証明証」、そして「m.o.b.」とこれまでのChantyのライヴに何度も激しさと熱を添えてきた2曲を披露。これまで生のライヴ特有の粗さがフロアを掻きまわし、どんどん煽られていく印象だったが、アグレッシブな楽曲でも白が丁寧に奏でるギターには、聴くものをじりじりと熱狂させる要素がある。

そしてここからは「落ちていきましょう・・夜のセカイへ。」と、ダークに陰気さ満開の「魔がさした」。反響する音に支配されながら、“夜”に引きずり込まれていく感覚。さらに「今夜未明」へとずるずる落ちていくと、束の間の静寂にフロアからメンバーを呼ぶたくさんの声を「静かに!」と一掃し「ねたましい」へ。光の見えない底を這いもがくような楽曲たちは、芥の繊細な歌声と相まってよりエグみが際立ってくるのがむしろ心地いい。

そして「揺らめくあの日は万華鏡」や「綺麗事」と、間髪入れずに2曲を披露、疾走感溢れる楽曲に、芥のアコースティックギターのみでしっとりと始まる展開は、夜が明けるというよりは、深い夜のその後みたいな、段々と意識がはっきりしてくるような感覚を覚える。どんな色の楽曲も、芥は変わらず一心不乱に歌い上げていく。ヴィジュアル系に限らず、ここまで汗を流し顔を歪め感情的に歌うヴォーカリストはなかなかいないのではないだろうか。“命を削る”、そんなことを意識させられる場面がいくつも見られるのがChantyのライヴだ。

そして続く「奏色」で一気に夜が明けると、Chantyらしい皮肉さをキャッチ―に展開する「おとなりさん」も披露。さらに、「汚いもの全部ここに置いていこう!」と「無限ループ」へ。“才能もなけりゃ努力も出来ない そんな自分が嫌で仕方ない”という、人間なら大半が抱える様な負の感情を清々しいくらいに吐き出せる場所がChantyのライヴにはある。お決まりの“俺を!”“シバく!”のコール&レスポンスでは、フロアから割れんばかりの声が上がった。
「このままずっとずっとそばにいられますように」という芥の言葉に続いた「最低」は、雨上がりの青空を見上げるような晴れやかなナンバー。軽快な成人(Dr)のリズムには、思わず笑みを誘われる。そして、普段はアグレッシブなベースプレイが印象的な野中(B)が会場中を優しく包むこむように柔らかく音を紡ぎ始めると、芥が力強く歌を紡いだ。「淡々と」は決して明るく前だけを向いたような楽曲ではないけれど、その優しいメロディに包まれ、こんな音楽を贈られるファンは幸せなんだろうなと少し羨ましくも思えた。

そして本編の最後は、「犬小屋より愛を込めて」で締めくくられた。芥の叫びに呼応して熱量を上げるオーディエンス。そこにあるのは嘆きではなく、繰り返し訪れる迷いや不安もすべてはじき返し、共にどこまでも走っていけそうな強さがあった。

そしてアンコールでは白、成人が先だって登場。加入から3か月ほどの白が、「まだ3か月しか経ってないんだってくらいすごい濃い3か月を過ごしてきたから、周年をちゃんと喜べるというか。本当にChantyになれた気がして、本当に嬉しいです。」と素直な想いを口にすると、「白くんが加入してくれたことによってこの9月16日を迎えられて、本当に白くんのおかげ。」と成人。Chantyではずっと末っ子だった成人が、少し大人びて見えたのも微笑ましかった。

芥が登場すると、「白くんってバカでしょ(笑)。」と、白のおかしなところを暴露し会場の笑いを誘う場面も。こんなに長く1つのバンドを続けたのは初めてという野中。「10年、20年やるぜ!ってスタンスじゃなくて、1年1年をしっかりやってこうって思います。」の彼の言葉に、Chantyらしさを感じられずにはいられなかったのと共に、これからも変わらず歩みを続けてくれることへの期待が高まった。そしてここでは芥から今後の展開について発表が。後輩バンドや旧友などバラエティに富らんだメンツで開催される2マンライヴ企画や、来年のミニアルバムの発売、さらには全国を回るワンマンツアーの開催などが発表され、ファンから大いに歓声が上がった。
そして、アンコール1曲目を飾ったのは「終わりの始まり」。初期の楽曲は時間が経つにつれてどうしても意味を持ってきてしまうが、初期衝動を複雑で入り組んだものにしたくないと語った芥。「ありったけの力で届けるので、ありったけの力で返してくれますか?」の前置きにもまだまだ熱狂を見せしっかりと答えていくオーディエンス。

「この曲も、お前らのおかげでちょっとは前向けるようになったぞ!」と「ダイアリー」へと続くと、「冤罪ブルース」では“冤罪!冤罪!”の掛け声で飛び跳ねさらに右に左にと大きくフロアを揺らす。“ああ やっぱ気に食わない 世界は嘘だらけだ”と「不機嫌」ではChantyの大きな魅力である“負”の感情を爆発させ、またそれに同調するかのように1つになる会場。割れんばかりの声援が続く中、アンコールは終了した。

メンバーがステージを去ってもなお続くアンコールの声に再び応え、登場した4人。芥はChantyを“気持ちを素直に言えない人たち”と評した上で、今までのような受け取った人に判断を委ねるスタンスではなく、“もっと分かりやすく気持ちを伝えよう”とメンバーで話したことを明かした。そして「口下手ではございますが、これからもずっとそこにいていただけるように、ラヴソングを送ります。」とChantyには珍しく強く相手を求める歌詞が印象的な「貴方だけを壊して飾ってみたい」を贈った。

正真正銘に最後の曲となったのは「フライト」。青空に駆け出すような爽快なメロディにフロアは一斉に手を挙げ、大きく声援を送る。大事な節目には幾度と届けてきたこの曲には、6年目を迎えたChantyとそれを支えてきたファンがいかに想い合っているかをはっきりと感じることができた。最後に「今、こういう時間が過ごせてること、本当に奇跡的なことだと思うから、当たり前の言葉になっちゃうんですけど、一緒に作って行ってほしいです。どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。」と芥がシンプルな挨拶で締めくくると、お馴染みカーテンコールへ。歌舞伎町にちなんで投げキッスをしながら「愛してる」で締めくくることとなったが、いざやってみたと思えば、誰一人カッコつけられずぎこちない4人を見て、“ああ、やっぱり変わらないChantyだな”と安心したのは私だけではなかったはず。

新メンバー白を迎え4人体制となり初めてのワンマン公演となったが、演奏される曲たちはどれもが紛れもなくChantyだった。バンドに起きたことはかなり大きかったし、歩みを止めてしまうのではと不安に感じたファンもいたはず。それでもなお変わらずにChantyであり続けられるのは積み重ねてきた6年という月日の中にある確かな自信かもしれない。俺たちについて来い、といったような頼もしいそれではないが、何も言わず強く手を握って引っ張ってくれるような、そんな優しい力強さを感じられる1日だったと思う。何より、良いバンドだな、バンドって良いなと純粋に感じたワンマン公演だった。

アーティスト

BARKS

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