JILL(PERSONZ)×原田美枝子 ライ
ブと芝居と視覚効果で具現化する新た
な試み『HEART OF GOLD』上演に向け
、馴れ初めから人生観まで語り尽くす

今年2019年に結成35周年を迎えたPERSONZが10月14日、東京・ヒューリックホール東京にて、PERSONZ+女優の原田美枝子+イラストレーターの左右田薫が三位一体となって織りなす新たなアクトに挑戦するという。2008年、架空のサウンドトラックとして制作したPERSONZの18枚目のオリジナルアルバム『HEART OF GOLD』、その物語をライブと芝居と視覚効果を使って具現化していくというこの新しい試みについて、PERSONZのJILL(Vo)と原田美枝子の対談を実施。2人の馴れ初め、今回の舞台にかける意気込みなどを訊いた。
――まず最初に、本公演の発案者であるJILLさんにお伺いします。これはどういった公演になるんでしょうか?
JILL:PERSONZは今年35周年を迎えまして。30周年のときは日本武道館を目標にそれをやり遂げた。35周年はどうしようと考えたとき、通常のライブとは違ったライブを観せていきたいと思ったんですね。
――これまで台湾でのライブや4人がまったく違うパフォーマンスを繰り広げるライブ、BEACHで行なう海PERSONZやBlue NoteやBillboardで行なうJAZZクラブPERSOZを企画されたのは、そういう意図があったからなんですね。
JILL:そうです、そうです。そのなかで、たまたま今回の会場であるヒューリックホール東京でライブができるという日程が出たときに、ここが元映画館だったというのを聞きまして。それなら、ストーリーを観せるようなライブをしてみたらどうだろうというのがポンと浮かんで。じゃあPERSONZ+誰かとやろうというのが閃いたとき、あれ? そういえばPERSONZの18枚目のアルバム(『HEART OF GOLD』)は架空のサウンドトラックだったじゃないのと思い出し。じゃあこのストーリーをちゃんと作ってお客さんに伝えるライブをしようと思ったんです。それを表現するにあたって、役者さんがたくさん出てきて演じるのではなくて、誰かストーリーテラーを立ててバンドと一緒にやるのはどうだろうと考えたとき、私はすぐに(原田)美枝子さんを思い浮かべちゃったんです。そのときから、私の頭の中では美枝子さんがこの(ポスターの)イラストのようにバイクにまたがってたんです。
原田:ふっふっふっふっ(微笑)。
■出会いは新宿ロフト。アクシデントに見舞われたJILLを救った原田美枝子からの電話。
――そもそもJILLさんと原田さんはどんなところから交流が始まったんですか?
原田:出会ったのは、私、思い出したんだけど、新宿ロフトだよね? 私が初めてJILLを観たのはロフトの楽屋か廊下で、赤いツナギを着てたのを思い出したの。
JILL:えーっ、恥ずかしい(照笑)。
原田:すごく可愛いんだけど全然笑わなくて。
JILL:うはははっ。
原田:私も笑わなかったけど、JILLは声をかけたら怒られそうなぐらい笑わなかったの。だけど、そこがすごくチャーミングだった。だからその頃は話はそんなにしてないよね?
JILL:そうだね。だけど、こっちは「美枝子さんだ!」って思って。いまでも憶えてるんだけど、その前日にたまたま『顔』というドラマを観てて感動してたから「ドラマ、観ました」って伝えたら「ありがとう」っていってくれたんですよ。
原田:よく憶えてるね(笑顔)。
――出会った場所がロフトというところがまたロックでカッコいい!
JILL:まだPERSOZを結成する前ですからね。その後、私が25歳のときにアクシデントに襲われて入院をしまして。退院後、鬱々していたデリケートな時期に突然電話をくださって。「明日、鎌倉行かない? 海行かない?」って誘われて、美枝子さんとスタイリストさんと私で鎌倉の海に行ったときの楽しさ。それが、私は一番印象に残ってるんですよね。
――原田さんはなんでJILLさんを誘おうと思ったんですか?
原田:元気を出してもらおうと思って。
JILL:忙しい方なのに、まだ深い友人関係でもなかった私に対してのそういう気遣いがとても嬉しくて。そのときに泊まったホテルがいまはなき逗子のなぎさホテルで。
原田:かわいらしいホテルでね。
JILL:だけど、そこは門限があったんですよ。だから、夜はみんなで窓から抜け出したこととか鮮明に憶えてて。
原田:そうね。楽しかったね。
JILL:写真も残ってて。その頃美枝子さんはカメラに凝ってたから、美枝子さんが撮ってくれたんですよ。写真が送られてきたとき、それと一緒に「いい顔で笑ってるよ」と書かれた手紙が入ってたんですよね。
原田:ホント? 全部忘れちゃってる(笑)。
――グッとくるエピソードですね。
JILL:そう。私にとっては忘れられない思い出です。だから、そういうものをいろんな人たちからもらってPERSONZの「DEAR FRIENDS」はできたんですよね。
JILL、原田美枝子 撮影=大塚秀美
――年齢は同じぐらいなんですか?
JILL:美枝子さんが1つ年上ですけど、キャリアは彼女の方が断然長くて。美枝子さんはマーク・レスターの相手役に応募されたんですもんね?
原田:そう。応募したけど落ちて。それが、この世界に入るきっかけになったの。
JILL:だから出会った頃から原田さんはバリバリこの世界でやられてて。当時、写真にも凝ってたけどバイクにも凝ってんたんですよ。
――原田さんが?
原田:そう。女の子がバイク乗ってたらカッコいいよねというのと、ツーリングにもすっごい憧れてて、中型免許までは取ったんですよ。だけど、自分が持ってたのは125CCで、結局ツーリングもせず、少ししか乗ってはいないんですけど。
JILL:でも、私はロフトにバイクに乗ってきた姿を見てて。メットを外したときに髪の毛がサラ~ッてなってるのを見て、うわって思って。とにかく、美枝子さんはテレビのなかで演じているときとは違って、普段はアクティブな人という印象で。その姿が残っていて。
――それが、このキービジュアルに?
JILL:私の思い出が妄想となって膨らんでこうなりました。
原田:何10年前のことですかって話なんですけど(笑)。それ以降、そんなに頻繁に会ってる訳ではないんですよ。何年かおきに再会するぐらいで。なんだけど、例えば30周年のときの武道館。武道館を目標に掲げて、それを本当に実現してしまう行動力とか凄いなと思って感動したし嬉しかったんですね。お互い、歩んでる道は違ってて、それぞれ山あり谷ありの人生を送りながらも一つのことをずっとやり続けてきたことは凄いなと思うから、JILLから今回のお話をもらっときも、普通だったら絶対に同じステージに立つことはない2人じゃないですか?
――ロックバンドと女優さんですからね。
原田:私は歌は歌えないし、JILLは芝居はできないですから。そうやって、全然違う道だったものが今回一瞬だけ交錯するってことなんですよ。私たちの人生において。「じゃあ、一緒にやるのも面白そう」と思って。
JILL:気持ちよくOKして頂いたんですよ。だけど、そこから先はどうなることやら(笑)。なんせ初めてのことなので。
原田:どうなるのか、先が分からないってところが楽しいんですよ。いまぐらいの年齢になりキャリアを積むと、予想がついて分かっちゃうことが多いけど、今回みたいにそこが全然分かんないことは“挑戦”だし、それが楽しいんですよ。上手くいくとかいかないとかは置いといて、わかんないけど、どこか一緒に行ってみようという気持ちでワクワクするんです。JILLはJILLでこれまでやってきたことがあり、私は私でやってきたことがあるから、それを持ち寄って一緒にやったとき。それがどういう風にステージ上で混ざるのかっていうのは楽しみですよね。
JILL:いつも素のままでライブをやってきた私と、いつも違うキャラクターを演じてきた美枝子さんがどう交わるのか。
原田美枝子 撮影=大塚秀美
■80年後の世界を描いた架空のサウンドトラック『HEART OF GOLD』の世界がどのように再現されるのか?
――どんな舞台をイメージしてらっしゃるんでしょうか?
JILL:『HEART OF GOLD』という架空の物語を、私たちの音楽だけではなく、その合間に美枝子さんのエッセンスが入ってきて、お客さんに映画や舞台を観ているような感覚が伝えられないかなと思っています。
――ステージ上で、原田さんは演技をすることになるんでしょうか?
原田:基本的には朗読劇ですね。ストーリーテラーです。
JILL:ただ、美枝子さんは単なるストーリーテラーというよりは、この間、本読みのときに思いましたけど、しゃべっているなかで登場人物を演じ分けて文字を声で具現化していく訳ですよ。なので、お話をただ聞くだけではないんです。そのバックでPERSONZが音楽監督となって、そのシーンのBGMとなる音楽を演奏したりSEを流したりするんですよ。
――舞台上はどんなステージ構成になるんですか?
JILL:上手と下手で2つの世界を作ろうと思ってて。上手はバンドの世界、下手は美枝子さんの世界で。美枝子さんの世界にはバイクが置いてあったり椅子があったり。美枝子さんはこのポスターのジャンプスーツを着てくださるんです。
――えーっ!!
JILL:無理強いをして(笑)。
原田:このポスターのイメージがあって、バイクに乗ってる人が振り向いたら私だったらショックじゃない?
――そんなことないですよ!
JILL:全然ないです。
原田:よかった(笑)。このイラストを書いてくださった左右田(薫)さんとバンドと私、それぞれが持ってるものを持ち寄って、はっきりとは見えないんだけど、あたかもそこに『HEART OG GOLD』の世界があるように、その世界をあぶり出す感じだよね?
JILL:そう。『HEART OF GOLD』自体、80年後の世界を描いたものなんですよ。そのストーリーを、いま左右田さんが12枚のイラストにしてくれてまして。その絵が次々とバックに出てくるなか、バンドの演奏が入り、その合間に美枝子さんの語りが入っていく感じだから、紙芝居とかに近いのかも。
――映画と紙芝居の中間みたいな感じですね。
JILL:ええ。これを見れば、“ああ、このストーリーのこのシーンにこの曲があったのね”というのが紐解いていただけると思います。
JILL(PERSONZ) 撮影=大塚秀美
――お客さんは座って鑑賞する感じになるんでしょうか?
JILL:基本そうでしょうね。ただ、ストーリーのなかにはライブのシーンが出てくるところがあるので、そのときは誘導するかもしれません。そのときはお客さん参加型のステージに変わるかも。なので、あんまりかしこまって観る必要はないです。
――分かりました。
JILL:あと、ステージに出てくるバイクなんですが。私はSUZUKIのKATANAの存在を知らないなかで、とにかく物語のヒロインは自分が空想で作ったKATANAという名前のバイクに乗っているというイメージだったんですね。そうしたら、そういう名前のバイクが実際にあって。しかもちょうど今年、そのKATANAの新型が発売されたばかりだったので、そのことをFacebookにアップしたんですよ。そうしたら知り合いから連絡がきて。その人がSUZUKIさんと話をしたら、本物のKATANAが借りれることになりまして。なので、ステージでは美枝子さんはこのKATANAの本物に乗った姿で登場します!
原田:乗れたらいいんですけどね。
JILL:そこは残念ながら危ないので、ガソリン抜いたものが来ます(笑)。イラストレーターの左右田さんもKATANAの存在は昔から知ってたらしく、イラストではすごく綺麗にKATANAを描いて下さって。私はなぜ最初にバイクの名前をKATANAにしたのかはまったく分からないですけど、すべてが“縁”でつながっていったんですよね。
――このお二人の人生がこのタイミングで交錯するのもなにかの縁なんでしょうね。お互い、似ている部分ってあるんですか?
JILL:クリエイティブなことが好きで、美枝子さんはそれを演じて、私はライブを通してパフォーマンスするっていうところは似てるんじゃないですかね。だから、今回の公演に“LIVE+STORY PERFORMANCE”と入れたんだ。いま思い出しました(笑)。
原田美枝子、JILL(PERSONZ) 撮影=大塚秀美
■仕事と家庭を両立していくために必要な“HEART OF GOLD”とは?
――こうしてお二人ともいまの年齢まで一つのことを貫いてこられて。その一方で結婚、出産、子育てをしながら家庭と仕事を両立させてきたところもお二人に共通しているところだと思うんですね。女性が、仕事と家庭を両立していくために必要な“HEART OF GOLD”とはなんだと思いますか?
原田:私たちの前の世代は、女の人は男の人に付いていくという時代だったから、離婚したくても経済的に自立していないからできない。そんな時代だった。それが、私たちぐらいの時代から“自分は自分”として生きていきましょうよと。誰かに依存したままではなくて経済的にも自立して、自分の人生は自分で責任をとっていけるように生きましょうという流れになっていったと思うんです。男女関係なく、自分のやりたいことをやりたいようにやっていく。私はそのほうがいいと思うんですね。そのためにはいろんな人の協力がないとダメなんだけど。でも、1つでも自分の1本通った“生きる道”があると、どんなことがあってもまた立ち直れるんですよ。家庭生活だけではなく、自分が将来やり続けられることがあるとすれば、そのことを中心にしていろんな困難を乗り越えていける気がするんですよね。
JILL:私自身も、来年60歳を迎えるんですけど、こんな年齢までロックバンドをやっているなんて思ってもいなかったので、時代は明らかに変わってるんですよ。人生100歳という時代ですから、この年齢でも、まだその半分を過ぎたぐらいですからね。女性の場合はその間に出産、子育てとかあって“その時期が大変なんです”、“長いんです”とかいってますけど、それもいまから振り返るとあっという間で。そのあと手がかからなくなると、もう1回自分が独身みたいな状態になっちゃう訳ですよ。そのときから“これから何しようかな”って考えても全然遅くないんです。なにもやらないまま家庭に入っちゃった方も、そこから人生何年もありますから。だってね、いまは60歳でこんなことしてる人がいる時代ですから。
原田:そうそうそう(笑)。
JILL:みんな平等に年齢は重ねていくんだから、その人生を全うするまでの間に、どれぐらいのことをやれるか。その中身が濃いほうが楽しいじゃないですか。人生は。
原田:そうなるためにも、次々と楽しいことを見つけていかなきゃね。飽きるじゃないですか? 同じことばかりやってると。
――だから、今回のような新しい舞台に挑戦してみたり。
原田:そうですね。あと、若い人にアドバイスするとしたら、一度にやろうとしないこと。それをやると苦しくなるんですよ。だから、優先順位を決めて順番にやっていく。その時間はあるんですよ。全部をいっぺんにやらなきゃって思うとぎゅうぎゅうになるんだけど、そうじゃなくて“いまはこれ”って決めて。
――“いまは子育て”とか。
原田:そう。それが終わったらこれ、その次はこれって。道はその先も続いていくんだから焦らないでねっていいたい。“あれができない”、“これもできない”って文句いいながらじゃなくて、“こんなことができた!”、“今度はこれができた”って自分を楽しませながら生きていくほうが人生は充実すると思う。とくに20代とか、一番焦ってたよね?
JILL:焦ってた。急いで早く先にいかなきゃなんないのにって。だけど、いまは“この先、まだ時間いっぱいあるのにな”って。
原田:人生長く続くんだから(笑)。
JILL:そこがね、若い頃とは感覚が違いますね。いまは焦らず、次はこんなことやろうっていうことを進めていける。美枝子さんはいま、自分でショートムービーを撮ってらっしゃると聞いて。それも含めていい時期に一緒にお仕事できるのも縁だなと思って。
原田:私の母のドキュメンタリーで、昨日も編集をしてたんですけど。それも、この年齢になってこういうことをやる時間的余裕があって生まれた発想なんですよね。
JILL:女優さんでありながらそうやって新しい扉を開けていくパワーってすごいじゃないですか? じゃあもう1つ扉を開けて見ませんかというのが今回のステージなんですよ。
――お二人が新しい扉を開けたいと思う、一番の原動力はなんですか?
原田:“この扉を開けたらどこに出ちゃうんだろう?”というのをやりたい性分なのかな?
JILL:でしょうね。だけど、その扉を開けるためにはいろんな条件が整わないとダメだから。私は常に妄想をしてますけど、その100ぐらいある扉のなかの1つが開くか開かないかぐらいの確率ですよ。そのなかで、この公演はなぜか扉が開いたんです。
原田:それって不思議なもので、1つのことがつっかかると全部うまくいかなくなることがよくあるんですよ。だけど、1つ決まったら、これもOK、あれもOKってパタパタパタと決まっていくことがあって。これはそういう幸運な企画だったんだよ。
――では、最後にこの公演に向けて読者のみなさんに一言お願いします。
原田:JILLと同じステージに立てるのが楽しみだし嬉しいので、それを観に来てくださる方にも一緒に体験してもらいたいです。
JILL :私も美枝子さんと同じステージに立てるのが楽しみです。
原田:JILLの作った『HEART OF GOLD』の世界。80年後の世界をこの舞台で垣間見て欲しいです。
――そこではもしかすると原田さんが歌っていたり?
原田:ないですよ。
JILL:そこは内緒でーす。うふふっ(笑)。

取材・文=東條祥恵 撮影=大塚秀美
JILL、原田美枝子 撮影=大塚秀美

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