デビュー作にして
トリプルミリオンを記録
CHEMISTRY
『The Way We Are』の巧みさ
日本人らしい諸行無常を感じる歌詞
《君も僕も知らない遠いところへ/あの鍵は投げ捨てて/そう それでなければ/僕は君を心のどこかで待ってしまう》《君と僕の想いを刻み込んだ/あの鍵は投げ捨てて/そう そうでなければ/部屋のドアがもう一度開く日を待ってしまう》(M2「合鍵」)。
《ハンパな夢のひとカケラが 不意に誰かを傷つけていく/臆病なボクたちは 目を閉じて離れた/キミに言いそびれたことが ポケットの中にまだ残ってる/指先にふれては感じる懐かしい痛みが》(M3「PIECES OF A DREAM」)。
《何もかも思い出と カンタンに呼べたらいいけど/振り向けば 胸が疼きだし ボクはまた道に迷っている》《きっと永遠なんて言葉は 勝手気ままに描きなぐった/未来を語るためにあるんじゃないね/通り過ぎてしまった過去たち/もう戻れない瞬間に ひそかに感じてたもの》(M6「Point of No Return」)。
《想いは想いのままで 熱を失うだけ/あなたは帰る あの日の場所へ 僕は僕の道へ/さよなら漂う日々よ 忘れる理由もないさ/愛したことを忘れる人を愛したわけじゃない》(M8「You Go Your Way」)。
《ooh… せつなくて 君と別れてから/ooh… 苦しくて もう一度 君に会いたくて》《失って 初めて知る重さ/名前さえ 聞かずに別れて/この気持ち それを愛と呼ぼう/はじめから もう一度 始めよう》(M9「Rewind」)。
主だったものを抜き出しただけでも、概ね、過ぎ去った日々に対する悔恨と、そこに残ったほんの少しの前向きさが綴られた内容であることが分かる。日本らしい諸行無常と呼んでいいものかもしれない。M3とM6は作詞者が同じだが、その他の作家はそれぞれ別なので、こうした共通の作風は多分、何らかの意図の元で発注していたからであろう。それは国内のマーケットを意識したものであっただろうし、彼らの声が最大限に活きるものを考えた末に導き出されたものでもあっただろうが、これが奏功した部分は小さくなかったのではないかと考える。
『The Way We Are』は発売週にミリオンを超え、デビューアルバムとしては異例の売上を記録し、その後、トリプルミリオンも達成。2001年のアルバムセールスの年間トップ10にもランクインした(ベスト盤を除いたオリジナルアルバムとしては年間のトップ3であった)。デビューのきっかけにもなったテレビ番組のバックアップがあったとは言え、それだけでこれほどに大衆に支持されるわけもなく、2人の歌唱力とその相性、メロディとその表現方法、そして老若男女、幅広く大衆に受ける歌詞、それらが一体となったからこそ、『The Way We Are』は大ヒットしたのだろう。それがよく分かった。
TEXT:帆苅智之