三月のパンタシア みあが語る「若さ
ゆえの美しさと危うさ」 メディアミ
ックスの先に見えるファンの姿

終わりと始まりの物語を空想する、ボーカル「みあ」を中心としたプロジェクト『三月のパンタシア』。どこまでも青春、だからこそ切ない風景をポップネスに表現する『三パシ』は音楽だけを展開しているわけではない。2018年からは自主企画「ガールズブルー」を動かしている。「みあ」が書き上げる物語(小説)を元にクリエイター陣がそれぞれに楽曲・イラストを作成、みあの小説は本人のツイッターで連載されている。特異な形でフォロワーを増やしている三パシのボーカル、みあに最新作「8時33分、夏がまた輝く」の話を聞きに行った。

――実はインタビューとしてはSPICE初登場の三月のパンタシアですが、改めてみあさんの口から「三月のパンタシアとはなんぞや」というところが聞ければ。
はい。三月のパンタシアは私、ボーカルみあを中心としたクリエイターユニットになっています。こういう言い方をすると「じゃあメンバーって何人くらいいるんですか?」というのを本当によく聞いて頂くんですが、メンバーという言い方をすると私一人です。イラストレーターの方だったり、様々なコンポーザーの方だったりとコラボレーションしながら作品で音楽表現をしていくという、クリエイターユニットとして活動しています。
――みあさんもライブなど精力的に出演していますが、公には顔出しもされていないし、ふわっと実態が見えないなかでいろいろな世界観を展開されているんですが。もう、始まって3年でしょうか。
最初に、インディーズとしてYouTubeに楽曲を投稿してから4年経ちました。メジャーデビューから3年ですね。
――活動開始からのこの4年間はどんな時間でしたか?
この間の8月16日でちょうど活動を開始して4周年。なんというかあっという間だった気もするし。もう4年も経っているのかという不思議な気分というか。でも振り返ってみて、ちゃんとここまで音楽を、三月のパンタシアとして続けられているというのは本当にすごいことだなと思います。また、ここからが大切だなっていうのは結構思っていて。5年目にどういう展開をしていけるのかは考えています。
■夏のテーマは「ボロボロだけどキラキラ」
――その展開の中の一つとして自主企画「ガールズブルー」というのがWeb上で展開されております。音楽、小説、イラストを連動されていくものですが、小説はご自分で書かれているんですよね。なんで小説を書くというところにご自身が至ったのかを伺えれば。
はい。初めてこの企画を始めたのは去年の夏なんですけど。三月のパンタシアで何か夏っぽいことをやりたいよねという話をみんなでしていたんです。まあ、新曲を作ろうよっていう話になるんですけど(笑)。そのなかで、ただ新曲を作ってYouTubeで発表するだけというよりも、活動当初から三パシは物語性っていうのを楽曲の中でもライブの中でも大切にしてきたので、何かそういう物語と連動させて楽曲を発表できれば面白いことができるんじゃないかっていう話になったんですよね。
――なるほど。
「じゃあ、どういう話の夏の物語がいいのか考えて来てよ」と投げてもらって。で、そこから「どういうエモい夏があるかな」と考えるんですけど。
――エモい夏(笑)。
はい(笑)。スタッフチームはきっと、箇条書き程度のプロットを持ってくるんだろうなと想定していたと思うのですが、私が結構内容を書き込んだプロットを「こういうのをイメージしてます」っていう形で提案したときに「ここまで書けるんなら全部書いちゃいなよ」と言ってもらえて。文章を書くのは初めてだったし、自分で書くつもりじゃなかったんですけど、そういうふうに言ってもらったので、いろんな人の力を借りながら初めて書いてみたっていうのが去年の夏の「青春なんていらないわ」ですね。
――反応ってどうでした?ファンの方とか。
小説はTwitter上で展開していたのですが、フォロワーの方は小説を読んだうえで楽曲とかも聴いてくれて。小説を読まないとわからないような仕掛けなどもリリックビデオやイラストの中に隠したりしています。それに気づいてくれて盛り上がってくれたりするのはすごくうれしかったですね。
――そして今年も夏が来ました。最新作「8時33分、夏がまた輝く」が展開されると同時に、主題歌「いつか天使になって あるいは青い鳥になって アダムとイブになって ありえないなら」も展開されていますが、今回のストーリーはどのように作られたんですか?
企画の話になったときに、この話のほかにもけっこう何パターンか提案をして。その中に私の夏の大きなテーマとして「ボロボロだけどキラキラ」っていうのがあって。
――ボロボロだけどキラキラ、ですか。
思い返すと、切ないことばっかりで痛みを伴うことも多かったけど思い返すとキラキラしてるな、みたいな。そういうひと夏の青春を書けるといいなと思っていて。この話のほかにも、バンドマンにボロボロにされる話とかいろいろ提案していたんですけど(笑)そうしたらスタッフさんから「島行こうよ」って言われて。
――いきなりの島。
島でひと夏を過ごす話が見たい!というリクエストを頂いて(笑)。 それなら一緒にカフェで働いていくなかで関係性を気づいていくみたいな物語は面白いんじゃないかなと思ってこれを書いてみたんです。
――実際に小豆島に行かれたんですよね、小豆島を選んだ理由っていうのはあるんですか?
自然が美してくてのどかな島が良かったんですよね。小豆島も非常に観光地として豊かな土地ではあるんですけど、少し穏やかな風が吹いているというか、色味でいうとちょっと淡いような。ちょうどゴールデンウィークあたりにチームの女子みんなとイラストを担当していただいているダイスケリチャードさんと小豆島に行ってみたんです。自分も田舎出身だからっていうのもあるかもしれないんですけど、空と緑がすごい広く広がっていて。東京からあの島に行くと、すごい落ち着くというか。心がなんか、やわやわって癒されていくような。そういう感覚にもなって。これは東京から来た女の子が行く土地としてはすごい良いんじゃないかなと思ったんです。
――楽曲も聴きながら読ませてもらって、印象的だったのが登場人物の「悠」でした。最初に読んでいるときは男の子なのか女の子なのかわからないというか、結構曖昧に描かれているじゃないですか。あまりジェンダーを表現しないように書こうっていう考えはあったんですか?
前半と後半で印象ががらっと変わるような話にしたいというのは最初から考えていて。なのでどれだけ前半で悠ちゃんを女の子と思わせられるかっていうのも自分のなかでキーになっていました。そういった話を書きたいと提案したときに、「リリックビデオとかでも面白い仕掛けが作れるんじゃないか」っていう話になって。それで、「いつか天使になって あるいは青い鳥になって アダムとイブになって ありえないなら」は……私達は「いか天」って呼んでるんですけど。
――では、記事中でもこれからは「いか天」でいきますね(笑)。
はい(笑)。 リリックビデオもはじめて登場人物を2人描いているんですけど、ギリギリ男の子にも見えるすごいフェミニンなキャラクターっていうのをダイスケリチャードさんに描いてもらって。色々とミスリードができるような仕掛けを作ってもらったりとかはしましたね。
――なぜこういう作りにしたかったのでしょうか?
そうですね……好みの問題なんですけど、私は綾辻行人さんとか辻村深月さんとか、そういう叙述トリックみたいなものを描かれる作家さんがすごく好きで。小説でしか表現できないというか、書けないものみたいなものが書けたら面白いんじゃないかなとは結構前から思っていたんです。なのでこの夏で挑戦させてもらったという感じですかね。
――ミスリードって文章だからこそできるものなのに、音楽もリリックビデオもありきで挑戦するのは大変そうですが、うまくできている感じはしますよね。
今回の「いか天」は攻めているというか。歌詞も「いつか天使になって」「アダムとイブになって ありえないなら」みたいな。そこだけ見ると百合の話なのかなって。
――そうですよね。僕もぶっちゃけ最初は完全に百合の話だと思って読んでしまいました。もう1つ気になったのは、作中でスピッツとかフジファブリック、相対性理論やサカナクションというバンドが出てきます。この辺は実際に好きでいらっしゃったりするんですか?
今回は具体的なアーティストの名前をあえて出すように物語のなかでしていて。そのほうがより読んでくれる人も「これって自分たちの話でもあるのかな?」っていうそういう感覚になってくれるかなって。
――変な話、相対性理論とかこの子たち好きそうって感じがするんですよ(笑)。この企画は小説ありきで楽曲を作られているっていうことですよね。
そうです。でも、プロット段階ですね。製作段階でみなさんにお渡しするのは。
■自分と同じ気持ちの子の思いを歌ってあげたい
――上がってきた楽曲を受け取ったときはどうでした?
buzzGさんにお願いした「いか天」に関しては、曲自体はもともとあったんですよ。デモとして2年位前にもらっていて。で、今回夏の話をやるってなったときにこの楽曲すごいハマるんじゃないかっていうところで、プロットをお渡しして歌詞をこういう世界観で直してもらいたいですっていうことをお伝えしたんです。そうしたら、すごい夏っぽいアレンジもサウンドも加えてもらいながら、サビの歌詞が物語とバチンとハマるというか、それが自分でも聴いて感動したところですね。
――「もう優しくしないでよ」という歌詞とか、ちょっとリアルですよね。三パシってやっぱりちょっと切ない曲が多い印象があるんですけど、それはみあさんのなかに表現したいものの核として1個あるんですか?
この間のワンマンライブでも少しお話したんですけど、あまり自分の気持ちを言葉にして伝えるのが得意じゃなくって、そういう思いを学生のころから抱えていて。だから、そういう素直に言えない気持ちとか、言いたくても言えない思いみたいなものを、せめて楽曲のなかで歌えたらいいなっていう思いがひとつあるのと。もうひとつは、きっとそういう自分と同じような気持ちを抱えている人っているんじゃないかと思っていて。その子たちの気持ちを自分が代わりに歌ってあげられたらいいなというのがあります。なので、言いたくても言えない気持ちっていうものがすべての楽曲に色濃く出ていると思うんです。
――それが三パシのひとつのカラーにはなっている気がしますね。そして、8月26日にエンディング曲「恋はキライだ」も発表されました、堀江晶太君が作ったこの楽曲についてはどうでしょう。
いやあ、さすが堀江師匠って思いました(笑)。これも、プロットをお渡しして物語のこういう部分が歌詞になったらうれしいですとか、テンポ感とか楽曲のイメージとかをお伝えして制作してもらったんですけど。この歌詞、楽曲の後半で「僕は泣いてるよ」という一行が出てくるんですけど、そこで初めて「これ、悠ちゃんの歌だったんだ」っていうのがわかるっていう。堀江さんもそういう仕掛けを作ってくださって(笑)。この小説を読んでからこの楽曲を聴くと、さらに面白いというか。エモーショナルになってもらえるんじゃないかと期待しています。
――改めて、楽曲と小説でコラボというのは、なかなかメディアミックスのなかでも珍しい形だと思うんです。しかもツイッターで連載するって。
そうですね、140文字のなかでセンテンスをまとめるのって本当に難しくって。っていうのはありますけど。
――慣れました?
うーん、でも、やっていくなかで。最初はバーッて書いてそこから分けていく作業をするんですけど、1個のツイートのなかで。ここまでにしておいたほうが面白いかなとか。ただ140文字で区切ってボンボン投稿していくよりは、そういうところも意識しながらはやったりはしていますね。
■三パシ「三大エモワード」とは?
――ツイッターで小説を書くという気軽さも含めて、創作についてどう思われているかというところも聞きたいです。三月のパンタシアとして、シンガーである以上に世界観の構築も前以上に担当しているじゃないですか。そのなかで、みあとしての三パシの活動をどう考えているのかなっていうところが気になっていて。
確かに向き合い方が変わってきたというか、わかってきたっていうほうがしっくりくるんですけど。
――わかってきた、ですか。
最初は本当に歌うので精一杯で、練習して本番を録って、そうしたら次にまたすぐ新曲が来てっていう。そういうサイクルで本当にいっぱいいっぱいだったんですけど、徐々に心の余裕ができはじめたときに、もっとこういうことをやってみたいなっていう気持ちが生まれたました。「ガールズブルー」の企画を始めた去年の夏がそのタイミングでした。
――表現したいことが生まれてきた。
すごい難しいんですけど、表現って私は生き方だと思っていて。そういう、嘘がつけない部分みたいなものを、音楽で表現していきたいなって。私のなかで、三大エモワードというのがあって、まずは「共依存」、あと「再会」、そして「叶わなかった恋」っていう。これが私がすごい大好きなテーマなんです。そういう部分とかもこれから、三パシの物語として、自分の性癖がにじむような作品を作っていきたいなと思っています。
――性癖!(笑)。
ただ、こういう環境を作ってくださっているスタッフの皆さんがいてくださるからできることだなとも思ってます。いろんな力を借りながら、ですね。
――三大エモワードの一つ目に「共依存」が出てくるところが、なかなかパワーあります(笑)。
私、たぶん性癖が作家の島本理生さんによって作られていて。ちょっと脱線しちゃうんですけど、実写映画にもなった「ナラタージュ」っていう小説を中学生のときに読んで。それからもう、どこにも心が行けないというか。なんか、島本理生さんの小説ってあまりハッピーエンドがないんですよ。全部うまくはいかなかったり。本当に好きだった人とは結ばれないみたいなエンディングなんですけど。それがやっぱり、今の自分を形成しているかも……ですね。
――思春期に読んだものってそういうものなんですかね。多感な時期に読んだものって一生棘のように残りますよね。
そうなんですよ、まだ噛んでるのに味がしますもん(笑)。
――三パシってやっぱり青春を描いているじゃないですか。叶わなかった恋っていうのもそうなんですけど、共依存っていうのもそういわれるとわかるというか。若いがゆえに逃げ道がないというか……。
うんうん、そう。若いがゆえにその人しか見えないっていう気持ちとか、この人しかいないって思っちゃうような危うさとか。だから私、17歳って年齢がすごい好きで。若くて綺麗で、でもどこか危ういというか。この小説、今回も高校2年生くらいの女の子を主人公にしています。あ、17歳もエモワードですね(笑)。
――みあさんはいま「危うい」という言葉を使いましたけど、逃げ道がなかったりどうしたらいいかわからなかったり。そういう環境を楽曲として凄くポップに描いているじゃないですか。ファンの共感を呼んでいるのはそこなのかなと、すごく今感じましたね。
そうかもしれないですね(笑)。
■歌詞の中の「君」がファンに思えるとき
――そんな創作のなかの1つにライブもありますが。ライブに対してはどんなお気持ちですか?
ライブは直前になるとものすごい緊張しますし。でも、立ってみてお客さんの顔を見ると毎回すごいうれしいです。直接皆さんに会えるライブがいちばん好きだなって思います。
――ライブが一番好き。
それこそ本当に活動を始めたばっかりのころ。YouTubeに投稿していただけのころは自分が人前で歌うこと自体に自信があったわけではなかったので、最初はどっちかというと嫌だったんですよ。でも、わからないけどやってみようって初めてお客さんの前に立ったのが、イベントだったんです。
――『MUSIC THEATRE 2017』ですね。
はい、2曲だけさいたまスーパーアリーナで歌わせてもらって。でもそれがものすごく楽しかったんですよ。なんというか、今までレコーディングブースで誰かに向かって歌っているんですけど、結局一人で一生懸命歌っていたのが、ちゃんとやりとりができるというか。自分が、自分の熱量で歌った分、その分客席から返ってくるような感覚をすごい感じられて。そのときにライブをもっとやっていきたいなと思ったんです。それからワンマンライブもやりたいですって、話をして、すぐにワンマンもやるようになっていったんですけど。そのなかで、直接お客さんに歌って、伝えることができて。ひとつの音楽をあんなにみんなで共有して楽しむことができるっていうのは、今まで自分もお客さんとして経験したことではあるんですけど。改めて自分がステージに立ってみて、その尊さみたいなのがわかるというか。
――そうですよね。ライブでは確実にみあに会えるみたいなところもありますもんね。
そうですね。これからも積極的にやっていきたいです。
――改めて、ファンの方っていうのはみあさんにとってどういう存在になってきていますか。
自分が歩いていくためのすごいエネルギーになっているというか。やっぱり、居てくれるから自分もこういうことを伝えたいとか、一緒に楽しいことをできたらいいなとか思うし。数は本当に関係ないと思っているけど、それが大きくなっていく中で、出会いが増えていくというのはすごいうれしいことだなって。そうなっても、ちゃんと一人ひとりに向かって、一人ひとりに伝えられる音楽をやりたいなと思うし。なんか、うーん……支えっていうとちょっと照れくさいですけど、確実にそういう存在になってくれていますね。
――ファンの存在や思いっていうものが、与える影響みたいなものはあるんですか?
自分は歌詞を書かせてもらうこともあるんですけど、歌詞を書くときに使う「君」っていう表現。「私」と「君」という世界観のなかで、その「君」。物語のなかでは私と恋人みたいな関係性ではあるんですけど、その「君」が書いているうちにそういうファンの人に思えるというか。その笑った顔とかあなたの声があるから私もしんどいけど頑張れるんだよとか、そういう気持ちで詞を書いていますね。
――1月にもワンマンライブが待っています。『18時33分、冬もまた輝く』という素晴らしいタイトルだと思うんですけど。さすがに8時33分開演は厳しかったですか(笑)。
あはは! 厳しかった!(笑)
――それまでも活動はあると思いますが、夏がもうすぐ終わりそうです。最後に今年の夏、2019年、令和最初の夏はどうでした?
夏は…何してたっけ、でも、そうですね。いい夏だったなと思います。この企画もリアクションも非常に良かったんじゃないかなっていう実感はしていて。この物語はLINEノベルさんのアプリでも展開させてもらっているんですけど、そちらのほうでも非常によく読んでいただいているらしく。なんか、少しずつ広がりを感じられた夏。新たに出会いを感じられた夏になったんじゃないかなと思います。
インタビュー・文:加東岳史

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