日本人作曲家の幻の曲に触れる『日本
の作曲家 秘曲探訪 第1回(スリーシ
ェルズ音楽祭)』が渋谷で開催

2019年9月21日(土)に、渋谷区文化総合センター大和田 伝承ホールにて『日本の作曲家 秘曲探訪 第1回(スリーシェルズ音楽祭)』が開催される。この音楽祭は1日に4つのコンサートが行われるところが大きな特徴だ。
【第1部 江崎昭汰ピアノリサイタル】
松村禎三 ピアノ独奏のための溺死
黛敏郎「幻想曲」「パストラーレ」「サラバンド」「子守唄」(12のプレリュードより)
諸井三郎 悲歌 ロ短調
木山光 スリーシェルズ

第1部は国内外で学んだ江崎昭汰が登場。江崎は世界中のピアノの秘曲を探求して、その楽譜を出版していく会社「ミューズプレス」の代表もつとめる若きピアニストだ。今回は、ミューズプレスで出版された楽譜や出版予定の作品を含む選曲となった。
松村禎三の作品リストでその名は知られていたが、これまで演奏されなかった「溺死(灰色の風景)」は、結核で芸大へ入学することができずに死の淵をさまよった作曲者の心境をも想起させる。ほかに黛敏郎が作品第0番と記した「プレリュード」や、諸井三郎の「エレジー」の演奏、木山光の3本の腕が必要な「スリーシェルズ」も聴き逃せない。黛敏郎の0系新幹線車内オルゴールのピアノ演奏舞台初演も決定した。
【第2部 根岸一郎リサイタル ピアノ森ミドリ
伊福部昭 釧路女子高校校歌(舞台初演)
黛敏郎 淡雪の賦
黛敏郎 はなしのぶの歌
眞鍋理一郎 津軽3つの歌
森ミドリ 黒川紀章の詩による3つの歌

第2部は日本の団体歌シリーズや伊福部昭作品への取り組みが知られる根岸一郎が登場し、矢代秋雄や池内友次郎に学んだ森ミドリがピアノで参加する。伊福部昭の「釧路女子高校校歌」は、不遇にも制定直後に数回しか歌われず、お蔵入りとなった幻の校歌だ。作曲者も楽譜を保存しておらず、学校にもなかった譜面を今回発見して復活上演となる。
黛敏郎の歌曲は、メロディーメイカーとしての才能が心にしみる。眞鍋理一郎の「津軽3つの歌」は伊奈かっぺいの作詩による「津軽弁」を使い、ユーモア炸裂な秘曲であり奇曲でもあり、津軽ブルース、津軽舞曲、津軽早口言葉の3楽章からなる。
根岸一郎リサイタルの最後を締めくくるのは建築家の黒川紀章が晩年に書き残した詩集「アドニスから手紙が来た」に森ミドリが作曲した歌曲集から選んだ「上昇気流」「君は愛に相遇したか」「水平線」の3つの歌だ。美しく、みずみずしく、心をうるおす名曲となっている。
【第3部 黛敏郎電子音楽コンサート(3ch再生システムによる)
音響操作 磯部英彬、朗読 根岸一郎
三島由紀夫の詩と黛敏郎の電子音楽による理髪師の衒学的欲望とフットボールの食欲との相関関係
ミュージック・コンクレートによる天の鐘、中の鐘、地の鐘
Musical Graphics(図形楽譜の画像スキャニングによる電子音楽再生)

第3部は電子音楽コンサートで、電子音楽家の磯部英彬による3ch再生システムで聴く「黛敏郎の電子音楽」となる。2017年に行った「黛敏郎電子音楽個展」では未発見だった「天の鐘、中の鐘、地の鐘」や「図形楽譜」の舞台初演が楽しめる。前者は黛敏郎が生前に作った日本の鐘の音によるミュージック・コンクレートの素材から再構成。後者は東京画廊で行われた図形楽譜展のために作られたと思われる7枚の楽譜(白地の画用紙に黒インクで描かれた図形)それぞれに絵の配置する方向とA~Gまでのアルファベットが記載されているものを画像スキャニングして画像→電子音響への変換を行って再生している。この「図形楽譜」も高解像度の印刷で再現して展示&販売する予定だ。そして「三島由紀夫の詩と黛敏郎の電子音楽による理髪師の衒学的欲望とフットボールの食欲との相関関係」は、今回、はじめて声楽家による朗読を伴うバージョンとして根岸一郎の朗読によって上演される。
【第4部 日本の弦楽四重奏曲】
トリプティークSQ 1vn三瀬俊吾、2vn知見寺武、va髙橋奨、vc竹本聖子
貴志康一 まつり(1926)
芥川也寸志 NHKラジオ「日曜随想」のテーマ(弦楽四重奏/舞台初演)
冬木透 モロボシ・ダンの光と影(弦楽四重奏/舞台初演)
蒔田尚昊 主題のない変奏曲(ヴァイオリン2重奏)
林光 裸の島の主題によるパラフレーズ(1987/無伴奏チェロ)
上野耕路  樋口尚文監督映画「葬式の名人」より3つのシーン(ヴァイオリン、チェロ、ピアノ/舞台初演)黛敏郎 弦楽四重奏のためのプレリュード(1961)
小山清茂 江戸子守唄変奏(1987)
深井史郎 3つの特徴ある楽章のうちの一つ(1934)
團伊玖磨 小学 四、五、六年の音楽(1946)
芥川也寸志 弦楽四重奏曲(1947)

第4部は「日本の弦楽四重奏曲」で、オーケストラ・トリプティークのメンバーによる弦楽コンサートとなり、三瀬俊吾、知見寺武、髙橋奨、竹本聖子による繊細さと大胆さを兼ね備えた美しいサウンドを味わえる。日本人がはじめて作曲した弦楽曲は、滝廉太郎の師匠である幸田延のヴァイオリン・ソナタ(1895)であり、最初の弦楽四重奏は、山田耕筰が留学前の1908年に書いた作品で、それらを踏まえてのコンサートとなっている。
今年生誕110年となる貴志康一の「まつり」から幕を開ける。3人の会特集でもある今回は、芥川也寸志作品としては「日曜随想」と「弦楽四重奏曲」を取り上げる。この「弦楽四重奏曲」は「弦楽のためのトリプティーク」に発展する作品として知られているが、前者は4楽章、後者は3楽章であり、様々な違いを聴き取れる作品となっている。同じく「日曜随想」にも芥川好みの楽想を随所に味わえる逸品で、作曲家の創意工夫によって同じメロディーでも違って聴こえる。
黛敏郎の弦楽四重奏のためのプレリュードは、ピアノのためのプレリュードとは全く別の曲であり、日本の時空間を音楽にうつしとった傑作。作曲者のリクエストである「各奏者をなるべく離れて配置してほしい」という意図を最大限にくみとった特殊配置で上演される。
團伊玖磨は、小学校の4,5,6年で習う音楽(主に唱歌)を弦楽四重奏にアレンジしたもの。そのなかには山田耕筰の「赤とんぼ」を聴くことができる。
3月の「冬木透の世界」でも演奏された冬木透作品から、ウルトラセブンのテーマをチェロソロの序奏つきの弦楽四重奏曲にした「モロボシ・ダンの光と影(弦楽四重奏/舞台初演)」。本名の蒔田尚昊名義で作曲した「主題のない変奏曲(ヴァイオリン2重奏)」の高級・上質なサウンドは必聴だ。
林光の映画音楽「裸の島」の主題によるパラフレーズは無伴奏チェロ。新藤兼人監督の代表的映画の音楽を竹本聖子が演奏する。
同じく映画音楽では、現在公開中の映画「葬式の名人」(樋口尚文監督)より3つのシーンをヴァイオリン、チェロ、ピアノで演奏。上野耕路の感覚と論理が表裏一体に響くスコアがトリプティークメンバーによって舞台初演され、CDも販売される予定だ。
小山清茂と深井史郎は、「新音楽の会」のメンバーとしても知られるが、吹奏楽で人気の作曲家でもある。小山の「江戸子守唄変奏」は、「ねんねんころりよ」の江戸子守唄を箏曲ふうにしたり、ピチカートで表現したり、逆さ富士のようにひっくり返して演奏したりという変奏曲。深井の「3つの特徴ある楽章」はパロディ的な四楽章を彷彿とさせる、快活で明晰なサウンドとなっている。
日本の作曲家の秘曲探訪 第1回(スリーシェルズ音楽祭)について(企画者の言葉)
「こんな幻の曲があるんです!」と熱弁してしまうことが時々ある。
何も物知り自慢をしているわけでなく、本当にその曲を聴きたい、演奏してほしい、との思いからである。
勿論、誰からも頼まれずやっている。
そんな具合で、事あるごとに提案してもなかなか実現しない。
そうですか・・・。と、諦めることもできない。
ならば自己責任でスリーシェルズがやるしかない!と立ち上げた「日本の作曲家 秘曲探訪」の開幕です!
「幻の曲」を生演奏で聴く貴重な期会! 逃せばそれきり!
もう2度と聴けない!かも!
行かずに後悔よりは、行ってスッキリしよう!
初演以来、70年演奏されていない曲や、今回が舞台初演になる曲も多数。幻の秘曲を名手たちの演奏で聴く音楽祭のスタートにお立ち会いください。
オーケストラ・トリプティークとは
2012年、旧奏楽堂にて日本の弦楽オーケストラ曲を集めて第1回コンサートを開催して評価を受ける。第2回、第3回演奏会は、朝日新聞文化財団の助成を受け浜離宮朝日ホー ル(朝日新聞社内)で開催し、いずれもCD化され新聞、音楽誌他で好評を得た。2014年は伊福部昭百年紀の公式オーケストラとして、NHKや新聞の取材 も受け、3回の公演を成功に導く。2015年は、生誕90年の作曲家特集として、芥川也寸志と渡辺宙明の個展を開催して好評を得る。フルオーケストラ、弦楽オーケストラ、アンサンブル、小編成まで様々な形態で日本の作曲家の音楽をアーカイヴすべく活動している。リリースされたCDはタワー・レコード やamazonのチャートで1位も記録している。
トリプティーク(三連画)とは、前衛、近現代音楽、映像音楽という三本の柱を持ち活動する意思の表明でもある。
常任指揮者は水戸博之。これまでに齊藤一郎、松井慶太、髙橋奨、藤岡幸夫、渡辺宙明、渡辺俊幸、山崎滋、西田幸士郎らの指揮者と共演を重ねている。

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