牧阿佐美バレヱ団だけの痛快活劇~『
三銃士』がダルタニヤンを迎え冒険の
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撮影:鹿摩隆司
2019年10月5・6日に牧阿佐美バレヱ団が『三銃士』を上演する。映画やミュージカル、テレビドラマ、さらに宝塚歌劇場でも上演された、フランスの文豪アレクサンドル・デュマ原作の冒険小説のバレエ版だ。振り付けはロシアのアンドレ・プロコフスキーによるもので、バレヱ団では1993年に初演して以来、人気のレパートリーとして再演を重ねている。
3年振りの再演となる今回は、主人公ダルタニヤンにドミートリー・ソボレフスキー(スタニスラフスキー&ネミロヴィチ=ダンチェンコ記念国立モスクワ音楽劇場バレエ シニア・プリンシパル)を迎える。ダルタニヤンと恋仲になるヒロイン・コンスタンス役にはベテランの青山季可のほか、光永百花が主演デビュー。三銃士にはポルトス役の清瀧千晴を筆頭に、アトスに水井駿介、アラミスに山本達史がやはり初役として配されるなど、前回公演とは全く違った舞台が期待できる。
今回は「三銃士」役の清瀧・水井・山本の3人とコンスタンス役の青山・光永に話を聞いた。(文章中敬称略)
■清瀧ポルトスがどっしり構える!フレッシュな「三銃士」
『三銃士』の物語は国王付きの銃士隊になることを夢見て、南仏ガスコーニュの田舎からパリへ上京し、アトス、ポルトス、アラミスの「三銃士」、そしてコンスタンスと出逢い、国王と対立している枢機卿の手下であるロシュフォールや女スパイ・ミレディらと戦いながら、王妃の危機を救っていく冒険活劇だ。
主演ダルタニヤンは前回公演『ドン・キホーテ』でバジル役を踊ったソボレフスキー。バレヱ団のメンバーは、あたかもパリへと上京するダルタニヤンを迎えるがごとく、公演の1週間前に来日するソボレフスキーの合流に向けて、目下リハーサルを重ねている。
ポルトス(清瀧千晴) 撮影:鹿摩隆司
ダルタニヤンとともに冒険に向かう三銃士は、今回はアトスとアラミスの2人が初役だ。
「アトス、アラミスは毎回変わっている。ですからその時その時のメンバーに応じて、どう演じて行こうかと考えるのが楽しみです」と語るのはポルトス役の清瀧千晴。「この演目ではポルトス役しか演じたことがないんですが、その分思い入れがあって大好きな役」とも。
水井駿介
三銃士のリーダー・アトス役は今年7月にポーランド国立バレエから移籍したばかりの水井だ。水井にとって今回の『三銃士』は同バレヱ団の初舞台でもある。「実は子供の頃に『くるみ割り人形』の子役で牧阿佐美バレヱ団の舞台に立ったことがあるんです。今回はプロとしての初舞台。どのような役にしていこうか、今リハーサルを通しながら考えているところです。男性の活躍が多いバレエなのでとても楽しみ。剣を持って踊ったり、3人の絡みがいろいろあるので、やることもたくさんあります」と語った。
山本達史 撮影:鹿摩隆司
またアラミス役の山本も「入団する前年にこの作品の上演があったので、踊るのは初めて。アラミスは色男でホレっぽいというキャラクターでもあるので、しっかりとキャラをたてていきたいです」と話す。
フレッシュなアトス、アラミスに経験値を積んだ清瀧のポルトスがどっしりと構えている。原作世界のようなバランス感のある三銃士だ。
■コンスタンスは様々なパ・ド・ドゥが見せ場の一つ
コンスタンス役は、5日はすでに何度もこの役を経験している青山が踊る。
「コンスタンスはダルタニヤンとのパ・ド・ドゥが見せ場のひとつ。出会った時のパ・ド・ドゥと、最後に彼が困難を乗り越えて戻ってきたときのパ・ド・ドゥの2つがありますが、それぞれの違いをしっかり出して本番までに創り上げていきたいです」。また「『三銃士』に限らず、踊る上で時代背景などは知っておきたいので全部調べる」ということから「小説や昔の映画などを見ました。王妃とのパ・ド・ドゥ(笑)もあるので、王宮の中のコンスタンスの立ち位置や王妃との関係などを、きちんと出していきたい」とも。
左・コンスタンス(青山季可)、右・アンヌ王妃(佐藤かんな) 撮影:鹿摩隆司
そして6日公演のコンスタンス役で主演デビューを飾る光永は「3年前に入団した時は貴族の役で出演したが、今回コンスタンスの役をいただいてびっくりしています。リハーサルのときに、牧先生から歩いたり走ったりという所作に対しても注意をいただきました。足の出し方、手の使い方一つひとつに感情を出していけるように、今回はチャレンジしていきたい」と抱負を語った。
光永百花
■三者三様の女性の魅力と男性のスピーディーなファイトに注目
今作は主要な女性キャラはコンスタンスとアンヌ王妃、そして枢機卿側の、いわば悪役側のミレディの3人だが、アンヌ王妃の高貴な美しさ、ミレディの強さ、「コンスタンスの愛くるしさ」(清瀧)の三者三様の女性の魅力はこの作品の大きなポイントだ。少数精鋭の女性たちならではの、際立った魅力に注目したい。
中川郁(ミレディ)、菊地研(ダルタニヤン) 2014年 撮影:山廣康夫
男性ダンサーの見せ場は盛りだくさんで、これが『三銃士』ならではのポイントの一つで、とくにバッドボーイズと呼ばれる枢機卿の部下たちと、三銃士やダルタニヤンとのソードファイトは青山・光永の両コンスタンスも「とても楽しみ」「お気に入りの場面」おススメのシーンだ。
リシュリュー枢機卿(保坂アントン慶)とバッドボーイズ 撮影:山廣康夫
ソードファイトを演じる側としては水井が「剣を持つシーンは実は意外と難しい。剣先の向きなども注意しないとならない」と話すとおり、細心の注意を払いながらリハーサルを繰り返す場面だ。しかし音楽の上に剣を打ち合うリズムがオーバーラップすると、それが一つの音楽のように感じられるのも、このバレエの醍醐味だ。
その音楽は原作者デュマと同時代の作曲家、ヴェルディの曲が使われている。「ターニングポイントで出てくる銃士たちのテーマのような音楽があるんですが、それがとても軽快で印象的でカッコいい。ぜひ注目して見てください」(清瀧)。掲載の動画で流れている音楽なので、「三銃士のテーマ」としてぜひ覚えておいてほしい。
■自由度の高い振付。見どころ豊富な舞台を見逃すな!
最後に出演者たちにこの作品の見どころとメッセージを聞いてみた。
まずアラミス役の山本は「『三銃士』は他のバレエ団ではやっていない作品なので、ぜひ見に来てください」。水井は「ステップが音楽にしっかりハマっていて、踊っていて軽快で楽しいです。見終わった後、楽しい気分で帰れるバレエです」と語った。
青山は「コンスタンスはいろいろある王宮の中で、ピュアな存在であればいいなと思います。舞台ではいろいろな人間関係がありますので、細かいところをみていただきたい」と語れば、光永も「舞台上では、端でひとが逃げ回っているところでダルタニヤンがコンスタンスを口説いていたりと、いろいろな展開があって目が2つじゃ足りないくらいです。物語はあっという間に、スピーディーに進むので、ぜひ楽しんでください」。
そして清瀧は「振付はダンサーの裁量に任せた自由な部分がすごく多いんです。今回はほぼシングルキャストですが、コンスタンスが変わったり、同じキャストでも日によって全然違う演技になったりする。毎回同じではないので、ぜひこの貴重な2日間を、ぜひ両日とも楽しんでください」と締めくくった。
痛快冒険活劇というキャッチがぴったりな『三銃士』。ダルタニヤンや三銃士たちとともに冒険をした後は、頭の中で鳴り響く軽快なテーマ音楽とともに、幸せな気分でいっぱいになるはずだ。
菊地研(ダルタニヤン)、清瀧千晴(ポルトス) 2014年 撮影:山廣康夫
取材・文=西原朋未

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